定藤村には黒百合祭と呼ばれる行事があった。二人の未婚女性が巫女となり、取り仕切る儀式。しかし村には少子化の影響で未婚の若い女性は一人しかおらず、長年その行事を執り行う事が出来ずにいた。そんな時、祭りの事を調べに一人の女子大生がやって来る。
 黒百合祭とは、口伝で巫女にしか伝えられていない儀式とはいったい。

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黒百合祭

 

 

 

 フィールドワークとは、ある対象を調査するために現地へ赴き、そこにある資料を拝見したり、現地の方々に話を伺ったり、いわゆる実地調査というやつだ。

 

「はー、大変だねー」

「悪く言っちゃえば野次馬みたいなものですけどね」

 

 だから現地の方々に邪険に扱われる事もしばしばあるらしい。閉鎖的な場所だとそれが顕著。なんだけど、運が良いのか私はそういうケースに遭った事は無く、好意的に受け入れてくれる事が多い。

 ……たぶん女の子って事が大きいのかな。民俗学なんて専攻してると自分の性別が女で本当に良かったって思う。

 

「いやいや、崇高な勉強だと思うよー? だって日本の古い文化を遺してくれるって事じゃん」

「あはは、そう言っていただけると幸いです」

 

 この定藤村(さだとうむら)に来たのはその古い文化、この村固有のお祭りについての調査が目的。

 この村で独特なお祭りをやっているらしいと母から聞き、未だに卒論のテーマが決まっていなかった私はコレだとばかりに食いついた。

 だけどちょっと山の中過ぎる。私の実家がある大きい市街からけっこうな距離があって、車を持っていなかったら調査に来れなかった程度には山の中だった。その分紅葉がすごく綺麗だけど。

 

「皆さんにご挨拶してお話を伺ったら、それなら神社に行った方が良いって聞いたもので」

「あーなるほどー。それでウチに来たのかー」

 

 この村の皆さんは気さくな方ばかりで、お祭り調査しに来た、なんて言ったら怪訝な顔をされてもおかしくないのに、神社に行くと詳しい話が聞けるよ、と笑顔で皆さんから紹介していただけた。

 正直ここまでスムーズに行くことは稀なので面食らってはいる。普通はもうちょっと仲良くなってから本番、って感じなんだけど。

 

「それでー? 何を聞きたいのかなー?」

 

 で、その神社で働いていたお姉さん。御堂呼(みどう よばり)さん。

 

 歳はたぶん私と同じかちょっと下くらい、二十歳前後、かな。

 腰まで届く濡羽色の髪はおさげにしていて、少し垂れ目がちなその瞳は吸い込まれそうなほどに綺麗。……少し虹彩の色が薄く見えるのは外国の血が混ざっているからだろうか。

 だけど、目の色なんて気にならない程のプロポーション。月並みな表現だけど、ボン!キュッ!ボン!……ストン、ストン、ドン、な自分とは比べ物にならない。くっ、お尻だけデカくても何の自慢にもなりやしない……ま、まぁそんな、女の私でさえ羨む素晴らしいスタイルの持ち主だった。巫女服の上からでもそれが分かるって、相当すごいと思う。

 

 まだ少ししかお話し出来ていないけれど私の事を邪険に扱わず、むしろ何でも聞いて、と親切極まりない人だった。

 

「あーそれなんですけど……失礼な話、何も知らないんですよ」

「何も?」

「独特なお祭り、としか……」

 

 そう、何も知らない、分からないから調査に来たのだ。秘祭の匂いがぷんぷんする。

 ……いかん、これでは本当に野次馬だ。

 

「独特、かー。確かに独特だねー」

 

 どうでもいいけど御堂さんの喋り方がゆるくて和む。美人で可愛いとか無敵か。

 

「じゃーお祭りの名前も知らない感じー?」

「恥ずかしながら……」

 

 ネットで調べても街の図書館で調べてもこの村の祭に関しては一切分からなかった。図書館なら資料の一つや二つあるかと思ったのだけれど、何も分からない。

 だから、事前知識というものを一切身に付けられなかったのだ。

 

「んふー、どうしよっかなー」

「えぇぇ何でも聞いてって言ったじゃないですか」

 

 悪戯を思いついたような笑顔の御堂さん。

 な、何を要求されちゃうんだ。こちとら卒論がかかっているんだ、何だって差し出しちゃうぞ。

 

「フィールドワークだっけ? 地方にお邪魔するって事はー、何かお土産でも持ってるんじゃないのかなー?」

「え?あ、はい」

 

 御堂さんは私の引いていたキャリーバッグを指差しているけど、確かに中には袖の下もといお土産が入っている。

 

「……お饅頭なんですけど、食べます?」

「わーいお茶いれてくるねー」

 

 巫女さんってそれで良いんだろうか。

 

 

 

 

 

 という訳で社務所にお邪魔した。

 

「え、じゃあ御堂さんって神社の娘さんじゃなかったんですか?」

「そーそーただの勤務先だよー」

 

 仕事はそんなに無いし給料も安いけどねーと続ける御堂さん。

 なんでも神主さんはご高齢で、尚且つ跡継ぎさんもいないらしい。だけど誰もいない神社は廃れていく一方とのことで、維持管理を任せられているとかなんとか。因みに副業で農家さんのお手伝いをしているらしいけれど、そっちの方が収入は良いらしい。

 御堂、なんてそれっぽい苗字をしているから余計に誤解してしまった。

 

「あ、そうだ改めましてコレを……」

「おー名刺なんて初めてもらったよー」

 

 大学名と学科名、それに吉野千種(よしの ちくさ)と私の名前が印字されているだけのシンプルな名刺。

 

「あーそうだ千種ちゃん、御堂さん、じゃなくてヨバリって呼んでよー」

「え」

「御堂って苗字あんまり好きくないんだよねー。なんか仰々しいじゃん?」

「えと、じゃあ、呼、さん」

 

 むふん、と満足げな御堂、いや呼さん。ちょっと驚いたけどコレは良い傾向。距離感が近くなって本当に何でも聞きだせる雰囲気になりつつある。

 

「それでー? 黒百合祭の事だっけー?」

「くろゆりさい……というのがお祭りの名称なんですか?」

「あー何も知らないんだっけ、そだよー」

 

 黒百合祭。黒百合。あ、もしかして。

 

「……黒百合姫」

「おー流石学者さん、よく知ってるねー」

「が、学者って程では……!」

 

 黒百合姫。

 鎌倉幕府に謀反したとされ、自害した父の無念を晴らそうと復讐を志したお姫様。

 でも……。

 

「あれって東北のお話ですよね、何故……」

「ほんと良く知ってんねー。でもこの村とは関係無いねぇ」

「え、無いんですか」

 

 黒百合姫の話に反応があったのに、関係が無いとは。

 

「厳密には関係有るらしいんだけどさー。んー……あ、もっと詳しい人が来た。おーい村長さーん」

 

 社務所の外に向かってブンブンと手を振る呼さん。

 その視線の先には鳥居をくぐって来るお爺さん。何かを探しているようで、私に目が合うとにっこりと微笑む。

 ……私を探していた?

 …………あ。

 

「ごっ、ご挨拶もせずにすみません……!」

「いやいや、構わん構わん」

「いえそんな……」

「こんな小さな村に学者先生が来たと聞いてね、有り難い事だよ」

 

 そう言って十字を切る村長さん。……珍しい、キリスト教の方なのかな。

 ちょっと面食らったものの村長さんは正に好々爺という感じの御方で、私みたいな余所者に対しても気さくに話してくれた。

 

「ほう黒百合祭の事で」

「そうなんです。黒百合姫と関係があるのですか?」

「ふーむ……無い、とは言い切れないな」

 

 因みに呼さんは隣でお饅頭を食べている。待って、食べ過ぎです、村長さんの分が無くなってしまう。

 

「ここはね、隠れキリシタンの村だったのだよ」

「隠れキリシタン……」

 

 江戸時代、幕府が禁教令を布告してキリスト教を弾圧した後も、隠れ潜んで信仰を続けていたキリスト教徒。

 

「だからなのかな? この村はキリスト教徒が多いんだ」

 

 なるほど、それで村長さんは十字を切ったのか。

 

「当時の資料はほとんど残っていないが、どうやら故郷を追われてきた人々がご先祖様のようでね」

「故郷を追われた……」

「そう。何でも東北から逃れてきたらしい」

 

 追い出された、東北、黒百合姫。繋がってきた。

 その顔が表情に出たのだろう。

 

「流石は学者先生。なんとなく想像がついたかい?」

「……故郷への復讐、ですか?」

「あっはっはっはっは!」

 

 私の回答がおかしかったのか大声で笑われてしまった。む、呼さんも地味にクスクス笑ってるし。

 

「はー、逆だよ逆」

「逆、ですか?」

「そう。復讐なんてとんでもない事だよ」

 

 諭すように言われてしまった。あ、そうか。隠れてまで信仰し続けていた敬虔なキリスト教徒が復讐なんてやる筈もない、か。

 

「復讐心なんて持ってはならない。黒百合姫のようになってはいけない、というのがお祭りの起源らしいよ」

「うぅ」

「なに、気にする事はない。久しぶりに大笑いさせてもらったよはっはっは」

「うぅぅ」

 

 じ、自分の浅はかな考えが恥ずかし過ぎる……!

 

「それでまぁ、自分達への戒めのために、黒百合祭、と名付けたのがうちの祭りさね」

「なるほど……」

 

 だから黒百合姫とは関係が無くも無い、という話だったのか。

 

「だがそれももう出来なくなってしまってねぇ……」

「え……」

 

 村長さんは寂しそうに溜息をつく。もう、出(・)来(・)な(・)い(・)?

 

「祭りに関して決まり事があってね」

「決まり事……ですか」

 

 例えば、神主さんがご高齢なのと関係があったりするんだろうか。

 

「うちの祭りを、ちゃんとしたお祭りとして最初に行ったのは宣教師様の子孫と双子の巫女だったらしいのだがね」

 

 宣教師と双子の巫女。

 ……あぁ、それで呼さんの虹彩が薄かったのか。当時の外国人との血がこの地に流れているんだろう。

 

「双子の巫女、なんてそうそう用意出来るわけ無いじゃないか?」

「そう、ですよね。その代は良くても次の代は……」

「その通り。だから次の代からは双子の代用として、二人の女性が巫女となって祭りを執り行う事になったのさ」

 

 何かを代用して、それをそのように見立てて、というのはよくある話。

 ……でも双子は当時穢れや凶兆の象徴とされる事が多かったと思うのに……キリスト教で双子の扱いどうだったかな、こんな事ならそっち方面も勉強しておけば良かった。くっ、今すぐ資料を漁りたい。いや今はとりあえず村長さんのお話に集中しなければ。

 

「……だけど代々、巫女は村で未婚の女性がなるものでね」

「あ……」

 

 ピンと来てしまった。

 この村で、未婚の、女性。

 

「恥ずかしい話。この村には若いのは残ってくれなくてね。呼ちゃんくらいしかもういないんだ」

「くらいとは何だ村長さーん?」

「はは、ごめんよ」

 

 限界集落という感じはしないけれど、確かにこの神社に来るまでに若い人はほとんど見かけなかった。見かけた女性達も、誰かしらとご結婚されてたりするのだろう。

 ……なるほど。双子巫女が、未婚の女性が居なかったから……でもそれだけでお祭りを止めるほど?

