「コタロー!起きて下さい!コタロー!」
ぷにるの声で目を覚ましたコタロー。しかし周りは暗闇の中。
「え、どうしたんだこれ。俺、家の中で寝てたよな・・・。」
「本当に何処なんでしょうかね、ここ。」
ぷにるにも見当が付かない。しかしぷにるは話を切り替え、
「それよりコタロー。ぼくの変化に気がつきませんか?」
「・・・へ?」
「じゃーん!人間になったかわいいぼくでーす!」
「・・・どこが?」
「全くコタローはニブチンですね!見て下さい、ほら。」
白いジャージのような服をまくり上げるぷにる。その中は青白いスライムボディの筈だったが。
ぷにるの身体は白い肌に幼い腹、そして膨らみかけた胸があった。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!隠せ!隠せ!」
コタローは女性の裸なんて全くと言っていいほど見たことがない。頭がパニックになった。
「ふっふっふ、ぼくのかわいさにドキドキしてますね、コタローの純情ボーイ。」
「そういうのは可愛いって言わねぇよ!恥ずかしいって言うんだよ!」
服を元に戻すぷにる。
「・・・さて、コタローをからかうのはこれくらいにして、本当にここ何処なんでしょうかねぇ?」
「・・・お前・・・」
殴ってやりたいコタローだったが、先ほどの裸が脳裏に焼き付いて手が出せない。それにここが何処なのかも謎だ。アリスの金をかけた悪戯だろうか?
「・・・河合井コタロー。」
どこかから声が聞こえる。と思ったら、自分たちは複数人の影に囲まれていることに気がついた。
影たちが呟く。
「・・・河合井コタロー。お前のせいで、ぷにるは可愛さを失った・・・。存在価値がなくなった・・・。万死に値する。」
影の一人がコタローを思い切り蹴飛ばす。
「ぐぁあっ!」
「コタロー!」
吹き飛ばされるコタローに駆け寄るぷにる。コタローは全身に痛みを感じていた。痛い痛い!これは夢かと思っていたが、夢なんかじゃない!
「・・・河合井コタロー。死ね。」
影が長い刀を取り出す。コタローは恐怖した。こんな突然よくわからない奴らに殺されるのか?嫌だ嫌だ!怖い怖い!助けて雲母先輩!誰でもいいから助けてくれ!
「コタローをいじめないで下さい!ぼくが相手になりますよ!」
ぷにるがコタローの前に大の字になって立ち塞がった。
「・・・そうか、じゃあお前から死ね。可愛さがないお前に価値はない。」
長い刀が振り下ろされ、ぷにるの上着が破れて上半身裸になる。
しかし、ぷにるは少しも恐怖を抱いた様子がない。
「やめろ!ぷにる!殺されるぞ!」
コタローが叫ぶ。しかしぷにるはコタローの方を向き微笑んで
「ぼくが守ってあげますよ、コタロー。ぼくはいつまでもコタローの友達ですから。」と言った。
影たちは刀をしまい、ぷにるに近づいた。
「そうか、じゃあ、・・・せいぜい苦しめ。」
ドボッ!
「・・・がっ!」
影の一人がぷにるの腹を殴った。
「・・・何ですか・・・これ・・・、くる・・・しい・・?こんなこと今まで感じたことない・・・。」
腹を押さえてうずくまるぷにる。全身の震えが止まらない。
「それは痛みというのだ、ぷにる。お前が人間になったから痛みを感じるようになったのだ。苦しいだろう?河合井コタローの命を差し出せ。そうすれば元のスライムに戻してやる。」
影が呟く。しかし、
「・・・駄目です・・・。コタローは渡しません・・・。」
震えながら再び立ち上がるぷにる。
「痛めつけられないとわからないようだな。」
いつのまにか、ぷにるの両側にいた影たちがぷにるの両腕を捕まえひねりあげる。
そして真ん中の影は無防備なぷにるの腹に連続してパンチを繰り出す。
ドズッ!ボズッ!ドゴッ!ドボォ!
「ぐっ!がぁ!ごぼっ!がはぁ!」
ぷにるの肉が軋む音が聞こえ、その度にぷにるの苦悶の声が聞こえる。
「やめろぉぉぉぉぉ!やめてくれぇぇぇぇぇ!」
コタローが泣きながら叫ぶ。しかしぷにるはコタローの方を向き微笑み、
「・・・コタロー。ぼくは丈夫なんですよ・・・?こんなのへっちゃらです。安心しtごはぁっ!」
コタローを安心させるぷにるの言葉が腹への打撃で遮られる。そして、影たちのぷにるへの攻撃は数十分続いた。
「ごほっ!かはっ!う・・・うう・・・」
ぷにるは呻き声と同時に血を吐くようになった。ぷにるの白い胴体は、一面青と黒の痣だらけになっていく。
ベキィ!
