薫子と凛太郎が恋人として付き合い、2人とも卒業後の進路を決めた頃のこと。
薫子は、学校の帰りに凛太郎の家であるケーキ店「Patisserie Noisette」を訪れようとしていた。
店には「CLOSED」の看板が掲げてあった。今日は休店日なのは知っていた。
でも、明かりがない。
何かがおかしいと薫子は店内に入る。
(・・・誰も、いない?)
しかし、店内の臭いから、そうではないことを察知する。
血の臭い。
薫子はすぐに「逃げたい」と思った。店の雰囲気は薫子の嫌いなホラー映画のそれと酷似していたから。でも逃げたくなかった。ここは大切な人たちの家だから。それに自分は、これから命を救う仕事に就くんだ。もし、凛太郎くんの家の誰かが病気か何かで倒れていたら救わなければならない。逃げちゃダメだ。
店のカウンターの中に入り、調理場をのぞくと、凛太郎の父と母が血まみれで倒れていた。
薫子は涙が出るのをこらえて、2人の脈と呼吸を確認する。2人とも脈も呼吸も停止していた。しかしまだ身体は温かい。救急車を呼べば蘇生措置を受けて助かるかもしれない。
薫子は電話をかけようとスマホを取り出し、
見知らぬ巨大な腕にはたき落とされた。
後ろを振り返ると大きな男が2人立っていた。薫子は安否確認に夢中で男達が近づいていることに気がつかなかった。
薫子は男の一人に無造作に髪を掴まれ引っ張り上げられる。無理矢理立たされた薫子は、
「嫌、離してください!離して!」と抵抗する。
ドガッ!
「かはっ!」
薫子は腹を殴られた。それと同時に掴まれていた髪を離され、薫子は腹を押さえてうずくまる。今まで感じたことのない痛みだった。呼吸が出来ない。吐き気がする。しかし、今はそんなことはどうでも良かった。電話をしなければ、助けを呼ばなければ。薫子は、後ろを振り向き、自分のスマホを見つけた。それを取ろうと飛び出していく所を
男に腹を蹴られた。
調理台まで吹き飛ばされる薫子。全身が痛い。でも、それよりも助けを。
そう考えながら這いつくばって動こうとする薫子の髪を男が再び引っ張り上げる。
再び立たされた薫子は、男と目が合う。にやついた笑顔。薫子は無意識のうちに男を睨んでいた。そんな薫子の腹を男は数回殴りつける。
ドボッ!ドグッ!グチャ!
「うぐっ!あぐっ!おえぇぇぇぇ・・・あ・・・ああ・・・。」
薫子は苦悶の声を出し、嘔吐しながら、自分の意識が急速に闇に閉ざされていくのを感じていた。
(・・・気を失ってはダメ・・・凛太郎くんのご両親を助け・・・ないと・・・、たす・・け・・。)
男が再び薫子の髪を離すと、薫子は真正面に倒れ、動かなくなった。
薫子が目を覚ましたのは凛太郎の部屋だった。
目を覚ました直後にもかかわらず、薫子の頭は冴えていて、周囲を分析していた。
周囲にはガラの悪い男が4人。そのうち2人は厨房で出会った男だった。
自分は、手足を紐で縛られていて、下着姿にされていた。
しかし、薫子に恥ずかしさはなかった。それよりも確認しなければならないことがある。
薫子は、自分でも信じられないほど冷静に男達に質問した。
「・・・紬さん達を殺したのは、あなたたちですか・・・。」
4人の中の1人が回答する。
「ん?ああ、そうだよ。」さも当然のような返事。
薫子の頭は一気に怒りで沸騰した。
「何故こんなことをしたんですか!何故!何故!!」
男の一人が下卑た笑いを浮かべながら口を開いた。
「お嬢ちゃん、大人しそうな見た目の割に気が強いねぇ。それに小柄なのに胸がデケぇ。なぁ兄貴ヤっちまおうぜ!なぁ!」
「黙ってろ!こっちは全員片付けたつもりなのに、1人増えてどうしようか上と相談してる所なんだからよ!」
最初に口を開いた男が静止する。どうやらこいつがグループのリーダーらしい。
「お嬢ちゃんの質問に答えてやろう。お嬢ちゃん、制服からして桔梗女子高の学生だろ?頭いいらしいなぁ、あそこの学生。ならわかるよな、地上げって意味。」
「地上げ・・・。」
「ここら一帯をある施設にするために店を立ち退いて貰うよう、ここの店主と交渉してたんだよ。俺達みたいなのに依頼するって事はヤバい施設なんだろうが・・・、もちろん金はちゃんと払うつもりだったよ?でも、店主は頑固に拒み続けた。だから殺した。夫婦ともな。遺体はバラして捨てて店を燃やして、土地とかの権利書は偽造して・・・。お嬢ちゃん、聞いてるか?」
(・・・そんなことのために!)