 

「あの、伺って良いのか分かりませんが……」

「何で既婚女性を巫女にしなかったか、だろう?」

 

 この村長さん、本当に話が早い。

 

「残念だが私が知っているのはここまでなんだ」

「え?」

「巫女の役割については口伝だけでね。代々の巫女しか知らないんだよ」

 

 ……という事は?

 

「そう! それ以上は呼ちゃんしか知らないのだー」

 

 今まで沈黙していた呼さんが立ち上がる。お饅頭が全部無くなってる、だと……。

 

「ふむ、良い機会だ。私にも教えてくれないかな」

「ダメでーす」

 

 ……む。

 

「あの、呼さん」

「千種ちゃんは可愛いけど教えられませーん」

「かわっ⁉」

 

 予想外の事を言われて顔が熱くなる。そんな爆弾を落とした張本人はバッテンマークを私達に突きつけていた。

 

「これだけはねー、巫女にしか言えないかなー」

「他の巫女をやった子達も揃ってそう言うんだよねぇ」

 

 いけない。恥ずかしがっている場合じゃない。

 

「どうしても未婚女性じゃないといけない理由があるのですか?」

「どうしても、って訳じゃないんだけどー……って千種ちゃん、誘導尋問はやめるんだ」

 

 むぅ、探るな、という事か。

 とするとやはり黒百合祭は秘祭、のようなものなのか。大っぴらに行うお祭りとは別に、何かしらの秘めた祭事がある、と。

 ……でも仕方ない。今の段階でこれ以上深掘りするのは無理だろう。ここが引き時、か。

 

「だけど、教えてもいい条件があります」

「……え?」

 

 諦めかけていたのに、思いもよらない事を言い出す呼さん。

 

「千種ちゃん。年末って暇かなー?」

「年末、ですか? ……冬休みですから時間はあると思いますが」

「ふむふむ」

 

 年末に何が……何でいきなりそんな事を。

 

「村長さん。今年、黒百合祭しません?」

「えぇぇ? いきなりどうし……まさか」

 

 ……いやいや、そんなまさか。

 

「千種ちゃん。私と一緒に巫女役やんない?」

「えぇぇぇっ⁉」

「巫女的にはおっけーなんだけど……あ、千種ちゃん彼氏とかいる?」

「い、いませんけど……」

「じゃー尚更おっけー」

 

 そんな、いや秘祭に参加したなんて卒論にもってこいのネタだけど、いやそんな。

 彼氏なんていないから間違いなく未婚の女性でもあるけど、いやそんな。

 

「だから後は村の人らとか村長さん次第なんだけど、一緒に巫女してくれるなら教えられるよー?」

 

 そんな変化球、アリなのか。

 

「い、いや、しかし……よその子に祭事を任せるのは……」

「そう言って何年もお祭りは出来ても黒百合祭は出来てないじゃないですかー。ここは新しい風を吹き込ませないとー」

「む、むぅ……」

 

 村長さんも困っている。いや私が当事者だったとしても困ると思う。

 今聞いた限りだと、本当に特別なお祭りなんだって分かる。何せ巫女が揃わないから見送っていたほどのお祭り。部外者が立ち入って良いものとは思えない。

 

「千種ちゃんだって興味あるでしょー?」

「いや、そりゃありますけど……」

「村長さんだってちゃんとしたお祭りしたいでしょー?」

「いや、そりゃそうだが……」

「じゃあ良いじゃないですかー」

 

 むふー、と得意げな表情の呼さん。

 いやそりゃ確かに興味はあるしネタとしては最上級のものだけど……流石にそこまで厚顔無恥にはなれない。

 

「いや呼さん、流石にそれは恐れ多過ぎますって……」

「そーおー? 割とアリだと思うけどなー」

 

 いや呼さん的にアリでも村的にアウトだと思うんですが。

 村長さんだって困って……村長さん? 何ですその決心したような表情は。

 

「吉野さん」

「は、はい……」

 

 マジですか。マジなんですか。ちょっと待ってください心の準備がですね。

 

「もし、村の皆がそれを許した場合なんだけどね」

「……はい」

 

 ……なんて言ってる場合じゃない。これは、チャンス。

 

「その時は、巫女、やってくれるかい?」

 

 今逃したら、絶対にもう巡り合えない機会。

 だから、

 

「……若輩者ですが、その際は誠心誠意務めさせていただきます」

 

 私なりに本気の返事をすると、村長さんはゆっくりと頷いた。

 

 

 

 それからお祭りの事とか村の事を少しお話した後、村長さんは席を立った。

 

「さて、忙しくなるね」

「そっちの事はお任せしましたー」

「……手伝ってくれても良いんだよ呼ちゃん」

 

 苦笑する村長さんに対して知りませーんと返す呼さん。

 

「じゃあ吉野さん。決まったら連絡……あぁ、連絡先教えてくれるかい?」

「あっはい、では名刺の裏にでも……」

 

 そうして村長さんは去って、呼さんと私が残された。残されたと言っても元々二人だったのだけれど。

 

「……た、大変な事を承諾してしまった気がします」

「あははーまぁねー」

 

 若干の後悔、いや後悔はしていないんだけどやってしまった感が強いというか。

 

「そんな重く考えなくてもいーのにー」

「重く考えますよ⁉」

 

 なんせ条件が揃わなかったから出来なかった祭事の主役抜擢、重くない筈が無い。

 

「まぁまぁ。巫女は社の中でこっそり簡単な事するだけだからー」

「……そう、なんですか?」

「そだよー。だからヘマしようが失敗しようが誰にもバレなーい」

 

 それなら……少しは気が楽、なのかな。

 

「寧ろ人に見せられないっていうか」

「え?」

「なんでもなーい。さっ、良かったら村の事案内するよー」

「え?あのっ、え、あ、待って、待ってくださいっ⁉」

 

 立ち上がって靴を突っ掛けたかと思うと、呼さんはそそくさと外に行ってしまって慌てて追いかける。

 意味深な呟きが聞こえた気がするけれど、村を紹介されているうちに、そんな事があったという事なんて頭からスッポリと抜け落ちてしまっていた。

 

 

 

 

 

●●●●●●

 

 

 

 

 

 ……という事があったのが二ヶ月前。私はまた定藤村に来ていた。

 

 と言っても、最初に訪れた時以降ちょくちょく暇を見つけては訪れていたんだけど。フィールドワークはそういう地道な活動が重要なのです。

 隠れキリシタンらしい建造物を見学させてもらったり、農作業をお手伝いしながら昔話を伺ったり、おかげで村の方々とはだいぶ仲良くなれた気がする。

 

 あれから村で話し合った結果、私は黒百合祭の巫女として祭事を行う事を認められた。正直荷が重くて未だにプレッシャーで潰れそう。

 って事を巫女を経験した事のあるお姉さん方に話したら、皆一様に苦笑しながら頑張れ、と言ってきたのは何なんだろう。皆が皆苦笑してるのがすごい気になるんですけど。あれですよね?緊張し過ぎだって言いたいんですよね?そうですよね?

 あまりにも不安で呼さんに相談したら相談したで、

 

「まぁまぁ」

 

 で済まされるし。くっ、村長さん助けて。

 

 ……で、年も暮れ始めた十二月の半ば。大晦日に行われる黒百合祭に向けての準備が始まった。私は特に何もしない、なんて事は無い。手伝える部分は積極的に手伝った。……あんまり重いものは持てなかったけど。

 本番の二週間も前にこの村に来たのは単にお祭りの準備を手伝うためだけじゃない。呼さんから儀式内容を教えてもらうためでもあった。

 

「祝詞が変わっててねー」

 

 この村に来てから数日経った頃、私は呼さんの家で二人っきりの指導を受けていた。

 

「かしこみかしこみーって感じじゃないんだよー」

「掛けまくも畏き……てやつですか?」

「そーそーそれ。そういうの全然ないのー」

 

 隠れキリシタンの里って経緯があるし、アーメンとかそういうのだろうか。

 

「じゃ、メモしないで頭で覚えてねー?」

「頭で……あぁ、口伝なんでしたっけ」

「そーそー」

 

 巫女以外に教えぬよう、記録に残す事すら許されない秘事に、ごくり、と喉が鳴る。

 

「アテー、マルクト……」

 

 祝詞が、始まった。

 ……けれど、これは、

 

「ヨッド、ヘー、ヴァー、ヘー……」

 

 それは、

 

「我が前にラファエル……」

 

 キリスト教、確かにキリスト教関連の祝詞。

 

「……って感じなんだけど、覚えれる?」

「あ、えっと、その」

「一回じゃ覚えられないよねー。じゃあもっかい、アテー……」

 

 これは、魔術だ。魔術儀式だ。確か、祭祀場を作るための浄化の呪文。

 ……すごい。これは正しく秘祭だ。秘密の儀式だ。

 

「……星が輝く、と」

 

 内からこみ上げる何かを必死に抑え、呼さんの言葉を必死に覚える。

 こんな事なら勉強の息抜きとかじゃなくちゃんと調べておけば良かった。

 だって魔術なんて日本の民俗学に関係あると思わないじゃん……!

 

「これが祝詞ね?で、これを唱えながら十字を切ったり星を描いたりするんだけど……」

 

 うぐ、覚えきれるかな。でも、覚えるんだ。

 

「まぁ本番も私が隣でやってるから、それをマネすれば良いんだけどねー」

「いえっ! 頑張って覚えます!」

「おー頼もしい」

 

 だって、だってだってだって!

 自分がこんな特別極まりない秘祭に関われるなんて、思ってもいなかったんだから!

