君が無能くん?魔剣士学園に入学したのに『スキル無し』?ねぇ今どんな気持ち?努力したって報われないのに希望とかあるの?普通の青春を送りたい?あはっ! 無能には無理に決まってるじゃん 作:鳥稲のね
トアは速やかに僕の部屋に連行された。
無言で歩く彼女の背中は、あれほど威圧感に満ちていた七剣姫のリーダーとは思えないほど小さく、今にも崩れそうなほど弱々しかった。
部屋に着いた途端、トアはその場にぺたりと膝をつき、俯いたまま小さく震えていた。
そして、しばらくの沈黙のあと……ようやく口を開いた。
「……あの、アルト様。どんな償いでもいたします。ですから……スキルを、返していただけないでしょうか?」
かつての誇り高き姿は、そこにはなかった。
トアは項垂れるようにして僕を見上げ、まるで処罰を待つ囚人のように、震える声で懇願してきた。
けれど、僕が返答するよりも先に、鋭く遮る声が飛んだ。
「それはダメですよ」
横から言い放ったのは、メルキアだった。
その表情は笑みをたたえていたけれど、その目だけは冷たく光っている。
「トアは、私たちが束になっても簡単には抗えないように綿密に計算して動く女です。『弱体化付与』を無力化できる特殊な魔石が唯一の対抗手段なのですが……それを、彼女は自らの管理下にある宝物庫に全て集め、独占しているんです。」
彼女の声には、確かな怒りがにじんでいた。
「もし今、スキルを返したら……すぐに裏切るかもしれません。だから、あの魔石を確保するまでは、絶対にスキルを返してはなりません。これは彼女を許すかどうかの問題ではなく、再び私たちが操られないための最低限の防衛策です」
僕はメルキアの真剣な横顔を見ながら、トアの方に視線を戻した。
「……絶対に、歯向かうような真似はしません。本当です。お願いです。私……アルト様に『癒し』を差し上げたいんです。それで、罪滅ぼしをさせてください……」
声は震えていた。
目の端には涙が浮かんでいる。
「私も『癒し』は使えます。だから、ご主人様。彼女の言葉に耳を貸してはダメです」
メルキアはぴたりと僕の前に立ち、まるで防壁のようにトアとの間に割り込んできた。
「……なんで……どうして……皆して、私をいじめるんですか……?」
トアの肩が震え、涙が一筋、頬を伝った。
「……うっ……ううっ」
嗚咽。
その姿に、さすがに僕も少し同情しそうになったその時……
「嘘泣きだな」
ロザリアの冷静な声。
彼女は壁にもたれながら、腕を組んでトアを睨みつけていた。
その目には、本質を見透かすかのような冷たい光が宿っていた。
「っ……」
トアは顔を伏せ、歯を食いしばった。
―――ウソ泣きだったのかよ……。
部屋の空気がピリつく。
六人の剣姫たちが一斉に僕の周囲に立ちはだかるようにして、トアを取り囲んでいた。
なんだろう、この安心感。
……ちょっと部屋が狭すぎるってのが難点だけど。
僕は、ふと思い立って、みんなに提案してみた。
「とりあえず……みんな、一旦部屋を出て行ってくれない?僕とトアだけにして欲しいんだけど」
「「「「「「いやです」」」」」」
声が完璧に揃った。
一糸乱れぬハーモニー。
あまりの美しさに、一瞬呆気にとられたわ。
「……なんでそんなに揃うの」
僕の抗議にも、誰一人として顔色を変えなかった。
「ご主人様が一人でいると、何されるかわからないので」
「そーそー、また変なフラグ立てるし」
「ある意味、トアよりご主人様のほうが危険かもしれません」
「だから見張ってます」
ああ、うん。ありがとう?
でもちょっと屈辱的だよね。
というか、今からトアに……ちょっとした『癒し』をもらおうかなと思ったんだけど。
回復魔法的な『癒し』じゃなくて、母性を用いた『癒し』というか。
膝枕してもらって
頭をナデナデしてもらって
『よしよし、アルトはえらい子でちゅね~♡』って、やってもらおうと思ってたんだけど。
あ、うん、僕に迷惑をかけた罰としてね。
でも……まさか、六人の前でそれを披露しろというのか。
それはキツイ。
でも……それも仕方ないか。
「……じゃあ……その……トア」
「……はい?」
「オギャらせろ」
「「「「「「「……は?」」」」」」」
全員が絶句した。
でも、もう言ったんだ。
僕は前に進むしかない。
さあ、来い、膝枕!
ナデナデ!
甘やかしの極致、母性の権化、慈愛のトア!
今ここに、赤ちゃんプレイの幕が上がる――ッ!