◆
「糞ッ! なぜこの俺がこんな所に!!!」
叫び、壁を蹴り飛ばす青年がいる。だが。
「痛いッ! ……ううっ……」
その場にうずくまる──無様だ。
さて、この無様な青年は誰かというと、ハメルーン王国の王太子であったヤージュ・ハメルーンである。
そしてここはどこかといえば、王都から遥か450キロル北にある“北の修道院”であった。
この北の修道院は普通の修道院ではない。
神に祈りを捧げるための清浄な場所などでは断じてなかった。
むしろ王国のゴミ溜めと呼ぶべき場所だ。
王侯貴族や大富豪がその権力をもって隠蔽したい「問題」を放り込むための終着点である。
ヤージュ・ハメルーンもまた、その「問題」であった。
──『こいつの性癖はどうしようもない』
父である国王がそう嘆息したときの冷たい目を、忘れることができない。
幼きを愛する悪徳。
それがヤージュの抱える「問題」であり、王家最大の恥部であった。
衝動を抑えきれず、ついに侍従の娘に手を出したのだ。婚約者がいるにもかかわらずである。
その婚約者はとある公爵家の令嬢であったが事が露見した際には当然激怒。
それから色々とあり──結果、ヤージュは廃嫡された。
そしてこの極寒の地に捨てられたのである。
「……寒い」
石造りの床から、底冷えが這い上がってくる。
蹴りつけた壁はびくともしない。
足首が鈍い痛みを訴えていた。
部屋は簡素だ。
硬いベッドが一つ。
粗末な木の机が一つ。
そして外気の侵入を許す隙間風のひどい窓が一つだけ。
窓の外は見渡す限りの灰色の空と、凍てついた針葉樹の森が広がっている。
まさしく牢獄であった。
◆
「こんなところにはただの一日だって居たくないのに……」
ヤージュは先ほど馬車から降ろされた時の光景を思い出し、身震いした。
出迎えたのは若く清らかなシスターではなかった。
皺だらけの顔。たるんだ皮膚。六十はとうに超えているであろう、老婆たち。
その老婆たちがぎらつく目で自分を見ていたのを、確かに感じ取ったのだ。
視線は顔や手足ではなく、もっと別の場所をねぶるように這っていた。
まるで、そう──品定めをしている様な。
(まさか、そんなはずは)
最悪の想像を振り払おうと頭を振る。
その時だった。
ギィィ……。
重く、錆びついた蝶番の音が響いた。
部屋の扉がゆっくりと開かれる。
身構え、痛む足を引きずって後ずさる。
「……誰だ」
扉の向こう、薄暗い廊下に立っていたのは一人の老婆だった。
たぷりとした大きい胸を見たヤージュの顔が強張る。
そう、このヤージュという男は巨乳が嫌いなのだ。彼の性癖は「幼きを愛する」というもの──要するにロリコンである。熟女はお呼びではないし、巨乳なんぞまっぴらごめんであった。
「ヤージュ・ハメルーン様ですね」
老婆が言った。
声は乾燥し、ひび割れている。
「私はここの長、シスター・アガタと申します」
アガタと名乗る老婆が一歩、部屋に入ってきた。
怯えた様に壁際まで退がるヤージュ。
「ここは貴方の新しい家。そして貴方の歪みを『矯正』する場所です」
「……矯正だと?」
思わず嘲笑を漏らした。
「こんな老婆ばかりの場所で、何を矯正するというんだ」
「ええ。まさに。しかしこの老婆ばかりの場所だからこそ、矯正できるのです」
アガタが不気味に微笑んだ。その笑みは知るどんな表情とも異なっていた。
慈愛もなければ、怒りもない。獲物を見つけた狩人のような、冷たい歓喜にも似た笑みだった。
「貴方は幼いものしか愛せない」
「……ッ」
「貴人にはよくある事らしいですわね。なまじ恵まれた境遇だからこそ、歪むということがままあるのかもしれません。しかしそれでは国は立ち行かない。尊き者たちはその血を後世へと継いでいく義務があるのです。ゆえに、ここではその対極にあるものだけを愛でていただくことになります」
「め、愛でる……?」
「はい。あなたはここにいる間、我々の慰み者となるのです。ご安心ください、我々は皆、経験豊富ですから……。
アガタが手を叩いた。
パン、と乾いた音が響く。
すると廊下の闇から、ぞろぞろと別の老婆たちが姿を現した。
二人──痩せぎすの女と、ふくよかな女。
目つきは厭らしく、ヤージュを舐めまわすように見ている。
「や、やめろ……」
声が震える。
ヤージュの本能が未知の恐怖に警鐘を鳴らしていた。
「さあ、最初の『お祈り』の時間ですよ」
アガタが宣言した。
◆
アガタの宣言と同時に、老婆たちが一斉ににじり寄る。
「やめろ!」
ヤージュは叫んだ。
「近寄るな! この化け物ども!」
椅子を掴み、老婆たちに向かって投げつけようとした。
だが動かない。いや、動かせない。
「無駄ですよ」
老婆の一人が腕を掴んだ。
ぞっとする感触だった。
乾いて冷たい皮膚。
しかしその握力は男のそれのように強靭だ。
「離せ!」
腕を振り払おうとする。
だが別の老婆がもう片方の腕を掴んだ。
さらに別の老婆が背後に回る。
あっという間に、老婆たちに取り押さえられた。
(嘘だろ、こんな力……!)
