君が無能くん?魔剣士学園に入学したのに『スキル無し』?ねぇ今どんな気持ち?努力したって報われないのに希望とかあるの?普通の青春を送りたい?あはっ! 無能には無理に決まってるじゃん 作:鳥稲のね
―――光の神姫 レティシア・ルーメンシュタイン
美しい銀髪に、澄み切った蒼い瞳。
彼女は七剣姫の中でもエース格。
光属性は不利な相性が少なく、伝統的にエースとして扱われることが多い。
そして、今代の光属性の最高峰であるレティシア。
学園内においても王国内においても非常に人気のある存在だった。
僕は昼休みに学園の中央広場を訪れた。
そこは、まるで祭りのような熱気に包まれていた。
「レティシア様! これを受け取ってください!」
「僕の気持ちです!」
「ずっと憧れていました!」
次々と、男子生徒たちが次々に彼女へ花を差し出していく。
数十本の花束を差し出す者もいた。
花と一緒にアクセサリーや宝石をプレゼントする者もいた。
贈り物をする者だけでなく、せめて彼女の姿を一目見ようという男子たちまで殺到していた。
「レティシア様! もらってください!」
「好きです! 応援しています!」
「ラブレター、読んでください!」
……レティシアは、完璧だった。
どんな男子にも、笑顔を絶やさず、優雅に応じる。
「ありがとう。とても嬉しい」
「感謝する。これからも応援してくれ」
「その強い気持ちを持って剣の修行にも励んでくれ」
彼女の一人一人に誠実に対応する態度は、男子たちを一瞬で虜にしてしまうようだった。
でも……レティシアはすでに、僕のモノにしてしまっているんだけど。
う~ん、どうしたものかな。
素直に並ぶしかないか。
昼休み終わっちゃうよ……。
……。
……。
……。
ようやく、僕の番が回ってきた。
午後の授業が始まるギリギリ前の時間だった。
みんなお昼ご飯食べないの?
レティシアもお腹空かないのかな……?
僕がレティシアの前に立つと、彼女は完璧な笑顔で僕を迎えた。
そういや、レティシアに何て言うか考えてなかった。
まあ、適当でいいか。
「レティシア様、前から憧れていました。この花もらってください」
僕は他の男子と同じように振る舞った。
「……っ!?」
これまで完璧なファンサービスを続けてきた彼女が、明らかに動揺している。
口元がわずかに開き、普段ならすぐに返すはずの感謝の言葉が、出てこない。
えっと……
別にサプライズというつもりでもなかったんだけど。
こんなにビックリされるなんて、何か悪いことしてしまったな……。
「あの……レティシア様?」
僕がそういうと、やっと硬直が解けた。
「ああ……すまない、ありがとう。」
そう言って、彼女は僕の花を受け取った。
うん、任務完了。
その瞬間、昼休みを終わる鐘の音が学園内に響き渡った。
どうしよう。
午後の授業、サボろうかな。
お腹空いたし、まともに授業受けられるとも思えない。
こうして、僕の『聖花の日』のイベントは終わった。
……だが。
――――――――――
夜。
レティシアの部屋。
豪華な装飾が施されたレティシアの自室。
彼女は静かに紅茶を飲んでいた。
向かいには、彼女付きの執事であり、諜報部隊の一員でもある男が控えている。
「それで?」
レティシアは 微笑みながら尋ねた。
しかし、その目は 鋭く光っている。
「七剣姫の中で、一番多く花をもらったのは誰だ?」
執事の表情は固い。
「はい……それでは、発表させて頂きます」
彼が紐を引くと、室内にあったミニステージの幕が上がる。
執事は壇上に駆け上がった。
~~~~~~~~~~
それでは学園最大のイベント 『聖花の日』 において、七剣姫たちが受け取った花の数ランキングを発表いたします!
司会はこの私、レティシア付き執事のアーロンが務めさせていただきます!
果たして今年のランキングはどうなったのか!?
意外な結果に、学園中が驚きの嵐!
それでは、早速カウントダウンスタート!!
第6位!
大地の公女!ユノア・グランツバッハ!
