この作品はpixiv様にも掲載しています。
世界的なパンデミックの影響で三年ぶりとなった里帰り。
東京から新幹線と電車を乗り継ぎ、二時間に一本しかない鈍行列車に揺られていると、山裾に広がるのどかな田園風景が車窓に映りはじめた。
収穫直前のたわわに実った稲穂が金色の波のようにそよいでいる。その水田の向こう側ではいくつかの家々がゆっくりと流れていき、しばらくすると少し離れたところにある林の手前に、古ぼけた朱色の鳥居がポツンと小さく見えた。
その光景は里帰りの折に郷愁を誘うとともに、記憶の奥底からいま思えば空恐ろしく、そしてほろ苦くも甘い少年時代の記憶を甦らせるのが常だった。
俺の生まれ故郷は本当の田舎で、若い人は進学とか就職を機に出ていってそのまま戻ってこないから、子どもがほんとんどいなかった。
一応、兄貴がいるものの、年齢が結構離れてる上に部活であまり家にいることがなかったから、俺の遊び相手はもっぱら近所に住む同い年の井山夏希だった。
夏希はマジメだけど少し勝ち気な性格で、俺がいちいち反発するものだからしょっちゅうケンカになっていた。ただ、次の日にはまるで何事もなかったようにふたりして田んぼとか野山を駆け回っていたのを憶えている。
あれは5歳くらいのことだったと思う。
アニメを観ようということになって、俺達はDVDを手に兄貴の部屋に向かった。ゲーム機で再生できるのは知っていたんだけどその方法まではわからなくて、試行錯誤しているうちに入れっぱなしになっていたアダルトDVDが再生されてしまったんだ。
俺と夏希は男が女の豊満な胸にかぶりついているのを意味もわからないまましばらく眺め、なぜそんなことをしようと思ったのかわからないけど真似してみようという流れになった。
Tシャツがめくられて露わになった平らな胸に鼻をくっつけて乳首に唇を押し当てる。夏希はくすぐったそうにして笑いだし、俺もつられて笑い出した。
何がそんなに楽しかったのかは今となってはまったく思い出せないけど、その自分たちにもよくわかっていない"ごっこ遊び“は翌日以降も繰り返され、小学校に入学しても続いていた。
ただ、幼いながらになんとなく他人に見られるのはまずい気がしてふたりだけの秘密の遊びとなり、それがかえって妙な高揚感を生んでいたように感じる。
ほとんどは俺か夏希の部屋で、時には通学路にある生い茂った背の高いススキの中や夏になると飛び込む川に架けられた橋の袂、放課後の教室、体育館の陰で、夏希は何の抵抗もなく胸を晒し、俺は特にやましい気持ちもなく、ただなんとなく好きで習慣的に乳首を吸っていた。
学校には他に同級生はおろか他学年の児童もいなかったから、幸か不幸か誰にも見つかることはなかった。
さすがに高学年になると自分達のしていることの異常さには薄々気付いていた。それでも俺がやめなかったのは、女性的な丸みを帯び、胸から乳房へと成長し始めた双つのふくらみの虜になっていたからだ。
以前は乳首をついばむだけだったのが、その頃には乳輪周辺の房肉ごと唇ではむことができるようになっていた。
夏希はスポーツブラをつけるようになってからは前みたいに自分から進んで胸をはだけさせることはなくなっていたけど、吸われるのは嫌いではないみたいだった。
乳首を吸うと最初はくすぐったそうにしながらも笑いだすことはなく、むしろ恥ずかしそうに頬を染めて、どこか恍惚としているように見えた。
ある時から、乳首を吸い続けると夏希はそわそわと肢体をくねらせて漏れ出る声を手の甲で必死に抑えた末に、ビクンビクンと唐突に震えだすことがあった。その時はわからなかったけど、夏希は乳首で達していたんだ。
普段とは異なる小さく艶めかしい声と達したあとの脱力した表情に、俺は言いようのない興奮を覚えていた。
それを見たくて夢中で乳首を吸うようになったんだけど、あまりしつこすぎると痛いと怒られるので、俺は夏休みの自由研究でもするみたいに夏希の好きな乳首の触れ方をあれこれと試行錯誤して模索し、その結果オーガズムに達する頻度は増えていった。
“ごっこ遊び"は肉体と精神の成長とともに本来の意味合いを帯び始めていたけど、その正体についてはまだ判然としないまま、危うさを孕みつつ継続されることとなった。
さすがにケンカした日は吸わせてくれなかったけど、ルーティーンと言ってもいいほど夏希の乳首を吸う日々は続いていった。