薫子は生まれて初めて抱く殺意で頭がいっぱいだった。殺してやりたい。殺してやりたい。
「聞いてんのかって言ってんだよ、オラ!」
ドボォッ!
薫子の腹をリーダーの男が思いきり踏んだ。
「がはぁぁぁぁ!・・・あ・・・・か・・・・。」
激痛に身をよじらせる薫子。しかし思考はまだしっかりしていて、
(大声を出せば周囲の人が来てくれるかもしれない・・・。)
「いやaぐはぁっ!おえぇっ!がはっ!くはぁ・・・。」
再び腹を踏まれた。薫子は嘔吐したが、もう胃液しか出ず、内臓を損傷したのかその中に血が混じっていた。
「あぁ大声出しても無駄だぞ。ここら周辺の住人には明日まで『退去』してもらったから。」
それを見て先ほど薫子を犯そうと提案していた男が、
「・・・兄貴。やり過ぎると死んじまいますよ。もったいねぇ。」
と言い、リーダーの男は
「あ、そうだったな。こいつを売り飛ばすか上が決めてる途中だった。運が良ければ一人だけ生き残れるぜ、お嬢ちゃん。」
(・・・一人だけ?)
そうだ、もう凛太郎くんが帰ってきている筈なんだ。
「・・・凛太郎くんは・・・、紬さんの、息子さんはどうしたんですか・・・。」
「・・・ああ、これ?」
リーダーの男は指をくいっと扉の外を指した。男2人がその合図で外に出て行って、
ズタボロになった凛太郎を引きずってきた。
「・・・ああ・・・ああああ・・・。」
頭の中が一気に真っ白になっていく薫子。
「こいつが、一番抵抗したなぁ。元不良とかいう噂だったし。だから金属バットで全身を叩き潰して、両手両脚をぐしゃぐしゃにへし折って・・・。でも、まだ死んでねぇんだよこいつ。」
薫子は必死になって落ち着きを取り戻し、遠くから倒れている凛太郎の様子を必死に観察する。こひゅー、こひゅーという呼吸音がわずかに聞こえる。凛太郎くんは生きている。まだ助けられる。
助けられるなら、自分はどうなってもいいから。
「・・・提案があります。」
「あ?」
「・・・私を売り飛ばすと言ってましたよね。それって、私に商品価値があるって事ですよね。なら私は凛太郎くんの分まで稼ぎます。だから凛太郎くんを助けてください。」
リーダーの男は、プッと吹き出し
「あー、お嬢ちゃんコイツの彼女ってことね。でも、アンタ処女だろ。こういう身売りの商売で処女が好きな買い手はいるが、多くは処女より見た目とテクニックだ。アンタは見た目は上玉だがテクがあるようには、」
「・・・なら確かめてみたらどうですか?」
薫子は自分でも信じられないことを言った。
「・・・それに、もし凛太郎くんを殺して私を売ったなら、私はあなたたちを許さない。その買い手を殺します。そうしたらあなたたちの信用はガタ落ちですよね。うふふ、はは、あははは!」
「テメェ・・・。」
リーダーの男は明らかにキレて部下の男達に
「こいつを犯れ。」と命じた。
薫子を拘束していた紐が切られ、下着が引きちぎられ、乳房と陰部が露わになる。特に陰部はわずかな毛が生えているだけで見事なピンクの一本筋だった。
「おいおい、見事にオボコだぜコイツ。こんなわかりやすいモン見たことねぇよ!」
男達が驚喜する。薫子は恥ずかしくて堪らなかった。しかし、凛太郎を助けるためにはこの男達を喜ばせる以外にない。
「それじゃあ。」
男が前戯もなしにいきなり挿入してきた。激しい痛み。今まで感じたことのない異物感。「ぐっ!うううぅ・・・つうぅぅぅぅ・・・。」薫子は上半身をのけぞらせて痛みをこらえる。陰部から血が流れる。
「オラもっと動けよ。腰を振るんだよ、オラ!」男はそう言いながらペニスを出し入れする。
薫子は医学部を目指していたが、セックスの仕方についてはまるで知らなかった。自慰すらしたことがなかった。凛太郎の事を考えて、乳房や陰部が熱くなるのを感じたことは何度もあったが、凛太郎に対して失礼だと理性で我慢していた。
痛い。気持ち悪い。でも、自分が犯されなければ凛太郎くんが殺される。
そして自分は売られて犯され続けなければならない。しかも相手を満足させなければならない。凛太郎くんを守るために。
どうすればいい?性知識も何もない自分が、どうすれば好きでもない男を満足させられる?
