※この作品はR-18です。

君が無能くん?魔剣士学園に入学したのに『スキル無し』?ねぇ今どんな気持ち?努力したって報われないのに希望とかあるの?普通の青春を送りたい?あはっ! 無能には無理に決まってるじゃん   作:鳥稲のね

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第66話

 

学園一いや……王国一のママみを感じる少女。

 

それが、癒しの巫女トアだった。

 

 

彼女の微笑みひとつ、手を差し伸べる仕草ひとつで、その場が聖域になり、母なる胎内になる。

 

彼女を見ると男子生徒たちの誰もが一度は夢想する……「オギャりたい」と。

 

男子だけではない、女子だってあの豊満な胸に抱かれたいと願う。

 

ある種の願望を完璧に体現する存在。

 

その包容力、慈愛、優しさ、すべてが母性の権化。

 

そして、そのバブみこそが、トアをして七剣姫のリーダーたらしめた……とまで言われるほどだった。

 

王国からは『癒しの聖母』としての称号を与えられそうになったとか。それは噂だけど。

 

 

つまり……え~と……

 

僕は別に『赤ちゃんプレイ』が好きといった性癖の持ち主じゃない。

 

断じて違う。

 

……たぶん。

 

 

だけど、今目の前にいるトアは、柔らかい空気と静かな慈しみをまとう雰囲気で、オギャれるものならオギャってみたい……という夢を実現できるような存在感を放っていた。

 

スキルを奪われた状態でこれなんだから、やっぱり彼女の“ママみ”は生まれ持った才能なんだと思う。

 

そんな彼女に、僕は言った。

 

 

「オギャらせろ」

 

 

その瞬間、部屋に走る沈黙。

 

六人の剣姫が、それぞれ異なる表情でこちらを見ていた。

 

 

「……あの、意味がわからないです」

 

 

トアが困惑した顔で首を傾げる。

 

その様子がまた可愛くて、なんというか……ちょっと、うん、マズい感情が芽生える。

 

 

「まあ、僕を甘やかせろってことかな」

 

「……はあ。具体的には?」

 

 

トアは慎重に聞き返してくる。

 

その声にもバブみを感じてしまう。

 

 

「膝枕して、よしよしして、あと……哺乳瓶でミルクを飲ませてくれたらいい」

 

 

言ってしまった。

 

言葉に出した瞬間、自分でも恥ずかしくなってきた。

 

でも、もう後には引けない。

 

だって僕は、六人の剣姫に見守られながら、癒しの巫女トアを更生させようとしてるんだから。

 

僕は赤ちゃんプレイで、トアは羞恥プレイ。

 

これは、王国の未来のためだ。

 

うん、そうなのだ。

 

 

「……え? いやです。そんな恥ずかしいこと」

 

 

はっきりと拒否された。

 

え? なんで?

 

君、状況分かってる? 

 

自分の立場、理解してる?

 

僕を殺そうと企ててたよね?

 

僕が学園に報告する内容次第で、トアを生かすも殺すもこちらの胸三寸だよ。

 

僕の心証をよくしたいと思わないの?

 

 

「どうする? ロザも意味が分からないが。 アルトのいうことを聞けないというのなら……トアを畑の肥料にしたらいいか?」

 

 

静かに、淡々と。

 

ロザリアが物騒な提案を口にする。

 

 

「そんな蛮族みたいなことしないってば!」

 

 

僕は慌てて止めたけど、ロザリアならやりかねない。

 

何の迷いもなく畑に埋めそう。

 

『死ぬまでここ土を癒し続けろ。でないと殺す』みたいな。

 

いや、マジで。

 

 

「お……お願いですから、畑の肥料にするのだけは許してください……」

 

 

トアの声が震えていた。

 

効いている。

 

脅しが。

 

……いや、やり方としてどうなんだって話だけど、効果は抜群だった。

 

 

トアはしばらく口ごもったあと、静かに僕の前に膝をついた。

 

 

「……あの、じゃあ、膝枕をしたらいいんですね」

 

「うん、お願いします。それで……よしよししてほしい」

 

「……わかりました」

 

「思いつく限り、僕のことを褒めて欲しい」

 

「……善処します」

 

 

トアの膝に頭を乗せた瞬間――ふわりと香る、柔らかなフローラルな香り。

 

それだけで、脳がとろけそうになった。

 

 

優しい手が、僕の髪をなでる。

 

ごしごしじゃない。

 

ふわり、ふわり、羽毛のように柔らかく。

 

そして、耳元で囁くように。

 

 

「よしよし、アルト様……頑張りましたね……えらいです……」

 

 

その声が、僕の脳内に響き渡り、思わず身震いをした。

 

 

これは

 

 

まるで

 

 

A

 

S

 

M

 

R

 

 

 

破壊力がすごい。

 

いや、これ、魔法だろ。

 

むしろ呪いかもしれない。

 

 

「無能と馬鹿にされながら七剣姫全員を従えるなんてすごいです……」

 

 

スキルを奪う力をもらえたおかげに他ならないんだけど……。

 

 

でも、褒められるってこんなにも気持ちがいいんだ。

 

 

もっと耳元でささやいて欲しい。

 

 

もっと僕を肯定して欲しい。

 

 

あぁ、ダメ人間になりそう……。

 

 

 

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