小柄な老婆たちの、どこにこんな力があるというのか。
身体は石の床に荒々しく押さえつけられた。
頬に冷たい石の感触が伝わる。
「ヤージュ様は今、赤子の様にか弱い。その理由は一言で言えば
アガタの声がまるで聖句を唱えるかのように響いた。
「我らに、若く、愚かなる肉をお与えくださり、感謝いたします」
「「感謝いたします」」
老婆たちの合唱が耳を打つ。
「この者の忌まわしき性癖が我らの老いたる身体によって浄化されますように」
「「浄化されますように」」
「やめろ……やめてくれ……」
ヤージュはプライドも何もかも捨てて懇願した。しかし──
「大丈夫ですよ、ヤージュ様」
アガタが顔を覗き込む。
「すぐに、貴方もお分かりになる」
「何をだ……」
「本当の『喜び』とはどのようなものかを」
アガタの冷たい指が服の合わせにかけられた。
ゆっくりと、布地がはだけていく。
冷気がヤージュの素肌を撫でた。
暴れようとしてもあっさりと抑え込まれ、抵抗のていを為していない。
「さあ、始めましょう」
アガタのその言葉が始まりの合図であった。いや、ある意味では
◆
「離せ! やめろ!!! 俺は王太子だぞ!!! 貴様らごときが触れて良い存在では──」
「おやおや。威勢のいいことで」
右腕を捻り上げていた老婆が低くしゃがれた声で笑う。
他の者より一回り大柄で、たるんだ顎の肉が揺れていた。
「わたくしはドロテア。貴方のような手に負えない方を『教育』するのが役目でございます」
ドロテアはかつて辺境伯の城で侍女長を務めていた女だ。『教育』についてはお手のものであった。
彼女がゆっくりとヤージュの右腕をひねるあげると──
「ぐあっ……!」
関節がきしむ音がして、ヤージュは顔を歪める。
その隙に、別の老婆が腰帯に手をかけた。
痩せぎすで、まるで骸骨に皮を張ったような女であった。
「わたしはクラウディア。あんたみたいな男の相手を散々してきたから、大人しくアレを出しな。天国へ連れていってあげるからさぁ……♡」
王都の裏路地で名を馳せた元高級娼婦クラウディアは重病を患って生死の境をさまよった。
幸いにも彼女は一命をとりとめ、そして思う所があって今は
驚くほど器用に帯を解いていくクラウディア。そうしてあっというまにヤージュのズボンを引きずり下ろしてしまった。
「やめろ! 見るな!」
下半身が露わになり、屈辱に叫ぶヤージュだが老婆たちの視線にぶるりと震えてしまった。
粘りつくような視線は下腹部へと集中している。
その粘着質で生臭さすら感じられる視線の集中に、ヤージュのペニスは常よりも酷く萎縮してしまった。
「ふふ……可愛らしいじゃないの。まるで生まれたての小鳥のようね」
クラウディアが甲高い声で笑う。
「まずは歓迎の挨拶をしようかしらね。アガタ、いい?」
クラウディアの問いにアガタが厳かに頷く。
「ええ。クラウディア、お願いします」
クラウディアはヤージュに近づき、かがみこむ。そして──
◆
ぞわりと全身の毛が逆立った。何かとんでもない事をされようとしている──そんなとてつもなく嫌な予感がしたのだ。
(やめろ、来るな、触るな……!)