(・・・そうだ・・・凛太郎くんとセックスしていると考えればいいんだ・・・。)
薫子は男達に犯されていると言う事実を頭から除外して、凛太郎を気持ちよくさせたいと思考を切り替えた。薫子は、自分はもう狂い始めてるかもしれないなと思った。
薫子は腰をゆさゆさ振りながら
(下腹部に力を入れて、包み込むのをイメージすれば・・・いいのかな・・・。)
やってみた。元から快感なんて感じてない。ただ男達が、いや凛太郎が自分に夢中になればそれでいい。
「うぉ・・・すげぇぜこいつ。締め付けがスゲぇしヌルヌルだし最高だ・・・。」
「おい、膣内に出すんじゃねぇぞ。後で俺達もやるんだからな。精液まみれのマンコなんて入れたくねぇ。」
「わーったよ。」
男が無理矢理ペニスを抜く。そしてそそり立ったペニスを薫子の顔に近づけ、
「舐めて気持ちよくしろ。顔に出してやるから。」
薫子は男の言っていることが理解できなかったが、とりあえずペニスを舐めればいいことはわかった。
初めは上目遣いに、男の顔を見ながらチロチロと舐めていた。男は全然気持ちよさそうじゃない。
(ペニスに血管が走ってる・・・。多分ここの付近に神経が通っているから、ここを舐めれば。それと、もっとゆっくりと舌を這わせれば凛太郎くんは気持ちよくなってくれるのかな・・・。)
ペニスをゆっくりと舐める薫子。相変わらず上目遣いで。薫子は気がついていなかったが、目つきが変わっていた。非常に淫靡な目つきだった。
「うぉっ出るっ!」男のペニスから精液が発射され、薫子の顔面が精液まみれになる。
(・・・良かった・・・気持ちよくなってくれたんだ・・・。凛太郎くん・・・。)
精液まみれで微笑む薫子。それに気持ち悪さを感じたのは精液を出した男の方だった。
「おい、こいつ、さっきからおかしくねぇか?」
「構わねぇよ。次はオレだ。」
次の男はまずタオルを差し出してきた。顔を拭けと言うことだろうか?顔を拭くと、男は薫子の胸を揉んできた。
「・・・ん・・・く・・・んん・・。」
男は薫子の乳首をつまんできた。
「くぅ!はぅ!はぁん!あはぁ!」
「オイオイ随分淫乱になってきたじゃねぇか、お嬢様よぉ。」
男は薫子の胸を散々揉みしだいた後、やはり無遠慮に薫子の陰部に挿入してきた。
「んく!はぁ!あ・・・はぁ・・・!」
嬌声を上げる薫子。もちろんその思考は「凛太郎に挿入されている。」という風に切り替えている。
しかし、男は凛太郎が絶対にしないことをしてきた。
男は薫子の首を絞め始めた。
「・・・かひゅ・・・、が!・・・かはっ!・・・くぁ!」
「おぉ締め付けが強くなってきた!」
(なんで・・・私を殺そうとしてる?・・・私、何かを間違えた・・・?)
薫子は必死で思考を巡らせる。しかし性知識に疎い薫子が、こんなアブノーマルなプレイの意味にたどり着くはずがなかった。
だから、もっと深く狂気に溺れることにした。
「・・・もっと、絞めて下さい・・・。気持ちいいん・・・ですよね・・・?もっと・・・。」
この発言は男を苛立たせた。何だこの女。イカれてんのか?
「じゃあもっとキツくしてやるよ!」
男は薫子の首を更に強く絞めてきた。
「ぐ・・・が・・・・あ・・・・か・・・・。」
「・・・おい、やめろ。まだそいつ殺していいかわかんねぇんだからよ。・・・それ、さっきテメェが言ったことだろ。」
リーダーの男の声だった。首を絞めていた男は慌てて手を離す。ペニスも抜いていた。
「げふっ!ごほごほごほ!はぁー、はぁはぁはぁ・・・・。」
首を絞められていた苦しみから解放されて息を整える薫子。
「わかったよ、お嬢ちゃん。あんたは十分ヤバい。彼氏のためにここまで出来るとはな。」
リーダーの男はため息をついて言った。
(これって私に商品価値があるって事なのかな?良かった・・・。凛太郎くん助かるよ!