中学に進学する前年に近隣の過疎地にあるいくつかの学校が統合されることになって、俺と夏希は自転車で最寄り駅まで向かい、五つ先の駅にある中学校へと電車で通うことになった。
登校初日は衝撃を受けたのを憶えている。なにせ、それまで教室ではずっと二人きりだったから、同じ制服を着た同級生が三十人もいることに面食らってしまったんだ。
クラスが別々になり、それぞれに新しい友人が出来た。俺はクラスメートに誘われてサッカー部に、足の速い夏希は陸上部に入部した。
生活環境が一変したことで俺達が一緒にいる時間はめっきり減ったけど、それでも週に一回は夏希が俺の部屋に遊びに来る形で密会は続けられていた。
夏になると顔とか腕は日焼けしているのに、シャツをたくし上げて露わになった胸は雪のように白くて印象的だった。
部活でかいた汗を気にしてか、俺の部屋に来る前に必ずシャワーを浴びるようになっていて、胸に顔を近付けるとシャンプーのいい香りが鼻腔をくすぐり、俺をいつもたまらなくさせた。
股間がパンパンになっているのを悟られないようにしながら早熟のふくらみにしゃぶりつき、乳首を口に含む。夏希の唇から漏れ出る儚い声に俺はますます滾っていった。
このまま押し倒したら、夏希はどんな反応をするのだろう…
ある時からそんなことを思うようになっていた。
その頃には就職のために家を出た兄貴が残していったAVで、乳首を吸うことはただの前戯に過ぎずその先があること、股間の膨張する意味やその使い方をすでに知っていた。
夏希が乳首を吸われてよがると俺は衝動的に襲い掛かりたくなり、夏希もそれを望んでいるんじゃないかとさえ思っていた。
ただ、夏希は達した後、急に冷静になって勃起した乳首を隠すように服を降ろしてそそくさと帰ってしまうので、俺は仕方なく自分で溜まったエネルギーを放出させていた。
夏希は遊びには来るけど、乳首を吸わせることには次第に消極的になっていった。俺ががっつくと怒って帰ってしまうことも多々あった。たぶん、俺たちの関係性に疑問とか不満を抱き始めていたんだと思う。
ただ、夏希よりもずっと精神的にガキだった俺は乳首を吸うことばかり考えていて、夏希の内面の変化には気付けていなかった。
転機になったのは中二の梅雨の時期のことだった。
夜、いつものように夏希が俺の部屋に訪れ、他愛もない話をした後にそろそろ乳首を吸わせてもらおうと俺は夏希の隣に座った。だけど、夏希はなかなかシャツを捲りあげようとしない。痺れを切らしてやんわりと促すと、夏希は床を見ながら口を開いた。
「......さっき、橋本先輩に告られた」
中学に入るまで比較対象がいなかったから気付かなかったんだけど、夏希は目鼻立ちが整っている方で、けっこう可愛い部類に入る顔をしていた。
急激に肉体が成熟しはじめたようで、背はすらりと伸び手足も長い。おまけに胸は巨乳と言っても差し支えないサイズになっていた。
多感な時期の男子中学生が意識しないわけもなく、俺のクラスでも人気があった。俺はそんな夏希の乳首を吸えることに秘かに優越感を抱いていた。
「橋本先輩って?」
「陸上部の、部長...…けっこう女子に人気あるんだよ」
「そうなんだ」
そう答えると夏希は顔を上げて俺を見た。瞳に少し怒気がこもっていて、俺はその理由を探ろうと見つめ返した。
「そうなんだって......今の聞いて何も思わないの...?」
何について話しているのかわからなくて、俺は答えあぐねた。
そんな俺を問い詰めるように、夏希が続ける。
「私のこと、どう思ってるの...…?」
「どうって......」
怒気の込められていた瞳がかすかに潤み始めた。
「………好きじゃないの、私のこと…?」
その問いかけはまるで別の言語で言われたかのようで、脳がその意味を理解するのに多少の時間を要した。そして、それを理解した途端、ある種の衝撃が俺の内部に生まれていた。
俺は子供の時から長い時間を共有して数えきれないほど乳首を吸ってきた夏希を、女の子と認識しながらも女の子として意識していなかった。乳首を吸わせてくれる仲のよい友達くらいにしか思っていなかったんだ。
それはあまりにも身近すぎたからかもしれないし、幼少の時から乳首を吸っていたという異常な環境が恋愛感情よりも先に肉欲を芽生えさせた結果からかもしれない。
俺は夏希を好きなのか......?しょっちゅうケンカをするから相性は悪いよな......ただ、ひとつ言えるのはおっぱいは大好きということだ。でも、他の女の子がおっぱいを差し出してくれたら、俺は喜んで吸うだろう...