獲得花数:98本!
堅実な人気を誇るユノア様!
落ち着いた物腰と品のある佇まいが、一部の男子に根強い支持を受けるも、派手さに欠けたか!?
慎ましくも、彼女を慕う者たちからの献花は真心がこもったものばかり!
「ユノア様の落ち着いた雰囲気に癒されるんだよなぁ……」
「本数より質が大事! 俺はこの1本に全力を込めた!」
このようなファンの声が聞かれました。
堅実な支持を集める ユノア様は、6位でした!
第5位!
雷の皇女!リア・ヴォルデンベルク!
獲得花数:112本!
強烈なオーラを放つリア様!
そのカリスマ性に惹かれる者は多いものの、“高圧的すぎて渡しに行くのが怖い” という声も……!
しかし、一部のファンからは "厳しくされるのが最高" という熱烈な支持も!?
「リア様の一瞥だけで1週間は生きていける……」
「花を渡したら『ありがとう』って言われた! 」
「以前は怖い印象だったけど、最近雰囲気が柔らかくなった気がする」
このようなファンの声が聞かれました。
“畏怖と崇拝が交錯する” リア様は第5位でした!
第4位!
炎の王女!モモア・フレイム・アルトドルフ!
獲得花数:148本!
学園の太陽とも言えるモモア様!
その圧倒的なカリスマ性と炎のごとき情熱に惹かれる者は多い。
“もし気に入られなかったら燃やされるのでは?” という不安から、一歩踏み出せなかった者が続出!
「モモア様に花を渡せた……俺の人生、燃え尽きてもいい……」
「手が震えてちゃんと渡せなかったけど、受け取ってもらえた! もうそれだけで十分!!」
「俺、握手してもらった。手……すげえ温かかった!」
このようなファンの声が聞かれました。
“熱き想いを燃やせ!” モモア様は第4位でした!
第3位!
癒しの巫女!トア・フェルディナント!
獲得花数:210本!
ふわふわの巻き髪とおっとりした微笑みで、男子たちの心をとろけさせたトア様!
豊満な胸はレティシア様にはない魅力!包み込むような優しさに癒された者たちが、次々と花を献上!
「トア様の『ありがと~♪』がもう天使すぎる……」
「花を渡した瞬間、疲れが全部吹き飛んだ! 癒しのオーラが違う!!」
「思いを込めた手紙を破り捨てられたけど……好き」
このようなファンの声が聞かれました。
“学園の母性力&ドS力No.1!” トア様、第3位!
第2位!
光の神姫!レティシア・ルーメンシュタイン!
獲得花数:297本!
学園の絶対的存在、光の神姫レティシア様!
その気高き美貌とカリスマ性で、学園内の男子たちを完全に魅了!!
あまりの人気に列に並ぶのが怖くなり、“遠くから見守るだけのファン” も多数!
「レティシア様に近づけるだけで光栄……!」
「優雅な佇まい、完璧なスタイル、ポニーテールが風に舞う姿……!! くぅぅぅ!! 最高!! 」
「これぞ高貴なるお嬢様の風格!! ため息が出るほど美しい……!」
このようなファンの声が聞かれました。
“絶対女王の輝き!” レティシア様、堂々の第2位!
栄光の第1位!
闇の竜姫!ロザリア・ドラグライオス!
獲得花数:366本!
七剣姫の圧倒的なパワーを誇るロザリア様が、まさかの1位!
静かなる威厳とミステリアスな雰囲気が、学園の男女問わず心を鷲掴みに!
さらに、彼女が花を受け取るたびに『食べた!?』という衝撃の行動が話題となり、ファンの熱狂を加速!!
「花を捧げたら、目の前で一口食べてくれた…… 俺の肉体まで捧げたい……」
「次は高級チョコレートを献上しようと思う!」
「ロザちゃんかわいい!ナデナデしたい♡」
「スティックサラダとかも食べてくれるかな」
「抱っこしながらお花を食べさせたい☆」
“新たなる『聖花の伝説』!” ロザリア様、圧巻の第1位!