私の人生はここまでだけど、凛太郎くんはパティシエになって多くの人を幸せにしてね・・・。)
薫子が心の底から喜んだとき、リーダーの男のスマホが鳴った。
「はいもしもし、はい。はい。」
薫子は緊張した。でも大丈夫だ。自分は売られるんだ。凛太郎くんは助かるんだ。
「・・・わかりました。はい。」
リーダーの男の通話が終わり、薫子に顔を向けた。
「アンタの処遇が決まった。『消せ』ってよ。」
「・・・・・えっ?」
リーダーの男が話し始めた。
「正直、俺が考えてた以上にこの案件はデカイ物らしい。まぁ俺達も内容知ったら消されるから知らねぇんだけどな?とにかく証拠はもみ消せるが証人は一人たりとも生かしておけない。で、アンタは和栗薫子っていうんだって?桔梗女子高に通っているが、あんたは富裕層でもない普通の家庭だ。どこかにコネも無い。消えても問題は無い。
と、いうことで仲良く死んでくれや。彼氏と一緒に。」
「・・・そ・・・そんな・・・。」
今まで自分は何のために耐えてきたのだろう。レイプされて、狂気に身を任せて、耐えてきたのに。
薫子が絶望感に包まれてる中、男達は動いていた。部下の男達、特に一人だけ薫子を犯していない男は不満そうだったが、決定が決まった今、動くのは早かった。
男達はいったん部屋の外に出ると、遺体解体に使うであろうチェーンソーを持ってきた。
そして、チェーンソーを動かしながら凛太郎の首にその刃先を当て、
「・・・!やめt」
薫子が言葉を発する間もなく凛太郎の首は切断されていた。
「あっ・・・・・・・・、いや、嫌、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
絶叫する薫子。守れなかった。凛太郎くんを守れなかった。
薫子の中にドス黒い感情が渦巻く。殺してやる。一人でもいいから。
薫子はリーダーの男に狙いを定めた。こいつの喉笛に喰らいついてやろう。
薫子が飛びかかった。
しかし、女性で、しかも小柄な薫子にそんなことが出来るはずもなかった。
リーダーの男に噛みつく前に他の男達に羽交い締めにされた。
「離して!殺してやる!殺してやる!」
鬼気迫る表情の薫子にリーダーの男は
「あっぶねぇなぁ。・・・正直さぁ、カチンときたよ。」
そしてリーダーの男は部下に指示した。
2人の部下に薫子の両腕は引っ張られ、もう1人の部下がチェーンソーを持って、むき出しになった薫子の腹に狙いを定め、突き刺した。
グジュグジュグジュグチョバキグボ
「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!あっ!あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
チェーンソーの刃は薫子の柔らかい腹を簡単に切り裂き、内臓を掻き回し、あっという間に背中まで貫通した。
「ごはぁ!ぐぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!!」
大量の血を口から吐く薫子。しかし、その目はまだリーダーの男を睨んでいた。
おびただしい血が薫子の体内から流れ出る。薫子は立っていられなくなり、足先から身体が崩れるように落ちていく。
必然的にチェーンソーの刃は薫子の腹から上部、肋骨、乳房や肺を切り裂いていき、薫子の脳に新たな激痛が加わる。
「ごふっ!ぐはっ!・・・・がふっ!・・・あ・・・。」
男を睨んでいた薫子だったが、もはや表情を維持することも出来なくなってきた。
(・・・私・・・終わりなんだ・・・。凛太郎くん・・・悔しいよ・・・。)
自然と涙が出てきた薫子。そしてその頭部は支える力を失い、徐々に前に下がっていく。
(・・・目が、見えなくなってきた・・・。私・・・死ぬんだね・・・。)
薫子は呻き声も出せなくなっていた。ただチェーンソーが、薫子の肉体を切り刻む音だけが聞こえていた。
(・・・天国ってあるのかな?・・・もう一度・・・逢いたいよ・・・。)
男がチェーンソーを引き抜き、停止させる。薫子のか細い呼吸音だけが聞こえ、
(・・・りん・・・・た・・・ろ・・・う・・・くん・・・・。)
その思いを最後に、薫子の呼吸音は途絶え、完全に動かなくなった。
その後、
紬家は全焼し、紬一家と薫子は消息不明となった。ニュースでもわずかに語られただけでマスコミも口を閉ざしていた。
凛太郎の兄、颯太郎も同時期に消息不明となり、そちらについてもほぼ語られることはなかった。
薫子の家族、凛太郎と薫子の友人達は必死になって捜索した。それこそ生涯をかけて。
しかし薫子達の消息を知ることはなかった。
その方が、彼らにとって幸せだったかもしれない。
薫子達がバラバラに解体され、ゴミのように処分されたという事実を知るよりは。