君が無能くん?魔剣士学園に入学したのに『スキル無し』?ねぇ今どんな気持ち?努力したって報われないのに希望とかあるの?普通の青春を送りたい?あはっ! 無能には無理に決まってるじゃん 作:鳥稲のね
昼下がりの休み時間。
教室には穏やかな空気が流れていた。
僕は、いつものように隣の席のララとおしゃべりを楽しんでいた。
―――聖花の日に、僕は彼女に一輪の花を贈った。
もし、ララからデートのお誘いがあったら、どれだけ嬉しいだろう。
もちろん、催促するつもりなんてない。
ただ、こうして彼女と他愛もないおしゃべりをしているだけで、僕は十分に幸せだった。
そんな僕たちの様子を、少し離れた場所から見つめる三人の少女たちがいた。
―――炎の王女 モモア・フレイム・アルトドルフ。
―――雷の皇女 リア・ヴォルデンベルク。
―――大地の公女 ユノア・グランツバッハ。
彼女たちは、七剣姫の中でも特に才気あふれる一年生の剣姫たち。
僕の言うことを何でも聞くと忠誠を誓った三人。
一応、僕の恋人にしたんだけど……それは甘酸っぱいやり取りの末、結ばれたわけではない。
だから、ララとはできたら『恋愛』がしたいんだ。
「アルトったら……ほんとララとばっかり話してるわね……」
モモアは紅い髪を軽く指でいじりながら、ふくれっ面で僕を見ていた。
「別に私はどうでもいいですが。でも、アルトもララのことが好きなら、さっさと告白したらいいのに……とは思います。」
リアは腕を組んでツンとそっぽを向いている。
いやいや、告白しないよ。
三剣姫を後ろに引き連れて迫ってこられたら嫌だろう?
「まあ、ララさんは可愛いから、仕方ないけど……。でもフラれるのが怖いなら、私に言ってくれれば公爵家が裏から手を回して、ララさんが断れないようにしてあげるのに」
ユノアは溜息をつきながらも、そんなことを言っていた。
やめろよ!
無理やりなことをララにはしたくないんだから!!
……彼女たちも、僕がララに気があることは知っている。
だけど、なぜか誰もそのことに直接言ってくることはない。
ララはハーレムに入っているわけではないんだけど、まるでララこそが僕の『正妻格』であるかのように、遠慮しているようにも見える。
僕はチラチとそんなことを思いながらも、再びララとの会話に戻った。
まだ休み時間はある。
もう少し楽しい会話が続くはずだった。
―――ドガンッ!!
突然、轟音とともに教室のドアが吹き飛んだ。
「……な、何!?」
教室中の生徒たちが悲鳴を上げる。
粉々になった扉の向こうに立っていたのは……。
漆黒のロングヘア。
紅い瞳。
冷たく、無慈悲な雰囲気を纏う少女。
ドラゴンの血を引く竜族の末裔。
―――闇の竜姫 ロザリア・ドラグライオス。
クラウディア魔剣士学園、七剣姫の一角。
その中でも最強のパワーを持つと言われる、三年生の剣姫。
「ロ……ロザリア様……!?」
誰かが震える声でその名を呼んだ。
しかし、ロザリアはその声を無視し、無表情のまま教室を見渡す。
……何かを探している。
「アルトという男はどこ……?」
冷たく低い声が、教室全体に響き渡った。
張り詰めた空気。
誰もが息を呑む。
近くにいた男子生徒が、恐る恐る僕を指さした。
「ひ……ひぃ……あ、あそこです……」
その瞬間。
視界が一瞬、ブレた。
―――速い!?
気づいたときには、僕の胸ぐらをつかみ上げられ、宙に浮かされていた。
「ぐっ……!」
苦しい。
圧倒的な力が僕の身体を締め付ける。
教室中が凍りついた。
「私と戦え」
ロザリアは冷たくそう告げる。
「や……やめてください、ロザリア様!」
モモアが慌てて立ち上がり、ロザリアを止めようとする。
しかし、ロザリアはモモアの言葉を完全に無視し、力を緩めようとはしなかった。
―――ダメだ、このままだと……殺される……!?
僕はロザリアの手に触れた。
そして、僕の能力を発動させる。
僕は
ロザリアの
能力を
奪った。
……次の瞬間。
「っ!!」
ロザリアの力が急に抜け、僕は床に落とされた。
「いてっ……!」
しかし、同時にロザリアもよろめき、そのまま倒れ込んだ。
ガン……と机に頭をぶつける鈍い音がした。
「……痛い……痛い……ひぐっ!」
ロザリアは泣き出してしまった。
彼女は竜の血を引いている。
本来であれば、ドラゴンの鱗がごとく固い防御力を誇る。
今まで『痛み』なんて感じたことがなかった。
だが……スキルの恩恵がなくなり、一般と同じ程度の防御力になった。
頭をぶつけたくらい大したことがないと思うけど、ロザリアにとっては衝撃的な苦痛なのだ。
「……だ……大丈夫?」
僕はロザリアの頭を撫でてみる。
すると、僕の体に抱き着いてくるロザリア。
彼女は強者にしか従わないはず……だったのだが。
「……もっと……なでて」
……これ、もう僕のモノになったわ。