無限城での童磨との戦いで、しのぶは死に瀕していた。身体は袈裟斬りに斬られ、あと数刻もすれば死ぬだろう。残されたしのぶの作戦は一つ。この悪鬼に喰われること。しのぶはこの戦いのために藤の花の毒を自身の体重ほど服用していた。全てはこの鬼を倒すために。鬼も自分を喰う気でいる。これで姉の敵を討てる。全て上手くいく。
だが、
「・・・君、臭うね。」
終始憎らしい笑みを浮かべていた童磨が戦いをやめた。真顔になり何かを嗅いでいる。
(まさか・・・)
「藤の毒を大量に飲んでたりしてないよね?俺に喰われるためにさ。」
「何を言い出すかと思えば。毒が効かないと言ったのは貴様の方だ!それとも怖じ気づいたのか?上弦の鬼ともあろう者が。腑抜けもいいところだな!」
(怒れ!そして私を喰え!無様に崩れて死ね!)
挑発するしのぶ。しかし童磨は冷静だった。
「そうだな、確かめてみようか。例えば」
ドボォッ!
次の瞬間、童磨の拳がしのぶの腹にめり込んでいた。
「がっ!・・・はっ!・・・」
崩れ落ち嘔吐するしのぶ。一撃で内臓の何カ所かが破裂してしまい、吐瀉物に血が混じる。
「あーあー、汚いなぁ。可愛い顔が台無しだよ?」
童磨はしのぶの顎をつまみ、口周りを布で拭く。そしてその布の臭いを嗅ぎ、
「やっぱり昨日今日服用した訳ではないようだね。1年くらいかけて身体にしみこませている。」
「・・・だからどうした臆病者。毒が怖くて女一人喰えんか。フッ、フハハ!」
作戦はばれた。ならば腹を切り内臓でもぶつけてやろうか。少しでも多くの血を奴に与えてやれば、何か効果があるかもしれない。そう思ったしのぶは自分の日輪刀を腹に突き立てようとし、
童磨に止められた。日輪刀を無理矢理手から引き剥がされ遠くに捨てられる。
「あー、駄目だよ死んじゃ。命は大事に、ね。」
先ほどまで自分を喰おうとしていたのに何を言っているんだこいつは。異常すぎて吐き気がする。
「残念だよ、俺は君を喰えない。でも、君には俺と一緒にいてもらいたい。だからね。」
童磨は一瞬しのぶの前から消え失せ、そして、毒々しい血を片手に持って現れた。
「これは無惨様の血だよ。君には鬼になってもらう。」
・・・嫌だ。それだけは嫌だ。しのぶは舌を噛んで死のうとするが童磨に口を固定され。
そのまま無惨の血を口から流し込まれる。
「・・・・ガッ、アァァァァァァァァ!!!」
身体の変化はすぐに訪れた。全身が灼熱のように熱くなる。斬られた傷がみるみる塞がり、手足の指が禍々しく変形し、額から角が生えてくる。
「アハハハハハ!いいねぇ、鬼になっても美しいよ君は!」
「・・・クッ、ウォォォ!」
ズボァッ!
しのぶは鬼になった手で自分の胸をぶち抜く。そして心臓を引きずり出し、童磨の前で握りつぶし大量の血を浴びせる。
「どうだっ!毒の血の味は!貴様が私を鬼にしてくれたおかげで大量に血を浴びせられる!貴様を地獄に道連れにできるなら本望だっ!死ね!死nゴハッ!」
しのぶは吹き飛びはるか後方の壁に叩き付けられる。腹部全体に強烈な痛みを感じ、見てみると太い氷柱がしのぶの腹を貫いていた。
「・・・ふむ、無惨様の血でも藤の毒を中和できていないか。やはり1回全身の血を絞り出す必要があるみたいだね。」
童磨が片手をひねる動作をするとしのぶの腹の氷柱がものすごい勢いで回転し始める。
グジュグジョバキグチャ・・・
「うがぁぁぁぁぁぁっ!!!あっ!あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
しのぶの胴体の肉が凄まじい音を立てて千切れては再生を繰り返す。それに合わせ人間だった頃からは想像もできない獣のような絶叫をあげるしのぶ。その肉体からは血が作り出され続けているのだろうか、華奢なしのぶの肉体には収まりきらない量の血が流れ落ちて大きな血だまりを作る。
やがて限界が来たのかしのぶは首をガクッと落とし磔のまま動かなくなった。
「師範!」
(・・・カナヲ?)
愛する継子の声を聞いて意識を取り戻すしのぶ。そして目で合図をする。
(私を殺しなさい。)
カナヲはしのぶの姿を見て内心動揺していたが、しのぶから「こういう事もありうる。」と教えられてきた。だから指示通り、しのぶの首を斬ろうとし、
童磨に止められた。
「おいおい、君は彼女の弟子なんだろ?駄目だろ、師の首を斬っちゃあ。」
童磨に吹き飛ばされるカナヲ。それを見てしのぶは、
・・・何も感じなくなっていた。
「そろそろ無惨様の血が濃くなってきたみたいだね。」
しのぶの腹を貫いている氷柱を消滅させる童磨。何事も無かったように両足で着地するしのぶ。腹に空いた大穴は急速に小さくなり元通りになっていた。
「あっ、そうだ。俺急に見たくなっちゃった。師弟対決って奴。」
先ほど「師を殺すな」と言ったにもかかわらず、すぐに矛盾した発言をする童磨。しかし、しのぶはその声に応じカナヲへと近づく。
(・・・あぁカナヲ。愛しい子。)
(私を殺しに来てくれる優しい子。)
(・・・あなたはこんなに可愛い悲鳴をあげる子だったのですね。)
(・・・あなたの肉はこんなにも柔らかかったのですね。)
(・・・あぁ、カナヲ。)
(なんて・・・おいしい・・・。)
数分足らずの内に、カナヲの肉体は生きながら解体され、そのほとんどがしのぶに食い尽くされた。
その光景を見て拍手喝采する童磨。
「最高だ!最高だよ君は!」
童磨の声を聞いて振り向くしのぶ。その全身は血まみれである。
「・・・もうすぐ無惨様がお目覚めになる。君の実力なら即上弦に取り立てられるだろう。さぁ鬼狩りを皆殺しに行こう。俺と二人で」
頷くしのぶ。
「君と俺とで永遠の殺戮を楽しもうじゃないか・・・。」
しのぶは血にまみれた顔で美しく微笑んだ。