 

 

 

 

 

「……こんな感じで星を描いて十字切って終わり、と。星描くの多くて面倒だよねー。本番では木の剣を持ちながらやるからもっと大変だよー? ……ん、そろそろ休憩しよっかー」

 

 覚える事だらけでパンク気味だったから正直助かる。思わずへたりこんでしまった。

 

「あははー。あと一週間ちょっとで頑張って覚えようねー」

「はい……」

 

 本番も隣で手本を見せてくれるとは言っても、こんな機会二度と無いのだから完璧にやりたい。そう気合を入れてもなかなか現実は厳しいもの。

 あと一週間ちょっと、本当になんとかしなければ。

 

「まーなんだかんだ繰り返してたら二、三日で覚えれるよこんなのー」

 

 呼さん地味にスパルタじゃなかろうか。いやそんな事言っちゃいけない、折角教えてくれてるんだから。

 

「……間違えたら罰ゲームとかしてみる?」

「勘弁してください⁉」

 

 紛う事なくスパルタだった。ゆったりした雰囲気の人なのに、詐欺だ。

 

「じゃー早速罰ゲームとしてお茶を淹れてもらおー」

「いや罰ゲームじゃなくてもそのくらいしますよ」

 

 という訳で一服タイムとなった。

 

「んー。千種ちゃんはお土産が毎回美味しくて好きー」

「あはは、恐縮です」

 

 急須に電気ポットからお湯を注いでいると、呼さんは早くもお菓子を頬張っていた。うん、私の分はどれだけ残るだろう。

 

「さーて、ちょっとした小話でもしてあげよー」

「……と言いますと?」

「さっきまで練習してたアレさ、ツイナ?って儀式らしいんだけど」

 

 練習で何度も描いた星をもう一度描く呼さん。

 ……ツイナ? ……追儺?

 

「えと、鬼を払うとかいう宮中行事の事ですか?」

「え、逆に知らない……けど、似たよーなもんかなー。コレって穢れを祓う儀式なんだってー」

 

 鬼とは悪いもの、恐ろしいもの、目に見えない何か、病、色んな暗喩がある言葉。でも共通しているのは穢れとされているものばかりという事。

 だから穢れを払う儀式と言われてすぐに納得出来た。

 

「でー。女の子ってほら、昔から穢れみたいな扱いだったんでしょー?」

「語弊を招く表現ですが、まぁそうですね」

 

 月のものであったり、仏教的な思想であったり、この国に仏教が伝来した頃から女性は不浄のものという見方をされてきた。今では有り得ないけど。……あれ、でもこれキリスト教的な儀式じゃなかったっけ。

 

「んでー。双子って、これまた穢れの象徴みたいな扱いだったんでしょー?」

「戦前くらいまではそんな感じだったらしいですね」

 

 心中した男女の生まれ変わりだとか、畜生の生まれ変わりだとか、そんな感じの思想が無くも無かったらしい。

 

「双子の巫女なんて超穢れだよねー」

「いやそれは……」

 

 そうかもしれないけれど、そうですねなんて言える筈がない……。

 

「そんでー。そんな超穢れをツイナで清める事によって、この土地も人も綺麗になりますよーってのがこの儀式の概要らしいよ? 復讐心とかも綺麗さっぱりー」

「……おぉなるほど」

 

 ……色々繋がってテンションが上がる。知識欲が満たされまくっている。

 最初の双子巫女は偶然だったのかもしれないけれど、黒百合祭をするに至る経緯も儀式の内容も、色々しっくり来る。くっ、今すぐ論文を書きたい。あぁぁダメだ巫女に関する部分は残さないって約束なんだったぐぬぬぬぬぬ。

 

「でさー。ツイナは儀式の最初と最後に行うの」

「……あれ? 追儺が儀式そのものじゃないんですか?」

「違う違う。最初に儀式場を祓ってー、最後に穢れを祓うの」

 

 追儺は、儀式そのものじゃ、ない? でも穢れを祓う儀式だって、そう言っていたのに。

 ……儀式場を祓って、何かを行って、最後にまた祓う……途中で穢れるような事がある、という事……?

 

「じゃーツイナとツイナの間に何をやるかと言うとー」

「……はい」

 

 喉が勝手に鳴る。それこそが儀式の本質なのだと、身を乗り出してしまう。

 

「ちなみに、ここから先を聞いたらマジで儀式が終わるまで逃がしません」

「に、逃げません⁉」

「逃げた前例があるらしいからねー……」

 

 待って、冗談半分で逃がさないとかじゃないんですか。

 

「という訳で、実は千種ちゃんの車のキー、今は金庫の中にあります」

「いつの間に⁉」

 

 た、確かに呼さんの家に泊まってるから借りてる寝室にキーとか色々置いてたけど! ガチで逃がさない系のアレじゃないですか!

 

「覚悟は良いかなー千種ちゃん」

「いや、そこまでしなくても覚悟はもう……」

「じゃー言い方を変えよー。覚悟しろ千種ちゃん」

 

 どれほどの覚悟がいる儀式なの……。

 

「ツイナとツイナの間に何をやるのかと言うとー」

「はい……!」

 

 

 

「まずはオナニーします」

 

 

 

「……はい?」

「そしてお互いのおまんこをくちゅくちゅします」

「ちょ」

「そしてお互いのお汁を混ぜ合わせます」

「待って」

「最後にお互いのおまんこでくちゅくちゅします」

「待ってください」

 

 一切待ってくれなかった。

 いや、なんて?

 

「何言ってんです?」

「黒百合祭の本番の事だけどー?」

「いや何言ってんです?」

 

 とんでもない事を言い出した呼さんはずずずっとお茶を飲んでいる。……私も飲もう。

 

「……いや、おかしくないです?」

「おかしくないよー。マジだもん」

 

 お茶を飲んでも頭の中は整理されなかった。おかしいにも程があると思うんだけど。

 

「マジもマジ、大マジー」

 

 ほんわかと、いつも通りのテンションで話す呼さん。冗談だってばもうーとか言ってもおかしくない雰囲気なのに、その言葉がいつになっても出て来ない。

 

「……え、マジなんですか?」

「だからマジだってー」

 

 いやいや。いやいやいや。

 

「…………逃げていいです?」

「逃がさないよ」

 

 言葉に!圧が!ほんわかした空気が!無いっ!マジかっ……!

 

「えぇぇぇ……えぇぇぇぇぇぇ……」

「うん、その気持ちは分かる。私もそうだった」

「えぇぇぇぇぇマジなんですか……?」

 

 いやいやいやいやいやいや。いやいや、そんな儀式があってたまるか。黒魔術的な儀式じゃないんだぞ、って思いっきり魔術的な儀式だった……。

 

「まーまーお聞きなさいよ千種ちゃん」

「……はい」

 

 ……とりあえず、とりあえずもう少し詳しい話を聞かなければ。

 

「オナニーでさー」

 

 どうしよう、早くも挫けそう。

 

「まず自分の中の穢れを産むんだって」

 

 …………あー、女は穢れそのものだから、その根源を作り出す、的な感じだろうか。え、オナニーで?

 

「そんで、お互いのおまんこくちゅくちゅなんだけどー」

 

 どうしよう、一々挫けそう。

 

「相手の中の穢れを掻き出すんだって」

 

 …………あー、作り出した、象徴化した根源を実際に取り出す、と。

 

「そんで、お互いのお汁混ぜ混ぜなんだけどー」

 

 だから言い方……。

 

「双子の穢れはなんか、元々一つのものだったんだって。それを一つに戻すとかなんとか」

 

 …………あー、双子は一人の人間を分けた的な考えで、だから分かれた穢れを一つにする、と。

 

「そんで、最後のお互いのおまんこ同士でくちゅくちゅなんだけどー」

 

 おまんこ同士で(・)!? そんな事言ってた⁉

 

「それはよく分かんないんだって」

「えぇぇぇぇぇぇ⁉」

「言い伝えが途絶えたっぽいんだよねー。学者先生的にはどう思うー?」

 

 そんな、意味も分からないものを今の今までやってきたって事ですか巫女さん方……まぁ、でも口伝ならば途絶えてしまうのは普通に有り得るか。

 ……というかこんな内容だから先輩巫女さん方は苦笑してたのか……。

 

「……因みにですが、お、ぉま……同士でくちゅくちゅって、所謂、その、貝合わせ的なサムシングでしょうか?」

「やーん千種ちゃんのえっちー」

「おまんこおまんこ言ってたのはどっちですか⁉」

 

 私がエロいんじゃない、この村の巫女さん達がエロいんだ。違う、そんな事言ったらお姉さん巫女さん達に殺される。呼さんがエロいんだ。

 ……まぁ、エロい事はさて置いて、ダメだ、さて置けない。

 貝合わせで〆る、かぁ……穢れを産み、穢れを取り出し、穢れを混ぜ合わせ……最後にそれを祓うんだとすると……。

 

「……穢れの圧縮、的な、感じ、とか、ですかね……?」

「あー、おまんこ同士でくっちゅくっちゅするのそんな感じするー」

 

 呼さんの言い方が一々性的過ぎる……。

 

「わ、分かりませんけどね⁉ 私のコレは言い伝えないでくださいよ⁉」

「あははー」

「呼さん⁉」

 

 私の一意見ごときが村の言い伝えになるとかマジやめてください。

 

「まーそんな感じで、ツイナ、エロ、ツイナ、で儀式は終わりー。簡単でしょ?」

「簡単なわけあるかっ⁉」

 

 いかん、つい叫んでしまった。さっきから叫んでるけど。

 というか、というか何だそれ、何だそのエロ儀式は……キリスト教的なものかと思えば仏教思想も混ざってるっぽいし、最初に始めた宣教師の子孫さん何か色々中途半端な知識で始めたんじゃなかろうか……というかそれをやる双子巫女もどうかしてる……。

 

「……あのぅ」

「なにかな千種ちゃん」

 

 というかそもそも。

 

「その……女性同士で、いろいろ、するんですよね……?」

「そだよー?」

 

 そだよーて。えぇぇ、えぇぇぇぇ……。

 

「あー千種ちゃん女同士だとダメな人?」

「ダメじゃない人の方が少ないと思います!」

 

 そんな困った表情されましても。

 

「でも女の子同士で抱きついたりするの、やらなかったー?」

「やったこと、ありますけど……」

「それの延長みたいなものだからだいじょーぶだいじょーぶ」

「えぇぇ……」

 

 絶対違うと思う。

 次元が違うと思います。

 

「それとも……」

 

 頭を抱えていると、呼さんは対面で座っている私に近付いてきて、

 

「そっちの練習も、する?」

 

 私の耳元で、艶っぽく、そう囁いた。

 

「~~~~遠慮しますっ!」

「ざーんねん」

 

 思わず耳元を押さえて後ずさると、呼さんはクスクスと笑った。

 か、揶揄われた……!

 

「まーそこは先輩巫女の私がリードするから平気だよー」

「そうは言いましても……」

「なんとかなるなるー。どうせ逃がさないんだから」

 

 怖い。言い方が怖い。

 ……でも、というか、ヤバい。なんせオナニー見せつけだの、おまんこくちゅくちゅだの、貝合わせだの、未経験の嵐にも程がある。いやオナニーくらいした事あるけどいっぱいしてるけど。

 ……というか、呼さんの目の前でというか、呼さんも、こんな綺麗な人でも、オナニーするんだ。

 ……というか、呼さんと、スるんだ。

 

 …………。

 

 いや、いやいやいや。それならちょっと良いかなとか思ってない。思ってないから。

 

「じゃ、練習再開しよっかー」

「練習っ⁉!?」

 

 さっき断っ!?