短い間に思考が目まぐるしく回転する。
ただ結局のところ、あの時の俺は本当にガキで、どうしようもないバカであり、自分の思ったことを率直に言うことしか出来なかった。
「..........わからない」
そう答えると、夏希は静かに立ち上がってそのまま部屋を出ていった。
その日以来、夏希が俺の部屋を訪れることは無くなった。それどころか、駅とか学校で話しかけても無視されるようになっていた。俺はその理由がわからず、腹が立って同様に無視しはじめた。
ただ、夏希の乳首はどうしようもなく吸いたくてたまらなかった。それまで何年も続いていた習慣が突然途絶えたことで禁断症状が起きたように苛ついてしまい、フラストレーションが溜まる一方だった。
仕方なく、乳首を吸って夏希が達するのを思い出しながら、毎晩鬱積したエネルギーを自分で何度も抜いていた。
そんな日々が二カ月くらい続いて、学校は夏休みに入った。
八月初週に車で一時間くらい行ったところで花火大会があって、俺は毎年、俺と夏希の家族のみんなで出かけてたんだけど、その年は一緒に行く気にはならなくて部活の友人たちと行く約束をしていた。
会場で落ち合って買い食いしながらブラブラしていると、人垣の隙間から白地の浴衣に赤い帯を巻いた夏希と背の高い男子が連れ立って歩いているのがたまたま見えた。
直感的に、陸上部の部長だとわかった。時折見える夏希の横顔は眩しいくらいの笑顔だった。
......なんだよ、あいつ。俺にはそんな顔しないくせに…
急激に暗い感情が胸の中に渦巻き始めた時、部長が夏希の肩にそっと手をまわすのが垣間見えた。俺はその時になってようやく、夏希は自分に愛想を尽かして先輩と付き合っていたんだと理解した。
それからは何を食べても味がわからなくて、何を見てもなんの感慨も浮かばなかった。夏希が他の男と付き合っているのがとにかくショックで、それどころではなかったんだ。
俺は友人達に気分が悪いから先に帰ると伝えて、自転車置き場へと向かった。
ひとりになると急激に寂寥感と後悔の念が押し寄せてきて涙が出そうになった。俺はやっと自分の本心に気付いたんだけど、それはあまりに遅すぎたんだ。
あの先輩が夏希の乳首を吸っているのかと思うと吐き気がしてブチのめしたくなる。だけど、一番ブチのめしてやりたいのは自分自身だ。そのうち、夏希が機嫌を直して俺の家に乳首を吸われに来るものだと勝手に思い込んでいたんだ。
半ば放心状態のまま自転車に乗っていると、打ち上げられた花火が林の上に見えた。きっと、今頃夏希は先輩と見上げているのだろう......そう思うと感情がぐちゃくちゃになって、衝動のままにペダルをこいだ。
むせ返りそうなほど濃い夏草の匂いが立ち込める農道。夜露に濡れた細い葉に容赦なく顔や腕を叩かれながら疾走し、家に着くなりそのまま自室に向かってベッドに倒れ込んだ。
それからの俺は完全な腑抜けになってしまった。
部活の練習ではセンタリングであがったボールを顔面に受けて鼻血を出し、帰り道では何度か田んぼの側溝に自転車ごと落ちた。
周囲の人間は元気が取り柄の俺が一変したことを心配してくれたけど、俺はその理由を誰にも話せずに悶々とした日々を送り続けた。夏希の乳首を吸えないことよりも、直接会って話をできないことの方がずっと苦しかった。
このままだと本当に頭がおかしくなる…
自分勝手ではあるんだけど、次第にこのモヤモヤした気持ちを夏希にぶつけたいと思うようになっていた。対面して思い切りビンタされた方がまだ気持ちの整理ができると考えていたんだ。
夏休み最終日の前日、携帯電話のメール作成画面と長いことにらみ合いを続けて、窓から片手を出して送信した。
当時はWiFiなんてものはなく、俺の家はほとんどが圏外だったんだけど、なぜかアンテナを伸ばして窓から手を伸ばすとギリギリ電波を拾えたんだ。
翌日の午後八時前、俺は待ち合わせの場所に向かった。田んぼからはつがいを求めるカエルの鳴き声がうるさいくらいに響いていた。
待ち合わせといっても田んぼしかない田舎だから喫茶店なんて小洒落たものはなく、俺と夏希の家の中間地点にある、あの古びた鳥居の前を指定していた。
人通りはもちろんなく、辺りには電灯がポツンと一本立っているだけ。社殿へと続く石階段の先は真っ暗で、吸い込まれてしまいそうな怖ろしさがあった。