ヤージュは立ち上がってにげようとしたが──
「うぐっ!?」
別の老婆がヤージュの腹に座り込み、逃げられない。
(お、重いッ……! なんだこのデブはッ……)
このふくよかな女はドロテアという。元は裕福な商人の後妻であったが夫が病死してそのまま商会も傾き、路頭に迷った所を拾われた。
「さあ、神の恵みよ。しっかりと堪能して頂戴」
クラウディアは皺だらけの唇を歪めて笑った。
そしてためらいなくヤージュのペニスを口に含んだのである。
「ひぃっ!?」
ヤージュはまるで生娘の様な悲鳴を上げた。
乾いてざらついた唇。生温かく、しかし水分量の少ない口腔内。
まるで古い革袋に包み込まれたような不快感が襲ってくる。
クラウディアは反応など意に介さず、ゆっくりと頭を上下させ始めた。
舌が這いずるように先端を舐め上げる。
「ん……ちゅ……れろ……」
最初は不快でこそなかったがしかし恐るべきはクラウディアの熟練の技であった。
的確に急所を刺激されることによって、ヤージュのペニスはだんだんと硬くそそりたっていく。
しかし当のヤージュにしてみればそんなものは地獄の責め苦でしかない。
(気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い!)
嫌悪感で鳥肌が立つ。しかし体は正直でもあった。
震えるほどのおぞましさとは裏腹に、クラウディアの執拗な刺激によってペニスはいまや天を衝くほどに屹立している。
若さゆえの抗いがたい生理現象だった。
「あらあら。お口は厭だと言っても、ココは随分と元気になってきたわねぇ? 先っぽから透明の汁が出てきたわよ? そんなに気持ちがいいのかしら?」
クラウディアが一旦口を離し、意地悪く囁いた。
口元からは銀色の糸が引いている。
「わたしの舌はかつて王都の殿方たちを虜にしたのよ? ……まあ、あれだけ気持ちよくしてあげたのに、わたしが困っている時は誰一人として助けてはくれなかったけれどね……」
そういってクラウディアは再びヤージュのペニスを咥え込んだ。
今度は先ほどよりも深く、喉の奥まで呑み込もうとする。
クラウディアが嗚咽を漏らすがしかしさらに喉の奥でペニスを締め付ける。
皺だらけの頬が必死に蠢き、吸い上げる力が強まった。
(だめだ、こんなことで感じてたまるか……!)
ヤージュは奥歯を噛み締めるが意思とは関係なく腰がびくりと跳ねた。
快感の波が背骨を駆け上がってくる。
「そこまでです、クラウディア」
アガタの冷たい声が響いた。
クラウディアは名残惜しそうに口を離す。
ぷつん、と快感の糸が切れた。
「……はあっ、はあっ……」
荒い息を吐きながらアガタを睨みつける。
ペニスは行き場のない熱を孕んで脈打っていた。
「次は貴方のその汚れた口を清めましょう。女性に向かって平然と暴言を吐くというのは王族としてはいささか礼を失していると言わざるを得ません」
アガタが告げた。
「ドロテア」
「はい。うふ、うふふ」
笑い、ぺろりと分厚い唇を舐める様はまるで御馳走を前にしているかのようにも見える。
(何を、する気だ……?)
心臓が早鐘を打つ。何をされるのか知りたい、いや、知りたくない。ヤージュは大きく目を見開いた。
修道服の裾をたくし上げたドロテアがヤージュの顔にまたがったのだ。
その下には何も身に着けていない。つまり、俗にいう顔面騎乗の形であった。
視界いっぱいに広がる、たるみきった臀部。深く刻まれた皺──そして黒ずみ、干からびた果実のような女性器。
雌の強烈な淫臭が鼻をつく。
「さあ、綺麗にしてくださいまし。わたくしの淫らな肉壺も、貴方の若い舌を欲しがっておりますのよ」
ドロテアはそう言うと、ゆっくりと腰を下ろした。
「んぶっ!!!」
口と鼻がその肉によって完全に塞がれる。
息ができない。
それ以上に、柔らかく弾力のない肉の感触が耐え難かった。
「んんん~~~!!!」
ヤージュは涙さえ浮かべながら、なんとかこの地獄の責め苦から逃れようともがいた。
だがドロテアの体重は重く、びくともしない。
それどころか、顔の上で腰をグラインドさせ始めたではないか。
「ああ……いいわ……若い男の顔はやはり格別ね……」
ドロテアが恍惚とした声を漏らす。
ヤージュがもがけばもがくほど、ドロテアの女性器が刺激されるのだ。
唇の隙間からドロテアの体液──愛液が口内に入り込んでくる。
生臭く苦い味が舌の上に広がる。吐き出したくても、その口を女陰によって塞がれているのだ。
(殺してくれ、いっそ殺してくれ!)