 

「……? ツイナの練習」

 

 あー。あー! そうですねそうですよね!

 

「んふー、千種ちゃんのえっちー」

「ちっ、違いますよ!」

 

 散々揶揄われながらの練習となったのは言うまでも無い。

 

 

 

「……あ、因みに既婚女性がダメな理由って」

「やー、流石にお相手がいる人にやらせるのはちょっとねー……」

「……なるほど」

 

 わりと良心的な理由だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●●●●●●

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなこんな、エロい事から若干目を背けつつ、黒百合祭の当日となった。勿論心の準備など出来ていない。でもまぁ、晴れて良かった。勿論私の心は晴れてない。

 

 この日のために神社の境内は除雪され、篝火がそこかしこで焚かれている。

 屋台、なんて気の利いたものはなく、皆さんブルーシートの上で酒盛りをしている。寒くないんだろうか。

 そんな外と違って、社の中はストーブが焚かれていて実に暖かい空間になっているらしい。そんなストーブを焚いて何をするというのでしょうね。

 

「おぉ千種ちゃん」

 

 現実逃避していると村長さんがやってきた。

 ……顔が赤い、けっこう呑んでるなコレ。

 

「うんうん。巫女姿も様になってるねぇ」

「それは、どうもです」

 

 巫女服の着方なんて分からなかったから、呼さんに手取り足取り教えてもらった。というか巫女服めっちゃ寒い、上に何か着ていいですか。下に何も着けてないのもあって超寒い。下着代わりの襦袢とか全然あったかくない。

 

「いやーこんな村のために本当に済まない」

「い、いえっ! こんな光栄な事ありませんからっ!」

「はっはっは、そう言ってもらえると嬉しいよ。お役目、頑張ってね」

「……はいっ!」

 

 はいとは言ったものの、気が、重い。

 なにせエロである。オナニーである。くちゅくちゅである。貝合わせである。

 呼さんと、これから、あんな事やこんな事やそんな事をするのである。

 

「千種ちゃーん」

 

 村長さんと色々話してたら呼さんがやってきた。

 ……顔が赤く見えるのは寒いからですよねそうですよね? でも儀式にお酒は付き物か。私も景気付けのために少し呑んどけば良かった。お酒パワーでなんとか乗り切れば良かった、うぅ。

 

「そろそろ始まるから、行こー」

「あっはい。……村長さん、それでは」

「あぁ、頑張っておいで」

 

 呼さんに手を引かれ社の方へ近付くと、ドン、と大きな音が鳴った。黒百合祭の時だけ使われる、大太鼓の音。

 

「けっこう大きい音でしょ?」

「そう、ですね。びっくりしました」

 

 体の芯まで響くような、重い音。

 

「それに、皆けっこう騒いでるでしょ?」

「……? そう、ですね?」

 

 確かに村中の人達が集まっていて、ガヤガヤとしている。

 

「だから中の音なんて聞こえないから安心してねー」

「……? ……⁉」

 

 安心て、安心って……!

 挙動不審になっていると、太鼓の音がどんどん早くなっていく。呼さん曰く、お祭りの間は、儀式の間はずっと交代交代で叩き続けるらしい。それはそれは、気を遣ってもらってありがとうございます。……太鼓叩き選手権?なるほど、そういう娯楽でもあるのか。

 ついでに儀式中は社を覗き込んだり聞き耳を立てたりすると酷い村八分に遭うらしい。村社会怖い。けどグッジョブ。いやだって、そんな、エロ儀式を見たり聞かれたりされたら首を括ってしまう。

 ……追加情報で、社の中からの音は割と遮断されるらしい。

 だから、安心らしいですよ?

 だからあの、先代までの巫女のお姉様方、そんな生温い笑顔でこっち見ないでください。

 

 

 

 そして、お祭りが、始まった。

 

 

 

 村の皆さんは太鼓の音に合わせて歌って、踊っている。

 けれど、よくよく聞いてみればそれは、

 

「あーあてぇーまーぁるくぅーとー……」

 

 追儺の祝詞をそれっぽく歌にしたものだった。

 呼さんに聞いてみると、これも儀式の内、とのこと。……なるほど、儀式場を外からも浄化して、祓っているんだ。いや、村全体を祓ってる事になってるのかな。ううう今すぐ考察して論文書きたい。

 

「さ、行こー?」

「……はい」

 

 けれどそうはいかない。賑やかなお祭りの中、私達は社へ向かう。

 そう、黒百合祭が、始まるのは、ここから。

 

 

 

 周りの音が遠くなり、石油ストーブの音が静かに響く室内。電灯で照らされていて、古めかしい雰囲気は感じられない。

 

 ……ここで、オナニー、見せちゃうんだ。呼さんと、スるんだ。

 心臓が、否応なくバクバクと大きく脈を打つ。ここで、こんな場所で、えっちな事を、してしまうんだ。自分であそこをかき回して、呼さんのあそこも、かき回して、あそこを、擦り合わせて、

 

「千種ちゃん?」

「ひゃいっ⁉」

 

 これからの事を想像してモヤモヤ……発情なんかしていない……していたら、呼さんから急に声をかけられてびっくりしてしまった。

 

「んふー、えっちー」

「なっ! ち、違いますっ!」

 

 えっちな事なんて、考えて……ますけども。

 

「千種ちゃんはえっちっちー」

「変な歌を歌わないでくださいよ⁉」

 

 あと私はえっちじゃない。この儀式を始めた双子巫女がえっちだっただけだ。

 ……なるほど、双子巫女はもしかしたら禁断の恋をしていたのかもしれない。それで儀式と言い張ってそのような行為に及んで、祭りの時だけ成就されるような、そんな儚い恋をしていたのかもしれない。だったらなんとなくこの儀式がエロくなっちゃったってのは、理解出来なくもない、か。

 

「あれ、学者さんモードになってる。つまんないのー」

 

 つまんないと言われても私は学者の卵だ。こうして真面目な考察をするのが、

 

「これからえっちな事するのにー」

 

 ええい、思考をエロ方面から逃そうとしていたのに。

 ……うわぁ。うわぁ、ホントに、ホントにするのぉ?

 

「まー皆を待たせるのもアレだし、ちゃっちゃとやっちゃおー」

「ヤる⁉」

「……千種ちゃん。ツイナだよツイナ」

 

 ……まずは儀式場を清めなければならないですもんねそうですよね。そして、その後、は、うぅ、うぅぅぅぅぅ。

 

「……千種ちゃんってけっこうえっちだよねー」

「仕方ないじゃないですかっ!」

「んふー、まぁね。さ、やろっか」

「……はい」

 

 今までのニヤケ顔をきゅっと引き締める呼さん。……こうしてると本当に美人なんだけど、こんな美人さんと、これから……いかん、えっち方面にしか思考がいかない。真面目にやらなくては。

 

 

 

 

 

 祝詞を唱えながら十字を切る。

 

 ……この仕草をするだけで、スイッチが入る気がする。何度も練習した儀礼。やましい心が消えていき、心がどんどん静かになる。

 

 東に星を描き、唱え、南に星を描き、唱え、西に星を描き、唱え、北に星を描き、唱える。

 

 ……儀式短剣を模した木剣を片手に、儀式場を動きながら五芒星を切っていく。

 一種のトランス状態、とでも言うのだろうか。雑念が消え、だけど気分は高揚し、この儀式場が清浄で満たされていくような幻覚さえ視る。

 

 東に戻り、体で十字を体現し、祝詞を唱え、最後に十字を切りながら祝詞を唱えた。

 

 

 

 

 

 木剣を下ろし、息をつく。

 この上なく上手くこなせた。間違いなく、穢れを祓う事が出来た。

 

「さーえっちっちしよっか千種ちゃーん」

 

 穢れそのものが目の前にいた。

 

「……あの、ホントにやるんですか……?」

「いやだってそれこそが黒百合祭だしー」

「ですよね……」

 

 最後の悪足掻きをしてみたけど、無駄だったらしい。

 呼さんは隅っこの方にあった座布団を持ってきて、自分の分と私の分を敷いた。……敷いたんだけど。

 

「……近くありません?」

「そーかな?」

 

 座布団と座布団の間が、やけに狭い。

 そんな、そこに腰をおろして、その、オナ、したら、丸見えでは、なかろうか。

 

「……こう、隅っこ同士でやるとか」

「ダメでーす。これはそういうものでーす」

 

 そういうものだと言われたら、従うほかない。

 けど、けどだ。こんな近い距離で、恥ずかしいところを見せ合って、そこを、いじっちゃう、の?

 

「まーまー座って座ってー」

 

 促されて、もたもたと座布団に座る。

 目の前に座った呼さんは、とても近くて、やっぱり綺麗で、白衣(びゃくえ)を押し上げている胸に目が行ってしまって、袴の奥にあるものを幻視してしまって。

 

「……千種ちゃん」

「は、はいっ⁉」

 

 視線を無理やり急速に上げると、ニマニマしている呼さん。

 ま、まずい。視姦みたいな事をしていたのがバレている。

 

「お姉さんの服の下がどうなってるか、知りたい?」

「いや年下ですよね呼さん」

 

 思わずツッコんでしまった。

 

「巫女としてはお姉さんだからいーんですー……じゃあ、始めよっか」

 

 そうして、その言葉通り、私の心の準備も出来ていないままに、呼さんは動き出した。

 

 帯紐はそのままに、白衣に手がかけられる。

 合わせのところから左右にくつろげられ、鎖骨が見え、肌色の部分がゆっくりと面積を増していく。

 お臍が見えるんじゃないかというほどに前が開けられ、衣服の間から柔らそうな二つの球体が垣間見えた。

 

「……っ」

 

 その衣服の乱れに、思わず息を呑む。

 副業でやっているという農作業で鍛えられているのか、引き締まったお腹はとても綺麗で、デコルテのところなんていやらしさなんかよりも魅力的という感想が浮かぶ。

 けれどそこで呼さんの手は止まらず、更に左右へと動いていく。

 豊満な乳房がどんどんと顕になっていき、ついに、薄桃色の突起が、この目に飛び込んできた。

 最後まで開かれたそこには、たぷん、という擬音が聞こえてくるような大きな丸い胸。ツヤがあって、ハリがあって、同じ女でも、いや同じ女だからこそ目を離せなくなる、正に美巨乳と称すに相応しい胸。

 

「……千種ちゃんも、ね?」

「っ! は、はい……っ」

 