なんでこんなところに女子を一人で呼び出したのかと短慮な自分を嘆いていると、向こうからサンダルの足音とともに人影が近づいてきた。
電灯が腕を組んで露骨に機嫌悪そうにしている夏希を照らし出す。風呂に入ったばかりなのだろう、いつもは後ろで纏めている髪が下ろされていて、少し濡れていた。
「よ、よう......」
「......なに、話って。明日も朝練あるから早く帰りたいんだけど」
素っ気ない態度だったけど、夏希と久しぶりに会話ができたことが素直に嬉しかった。
「えっ……と、さ…」
夏希を相手にあんなにも緊張したのは初めてだった。事前にシミュレーションは何度もしていたのに、顔と頭が熱暴走してしまったように放熱していて、考えていたセリフが飛んでしまっていた。
「……この間の花火大会、行ったんだ、俺……部活のやつらと。そしたらさ、背が高い先輩っぽい人と歩いてるの見えて……夏希が…」
「──何が言いたいわけ?」
要領を得ない言葉の羅列に、夏希が少し苛立ったように話の核心を急かしてきた。
……だったら、言ってやる…
全力疾走したあとみたいに心臓が鼓動を打つのを感じながら、伝えたらどう転んでもこれまでの関係ではいられなくなる思いを告げた。
「あの先輩と付き合うくらいなら、俺と付き合って欲しい」
言い終えた瞬間、極度の緊張のためか遠くなっていたやかましいカエルの鳴き声が耳に入ってきた。
夏希はまっすぐ降ろしている左腕の肘を右手で掴んだまま動かなかった。周囲が薄暗いため、その表情は窺い知ることができない。
数秒の沈黙が流れる間に、月のない夜の真っ黒な大海原を見ている時のような漠然とした不安が俺の中に込み上げてきて、夏希が返事をしてくれるのを固唾を呑んで待った。
「……別に、先輩と付き合ってないし。部活のみんなと出かけて、はぐれた時にたまたま先輩とふたりになっただけだし…」
「えっ、それじゃあ──」
一筋の光明を見出した俺に、夏希が吐き捨てるように言った。
「……あんたが好きなのは、私じゃなくて私の胸なんでしょ」
……くっ……俺の気持ちも知らないで…
いつもの売り言葉に買い言葉で俺も衝動的に言い返したくなったけど、ここでケンカしたら本当に何もかもがおしまいになると思って、ぐっと堪えた。
「ごめん……俺、夏希の気持ちを全然考えれてなかった。これからは夏希のこと、ひとりの女の子として大事にするから……もし、よかったら一度だけチャンスを欲しい」
再び訪れる沈黙。
俺は祈る気持ちで夏希が返事をするのを待った。
「はぁ……」
小さくため息をついてから夏希が続ける。
「まぁ、そういうことなら…」
「えっ……それって付き合ってくれるってこと…?」
「…………うん」
その瞬間、それまで感じたことのない歓喜が腹の底から湧き上がってきて、俺は夜の田んぼに轟くほどの歓声をあげていた。
そうして夏希との交際が始まったわけだけど、不思議なことに夏希を大事にしようとすればするほど、あれだけ頻繁に吸っていた乳首は遠くなっていった。ただ、裏を返せばやっと健全な中学生の恋愛関係になれたともいえるのだろう。
俺は本心では乳首を吸うことを切望しながらも、もうそんなものには興味ないといった風体を装い、硬派を演じた。それもあって初めて手を繋いだのは数カ月後の初雪がちらつき始めた頃だった。
乳首は吸えなくても、かじかんだ手をつないで歩いているだけで高揚して、幸せを感じていた。ただ、そんな日常は唐突に終わりを迎えることとなった。
十二月中旬のある日の晩、俺は自室で目前に迫ってきたクリスマスを夏希とどう過ごすかについて考えていた。
もしかしたら夏希は自分へのプレゼントに乳首を吸わせてくれるんじゃないか……そんな夢想をしていたところ、階下から当の本人から電話が来たことを報せる母親の声が聞こえた。
携帯電話は持っていたけど自宅がほぼ圏外なため、夏希や友人達が家の固定電話にかけてくることはたまにはあった。でも、そんな夜更けに電話が来るのは珍しいことだった。
「……今から会える?」
受話器の向こうから聴こえる夏希の声は少し暗かった。
「今からって、雪降ってるよ?」
「そう、なんだけど…」
ただならない気配を感じた俺は了承し、傘を持ってすぐに家を出た。
灰雪の舞う小道を急ぐ。田んぼは降り積もった雪で白く覆われていて、さながら死の世界のような静寂に包まれていた。