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彼女の手元のティーカップが 微かに揺れた。
ロザリアに負けた……!?
「……どうして?」
レティシアは、冷静を装いながらもどこか刺々しい声で問いかける。
執事は 静かに咳払いをしながら答えた。
「ロザリア様は、女性からも花を受け取っておられます。」
「……!」
レティシアの表情が 引きつる。
「では、私も女性ファンを増やさないといけないのか……。」
彼女は 考え込むように腕を組む。
「……そうだ、私もロザリア様のように花を食べよう!明日から花を食べる練習をしするぞ!」
「さすがにそれはお止めになられた方がいいかと……。」
執事が 困惑したように返す。
そう、ロザリアは何を血迷ったのか、花を食べるという奇行に出ている。
しかし、それが 『動物のように可愛い!』と女子たちの間で爆発的な人気を得ている。
結果、ロザリアがもらった花の総数で一位となる異常事態が発生している。
「……しかし、レティシア様。」
執事は、咳払いをしながら 続けた。
「ですが、学園内の男子生徒から贈られた花の数では、レティシア様が堂々の一位です。」
「ふふん……そうだろう!」
レティシアは 勝ち誇ったように胸を張る。
「やはり私は、この学園の頂点に立つ者……!」
しかし……そこで、あることに気づいた。
「……あれ? ユノアが6位ってことは……」
首をかしげるレティシア。
「7位は……? メルキアが……彼女が7位なのか?」
執事は 一瞬、口ごもった。
「メルキア様は……圏外です。」
「は?」
「まず、メルキア様は『聖花の日』に学園にいらっしゃいませんでした。その時点で圏外です。」
「……」
「ですが、メルキア様にも全国から大量の花が送られています……。も、もちろん、レティシア様にもたくさんの花が送られてきています。」
執事は 言葉を選びながら伝えた。
まさか、メルキアが『圧倒的な人気』を誇っていることを、そのまま伝えるわけにはいかない。
そう……そんなことを知ったらレティシアは機嫌が悪くなるので、執事は彼女に、『新しい聖女 メルキア』の大人気っぷりを薄っすらと教えているだけだった。
実際にはなんと……メルキアの元に届いた花の数は、ロザリアとレティシアのもらった花の数を足しても、遠く及ばないのだった。
「……私も写真集を出すぞ。」
「そ……それは……。」
「私も魔物討伐のあと、歌って踊るぞ。」
「……それでよろしいので?」
そして……
レティシアは急に表情を引き締めた。
「では……誰が、誰からどんな花をもらったのか、リストを上げるんだ。」
「……は?」
「七剣姫全員の詳細なデータを出せ。花の数、種類、贈り主の名前、全てだ。」
「……かしこまりました。」
執事は、密かに 『また徹夜か……』 と思いながらげんなりしていた。
最後に、彼はある報告を始めた。
「……ちなみに、アルトという一年生男子が、どんな順番で花を贈ったかも分かりました。」
レティシアは ピクリと反応する。
執事は淡々と告げた。
「メルキア様、その次にクラスメイトのララという女子生徒、モモア様、リア様、ユノア様、……そのあとにレティシア様だったようです。」
レティシアの 表情が凍りついた。
「そうか……そうか……。」
レティシアは わなわなと震え始める。
「絶対に許さないぞ……!」
レティシアは 静かに、だが確実に怒りの炎を燃やしていた。
「私が七剣姫の中でも……いや、そのへんの女子生徒より後に……一番最後に花を渡すとは一体どういうことか!」
レティシアは、執事に向かって宣言する。
「今後、アルト殿の動向を逐一監視せよ。」
「……かしこまりました。」
こうして、レティシアの 『人気一位の座を奪還する戦い』 が始まった。
「おい、それから……」
「……はい」
「トア様のランキング発表の時に『豊満な胸』はレティシアにはない魅力……とか言ってなかったか?」
「……いえ、そんなことは」
「確かに聞いたぞ」
「……」
「お仕置きが必要だな」
「っ!?」
クラウディア王国の夜に、執事の叫び声が響き渡ったのだった。