 見惚れていた。呼さんの美しすぎる胸に見惚れていたけれど、そうだ、私も、やらなきゃいけないんだ。呼さんと一緒に、やらなければ、ならないんだ。

 呼さんと同じように、巫女服の前をくつろげる。

 下着は着けず、襦袢と呼ばれる肌着だけ着けているから、呼さんと同じように私の胸もすぐに……サイズ的にも、綺麗さでも比較にならない自分の胸に自信が無くなり、恥ずかしさを覚え、手が止まってしまった。

 

「……もー、仕方ないなー千種ちゃんは」

「え? ……ぁ」

 

 それは咎めるような口調ではなく、優しさに溢れた声色で。すっ、と前のめりになった呼さんは、私の動かない手にそっと触れた。

 

「脱がしてあげる、ね?」

「……はぃ」

 

 恥ずかしさで、比較にならないこの身を曝け出す事の恥ずかしさに顔が熱くなる。

 けれど呼さんはふわりと優しく微笑んで、脱ぎかけだった私の白衣を、割り開いた。

 

「ぁ……」

「うん。綺麗だよー」

 

 人並みにはあるつもりの胸。でも、これ以上ないほどに美しいものとますます比較されてしまうようで思わず縮こまる。けれど呼さんは、こんな私の身体を褒めてくれた。

 その言葉に目線を上げると、前のめりになった少し重力に引っ張られた大きい胸が眼前に見えて、目が吸い寄せられてしまう。

 

「ふふ、じゃあ、今度はこっち」

 

 呼さんが離れていくのに少しの寂しさを覚えたのは一瞬だけだった。

 正座だった姿勢が、ぺたん座りとなり、片足ずつ、膝が立てられる。

 緋袴が脚の間に垂れ下がり、肝心なところは見えない。けれど見えないからこそ、眩しさを感じるような白い脚が見えるからこそ、その奥にあるものを想像してしまい、目線が、そ(・)こ(・)に釘付けになる。

 呼さんはそんな私の視線を感じているのか、またゆっくり、ゆっくりと袴をその手で持ち上げていく。

 電灯に照らされた室内では、そこさえも全て、詳らかにされてしまった。

 最初に目に入ってきたのは座布団との間で押し潰された柔らかな尻肉。むっちりとした肉に挟まれて形成された筋。そして、秘すべき場所。

 目が、離せない。そこから目が離せない。更に捲られて綺麗に整えられた茂みが現れても、袴が終点である脚の付け根まで捲られても、呼さんの大切な場所から目が離せない。

 

「……千種ちゃんのも、見せて?」

 

 クラクラする。目に見えるもの全てが媚毒のように私を苛んで、知らない内に呼吸が乱れていく。精神が汚染されていく。

 呼さんに促されるままに、膝を立て、袴を捲り上げ、恥ずかしい筈なのに、そこを晒す。

 顔が熱い。身体が熱い。まだ何もしていないのに、ただ服を捲っただけなのに、身体の芯が熱を持ってしまったかのように熱い。

 

「……さ、始めよ?」

「は、い……」

 

 呼さんが、ゆるゆると自らの胸を揉み始める。自分の形を確かめるように表面だけを撫でさすっているだけなのに、それは快感を呼び起こすための動きだと一瞬で分かってしまうような、いやらしい触り方。

 

「……ん……っ」

 

 時折ぐにゅり、と形が変わるほどに揉み込み、また撫でる動きへと戻っていく。

 ……呼さんは、胸から、始める人なんだ。

 

「……っ」

 

 呼さんの手の動きがあまりにも猥(みだ)りがわしくて、無意識に自分の内腿を撫でさすってしまっていた。

 膝の方から、内腿を中心へ向かって。呼さんの手の動きに合わせて何度も何度も撫で回すと、ゾクゾクするものが背を駆け抜ける。

 

「……ふふ」

「っ⁉」

 

 胸を這いずる手の動きに、内腿を這いずる手の動きに夢中になっていると、呼さんが突然笑って、思わず目を合わせてしまう。

 

「千種ちゃんの手、えっちだねー……?」

 

 呼さんの視線は、私の内腿に置かれた手に注がれていた。人前で知らず知らずの内にシてしまっていた事に今更恥ずかしくなって、思わず脚を閉じてしまう。

 

「見えなくなっちゃった」

「み、見ないでくださいよ……」

 

 恨みがましい目線を向けるけれど、呼さんはどこか恍惚とした表情で、

 

「ううん。見せて……? 私のも、見て……?」

 

 そう言って、見せつけるように胸を張って、その豊乳を弄び始めた。

 

「ぁ……は……」

 

 両手を使って柔らかなものが揉みしだかれる。たぷん、たぷんと大きな胸が呼さん自身によって蹂躙される。

 下側が感じるのか、持ち上げるようにして揉む事が多い。そのまま胸全体を揺らしたり、ぎゅう、と強く揉んだり、その度に呼さんの口からは艶かしい吐息が漏れる。

 

「んっ……ぁっ……」

 

 時折、丘の頂点にある薄桃色が掌に巻き込まれ、根元から押し倒される。その度に呼さんからは切なげな声があがり、ぴくん、と身体がほんの僅か力むのが見えた。

 ゾクゾクが、止まらない。

 内腿を撫で擦っているのとは別の何かがゾクゾクする。

 だから、空いている手を、思わず胸へ伸ばした。

 

「は、ぁ……っ」

 

 少し、ほんの少し乳房に触れただけなのに、そこからビリビリとした感覚が昇ってきた。今まで胸でこんな風になった事なんて無い。なのに、今は表面に触れるだけで、ゾクゾクが止まらなくなる。

 

「ふふ……ぁんっ」

 

 そんな私を挑発するかのように、呼さんは胸を持ち上げて、見せ付けるようにして、その乳頭を指で挟みこんだ。

 

「ぁ……んぅ……ん……っ」

 

 そのままくにゅくにゅと、乳首が揉み解される。

 見るからに弾力にあふれていそうなそれは挟まれ、揉まれ、捻られ、伸ばされ、二本の指で可能なありとあらゆる事が施されている。手口を変える度に呼さんの吐息は変わり、快楽を感じているというのがはっきりと分かってしまう。

 もはや双球は揉まれる事なく、ただ支えられているだけで、その先端だけが弄られ続けていた。

 

「んんっ……ちくび、きもち……」

 

 聞かせるつもりなど無かっただろう小さな呟きが耳に入る。だからこそ、その言葉を聞いてしまったからこそ、身体の奥の何かが更に熱くなってしまう。

 動き続けている指先の間にあるものが、薄桃色だったものが充血している。大きさを増している。乳首を指が押し潰していたのに、いつの間にか乳首が指を押し返すようになっている。

 それに気付いてしまった瞬間。ダメだった。

 

「あんっ……!」

 

 胸の表面ばかり撫でていた指先で、呼さんと同じように、乳首を挟み込んだ。

 ジン、とした快感が走る。きゅん、とお腹の奥が熱を持つ。

 そのままクリクリと乳頭を苛めると、たまらなく、でも切ない気持ちよさが生まれる。

 

「ふぁ……ぁっ……んっ……」

「は、ぁ……ぁ……んぅ……」

 

 呼さんは両手で、私は片手で、胸の先端にある小さなものを転がし続ける。

 くにくに、くにゅくにゅ、こりこり、ころころ。なんて表現すればいいのか分からない。でも甘くて、切なくて、気持ちいいという事だけは分かる。

 乳首と一緒に内腿を撫で擦ると、ゾクゾクしたものが止まらなくなる。

 このゾクゾクした何かを解消したい。だけどもっとゾクゾクしたい。

 そんな矛盾した思いを抱いていると、呼さんが乳首を前にぎゅううっと引っ張っていた。

 

「んんんんんぅぅぅぅぅ……んぁっ!」

 

 ぱちん、ぷるん、と音が聞こえてきそう。

 限界までおっぱいごと乳首を引っ張り、解放した。ただそれだけなのに、痛そうなのに、呼さんの表情がとても気持ちよさそうで、羨ましくなって、だから、

 

「あぅんんんんん……ひあっ⁉」

 

 頭が、パチって、なった。

 呼さんほど引っ張れる胸は無かったけれど、限界まで乳首を押し潰しながら引っ張って離しただけなのに、解放感が、たまらない。元の位置に戻った乳首が、ものすごくジンジンして、たまらない。

 

「ぁ……ぁっ……んぅ……っ」

 

 だから、すぐ撫でてあげないと、優しい快感を送ってあげないと。

 ゆるゆると乳首を撫でると、さっきよりも刺激が鋭敏に感じられて、ゾクゾクしたのがもっと大きくなる。

 

「あぅ、ん……は……っ」

 

 呼さんも、胸を鷲掴みにしてジンジンしたのを……片手だけで解消していた。

 もう片方は、なんて確認するまでもない。もう一つの手は開かれた脚の間に伸ばされていて、秘部全体を撫で回していた。

 ずるい。そんなのずるい。

 

「はぁぅ……っ」

 

 内腿を撫で擦っていた手を、その付根まで、付根よりも更に奥へと動かすと、くちゅん、とした感触と共にゾクゾクが解消される何かが広がった。

 

「ぁ……ん……んっ……」

「ぁあ……ふっ、ん……」

 

 くちっ、くちっと微かな音が鳴る。

 互いに秘部を、おまんこをかき混ぜる事に夢中になっている。おっぱいから、乳首から発生したゾクゾクを解消しようと躍起になっている。

 呼さんのおまんこが、私のおまんこが、胸を弄くり回した結果が塗り広げられて、ぬるぬるとしたもので覆われていく。

 そこをかき混ぜる度に秘唇が割り開かれる。愛液がまたこぼれ落ちる。おまんこがまたぬるぬるになる。いやらしい行為が繰り返される事により音は大きくなり、呼さんの、私の吐息が熱くなっていく。

 でも、そんな事でゾクゾクは解消されない。

 

「あっ」

「んっ」

 

 そう、そんな事では解消されない。

 だから解消させるために、おまんこ全体をかき混ぜていた手の位置が、もう少し上の方へと変わっていった。

 

「あぁ、ぁ……んぅ……あ……っ」

「はぁ……んん……ぁ、ん……っ」

 

 一番敏感な場所、ゾクゾクを止められる場所、クリトリス。そこをくにくにと触り始める。

 呼さんもそこを弄くりだしていて、今まで手で覆い隠されていた部分が曝け出されていた。

 そこは、ぬるぬるになった秘唇は今までの自涜で少しだけ口を開いており、指の動きに合わせてひくん、ひくんと収縮している。膣口のところには愛液の粒が滲み出ていて、今にもこぼれ落ちてしまいそう。

 

「あっ……んんんっ……あぁ……っ」

「ふっ、ん……ぁっ……んぅ……っ」

 

