君が無能くん?魔剣士学園に入学したのに『スキル無し』?ねぇ今どんな気持ち?努力したって報われないのに希望とかあるの?普通の青春を送りたい?あはっ! 無能には無理に決まってるじゃん 作:鳥稲のね
「では、廃校舎に向かいましょうか?」
先に口を開いたのは、隣を歩いていたメルキアだった。
いつものように柔らかな微笑みを浮かべたまま。
「えっ、僕も行くの?」
僕は思わず聞き返す。
「当然でしょう。ご主人様も、七剣姫の一人……ですもの」
「いやいやいや、ちょっと待って。僕は姫じゃないし、剣聖でもないし」
「七剣姫の一人『無能のアルト』……ぷぷっ、ウケる~」
おいモモア!
僕に従ってからでも馬鹿にする稀有な例だぞ!
「……お前のスキルをまた奪って無能にしてやろうか」
「うわ、怖っ!冗談でーす!ごめんなさーい!」
僕がジト目を向けると、モモアはニヤニヤと笑ってスキップするように前を歩く。
その様子に、他の剣姫たちは小さくため息をついた。
和やかなやり取りも束の間のことだった。
廃校舎へ向かう途中……。
学園裏道差し掛かった時に、事態は一変した。
風を裂くように、黒ずくめの集団が物陰から飛び出してきた。
「敵襲!」
リアの叫びと同時に、先頭に立っていたレティシアがすかさず抜刀。
まるで舞うような動きで、次々と襲い掛かってくる敵を切り伏せていく。
斬られた者たちは呻く間もなく地に伏し、やがて静寂が戻った。
「すごい……」
僕が思わず呟いたその声に、レティシアが振り返って、少し照れたように微笑む。
「どうです、アルト殿。惚れ直しましたか?」
「……最初からずっと惚れてるよ」
うっかり口から出てしまったその言葉に、周囲の空気がピタリと止まる。
「今、なんと言いました?」
「……えっ、何も言ってないけど?」
ジト目でにらみつけてくるリア。
そして他の六人も。
僕は冷や汗をかきながら視線をそらした。
その後も何度か奇襲を受けたが、剣姫たちの実力は桁違いだった。
次々と現れる敵を、レティシアは光属性、ユノアは地属性、モモアは火属性、リアは雷属性、メルキアは水属性、ロザリアは闇属性の魔法を交えた剣術で打ち払った。
そしてついに、辿り着いた廃校舎。
その前に、静かに立っていたのは…….。
ふわふわの淡いピンク色の巻き髪。
豊満なバスト。
柔らかな微笑みを浮かべているが、目は笑っていない。
七剣姫のリーダー・癒しの巫女 トアだった。
「みなさん、遅いですよ」
落ち着き払った口調で彼女は言った。
「邪魔が多かったものでね」
レティシアが応じる。
トアは小さく笑みを浮かべた。
「さて、この事件……茶番劇の真相を話してもらえませんか?」
メルキアが一歩前に出て、目を細める。
「何を言っているんですか?」
とぼけるようにトアが言う。
「魔族と通じている過激派が学園内で爆破テロを図ったのです。……私はこの旧校舎で戦っていたのですが、みなさんが来るのが遅かったから。私が倒してしまいました」
彼女の足元には、黒ずくめの男が倒れている。
「では、今日はこれで解散としましょう」
「そんな言い訳を信じるとでも?」
メルキアとレティシアが、同時に前に出る。
いつの間にかロザリアは、トアの背後に立っていた。
「トア様、あなたは……この場におられるアルト様を亡き者にしようとしていましたね」
メルキアの声は、冷たく澄み切っていた。
「なんのことやら」
トアは、まったく動じない。
「闇ギルドに依頼しただろう?」
レティシアが問い詰めるが、トアは肩をすくめる。
「どこかにその証拠でも?」
追い詰められているはずのトアが、なぜか微塵も動揺していない。
……どうしてだろう?
「仮に、私がそこのちんけな無能……アルトと言いましたか? その男子生徒を亡き者にしようとしていたとしましょう。……それで? みなさんは、どうするおつもりですか?」
静かな声に、場の空気が凍りつく。
「まさか、私に……たかが六人で挑もうとでも?」
七剣姫のリーダー、それがトア。
その力を、僕はまだよく知らない。
でも、彼女の言葉には、圧倒的な自信と、誇りと、底知れぬ恐ろしさがあった。
「あ、そっか。あなたたちは七人でしたね。無能でも数に入れるなら……ね?」
僕は……数に入ってるらしい。
そのとき、メルキアが耳元でそっと囁いた。
「ご主人様。トア様の目が光った瞬間……お願いします」
……つまり
トアのスキルを奪えと言うことか。
「あなたがたは、私にお仕置きするつもりだったのかもしれませんが……そんなこと『絶対』にできるはずがありません」
トアは余裕を持った表情で僕たちを見渡す。
「なぜなら……私が、七剣姫のリーダーであり、あなたたちはその命令に従う立場だからです」
その瞬間、トアの目が淡く光を帯びる。
―――今だ!
僕は集中し
トアのスキルに意識を向け
……それを奪った。
―――スキル奪取完了。
スキルを発動しようとしていた、トアの体がピクリと揺れた。
「……あれ?」
困惑の声。
スキルが発動しない。
もう一度スキルを使おうとするも、反応がない。
「……おかしい。……どうして」
僕は静かに答えた。
「あんたのスキルは僕が奪った。」
「……な、なんですって!?」
後にメルキアから聞いたことだ。
トアは複数のスキル技を持っている。
・回復魔法
・味方への身体強化
・敵への『弱体化付与』
この『弱体化付与』が非常に強力で、それさえあれば剣姫六人が束になって戦っても勝てないらしい。
だけど……そのスキルは今、僕の手の中にある。
トアはすでに詰んでいた。