影たちはぷにるの幼い胸まで殴るようになった。
「がはぁっ!・・・か・・・・」
ぷにるが本当に人間になったのなら、内臓のいくつかが損傷し、肋骨も折れているはずである。しかし、ぷにるは
「・・・守るんです。ぼくが・・・コタローを・・・、ぼくは・・・どうなってもいいから・・・」
「・・・埒があかないな。」
影たちは殴るのをやめた。そして長い刀を再び取り出し、
「本気で殺すとしよう。」
「やっやめ・・・」
コタローが呟く。それと同時に影の刀がぷにるの腹を貫いた。
ズボォッ!
「がはぁぁぁぁ!!!・・・あ・・・・ああ・・・」
血を吐き、これまでとは比べものにならない痛みに全身を痙攣させるぷにる。
影たちはぷにるの腹を刀で掻き回し、その音がコタローの耳にまで聞こえてくる。
ぐちゃごちゃばきぐしゃ
「あぐ!がはっ!ぐふぅぅぅ!ごぼっ!」
ぷにるは口から血をごぼごぼと吐き出していく。
コタローは恐怖で震えながら考えていた。
(俺、このまま見ているだけでいいのか・・・。)
(ぷにるは、俺のために死のうとしてるんだぞ・・・。)
(ぷにるは、俺にとって大切な・・・大切な・・・。)
コタローは無意識で刀を持った影に体当たりしていた。
影は刀から手を離して倒れる。コタローはその刀で影の身体を突き刺していた。
「・・・ぷにるは・・・ぷにるは、俺が守るんだ!」
刀を持った影は人の形が崩れ消え去った。
コタローはぷにるの両腕をもった影の一人に刀を突き出しながら突進し消失させ、もう一人も刀で切り裂いて消し去った。
もはや立つことができず、倒れるぷにる。そんなぷにるをコタローは抱きかかえて
「しっかりしろ!しっかりしろ、ぷにる!」と叫んでいた。
「・・・コタロー。格好いいじゃ・・・ないですか・・・ゴフッ!」
血を吐くぷにるにコタローは
「ごめんよ・・・ごめんよぷにる!俺が、俺にもっと勇気があれば・・・」
呟くコタローの後ろに影が現れ、
「コタロー!あぶな」
ぷにるの言葉は間に合わず、コタローは背中から胸を刺し抜かれていた。
「・・・コタロー。しっかりして下さい・・・コタロー・・・」
(・・・俺・・・死ぬのかな・・・。それにしても・・・全然痛くない・・・。死ぬ時って・・・こうなのかな・・・)
ぷにるとコタローは向き合うようにして倒れていた。
「・・・ぼく、コタローを守れなかった・・・大好きなのに・・・守れなかった!」
「・・・いいよ・・ぷにる・・・。もういいよ・・・。」
「コタロー・・・」
ぷにるはコタローに這い寄り、抱きしめていた。
「ずっとこうしたかった・・・。でも、ぼく意地っ張りで見栄っ張りだから、・・・できなかった。コタローに・・・嫌われたくなかったから・・・できなかった・・・。」
「・・・嫌うわけ無いだろ、ぷにる・・・」
ぷにるとコタロー、二人はごく自然に、何の前触れもなく、
キスをしていた。
どのくらいの時間唇を重ねていただろうか。
やがて唇を離した2人は
「・・・コタロー、ぼく・・・生まれ変わっても・・・コタローのそばにいたい・・・。」
「・・・ああ・・・俺も・・・」
2人は互いに微笑みながら、瞳を閉じて、
そのまま動かなくなった。
「コタロー!起きて下さい!コタロー!」
ぷにるの声で目を覚ましたコタロー。
(え・・・俺、生きてる・・・)
「ずっとうなされてたんですよ。コタロー!ぼく心配で起きてしまいました!」
ぷにるはいつも寝ている容器からぬるりと身体を出し上半身だけ人間形態になってコタローのベッドに近づいていた。
「・・・お前、人間になったんじゃないの?」
「何を言ってるんですかコタロー。ぼくはずっとかわいいスライムですよ!」
(・・・夢・・・だったのかな・・・)
しかし異様にリアルで怖い夢だった。今でも震えが止まらない。
「コタロー震えていますね。怖い夢でも見たんですか?」
図星を突かれたコタロー。しかし反論する元気もなく頷くだけだった。
「しょうがないですね、コタローの純情ボーイ。」
ぷにるは容器から完全に外に出てそのままコタローのベッドに潜り込み
「コタローが安心して寝られるように手をつないであげます。」
笑顔でそう言った。
コタローは、
「・・・なぁ、ぷにる。お願いがあるんだけど。」
コタローはぷにるを抱きしめていた。
「・・・えっ?」
驚くぷにる。その顔はどんどん赤くなっていく。
「・・・今晩だけ、ずっとこうさせてくれ。」
「・・・仕方が無いですね、コタローの甘えんボーイ・・・」
「・・・なぁぷにる・・・、お前ってこんなに暖かかったんだな・・・」
「ななな、なにを言ってるんですか!突然!本当に大丈夫ですかコタロー。」
コタローは何も答えず眠りについていた。
そんなコタローを見ながら、ぷにるは、
「・・・嬉しかったですよ、コタロー。・・・キス・・・。」
と呟き、ぷにるも眠りについた。