 こねこねと、クリトリスを捏ねくり回す。

 指先を揃え、円を描くように、かき回すようにするとゾクゾクが解消されていって、新たなゾクゾクが止まらなくなる。

 互いの口から漏れ出るものの湿度が高い。呼さんの喘ぎ声混じりの吐息が、耳を犯してくる。

 それでいて目はこちらを、こちらのおまんこを見詰めてきていて、こんなオナニーの見せ合いなんて有り得ない事なのに、どうしようもなく恥ずかしいのと気持ちいいのが混ざり合って、妙な興奮が止まらない。

 直接的な刺激と間接的な刺激によって身体は高まってきていて、指先から伝わる感触がくにくに、からコリコリ、に変わっていく。

 

「はぁぅぅ……んぅぅ……あぁ、ぁ……っ」

「んんんっ……はぁ、んっ……あぁ……っ」

 

 だんだん声を出す事に抵抗が無くなっていく。いや、堪えようとしても勝手に声が出てしまう。

 コリコリしたものを荒くこねこねするのが、たまらなく気持ちいい。思わず指の動きが加速していってしまう。

 呼さんもそれは同じなのか、指の動きが先程と比べて格段に早くなっている。おまんこなんかひくひくしっぱなしで、ついに膣口からは愛液がこぼれ落ち、お尻に向かって一筋の流れが出来上がってしまっている。

 でもそれは私も一緒の事で、お尻の穴に冷たいものが流れてきたのを感じている。呼さんの視線が下がっていて、きっとそこが見られてしまっている。

 ゾクゾクが、止まらない。

 

「あ、ぁ……はぁ、んん……ぁんっ」

「んぅぅ……んっ、ぁっ……んぅっ」

 

 呼さんの指が、クリトリスをこね回している。指先だけで円を描いていて、とてもいやらしい手付きで、そんな事をしてしまったら気持ちいいに決まっている。同時におっぱいを抱えながら乳首を抓っていて、どこまでも快感に貪欲な姿。

 半開きになった口からは吐息よりも嬌声の方が多くなってきていて、それを示すように微かに開いた膣口からの流れは多くなっていく。

 そんな淫らな姿を見てしまったら、羨ましくなってしまって、何か熱いものが込み上げてきてしまって、指に圧がかかり、クリトリスから昇ってくる快感が大きくなる。

 どこまでやっていいのかなんて分からない。いつまでやればいいいのかなんて分からない。けれど、もっと気持ちよくなりたい、もっとクリトリスをこねこねしたい。

 

「んぁっ……あぁ、ぁっ……ぅんんっ」

「はっ、は、ぁぁっ……あっ……あっ」

 

 心臓がドクドクと慌ただしく鼓動を刻む。目から入ってくる艶姿に、下腹部から昇ってくる快感に興奮が止まらない。

 

「あんっ!」

 

 そんな中で、呼さんはクリトリスから手を離したかと思った瞬間、にゅちゅ、とおまんこの中へと指を差し込んだ。

 そのままかき回すようにして、くっちゅくっちゅと卑猥な音を立てる。

 膣口が、指の形に歪む。二本に束ねられた指が抜き差しされながら中をかき混ぜていて、そこはとても柔らかくて締め付けているという事が嫌でも分かった。

 

「んっ……!」

 

 淫猥な撹拌は程なくして終わり、ちゅぷっ、という音と共に指が抜き去られた。

 その指はテラテラと光を反射していて、中がどれだけぬめりで溢れていたのかが分かる。おまんこの入口が先程とは比較にならないほどに開いていて、ひくん、ひくんとしていて、どれだけそこが求めているのかが分かる。愛液なんて、もうとろとろにこぼれていて、どれだけ興奮しているかなんて、分かりきってしまう。

 

「あ、あぁぁぁぁぁ……っ!」

 

 そして、そのぬめりを帯びた指で、クリトリスを弄り始めた。

 

「んぁぁああっ……! いぃ……っ!」

 

 気持ちいいんだろう。そんなぬめぬめの指でカッチカチのクリトリスを撫で回してしまったら、気持ちいいに決まっている。

 呼さんは恍惚の表情で、そんな快感で緩んだ表情とは打って変わって激しくクリトリスを弄り回している。

 

 目線が、合う。

 

 千種ちゃんはしないの? こんなに気持ちいいよ?

 そんな幻聴が聞こえてくる。

 

「ぁっ、んんんんぅ……っ」

 

 だから、私も指を沈み込ませた。

 私の中も既にどろどろで、指がきゅうきゅうと締め付けられる。

 そんな慣れ親しんだ感触なんて今はどうでもよくって、早く、早く呼さんのようになりたいという気持ちでいっぱいだった。

 

「んんっ、んぅぅぅっ」

 

 中をかき混ぜると、ゾクゾクした感覚が広がっていく。くちゅん、くちゅん、と入口が音を立てている事なんてどうでもよくって、イイ所を掠めながらひたすら指に愛液を絡みつかせる。

 早く指を呼さんのようにしたくって、抜き差しが、かき回すのが荒々しくなってしまう。

 見られている。一生懸命指でおまんこをかき回しているのが見られてしまっている。それを認識してしまう度に膣内がぎゅっと収縮して、痛い程に指を締め付けてしまう。

 それだけじゃない。呼さんのクリ苛めがあんまりにも気持ちよさそうで、呼さんのおまんこがひくひくしながら私を誘惑しているようで、視覚から入ってくる情報があまりにもいやらしくて、興奮で、あぁ、そう、私は今、興奮してしまっている。

 

「ああぁっ!」

 

 だからもう我慢できなくて、にゅぽんと引き抜いた指で、クリトリスを蹂躙した。

 

「はぁああっ……! んぁあああああっ……!」

 

 気持ち、いい。見られながら、見ながらするオナニーが気持ちいい。

 だって、見えるもの全て、呼さんがあまりにもいやらしくて、私のいやらしさを全部見られてしまっていて、頭がおかしくなる。

 呼さんのようになりたくて、おまんこをひくひくさせながらとろとろに愛液をこぼしながらクリトリスを弄りながら善がっている呼さんが羨ましくて、自慰が、自分を慰める事が止められない。

 

「あぁっ……! はぁんっ、ぁああっ……!」

「ひぅぅっ……! んんぅっ、ぅあっ……!」

 

 指の動きが、勝手にシンクロする。今全く同じ動きでクリトリスをこね回している。

 だから私も乳首も捏ねくり回して、呼さんと同じように腰をひくひくさせて、愛液をとろとろとこぼし続ける。

 

「あっ、あぁぁあっ……! もぅ、い……く……っ!」

「んっ、んんっ! んぁっ! わたし、も……っ!」

 

 どんどん指の動きが激しくなる。速くなる。そして、ある一定の地点で、動きが固定化される。

 呼さんはそうやってするのが一番気持ちいい。私はこうやってするのが一番気持ちいい。

 やっている事は同じなのに、微妙な差異が私達を分かつ。

 けれど、目的は同じ。行き着く場所は同じ。

 呼さんのおまんこのひくひくが止まらなくなる。その度にこぷこぷと愛液が流れ落ちていく。

 きっと私もそう。呼さんの視線が私のおまんこに釘付けになっている。

 見られている。私の恥ずかしい場所が、一番恥ずかしい瞬間が見られてしまう。

 そう思った瞬間、堪えきれなくなった。

 

「ああぁぁぁぁっ! んんんんぁぁぁああああっ‼︎」

「んんんぅぅぅっ! んやぁぁあああああああっ‼︎」

 

 バチン、と眼前に星が瞬き、一拍遅れて身体がびくんと跳ねる。

 呼さんも身体を跳ねさせていて、動く身体とは対象的におまんこはぎゅうう、と口を閉じて愛液の流れが遮断されている。

 けれど身体が弛緩していくにつれ、その膣口はまた開いていき、こぷ、と大きな雫が溢れ出した。

 イった後もクリトリスを撫で続けていた呼さんだったけれど、その動きも緩やかになっていき、労るような触り方へと変わっていった。

 

「……んふ、千種ちゃんのえっち」

「っ!」

 

 いつまでもおまんこに釘付けになっていた目線を慌てて上げると、息を整えながら、頬を紅潮させながら、ニヤニヤといやらしく笑う呼さんがいた。

 

「私のおまんこ、そんなに気になる?」

「あ、いえ、その……」

 

 気になるなんてものじゃない。あまりにもいやらし過ぎて、目が離せなくなる。

 ……なんて正直には言えない。

 

「そんなに気になるならー……」

 

 でも、呼さんは妖しく笑って、

 

「私のおまんこ……くちゅくちゅ、して……?」

 

 ぐちゅぐちゅのおまんこを、私に差し出してきた。

 

 

 

「ぁぁぁぁぁぁ……っ!」

 

 私の指が、呼さんのおまんこに飲み込まれていく。いや、飲み込ませた。私が、呼さんに、飲み込ませた。

 分かりきってはいたけれど、そこはどうしようもなく熱くて、どうしようもなくぐちょぐちょで、どうしようもなく締め付けてきて、性感帯でもない筈の指が、どうしようもないほどに気持ちいい。

 

「は……ぁ……んっ……」

 

 呼さんの身体がひくん、ひくんとするたびに、おまんこがきゅっ、きゅっと締め付けてくる。

 今動かしたら、呼さんのおまんこをかき回したら、呼さんは、私は、どうなってしまうんだろう。

 

「ぁぁあっ……は、あぅぅぅぅっ……!」

 

 だから、確かめるまでもない事を確かめるために、指を動かした。

 二本の指を咥え込んだ呼さんのおまんこをかき乱す。抜き差しするたびに、先程より近くなった呼さんから切なげな嬌声が私に叩きつけられる。

 真っ直ぐに抜き差ししてるだけで、呼さんが気持ちよさそうに喘ぐ。指に柔らかいものが纏わりついてきて、ぬるぬるしたものが纏わりついてきて、指から快感が昇ってきてしまう。

 

「あんっ! んっ、あぁっ……っ!」

 

 時折いい所に掠めるのか、短い嬌声があがる。

 奥、その手前、下のここ、上のそこ、そして少し膨らんだここ。

 呼さんの甘いスポットがそこかしこにあって、一つ一つ丁寧に撫でると嬉しそうに啼いてくれる。

 

「あぁっ⁉」

 

 おまんこ探しに夢中になっていると、くちゅ、という音と同時に、私の中に呼さんの指が侵入してきた。

 

「はぁ、ぁぁ、ぁ……んぅっ……!」

 

 呼さんのおまんこから聞こえていた音が、私のおまんこからも鳴り出す。

 私の中は呼さんと同様にもうぐちゅぐちゅに濡れきっていて、私の中を探る指の動きを妨げる事はない。

 様子見で一度奥まで探られ、引き抜かれ、今度は少し違う角度で探られ、また引き抜かれ、おまんこから甘い痺れが広がっていく。

 

