ついに最後の時が来ました。
朝日が昇り、刀を突き立てられた鬼舞辻無惨の身体は燃え、最後に無惨が出した肉の塊も鬼殺隊のみんなが破壊してくれて、肉の塊に飲み込まれた炭治郎君も助け出されて・・・
全て終わったんだなぁって思いました。私の命も。
私は伊黒さんと微笑み合いながら、二度と開かない目を閉じました。
私は目を開けました。二度と開かないはずなのに。
私は何かの研究室の様な所にいました。裸で。
「ようやく目覚めたようだな。半年といったところか。」
聞き覚えのある声がして、そっちの方へ身体を向けると、そこにいたのは豪華な燕尾服を着た炭治郎君でした。
私は慌てて胸を隠して、
「あ、あのね!炭治郎君!私、炭治郎君の事は友達だと思っているけど、こういう事はもっと親しくなってからでないと・・・」
なんて馬鹿な事を言っていました。
でも、何かが違う事に気がつきました。目の前の人は本当に炭治郎君なんだろうか?
「・・・あなた・・・誰?」
炭治郎君の姿をした誰かは怪しく微笑んで
「竈門炭治郎の魂は消滅したよ。私の目の前でね。」
と言いました。
私は本能的に動いていました。動いて炭治郎君の首を握りつぶすつもりで絞めていました。
「・・・・・・・・・・・・・無惨!!」
炭治郎君、いえ、もう彼に失礼です。無惨は、私に首を絞められているにもかかわらず笑みを浮かべていて
「よくわかったな。流石柱だ。」
と言いながら、私の胸を素手で貫きました。その上で掻き回しました。
グチャッ!とかゴキャ!なんていう音をたてて、私の胸はぐちゃぐちゃに掻き回されましたが、私は「ぐぅぅぅぅぅぅぅ!!!」と言い血を口からゴボゴボ流しながら、無惨の首を絞めるのをやめませんでした。
無惨は「お前の命を蘇らせたのは私だ。感謝して貰いたいのだがな。」と私の胸を貫いておきながら、平然と言いました。
そして、無惨は語りました。私が死んだ後の出来事を。
無惨は炭治郎君に自らの血を与え、彼の魂と同居しました。炭治郎君は鬼になり、生き残った柱二人を殺しました。次に彼の友人達を殺しました。最後に禰豆子ちゃんを殺し、その身体を喰ったとき、炭治郎君の魂は自ら消滅を選び、炭治郎君の身体は完全に無惨のものになりました。
「残った鬼狩りを殺すのは簡単だったな。その後、私は産屋敷の跡取りを殺し、抵抗した柱の残りカスを殺し・・・」
「・・・・・・・・・・もう、いいです。聞きたくありません・・・・・・・。」
私は無惨の首を絞めるのをやめていました。
無惨はつまらなそうに私の胸から腕を引き抜くと、私の身体は無惨の前でぺたりと座り込んだ体勢になりました。
私は、
「・・・何故、私は生きてるんですか?今も、胸を貫かれて、こんなに血が出ているのに、何故私は死なないんですか?・・・私は鬼になったんですか?」
と言いました。
無惨は「鬼という出来損ないの生き物と比べられては困るな。私は『新人類』と呼んでいる。日の光で死なない。人を喰いたいという衝動もない。不老不死。それでいて身体機能は人類を遙かに超越している。炭治郎の身体を手にし禰豆子を喰ったとき、私は新人類になった。その時、何故私が千年間生きているのか、その使命を自覚したよ。私は人類を新人類に進化させるために存在しているのだと。そして、私は鬼狩りの死体を検分して新人類適合者の試作品を作る事にした。それがお前だよ、甘露寺蜜璃。」
「えっ・・・・」
「お前は超人的な筋力を持っていた。私はお前に血を与えて蘇らせ、お前の身体能力は鬼だった私の身体能力に並ぶようになった。知能の方はかなり物足りないが・・・、それを矯正する方法はいくらでもある。そして、これから人類の中で適合者を見つけて進化させる。数は、10万人くらいでいいだろう。今、世界は19億人もの人類がいる。多すぎると思わないか?私は新人類が規定数に達したとき、人類を皆殺しにする。出来損ないなど存在しても意味が無いからな。」
私は、自分の使命を、鬼殺隊士としての使命を思い出しました。鬼舞辻無惨を殺す。この生き物はこの世にいてはいけない。無惨は私が自分と同じ力に目覚めたと言った。ならば、無惨を殺せる。差し違えても殺す。もし、私が生き残ったのなら、すぐに自害しよう。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
私は無惨の顔面を掴み部屋の壁に押しつけ、そのまま破壊しました。簡単に壊れました。部屋の外は西洋風の建物でした。私は無惨を振り回しながら建物を破壊しました。簡単に建物は崩れ落ちました。その中で、私は胸の傷がいつの間にか塞がっていることに気がつきました。(あぁ私はもう人ではないんだな・・・)と思いながら、無惨を地面に押しつけ腕を引きちぎり、足を引きちぎり、頭部を潰しました。
無惨は、物凄い勢いで再生し、私の目の前に立ち、
「素晴らしい。」と笑みを浮かべて、私の腹部を突き刺しました。
「ごっ!か・・あう・・・」
「やはり痛みに対する耐性がまだ出来ていないようだな。矯正するとしよう。」
