※この作品はR-18です。

君が無能くん?魔剣士学園に入学したのに『スキル無し』?ねぇ今どんな気持ち?努力したって報われないのに希望とかあるの?普通の青春を送りたい?あはっ! 無能には無理に決まってるじゃん   作:鳥稲のね

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第63話

「では、廃校舎に向かいましょうか?」

 

 

先に口を開いたのは、隣を歩いていたメルキアだった。

 

いつものように柔らかな微笑みを浮かべたまま。

 

 

「えっ、僕も行くの?」

 

 

僕は思わず聞き返す。

 

 

「当然でしょう。ご主人様も、七剣姫の一人……ですもの」

 

「いやいやいや、ちょっと待って。僕は姫じゃないし、剣聖でもないし」

 

「七剣姫の一人『無能のアルト』……ぷぷっ、ウケる~」

 

 

おいモモア!

 

僕に従ってからでも馬鹿にする稀有な例だぞ!

 

 

「……お前のスキルをまた奪って無能にしてやろうか」

 

「うわ、怖っ!冗談でーす!ごめんなさーい!」

 

 

僕がジト目を向けると、モモアはニヤニヤと笑ってスキップするように前を歩く。

 

その様子に、他の剣姫たちは小さくため息をついた。

 

 

 

和やかなやり取りも束の間のことだった。

 

 

 

廃校舎へ向かう途中……。

 

学園裏道差し掛かった時に、事態は一変した。

 

 

風を裂くように、黒ずくめの集団が物陰から飛び出してきた。

 

 

「敵襲!」

 

 

リアの叫びと同時に、先頭に立っていたレティシアがすかさず抜刀。

 

まるで舞うような動きで、次々と襲い掛かってくる敵を切り伏せていく。

 

斬られた者たちは呻く間もなく地に伏し、やがて静寂が戻った。

 

 

「すごい……」

 

 

僕が思わず呟いたその声に、レティシアが振り返って、少し照れたように微笑む。

 

 

「どうです、アルト殿。惚れ直しましたか?」

 

「……最初からずっと惚れてるよ」

 

 

うっかり口から出てしまったその言葉に、周囲の空気がピタリと止まる。

 

 

「今、なんと言いました?」

 

「……えっ、何も言ってないけど?」

 

 

ジト目でにらみつけてくるリア。

 

そして他の六人も。

 

僕は冷や汗をかきながら視線をそらした。

 

 

その後も何度か奇襲を受けたが、剣姫たちの実力は桁違いだった。

 

次々と現れる敵を、レティシアは光属性、ユノアは地属性、モモアは火属性、リアは雷属性、メルキアは水属性、ロザリアは闇属性の魔法を交えた剣術で打ち払った。

 

 

 

 

そしてついに、辿り着いた廃校舎。

 

 

 

その前に、静かに立っていたのは…….。

 

 

 

ふわふわの淡いピンク色の巻き髪。

 

豊満なバスト。

 

柔らかな微笑みを浮かべているが、目は笑っていない。

 

七剣姫のリーダー・癒しの巫女 トアだった。

 

 

「みなさん、遅いですよ」

 

 

落ち着き払った口調で彼女は言った。

 

 

「邪魔が多かったものでね」

 

 

レティシアが応じる。

 

トアは小さく笑みを浮かべた。

 

 

「さて、この事件……茶番劇の真相を話してもらえませんか?」

 

 

メルキアが一歩前に出て、目を細める。

 

 

「何を言っているんですか?」

 

 

とぼけるようにトアが言う。

 

 

「魔族と通じている過激派が学園内で爆破テロを図ったのです。……私はこの旧校舎で戦っていたのですが、みなさんが来るのが遅かったから。私が倒してしまいました」

 

 

彼女の足元には、黒ずくめの男が倒れている。

 

 

「では、今日はこれで解散としましょう」

 

「そんな言い訳を信じるとでも?」

 

 

メルキアとレティシアが、同時に前に出る。

 

いつの間にかロザリアは、トアの背後に立っていた。

 

 

「トア様、あなたは……この場におられるアルト様を亡き者にしようとしていましたね」

 

 

メルキアの声は、冷たく澄み切っていた。

 

 

「なんのことやら」

 

 

トアは、まったく動じない。

 

 

「闇ギルドに依頼しただろう?」

 

 

レティシアが問い詰めるが、トアは肩をすくめる。

 

 

「どこかにその証拠でも?」

 

 

追い詰められているはずのトアが、なぜか微塵も動揺していない。

 

……どうしてだろう?

 

 

「仮に、私がそこのちんけな無能……アルトと言いましたか? その男子生徒を亡き者にしようとしていたとしましょう。……それで? みなさんは、どうするおつもりですか?」

 

 

静かな声に、場の空気が凍りつく。

 

 

「まさか、私に……たかが六人で挑もうとでも?」

 

 

七剣姫のリーダー、それがトア。

 

その力を、僕はまだよく知らない。

 

でも、彼女の言葉には、圧倒的な自信と、誇りと、底知れぬ恐ろしさがあった。

 

 

「あ、そっか。あなたたちは七人でしたね。無能でも数に入れるなら……ね?」

 

 

僕は……数に入ってるらしい。

 

そのとき、メルキアが耳元でそっと囁いた。

 

 

「ご主人様。トア様の目が光った瞬間……お願いします」

 

 

……つまり

 

トアのスキルを奪えと言うことか。

 

 

「あなたがたは、私にお仕置きするつもりだったのかもしれませんが……そんなこと『絶対』にできるはずがありません」

 

 

トアは余裕を持った表情で僕たちを見渡す。

 

 

「なぜなら……私が、七剣姫のリーダーであり、あなたたちはその命令に従う立場だからです」

 

 

その瞬間、トアの目が淡く光を帯びる。

 

 

 

―――今だ!

 

 

 

僕は集中し

 

 

トアのスキルに意識を向け

 

 

……それを奪った。

 

 

 

―――スキル奪取完了。

 

 

 

スキルを発動しようとしていた、トアの体がピクリと揺れた。

 

 

「……あれ?」

 

 

困惑の声。

 

スキルが発動しない。

 

もう一度スキルを使おうとするも、反応がない。

 

 

 

「……おかしい。……どうして」

 

 

僕は静かに答えた。

 

 

「あんたのスキルは僕が奪った。」

 

「……な、なんですって!?」

 

 

 

後にメルキアから聞いたことだ。

 

 

トアは複数のスキル技を持っている。

 

 

・回復魔法

 

・味方への身体強化

 

・敵への『弱体化付与』

 

 

この『弱体化付与』が非常に強力で、それさえあれば剣姫六人が束になって戦っても勝てないらしい。

 

 

だけど……そのスキルは今、僕の手の中にある。

 

 

 

トアはすでに詰んでいた。

 

 

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