「あぁっ! あっ、んんっ……!」

 

 時折いい所が掠められる。

 奥より手前のところ、下側のそこ、横のそこ、そして少しザラザラしているそこ。

 私の甘いスポットが見抜かれて、でも知らない場所も見つけられてしまって、一つ一つ撫でられる度に声が漏れてしまう。

 

「ああぁっ⁉」

「んぅぅっ⁉」

 

 おまんこ探りを終えたのは同時だった。

 甘いところ目掛けて集中攻撃しだしたのも同時だった。

 

「あぁぁっ! んぅっ! はぁ、ぁぁあっ!」

「ひぅっ! んんんんっ! あっ、ああっ!」

 

 いい所を何度も擦る度、呼さんが気持ちよさそうに喘ぐ。

 いい所が責められる度、腰が浮くような快感が流れこんでくる。

 指で犯し、指で犯され、湿度の高い声が耳を犯す。

 余っていた手はいつの間にか互いの胸に置かれていて、やわやわと揉みしだいていた。けれど一番気持ちいい部分を、乳首を気持ちよくさせる余裕なんて互いに無かった。胸に置かれた手から伝わってくる幸せな感触なんて、気にしている余裕など無かった。

 

「ぁあっ! そこっ! いいっ、よぉっ!」

「んんんんっ! そこっ、だめですっ!」

 

 触っているのは相手のおまんこなのに、自分のおまんこが気持ちいい。そんな状況が頭を狂わせる。

 だから、もっと気持ちよくなるために、ぷっくりと膨らんだそこに、ザラザラしたそこに、指が突き立てられた。

 

「ああぁっ! んっ! はぁ、あんっ!」

「ひぅっ! んんっ! んっ、ああっ!」

 

 よく分からない。触っているのに、触られていて、頭がおかしくなる。

 そこを押し上げているだけなのに呼さんの腰がくなくなと揺れ動き、私の指を締め付けてくる。私の中にある指は動いていないのに、勝手に腰が動いてしまって、自動的に呼さんの指を締め上げてしまう。

 

「あぁぁあああああっ!」

「んんんぅぅぅぅぅっ!」

 

 だから、もっとおかしくなるために、そこをかき乱した。

 

「あああぁあっ! あああっ! ふぁあっ!」

「んんぅぅっ! んぃっ! やぁあああっ!」

 

 にちにちにちっ、と膣口から音がする。

 激しく動かしているのに、手が全然動いていない音。一見少しだけしか動いていないのに、中では激しくスポットが苛め抜かれている音。

 呼さんがぎゅううっと私を締め付けてきて、呼さんを私がぎゅううっと締め上げている。

 おまんこが、指の形になる。指以外の隙間が無い。押し出された愛液が膣口から流れ出ていく。

 

「もっとっ! あああっ! そこっ! んぁぁあっ!」

「はぁああっ! だめっ! だめですっ! んんっ!」

 

 呼さんが貪欲に快楽を求める。私ももっと欲しいのだと伝える。

 お尻の下に敷いている座布団が冷たい。そんな感覚さえどうでもよくなるほどにお腹の奥が熱い。お腹の内側から送られてくる快感が、身体を、脳を蕩かしていく。

 すがるものが欲しくて、つい胸を触っている手に力が入る。あそこをかき混ぜている指に力が入る。それは同時に私の身体にも返ってきて、もっと気持ちよくなってしまう。

 

「んぁっ⁉」

 

 おまんこから流れてくる快感に、おまんこへ送り込んでいる快感に夢中になっていると、ドン、と呼さんから押し倒された。

 何事かと、邪魔をするなと一瞬思考が乱れたけれど、そんなものは眼前に迫った呼さんの欲情しきった表情に霧散した。

 

「ね……ね……っ! おまんこ汁……っ! まぜまぜしよ……っ!」

 

 胸と胸が重なり合い、おまんことおまんこが近い距離で向かい合う。

 分からない。言っている事が理解出来ない。

 

「あぁああっ!」

「んんぅぅっ!」

 

 だからそんなものどうでもよくって、おまんこに指を、指が、突き込まれた。

 

「ああああぁっ! はぁ、あんっ! ぅんんっ!」

「はっぁぅぅぅっ! んんんっ! あぁ、んっ!」

 

 そんな事よりもおまんこをかき混ぜる事の方が重要だった。

 もっとこの気持ちいいものを触っていたい、蹂躙したい、触ってほしい、苛めてほしい。

 呼さんだってこんなに求めている。おまんこ汁だってだらだらこぼれ落ち、私のおまんこに降り注いで……。

 

 私のおまんこ汁と、混ざりあっている。

 

「んぁぁぁああっ! ちくさ、ちゃんっ⁉」

 

 理解した瞬間、脳がはち切れた。

 甘いスポット苛めなんて終わり。もっと、もっとおまんこ汁が欲しい。呼さんのおまんこ汁が、もっと欲しい。

 

「ああぁああっ! それっ! すごっ、んんぅっ!」

 

 鉤爪状にした指で、そこから入口まで濾し取るようにしてかき混ぜる。

 呼さんが切り替わった快感に混乱していたのは一瞬の事で、すぐにこの快楽に夢中になってくれた。

 

「あっああああああああっ⁉」

 

 だから、それが私にも施された。

 ゴシゴシと、おまんこが漉し取られている。甘いところから入口にかけて、もっとおまんこ汁を出せとばかりにかき混ぜられている。

 たぱっ、たぱっ、と呼さんの愛液が私のおまんこに降り注ぐ。

 粘液質で温いものが肌に落ちてくる感覚にゾクゾクする。お腹の奥から入口までがゾクゾクする。

 呼さんもそれは一緒のようで、指が往復する度にびくん、びくんと腰が跳ねている。その度におまんこ汁が漏れてきて、私のものと混ざり合っていく。

 

「あぁぁああっ! でちゃっ! でちゃうよぉっ!」

「んぁっ! ぁあああだめっ! だめだめだめっ!」

 

 何かがこみ上げて来る。我慢しようとしても我慢しきれないものがこみ上げてくる。

 気持ち良さそうな顔をしていた呼さんが、余裕のない表情をしていてゾクゾクする。けれどそれ以上にお腹がゾクゾクして、出してはならないものが出ていこうとしている。

 でも止まらない。止めない。

 ぐちゅぐちゅぐちゅと重い水をかき混ぜる音が鳴り止まない。おまんこ汁が飛び散り続ける。全身が揺れ動く程にお互いのおまんこをかき回していて、お腹の中のゾクゾクと気持ちいいゾクゾクが混ざり合って、コレを我慢する必要なんて無いと認識が歪んでいく。

 

「ああっ! あぁっ! 出て、るっ! 出てるぅっ!」

「やぁぁあっ! やだっ! んぁあっ! やだぁっ!」

 

 びしゅ、びしゅ、と潮を吹かせる、吹かされる。

 呼さんのそれが私のおまんこにかけられて、私のそれが呼さんのおまんこにかかる。二つの飛沫が中空で絡み合いながら、おまんこに垂れ流しになる。

 もう出ているのに、まだ出るだろうと、もっと出せと言わんばかりに指は止まらない。ぐちゅぐちゅ、なんて可愛らしいものではない。ぐじゅぐじゅぐじゅ、とおまんこ汁たっぷりのおまんこをかき混ぜている音だと一瞬で分かってしまうような卑猥な音が鳴り響く。

 

「あぁぁぁあ! また出るっ! んんんっ! あぁぁああああっ‼︎」

「ああああっ! やっ! もう、でなっ! あああだめえぇぇっ‼︎」

 

 一度だけでは終わらない。二度、三度、中にある分全て吐き出させるべく指は蠢き続ける。

 甘いところを捉え、入口に向かって漉し取り、指が勢い余って外に出てしまうと同時に潮が吹き出て、私のおまんこに降り注いでくる。甘いところが捉われ続け、指が荒々しく動くと同時に潮が吹き出して、呼さんのおまんこに向かって噴水の如く飛び散る。

 もう互いのおまんこが愛液によって濡れているのか潮で濡れているのか分からない。分かるのはおまんこがもう目も当てられないくらいにぐちゃぐちゃのどろどろになっているという事。

 

「はぁっ……! んぅっ……! は、ぁ……!」

「ふーっ……! あんっ……! ふぁっ……!」

 

 もう出ないというところまでかき混ぜあって、イっているのかそうでないのか分からない場所まで辿り着く。

 いや辿り着いていない、まだゆるゆるとかき混ぜあっている。おまんこからまだ愛液がとぷとぷ出ている。

 ただ、少しだけ、息が切れてしまっただけ。

 

「千種ちゃん……」

「はい……?」

 

 キスさえ出来そうな至近距離から身を起こし、呼さんが私の名前を呼ぶ。

 

「おまんこで……ぬちゅぬちゅしよ……?」

 

 愛液と潮でどろどろになった袴を脱ぎ捨てる呼さん。その姿に心拍数がまた跳ね上がる。

 白衣はもう羽織っているだけになっており、胸からお腹まで全て詳らかにされていて、その先にあるおまんこからは私が掻き出した愛液がとろぉ、と垂れ下がっていて、むわり、と淫臭が漂ってくる。

 また、頭がおかしくなる。視線を呼さんから外す事が出来ない。

 目線をそのままに、何かに突き動かされるようにして帯紐を解き、袴を脱ぎ捨てる。脱ぎ捨てた瞬間、空気が撹拌されて、お互いのおまんこの匂いが私を直撃してくらくらしてしまう。こんなの、こんなの嗅いだらおかしくなってしまう。

 

「あんっ!」

「あぁっ!」

 

 酩酊した瞬間、呼さんが私の脚の間に割り入ってきて、ぐちゅん、とおまんこが潰された。

 

「あぁぁっ! おまんこっ! んぁっ! ああぅっ!」

「んんぁあっ! 呼さんっ! それっ! だめぇっ!」

 

 おまんこ同士が潰しあい、膣口が、クリトリスが絡み合う。

 カッチカチのクリトリスがカッチカチのクリトリスとぶつかり合い、形を僅かに変えつつも擦れ合う。

 どろどろのおまんことどろどろのおまんこがぶつかり合い、形を大きく歪ませながら擦れ合う。

 艶かしく呼さんの腰が振られ、にゅるにゅるとした感触がおまんこに襲い掛かる。指で弄り合っていた時とは似ても似つかない感触。柔らかいものが柔らかいものを包み合って、硬いものは硬いもの同士で擦り合って、その熱さでおまんこが溶かされそうになる。

 

「はぁんぅぅぅっ! ああっ! んぁぁぁぁあっ!」

「んんんんぅぅぅぅっ! やぁっ! あぁぁあっ!」

 