心の中で叫ぶ。
窒息の苦しさと精神的な苦痛。そのどちらが自分を殺そうとしているのか──
その間にも、他の老婆たちが身体を弄んでいた。
クラウディアが乳首を爪で引っ掻き、アガタが太ももをさすり上げている。
しかしペニスには触れようとはしない。
そのせいで、ヤージュは全身の性感帯をこの上なく刺激されながらも、達する事ができない状況になっていた。
無論、ヤージュとしても射精したいとは思っていない。なんといっても彼は重度のロリコンなのだ。熟女の膣内へ精を出すなど、不本意の極みといってもいいだろう。
(地獄だ……ここは地獄……)
それでも耐えていれば終わるというのなら、ヤージュとしても歯を食いしばって我慢しただろう。
だが終わりが見えない。
ただひたすら乳首を、敏感な内腿を刺激され、鼻からは淫靡極まる雌の匂いを吸い込まされていた。
本意でなくともペニスは怒張し、そして睾丸では精液が次々と生産されていく。
ヤージュはがりがりと石床を引っ搔いた。このままだと完全に発狂するだろう。だが──
「ふう……満足だわ」
ドロテアがようやく腰を上げた。
「げほっ! ごほっ! ……ぷはっ!」
新鮮な空気を求め咳き込むヤージュを、アガタが満足げに見下ろしている。
「身体の準備は整ったようですね」
アガタの言葉に訝し気な表情を浮かべるヤージュ。
「準備だと……?」
掠れた声で問う。
「ええ。これからが本当の『お祈り』ですもの」
◆
ヤージュのペニスは依然として天を向き、熱を帯びている。
「仕上げは私がいたしましょう」
アガタが修道衣をすべて脱ぎ捨てた。
大きな胸、白い肌、肉付きはドロテアほどではなくともかなり良い。
全身に薄っすらと汗を滲ませており、なによりも目が爛々と輝いている。
「さあ、ヤージュ様。貴方の歪んだ欲望のすべてを、この私が受け止めましょう」
アガタはそう言うと、ペニスを掴み、自身の入り口へと導き──そして一気にそれを呑み込んだ。
「ぐぅッ……!」
熱い。そして異様な圧迫感がある。
アガタの膣内はその干からびた外見からは想像もつかないほど瑞々しく、そして恐ろしいほどの力でヤージュのペニスを締め付けてきた。まるで万力だ。いや、もっと生々しい、肉の万力である。それも、幾多の戦いを経てきた年季の入った代物だ。
「どうです? わたくしの『聖域』は」
アガタが囁いた。その声は先ほどまでの厳格なものではなく、熱を帯び、ねっとりとしていた。まるで腐りかけの果実が放つ、最後の甘い匂いのようだ。
「何人もの罪深き男たちを受け入れ、浄化してきた場所ですのよ。貴方のその忌まわしい欲望も、ここで一滴残らず吸い尽くして差し上げますわ」
アガタはゆっくりと腰を浮かせ、そしてまた下ろす。
ずちゅり、と卑猥な水音が響いた。簡素な石造りの部屋に、その音は嫌に大きく反響する。
「ふざけるな……! この、化け物め! 汚らわしい!」
ヤージュは力の限り悪態をついた。それが唯一の抵抗だった。身体はドロテアとクラウディアによって、まるで磔にされた罪人のように床に縫い付けられている。
「化け物? おやおや。では貴方は何なのです? いたいけな少女を玩具にするしか能のない、哀れな
アガタは嘲笑し、動きを早めた。
騎乗位だ。重力に任せ、そのたるんだ肉体をヤージュの上に叩きつける。
たぷん、たぷん、とアガタの大きな乳房が揺れた。皺が寄り、乳首は黒ずみ、重力に負けて垂れ下がったその乳房はヤージュがこの世で最も嫌悪するものだ。しかしその醜悪な塊が視界で揺れるたびに、腰がびくんと跳ね上がる。どうしようもない生理現象だった。
「ああ……いいですわね。若い男のエキスはやはり格別ですわ。肌に張りが戻ってくるようです」
アガタが恍惚とした表情を浮かべる。汗が滲み、その皺だらけの顔を濡らしていた。まるで雨に打たれたガーゴイルのようだ。
「さあ、もっと出しなさい。貴方のその汚れた種を、この老いぼれの胎《はら》に注ぎ込むのです! 貴方の忌まわしい性癖ごと、この子宮で溶かして差し上げましょう!」
「誰が貴様なんかに……! 出すものか!」
ヤージュは歯を食いしばる。だがアガタの技術はクラウディアのそれをも凌駕していた。長年、この修道院で「矯正」を行ってきた経験がものをいう。
膣壁が蠢動し、ペニスの最も敏感な部分を的確に刺激してくる。まるで無数の舌が絡みついてくるようだ。乾いた皮膚とは対照的な、内部の湿り気と熱がヤージュの理性を溶かしていく。
「気持ちいいでしょう? 素直におなりなさい。貴方はもう王太子ではない。ただの、わたくしたちの慰み者。精液を搾り取るための家畜なのですから」
アガタが腰をグラインドさせる。ぐりぐりと内部を抉られ、快感の波が容赦なく襲ってくる。逃げ場はない。
(だめだ、こんなことで……こんな老婆に……! 俺は俺は……!)