やがて、鳥居近くの電灯の下に白い傘をさす少女の姿が見えてきた。その目には泣き腫らしたあとがあって、何かよくないことが起きたのは話を聞く前から容易に想像できていた。
「……お母さんがね、冬休みになったら家を出ていくから、ついてきなさいって…」
「えっ、冬休みって……もうすぐじゃん…」
前から頻繁に両親が喧嘩しているという話は夏希から聞いていたけど、まさか離婚する事になるなんて想像もしていなかった。
「出ていくって、どこに…?」
「──おばあちゃんち、東京の」
「東京…」
「ねぇ、どうしよ……逢えなくなっちゃう…」
もう少ししたら夏希が俺の前からいなくなってしまうという事実に動揺しつつもどこか冷静でいられたのは、夏希の方が俺よりもずっと取り乱していたからだろう。
「夏希はこっちに残れないの?」
「そうみたい…」
夏希の目に溜まっていた涙がとうとう溢れ出て、頬を伝い落ちた。
詳しい事情も知らないのに、自分達の都合で子供を振り回す夏希の両親に当時は憤ったものだ。
「大丈夫だよ、東京なんて修学旅行で行ったばっかりじゃん……そこまで遠くないよ」
「そう、だけど…」
発作的に傘を捨てて泣きじゃくる夏希を抱きしめた。そうすることしかできない自分を歯痒く思いつつ、夏希が落ち着くまで俺達はしばらく抱き合っていた。
一緒にいられる残り少ない日々は瞬く間に過ぎていき、クリスマス・イヴの前日、とうとう夏希達が引っ越しをする日がやってきた。俺の母親が駅まで車で送ることになっていて、出発する少し前に俺達は逢う約束をしていた。
待ち合わせ場所のいつもの鳥居前に行くと、夏希がすでに佇んでいて、辺りの風景を目に焼き付けるように見渡していた。
「しばらくはここに来ることもないんだね……毎日、通ってたのに」
「……うん」
「でもさ、雪かきしなくて済むのは嬉しいかも」
そう言うと夏希は少し寂しそうに笑った。
「来年の夏休みになったらさ、東京まで逢いに行くよ」
「えっ……でも、お金かかるよ…?」
「お年玉も貰えるし、小遣い貯めればなんとかなるよ」
「そっか……それじゃあ、待ってるね」
しばらく見つめあった後、俺達は初めてキスをした。さんざん乳首を吸ってきたのにキスをしたことがなかったというのは、我ながらおかしな話だと思う。
離ればなれになった後も夏希とは頻繁に連絡を取り合っていた。日に何十回もセンターにメールの問い合わせをするのが日課となり、週末には電話でも話をした。引っ越し先で馴染めるのか心配していたけどうまくやっていけているようで、俺は内心ほっとしていた。
再会する日を待ち通しく思う間に季節は移ろっていき、約束の夏が訪れた。早速、部活を引退する翌日に貯めておいた小遣いで新幹線の往復チケットを取り、俺はひとり東京へと向かった。
早朝に出発して電車と新幹線を乗り継ぎ、行き交う人々の多さに戸惑いながら夏希の家の最寄り駅にやっと辿り着いた時には昼を過ぎていた。
改札口の外で待っているはずの夏希を探して見渡しても見つからなくて、少し焦りを感じ始めたところで不意に名前を呼ばれた。
久しぶりに会った夏希は地元にいた時よりもずっと垢抜けて見えて、目の前に来て話しかけられるまで全然気付けなかった。
短めのスカートを履いているのなんて見たことがなかったし、いつも俺と同じ床屋で切っていた髪は美容室に行ったのか野暮ったい感じがなくなっていた。可愛すぎて、少し気後れしてしまうほどだった。
「よくすぐにわかったね、人いっぱいいるのに」
「だってこんな大荷物で歩いてる人いないよ……うわ、重っ……何持ってきたの?」
「ばあちゃんがお土産に野菜持ってけっていうからさ」
それから俺達は、一旦夏希の家に荷物を置きに寄ってから繁華街へと向かった。狭い通りに若い人達がごった返しているのに辟易としつつ、夏希がちょっと自慢げにあれこれ紹介してくるのを聞いて歩き回っているうちに日も暮れて、家路に就くことにした。
その日は夏希の家に泊めてもらうことになっていた。
「暑かったから汗かいたでしょ、先におフロ入りなよ」
「うん、ありがと」
シャワーを浴びた後、リビングでくつろいでいると、入れ違いに浴室に入った夏希が部屋着に着替えて出てきた。太ももが半分ほど露わになっているパンツにTシャツの裾を入れているため、豊かな胸が強調されている。
「今日はお母さんが仕事から帰って来るの遅くなるし、おばあちゃんも友達と旅行に行ってていないから夕飯は私がつくるんだけど、まだ早いよね……それまで私の部屋に行ってよっか」