無惨はそう言って私の腹部を掻き回しました。
ぐちゃっごぼっぐぶっぐじゅぶぶぶぶぶ・・・・・
「うがぁっ!あっあぁぁぁぁぁぁぁぁ!ごぶっ!うぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!」
無惨は反対の腕で私の右腕を引き千切りました。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
今度は左腕を引き千切りました。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
私は立っていられなくなり、その場に崩れ落ち、「ぎょぼっ!ぐはっ!」と大量の血を吐きました。
無惨は、私が倒れた事で腹から抜け出た自分の腕についた私の血を美味しそうに舐めながら、倒れた私の両太ももを掴んで、わざと時間をかけて千切りました。
びりびりびり、ぶちぶちぶちと言う音がして、私の両脚は離れました。
「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
私は獣のような声を出して、イモムシのように地面を転げ回りました。
痛すぎて、何も考えられませんでした。
でも、時間がたってだんだん考えられるようになった私は、
「はっはっはっ、はぁはぁはぁ・・・」と荒い息を出しながら、
(・・・私が無惨と同じなら・・・手足を再生することも出来るはず・・・)
と思い、手足が再生するのを思い浮かべました。すると、すぐに私の手足は生えてきました。
その直後に無惨は私の手足を引き千切りました。
「・・・あ・・・・ぐあ・・・、か・・・あう・・・」
もう私には叫ぶ気力も残ってはいませんでした。
無惨は楽しそうに手足のない私の胸や腹を手刀で突き刺し続けました。
「・・・ぐ・・・あふ・・・・・あ・・・あん・・・・」
いやらしく恥ずかしいような声を出していました。そんな声しか出ませんでした。
それから数時間たって、無惨は
「・・・もう限界のようだな。今日の矯正はここまでにしよう。」
と言って立ち去りました。
雨が降ってきました。
私は手足のない状態のまま雨に濡れて、
(・・・みんな・・・ごめんなさい・・・。みんなの敵も討てない・・・。私は隊士失格です・・・。こんな私だけが生き残ってしまいました・・・。ごめんなさい・・・。ごめんなさい・・・。)
そう考えながら、能面のような表情のまま、ただひたすら涙を流していました。
無惨の拷問は毎日続きました。
ある時は、様々な猛毒を投与されました。ある時は、ただひたすらに犯されました。ある時は何時間も炎で焼かれました。ある時は、濃硫酸の浴槽に沈められました。ある時は、様々な銃火器で全身を穴だらけにされました。
私は、最初は無惨を殺そうと抵抗しました。しかし、無惨は私よりも強く、その都度拷問は苛烈さを増していきました。二ヶ月くらいで、私は抵抗をやめました。
数ヶ月たったとき、私は無惨にされるがままの下僕になっていました。
それから長い年月がたち、無惨と私は新人類を増やしながら世界中で陰ながら活動していました。世界は戦争が多くなりました。「やはり人類は愚かだ。」という無惨の言葉に、恥ずかしくも私は同意していました。しかし、人類が開発する兵器は無惨を喜ばせました。
特に原子爆弾、核兵器と呼ばれる兵器に無惨は夢中になりました。
ある時、無惨は私を街中に立たせ、私に原子爆弾を落としました。
私は激しい光の中、全身が塵になっていくのを感じながら、(・・・あぁ・・・、ようやく解放されるんだ・・・。)と久しく感じていなかった喜びを噛みしめていました。
私は死にませんでした。すぐに再生し元通りになりました。
私は虚ろな表情のまま、ほとんど何もなくなった地表を歩きました。焼け焦げて壁に影だけが残った人、煤だらけになったのにまだ死ねず苦しんでいる人、全身がドロドロに溶けて苦しんでいる人達を見て、私は、死ぬ事に喜びを感じていた自分を恥じました。地獄に落ちればいいと何十年ぶりに泣きました。泣き崩れました。そんな私の手を取る人がいました。
無惨でした。満面の笑みを浮かべて。
無惨は新人類達を集めて「核の力を血鬼術の様に新人類の力だけで出せるようにしたい。それが実現したとき、人類はもう不要となる。」と宣言しました。私は、新人類達がその宣言に盛り上がっている中で、凍り付いた表情でその様子を見つめていました。その研究はすぐに進められ、数年後には私を含めて新人類が核の力を行使できるようになりました。
そして、地球上から人類は数年足らずで滅ぼされました。
次に無惨は宇宙に興味を向けました。「地球に人類が誕生したように、宇宙の星々の中に同じ知的生命がいるはずだ。それらに会いたい、支配したい。何年かかってもいい。我々には無限の時間があるのだから。」と言いました。
私は、夜空に輝く星々に願いました。どうか、私たちより強い生命がいて欲しい。そして、私たちを滅ぼして欲しい。私を地獄の底に叩き落として欲しい、と。