精神は拒絶しているのに、肉体は歓喜していた。その乖離がヤージュを狂わせそうになる。自分が自分でなくなっていく恐怖。
「ほら、見てごらんなさい。貴方のペニスはこんなにも喜んでいる。わたくしの膣の中で、ぴくぴくと脈打っているではありませんか。口ではなんとでも言えますが身体は正直ですこと」
アガタが意地悪く囁く。
「貴方は幼いものがお好きなのでしょう? 硬い蕾を無理やりこじ開けるのがお好きなの? でもね、本当に男を喜ばせることができるのはわたくしたちのような経験豊富な女だけなのですよ。すべてを知り尽くした、この蕩けるような肉壺の快感を、一度知ってしまえばもう後戻りはできませんわ」
「黙れ……黙れ! 糞婆!」
「悔しいでしょう? こんな老いぼれに組み敷かれて、快楽に溺れるしかない自分が。でもそれが現実です。貴方は弱い。そして愚かです。そのどうしようもない現実を受け入れなさい」
アガタの言葉が棘のように心に突き刺さる。
その通りだった。自分は弱い。欲望に抗えず、地位も名誉もすべて失った。そして今、こんな極寒の地で、最も嫌悪する存在に犯されている。なんという無様な人生だろう。
「さあ、鳴きなさい。惨めに喘いで、わたくしに許しを乞うのです! もっと気持ちよくしてくださいと、犬のように媚びを売るのです!」
アガタがさらに腰の動きを激しくした。
ばちん、ばちん、と肉がぶつかり合う音が部屋に響き渡る。アガタの豊満すぎる臀部がヤージュの下腹部に打ち付けられるたびに、鈍い痛みと、それを上回る快感が突き抜ける。
アガタの汗がヤージュの顔に滴り落ちた。
「あああっ……!」
ついに、ヤージュの口から甘い喘ぎ声が漏れた。
一度決壊してしまえば、もう止まらない。理性の堤防はあっけなく崩壊した。
「はあっ……ああっ……! くそっ、ああ……!」
腰が勝手に跳ね上がる。アガタの動きに合わせて、自分からペニスを突き上げてしまう。少しでも深く、少しでも強く、快感を求めてしまう自分が信じられなかった。
「そう、それでいいのですよ。もっと、もっと深く……! わたくしの子宮口に、貴方の熱い楔を打ち込んで頂戴!」
アガタもまた、絶頂に近づいているようだった。呼吸は荒く、目は虚空を彷徨っている。その顔は紅潮し、醜さの中にも異様な艶かしさが宿っていた。
「神よ……我らにこの喜びをお与えくださり、感謝いたします……! ああ、素晴らしい……!」
アガタが叫ぶ。
◆
(もう、だめだ……)
ヤージュの思考は快楽の奔流に押し流され、真っ白になっていた。
視界が霞む。アガタの顔も、その醜い肉体も、もはやどうでもよくなっていた。いや、違う。この老婆の肉体が今は何よりも愛おしくさえ感じられた。そんな馬鹿な。
ただ、ひたすらに気持ちがいい。生まれて初めて経験する、圧倒的な快感だった。少女たちを抱いていた時には決して得られなかった、深く、重い、そしてすべてを包み込むような快楽。
「いやだ……やめてくれ……こんなの、俺じゃない……」
涙が溢れ出す。屈辱と、そして抗いがたい快楽に、ヤージュは泣きじゃくった。こんなはずではなかった。
「もう、やめてください……おねがいします……もう、ゆるして……」
プライドは粉々に砕け散っていた。王太子の威厳など、もはや欠片も残っていない。そこにはただ、快楽に溺れ、許しを乞う、惨めな男が一人いるだけだった。
「あらあら。泣き虫さんですこと。そんなに気持ちが良かったの?」
アガタが動きを緩め、意地悪く微笑んだ。その顔はすべてを見透かしているようだった。