しばらくの間、この家に夏希とふたりきりでいられることに高揚するのを感じながらあとに続く。
取り留めのない話をしていると次第に口数が減っていき、自然と沈黙が生まれた。俺はもう我慢することができなくなり、夏希のいるベッドの横に座って切り出した。
「久しぶりに、あれやらない…?」
「……あれって、なんのこと?」
気付いているはずなのに夏希がはぐらかす。
考えてみれば自分のライフワークと言ってもいいあの行為の名称を俺は考えたことがなかった。シンプルに乳首吸いと言えば確実に伝わるのだろうけど、いささか下品に思えた。
「だから、その……胸を…」
「……あんた、やっぱり私より私の胸が好きなんでしょ…」
「違うよ!……いや、夏希の胸も好きだけど、夏希のことが好きすぎるから、できれば吸わせてくれたら、嬉しいなって…」
自分でも何を言ってるのかわからなくなり、最後の方は声が小さくなった。
少しの間を開けて夏希が口を開く。
「まぁ……せっかく来てくれたし、少しだけなら」
仕方ない、という口調でシャツの裾をパンツから出して持ち上げていく。細いウエストと縦に長いヘソ、続けて純白のブラに包まれた乳房が西日に照らされて露わとなった。
さらにブラのカップにも指が掛けられてずり上げられていくと乳房の裏側が見え始め、その大部分が露出すると不意につっかえが取れたように落下してぶるんっと揺れ弾んだ。
一年ぶりに対面した夏希の乳房はまたひとまわり大きくなっていて、半球型から円錐型へと成長していた。
まだ垂れることを知らない、少し硬いくらいに張り詰めた白い乳肌。そのふくらみの頂点には直径1センチほどの薄桜色の乳輪が縁取られ、中央には乳輪よりも少し濃いピンクの乳首が座している。
十五歳の少女の胸に実った早熟のふくらみは天然の美しさと官能美に覆われていて、とりわけその少し大きめの乳首には強く惹きつけられるものがあった。
それを口唇でも味わうべく顔を近づけると、うら若い雌の匂いが鼻腔から入って脳髄が刺激され、股間が大きく盛り上がっていった。
欲情を滾らせた俺はさらに顔を近づけて、念願の乳首にやっとしゃぶりつくことができた。
「────んっ…」
すぐに夏希がビクッと震えて反応してみせる。
俺は久しぶりに味わう乳首のほの甘さとコリコリとした感触に興奮しながらひたすら吸い続けた。期間は空いたけど夏希の好きな責め方は舌が憶えていたようで、口腔内で躍動させる度に悦びの声が漏れ出ている。
「声、我慢しなくてもいいんじゃない?もう付き合ってるんだし」
「だって、恥ずかしいし…」
「俺は夏希が感じてくれるの、嬉しいけどな」
再び勃起した乳首を口に含んで舐め転がすと、顔を少し横に向けて口元を押さえている夏希から悦びの声が断続的に漏れ、それは次第に大きくなっていった。
「んっ、ん……んっ……ふあっ……ん…」
慎重に前歯で乳首の根元をそっと挟みながらその頂点を舌でこすると一際大きく声が漏れた。
「痛い?」
「ううん」
夏希が首を横に振るのを見て安堵しつつ、なおも責め立てる。甘い声は高く細く変化していき、やがて掠れて消えると同時に夏希はタオルケットを握りしめながら首を反らし、肢体を間欠的に震わせはじめた。
……イッた………イッてくれた……!…
夏希の絶頂に股間が痛いくらいにそそり立った。
乳首で達しても夏希は以前のように服を下ろして立ち去ろうとはせずに、瞳を潤ませたまま俺を黙って見つめていた。夏希自身も欲情し、さらなる愛撫を求めていたんだ。それは十年乳首を吸ってきて初めての反応だった。
俺は続けてもう一方の乳首に顔を寄せると、AVで見たように舌先で乳輪をクルクルとなぞりはじめた。
夏希がそわそわとしはじめても時計回りに、何周かしたのちに反時計回りに舌先をまわし、不意に乳首を下から弾くとビクンと大きく肢体が震え、悦びの声が大きく漏れ出た。
目線を上げるとすっかり顔を上気させている夏希と目が合った。俺が乳首を吸っている様子を見つめていたのだろう。わざと舌を突き出してチロチロと舐め上げると肩を震わせて喘ぎはじめた。
「ンッ…、ん……くっ……ふ……んあっ…!」
刺激を受けてすっかり勃起した乳首を乳輪ごと咥え込んで舌ですり潰しながら吸うと、はっきりと嬌声が聞こえて、同時に肩を掴まれた。
もうイキそうになっているのだろう、腕は震えていて、顔を軽く左右に振りながら喘いでいる。