 ぬちゅぬちゅと音を立てながら蛞蝓のように交尾する。私の愛液が呼さんのおまんこに塗りたくられ、呼さんの愛液が私のおまんこに塗りたくられる。

 腰がぐりんぐりんと動かされ、クリトリスがおまんこに食べられる。柔らかなもので擦られる度に視界が歪み、硬いもので擦られる度に視界が弾ける。

 

「あぁっ! んんっ! んんぅぅぅっ!」

「んぁっ! あんっ! ぅんんんんっ!」

 

 呼さんは私の片足を掴み、これでもかと言う程に腰を押し付けてくる。いや、私も私で腰をくいくいと浮かせて、より密着するように動かしている。

 セックス。今呼さんとセックスしている。

 呼さんのおまんこが突き出されるとおまんこごとクリトリスが絡み合って、私のおまんこを突き出すとクリトリスがおまんこに飲み込まれる。

 吐息なんて吐く余裕は無い。嬌声を吐き続けているだけで精一杯。おまんこも、おまんこ汁も、声さえもが混ざり合っていく。

 

「はぁぅぅぅぅっ! んんんっ! んぁああああっ!」

「ひぁぁああっ! ああっ! やっ、ぅんんぁあっ!」

 

 心臓が張り裂けそうなほどに気持ちいい。

 呼さんの乳首が、硬くしこりあがっている。クリトリスが、ビンビンになっている。おまんこが、ぐちょぐちょになっている。私のもそう、何もかもがカチカチに勃起していて、何もかもがどろどろになっている。

 

「あぁぁっ! はっ、あぁぅぅっ! んぅぁああっ!」

「んぃぃぃっ! あっ! あぁっ! あっ、んんっ!」

 

 クリトリスを覆う皮なんてとうの昔に剥ぎ取られた。剥き出しでカッチカチとなった真っ赤なクリトリス本体が、ぬるぬるの暴力に晒されている。

 クリトリス同士が絡み合っては鋭過ぎる快感が立ち昇ってきて、クリトリスがおまんこに飲み込まれては狂いそうになる快感が立ち昇ってくる。

 呼さんも私も腰なんてずっとガクガクいっている。暴れ回ってはいるけれど、おまんこだけは絶対に離さないとばかりに押し付け合う。

 きっと今離れたら濃縮された愛液がおまんこ同士を繋ぐだろう。でもそんな事は確認するまでもない、したくない。おまんこをおまんこでずっとぐちゅぐちゅしていたい。

 

「ぅぁああっ! あっ! ちくさ、ちゃ! ああっ!」

「はぁんんんっ! よばり、さんっ! あぁぁぁっ!」

 

 身体が熱い。汗に塗れた白衣さえも暑く感じる。全部脱ぎ捨てて生まれたままの姿でどろどろに溶け合うまでずっとおまんこしていたい。

 呼さんが大きな胸を揺らしながら一生懸命に腰を押し付けてくる。言う事を聞かず暴れ回っている私の腰をずっと捉えて離さないようにしてくれている。

 おまんこだけが溶けている。その証拠にかき混ぜられて練乳のようになってしまった白濁したおまんこ汁が飛び散っている。

 こんなもの、貝合わせなんて可愛いものじゃない。おまんこがおまんこを捕食している、単なる貪り合い。

 

「ああぁあっ! いくねっ! いっちゃうねっ!」

「もうっ! んぁあっ! わたしっ! もうっ!」

 

 そんな貪り合いも終わりが見えてきてしまう。

 呼さんの腰遣いが小刻みになる。私も合わせて腰を細かく揺り動かす。

 クリトリスがクリトリスと絡み合ったまま固定され、おまんことおまんこが圧着する。

 剥き出しのクリトリスがくにゅくにゅと潰し合い、膣口から漏れ出すおまんこ汁がとぷとぷと相手の膣内に送り込まれる。

 白濁した愛液だったものなんて、おまんこの下でずっと擦り合わされている尻肉の間で更に圧縮され、固体一歩直前の状態で床に広がっているだろう。

 穢れが、穢れきっているものが際限なく産み出される。

 

 そして、クリトリスが正面から潰し合った。

 

「あっ! あああぁぁぁあっ! これっ! すご、あぁぁああいっちゃう! いっちゃうよぉぉっ! んぁっ! あああぁぁあぁぁあっ‼︎」

「ひぅっ! んんんぁぁあああっ! だめだめだめっ! これだめぇっ! うごかさっ、なっ! あぁぁあああ! ひぁあぁああああっ‼︎」

 

 潰し合った瞬間、そこを逃さないとばかりにぐりぐりと腰が細かく揺さぶられ、ぐりぐりと押し付ける。

 おまんこ汁に溺れていたクリトリスが蹂躙し合って、視界が明滅しそうな快楽が脳になだれ込み、涎すら垂れ流しにしながら絶頂する。

 呼さんも同時に絶頂しているけれど、この快感さえ逃さないとばかりにまだ腰が動き続け、ぐちゅぐちゅとおまんこ汁の撹拌が止まらない。

 止まらない。絶頂が止まらない。呼吸さえままならない。

 脳を灼く快楽に身体がようやく追いつくと、びぐん、びぐん、と互いの身体がのたうち回る。

 身体が強張る。快楽をどうにかして逃そうとして、何か掴めるものを求めてしまうけれど何も掴めない。呼さんは掴んだままの私の脚をぎゅう、と痛いほど握りしめてくる。

 

 絶頂から降りてくるまで、暫くの時間が必要だった。

 全身が脱力し、呼さんが私の上に降ってくる。その瞬間おまんこが離れ、接着剤のようになった愛液が分厚い橋を象り、びちゃり、と私のおまんこに落下した。

 

「はっ……はっ……は、ぁ……!」

「はっ……ん、ぐっ……は……!」

 

 胸と胸が重なり合ったまま、至近距離で絶頂の余韻が交差する。

 自然と、身体がそれを求めてしまって、呼さんの背に腕を回すと、呼さんは私の肩に縋ってきた。

 

「はっ……は……ね、千種ちゃん……」

「んく……なん、ですか……?」

「……ちゅーしよ?」

「……したら、止まらなくなりますよ」

「じゃあもう一回、しよ……?」

「…………は」

 

 はい、と頷きそうになった瞬間、ドォン、と太鼓の大きな音が鳴り響いた。

 その音にびくん、と体が跳ねる。……ついでに胸の突起が擦れてびくん、と体が強張った。

 

 

 

 そして訪れたのは静寂。

 

 互いのまだ整いきってない呼吸音と、ストーブの音だけが残される。

 

「……時間切れっぽいねー」

「……そう、なんですか」

「んふ、残念?」

「べ、別に」

 

 キスなんてしてしまったら、絶対に火が点いてしまう。二回戦どころじゃない。日が変わるまで、変わった後も交わり合ってしまうに決まってる。

 だから顔を背けて誤魔化したけれど、呼さんには絶対にバレている。

 

「じゃーまず着替えよっかー」

 

 離れていく呼さんに寂しさに似た何かを感じながら体を……なんとか……起こした。

 呼さん曰く、前もって巫女服の予備を持ってきていたとのこと。……冷静に考えれば、このぐっちゃぐちゃの巫女服を着たまま外に出るなんて出来る筈が無い。

 というか。

 冷静になれば。

 

「……なんて事を……」

 

 してしまったのだろう。

 呼さんが服を脱ぎ出したあたりから一気に頭がおかしくなった気がする。呼さんの肌に何か催淫作用があったとしか思えない。じゃなきゃ私があんな、あんな風に積極的におま、おまん……!

 

「千種ちゃーん、はいコレー」

「ひゃいっ⁉」

 

 巫女服を手渡されただけなのに過剰に反応してしまった。反射的にそれを受け取ると、まだ白衣が肌蹴たままの呼さんの肌が目に飛び込んできて、

 

「~~~~!」

 

 必死に目を逸らした。

 呼さんが危険過ぎる。歩く媚薬だこんな人。絶対外国の血じゃなくて淫魔か何かの血が混ざってるに違いない絶対そうに決まってる。

 

「んふー」

「っ⁉ な、なんですか……」

 

 一緒に手渡されたタオルで体を拭いていると、呼さんが背中にしな垂れ掛かってきた。

 

「……千種ちゃんの、えっち」

「~~~~っ! あぁもう離れてくださいっ!」

「あーん千種ちゃんいじめっ子ー」

 

 耳元で囁かれて、頭がおかしくなる前に呼さんの頭を掴んで引き剥がした。いっ、いちいち誘惑して来ないで欲しいっ!

 その後もちょっかいを出してくる呼さんをなんとか……必死に……あしらって、なんとか着替えが完了した。

 

「ふぅっ! 出来ましたよ呼さんっ!」

「むー、千種ちゃんが手強いー」

「なんの事か分かりませんねっ!」

 

 分からないったら分からないのだ。

 床の掃除も終わり……因みにドロドロの巫女服は後で回収に来るらしい……後はこの社を後にするだけ。

 

「千種ちゃん。ツイナツイナ」

「あ」

 

 完全に忘れていた。

 

 

 

 

 

●●●●●●

 

 

 

 

 

 そうして、黒百合祭は完了した。

 村長さんを始めとした村の方々から感謝され……巫女経験者のお姉さん方からは凄くニヤニヤされた……後は後夜祭とのことで、村の集会所で宴となった。

 が、皆さん、特に男性陣は完全に出来上がった状態だったので、私は隅っこの方で縮こまりながら宴会料理に舌鼓を打っていた。

 

「あー千種ちゃんこんなとこにいるー」

「呼さん」

 

 郷土料理が美味しすぎて食べ過ぎてしまった。調子に乗りすぎだろうか、いやそもそもお腹周りが、と色々と心配になった頃、呼さんから見つけられてしまった。

 

「お祭りの主役なのにー」

「いやその、今更ですけど何か恥ずかしくなってしまって」

 

 何せ巫女なんてした経験などある訳がない。それにお祭りの主役だなんて大役をこなすなど、本当に今更ながら恐縮の極みだった。

 

「……あんな事したのに?」

「耳元で囁くのやめてください」

 

 今は落ち着いたから耳元攻撃も耐えれるのだ。

 

「むー」

「むーじゃありません」

「まぁいいけどー。そろそろ帰ろっか」

「あ、はい」

 

 呼さんの家に戻って、明日からはお祭りの片付けだ。

 年越しはこの村で迎える事になるだろう。フィールドワークをしていてもそんな事は珍しい、貴重な経験だ。

 

「ねー千種ちゃん」

「はい?」

「うちに帰ったらさー」

「はい」

 

 

 

「黒百合祭、しない?」

 

 だからもう少し、貴重な経験をしても、良いのかもしれない。

 

 

 


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