「でも、やめてあげませんわ。貴方が壊れるまで、徹底的に嬲って差し上げます。貴方のその歪んだ性癖が完全に上書きされるまで、何度でも、何度でも……」
アガタは再び腰を激しく動かし始めた。
今度は先ほどよりも深く、そして執拗に。最後の仕上げだ。
「さあ、イキなさい! わたくしの胎の中で、貴方のすべてを解放するのです! 貴方の負けですわ、ヤージュ様!」
「いやだあああああ!!!」
ヤージュは絶叫した。
その瞬間、ペニスが爆発するように熱くなった。
「あ、ああああああああああッッッ!!!!」
制御不能な痙攣が全身を襲う。
大量の精液がアガタの膣内に注ぎ込まれた。
一度だけではない。二度、三度と、波打つように射精が続く。まるで、溜め込んでいたすべての欲望がいや、彼自身の存在そのものが一気に解放されたかのようだった。
「……ふぅ」
アガタが満足げなため息をついた。たっぷりと若い精を吸い取り、その顔にはかすかな若さが戻ったようにも見えた。
そしてゆっくりと腰を上げる。
どぷり、とペニスが引き抜かれると同時に、アガタの膣から白濁した液体が溢れ出した。それはヤージュの太ももを濡らし、石の床に小さな水たまりを作った。
ヤージュはぴくりとも動かない。
目は虚ろに天井を見上げ、口は半開きになっている。
完全に失神していた。
◆
「……終わったようね」
クラウディアがまるで舞台の幕が下りたかのように呟いた。
「まったく、手のかかる子だこと。最初はあんなに威勢が良かったのにねぇ」
ドロテアが肩をすくめる。その顔には肉欲の名残がまだ残っていた。
三人のシスターがぐったりと横たわるヤージュを見下ろしていた。
その目は冷たく、何の感情も浮かんでいない。まるで、壊れた玩具を見る子供のようだ。
「さて、仕上げといきましょうか」
アガタが言った。声はいつもの厳格なものに戻っていた。
「ええ。神の恵みを、この者に与えましょう」
三人はヤージュを囲むように立ち、修道服の裾をたくし上げた。
そして一斉にヤージュの顔に向かって放尿した。
「聖水です。貴方の汚れた魂を清めましょう」
アガタの声が厳かに響いた。
生温かい液体がヤージュの顔を濡らす。
アンモニア臭が部屋に立ち込めた。
しかしヤージュが目覚めることはなかった。
やだ、その頬を一筋の涙が伝っている。
しかし、そんなものは誰も気にも留めなかった。いや、気付いていたとしても、それが何だというのだろう。
ここは北の修道院──王国のゴミ溜めだ。
そこへぶちこまれたヤージュはまさしくゴミであり、ゴミの心情など誰も斟酌したりはしない。
この日以降、元王太子ヤージュは三人のシスターに精も根も搾り取られ、やがて──
◆
季節は巡り、春が来た。
あの忌まわしい冬を覆い隠すかのように、北の修道院にも短い春が訪れる。
とはいえ、王都のそれとは似ても似つかぬ。
雪解け水はぬかるみとなり、針葉樹の森から吹く風はまだ冷たい。
修道院の裏庭には、墓標と思しき石が無造作に並んでいた。
苔むし、角が欠けたそれらは、一様に粗末なものだ。
いったい幾つあるのか。
100か、200か。あるいはもっと多いのかもしれない。
ここに葬られているのは、皆、悍ましい罪人であった。
王家や大貴族がその存在を歴史から抹消せんと、このゴミ溜めに放り込んだ者たちの終着点である。
誰も彼もが古びていた。最早、その名を読むことさえ困難なほどに風化が進んでいる。
だが、その中に一つだけ。
真新しい、白々しいほどの石があった。
つい最近、立てられたものらしい。
そこに刻まれた名は、まだ読み取ることができた。
──ヤージュ・ハメルーン。
春の生ぬるい風が、その名を撫でて通り過ぎていった。