「ああっ、だめっ……あっ、あぁ……あはぁっ…!」
肢体が仰け反り、痙攣に襲われる。
少し呆けたような悦びに満ちた顔に俺はもう堪らなくなり、薄く開かれていた唇にしゃぶりついた。夢中で舌を絡ませながら乳房を揉みまわし、ゆっくりとベッドに押し倒していく。
寝転んでも張りのある乳房は高さを失わず、頂点にある乳首は唾液に濡れてテカテカと輝いていた。
右の乳首を咥え込んで舌で弾きまわすと、性感が高まりきっていたのか夏希はシーツを掴みながら喘ぎ、すぐに達した。続けて左の乳首に移って愛撫すると、間を置かずに絶頂を迎える。
もう一度乳首間を往復してオーガズムに導いた後、快感に張り詰めた乳房を無理やり寄せ合わせて双つの乳首を同時に舐め上げた。
「───ん゛ぃっ…!」
途端に夏希が激しく反応してみせる。連続で弾きまわすと短く喘ぎ声が漏れ、身をくねらせて悶えはじめた。
「あっ、あっ、あぁっ……あっ……!イッ、…っく……イッくぅ……ああっ……イッ、イ………グッッ……!」
夏希が初めて発した「イク」という言葉にますます滾りながら舌の速度を速めていくと、宣言した通りに絶頂を迎えた肢体がわなわなと震えだした。
興奮のままに、達したばかりの双つの乳首にしゃぶりついて、舌で上顎に押し付けてこすり伸ばしていく。
「んっっ……あ゛〜〜〜〜〜ッッ……!!」
シーツを掴んだまま背中を仰け反らせ、そのまま肢体をガクガクと小刻みに震わせる。唐突にストンと尻が落ちたあとは無言のまま、身体が間欠的に痙攣しはじめた。
夏希は乳首への愛撫だけで深いオーガズムに陥っていたんだ。目線はどこも見ておらず、目端から涙がこぼれ落ちて、強張っていた表情はすっかり緩んでいる。
「あっ……うっ……う………はあっ……!はぁっ…」
「ごめんごめん、大丈夫…?」
「大丈夫……大丈夫、だけど……もう…」
なおも乳首を吸おうとする俺を夏希がやんわりと制止する。
俺は乳首を吸うことに夢中になるばかりに夏希の気持ちにまたもや気付けていなかった。ショートパンツを脱がせるとショーツは滲み出た愛液でぐっしょり濡れていて俺の愚息を受け入れる準備はとっくに整っており、夏希自身もそれを望んでいたんだ。
念の為持ってきていたゴムをポケットから取り出して愚息に装着する。ショーツを脱がせると透明な糸を引きながら、たっぷりと潤った秘裂が姿を現した。
「……挿れるよ」
そそり立った愚息をあてがうと潤沢な愛液のためか思ったよりもすんなりと挿入できた。ただ、夏希の顔は打って変わって苦痛に歪んでしまったため、俺は少しでもそれを和らげるために優しく乳首を吸って、やがて滾りを放った。
それからもゴールデンウィークとか冬休みになると東京まで夏希に会いに行っていた。ただ、さすがに出費がかさむから新幹線を利用するのはやめて深夜バスで12時間かけて通うことにした。
普通なら引っ越した時点で疎遠になってしまいそうなものだけど、頑張れば会いにいける距離なのと乳首への執念が原動力となって長時間の移動に耐えていたのだと思う。
年々、大きくなっていく乳房に俺はますます虜になり、会う度に嬉々として乳首を吸っていた。
高校進学後はお盆の時期になると夏希の方が地元に帰ってくるようになった。ただ、何もない田舎だから、暇になれば乳首を吸うか、まぐわってばかりいた。
それは俺の部屋にいる時だけに限ったことではなかった。夕涼みがてら思い出をなぞるようにかつての通学路を歩いて、その途中にある背の高いススキの中や橋の袂、廃校となった学校の教室、体育館の裏で乳首を吸い、時にはまぐわったり、その豊かな胸に俺の滾りを受け止めてもらったりした。
今思えばよくバレなかったと思う。あの時はまだ若いこともあってそんな大胆なことができていたのだろう。夏希もわりとノリがよくて頼めばどこでも乳房を晒してくれていた。
罰当たりなことにあの神社の鳥居の下でも乳首を吸って、いつ誰が来るかわからないというスリルと興奮を共有しながら夏希は絶頂を迎えていた。少し歩けば、近隣の至る所に淫らな記憶の片鱗が散りばめられている。
大学進学を機に上京し、俺達は同棲することにした。
最初の3カ月は本当に楽しかった。朝起きたら乳首を吸って、寝る前にも吸って、毎日のようにまぐわって…
ただ、しばらくするとお互いのイヤな部分が見えはじめてまたケンカをするようになった。時には夏希が実家に帰ったり、別れ話も何度か出たけど、その度に仲直りをして乳首を吸った。
そんな日々を就職した後も繰り返し、互いが三十になる前に俺達はようやく落ち着いて、入籍することにしたんだ。
夏希が妊娠した頃にコロナ禍に入ったから、三才になった息子を直接両親に会わせるのは今日が初めてになる。親達も孫の到着を首を長くして待っていることだろう。
もの思いに耽っているうちに鳥居が遠くなり、降りる駅が近付いてきた。
「久しぶりに廃校まで行ってみよっか。ついでに──」
「もうやるわけないでしょ」
夏希にとっては恥ずかしい過去になっているらしく、当時の思い出話をしようとするとあまりいい顔をされない。
夜、みんなが寝静まっても昼間の回想のせいかムラムラとしてしまって寝付くことができなかった。
「ねぇ、やめて……となりの部屋にお義父さん達いるでしょ」
「ちょっとだけ、ちょっとだけだから…」
「もう……早くしてよ」
俺がせがむと夏希は観念したように、身体を横向きにしてシャツをめくりあげ、胸乳を露出してくれた。
ブラからこぼれ落ちた乳房は出産を機にまた大きくなって俺の頭ほどのサイズとなり、乳首も同様にしゃぶりがいのある太さに肥大している。
「……んんっ」
早速しゃぶりつくと、すぐに艶めかしい声が漏れ出ていた。あれだけ渋っていたのに、しつこく舌で擦り伸ばすと性感のスイッチが入ったかのように肢体が震えはじめる。
吸いながら、もう一方の乳房を揉み掴んだ。
俺はこの乳房がまだ平らな頃からその成長していく様子を近い距離で長年、眺めてきた。もしかしたら、持ち主である夏希よりも濃密な時間を過ごしていると言えるのかもしれない。
前はパツンパツンだった乳肌の張りはいつしか衰え、乳首の位置はだいぶ下がっている。それでも、指の奥に感じるたしかな弾力が俺を愉しませ、何よりも口腔内に含んでいる乳首が、少年だった頃から変わらず俺を夢中にさせてくれているんだ。
「んっ……んんっ……ん〜〜〜ッッ…!」
夏希が好きな乳首の吸い方については熟知している。吸引を加えつつ乳頭の先端を舌先で弾くとたちまち昇りつめ、手の甲で口元を押さえながら絶頂を迎えた。その様子に、初めてまぐわったあの夏の日のことが自然と脳裏を過っていた。
口を離すと、カーテンの隙間から差し込まれた月明かりが唾液に塗れて勃起した乳首を淡く照らし出す。
考えてみれば、もうこの乳首を三十年近く吸ってきたのか…
小さな平たいボタンみたいだった乳首が、長年の愛撫のためか中指の先端ほどの大きさに肥大していて、今ではもう愛着すら感じるようになった。
もう一方の乳首もしゃぶり伸ばすと夏希は俺の頭を乳房に押し付けるようにして再び絶頂し、逃れるように仰向けになった。夏希の上に跨って乳房を寄せ合わせると双つの乳首が横並びになる。
「ねぇ、待って──」
俺が何をしようとしているかを察して、乳首が敏感な夏希が慌てて制してきた。
「ごめん……弱めに吸うから、声我慢してて」
乳房の肥大によって、昔よりも容易く咥えることができるようになった両乳首にしゃぶりつき、吸引していく。口腔内でコリコリにしこった乳頭が何度も伸び、舌にこすり潰される。
「ん゛んっ……ん〜〜〜ッ……!」
夏希は喘ぎ声を必死に押さえながら俺の下で悶えている。でも、乳首を唇で締め付けて乳房全体を天井に向けて吸い伸ばすと硬くなった乳頭が半ば強引に引き伸ばされて喜悦が生じ、派手に身体を震わせながらオーガズムに達した。
乳首を吸うだけのつもりが我慢できなくなって、ショーツをずり下ろして愚息を挿入した。乳房以外にも肉付きのよくなった肢体は、少女だった頃よりもずっと抱き心地がいい。
となりで寝ている息子を起こさないようにゆっくりと抽送しているうちに射精感が込み上げてきて、限界を迎えた。
「ねぇ、いいよね…?」
そろそろ二人目が欲しいとふたりで話していたところだった。夏希が律動を受けてくぐもった声を出しながら頷くのを見て、俺は両乳首をしゃぶりながら膣奥目掛けて自らを追い込んでいった。
「んっ、ん゛っ……んっ……んむぅ……!」
「夏希、声抑えて…」
「ん゛むぅぅ……だめっ……無理いっ……んん゛っんっ、ん゛んっ…!んぁぁっ……!」
絶頂を迎えた膣奥が急激に窄まり、俺は乳首を咥えながら腰を震わせて滾りを放っていった。
次に帰省する時には、きっと新たな家族が増えていることだろう。