※この作品はR-18です。

女の子の鼠径部フェチのレズ風俗嬢が理想のあそこを持つ恋人と出会うまで   作:喋家月餅太

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ネコのするべき仕事

「ただいま戻りました」

 

あたしはお店に戻ってきた。

 

「お帰りなさい」

 

「お、新しい子だ。初めまして」

 

「こんばんは。よろしくね」

 

Tさんがまず挨拶をしてテーブルについてた二人の女の子が続けて挨拶をしてくれた。

 

このお店でTさんと店長以外の人に初めて会う。

 

おそらく、この二人はあたしの同僚だろう。

 

もっともセラピストはお店と契約している個人事業主なので同僚という言い方が正しいのかは分からないが。

 

二人は歳の頃はあたしとそう変わらない感じだ。

 

和やかな雰囲気の会話をしていたのは分かる。

 

二人とも同性愛者なんだろうか。レズ風俗嬢は異性愛者も結構いるとは聞くが。

 

どちらにしてもレズビアンバーのような欲を漂わせたような感じはしない。

 

「初めまして、今日からここで働かせていただくMです。よろしくお願いします」

 

あたしはドアを閉めてから立ち止まりお辞儀しながら言った。

 

「そんな畏まらなくていいよ」

 

セラピストの片方が笑顔で言う。

 

「礼儀正しい子なのよ、Mちゃん。でも、最初だけでいいからね」

 

そう言うとTさんはあたしの方を見た。

 

初めて行く場での振る舞いは難しい。

 

あたしはあまり馴れ馴れしい態度を取るのが得意じゃないし好きじゃない。

 

レズビアンのコミュニティでも硬いと言われることがある。

 

それに理系は上下関係に厳しいのでこう言う時はあたしの性分としてもちゃんとしたいのだ。

 

「初仕事だったんだよね? お疲れ様」

 

もう一人のセラピストが言う。

 

「はい」

 

「そっかぁ、大変だったね」

 

「さて、報告のレクチャーをしないとね。あなたたちも予約入ってるんだからきちんと準備してね」

 

「はぁい」

 

「わかりました」

 

「さて、行きましょう」

 

Tさんは手慣れた態度で二人に声をかけて手に持ってたクリップボードとノートパソコンを脇に抱えると立ち上がってあたしのところまで来た。

 

「さて、報告書の書き方と初仕事だからヒアリングをさせてもらうね。面談室に行きましょうか」

 

「はい」

 

「書いてもらう事が色々あるから少し時間がかかるわ」

 

「大丈夫です」

 

Tさんに付いて面談室に入るとあたしたちはそれぞれ席に着く。

 

この場合はどちらが上座で下座か咄嗟にわからないけどTさんが下座に座るように促してくれたので助かった。

 

「それじゃあ、今日はどんな風に対応したのか聞かせてもらって、それから一緒に報告書を書きましょう。エンジニアさんだからパソコンには慣れてるよね?」

 

「はい」

 

「書いてる内容も見せてもらうからね。次からはラウンジで自分でパソコンかタブレットを出して書いてもらうけど」

 

「はい」

 

Tさんは机に備え付けのディスプレイを繋いでからあたしにパソコンを差し出した。

 

初めての場所でこうやって書類の書き方を教えてもらえるのは助かる。

 

書類は組織によって言語化されてない暗黙の了解が色々あってやり直しも出てくるものだから。

 

「あと、これがMちゃんの店内システムのID。パスワードは自分で決めてね。知っての通り人に教えるのは厳禁」

 

「わかりました」

 

あたしは差し出されたIDをシステムの初期画面に入力してパスワードを設定した。

 

画面にはトップ画面が表示されてそこにあるリンクから報告書入力画面に入るように促された。

 

「それじゃあ、今日の仕事について聞かせてもらおうかな。今日の——さんからは実はもうフィードバックをもらっててね。具体的なサービスの内容についてMちゃんから話してもいいと伺ってるから遠慮なく話してね」

 

「はい。でも、あの、他のお客さんの場合はどこまで話していいものなんですか?」

 

「個人情報は内緒にする約束だから聞いてしまっても話さないで欲しいかな。エッチについては全部報告して。ただ、他の女の子には話さないで。お店とMちゃんの間でだけ共有する約束ね。ただし——」

 

「——ただし?」

 

「違反や危険行為、違法行為があったら必ず報告する事。それは契約書にも書いたけど必ず守って」

 

「はい。それは必ず」

 

「Mちゃん自身の安全のためにもね」

 

Tさんはこれまでの柔らかい口調から鋭い真剣な口調になった。

 

それにあたしは言われたことの重大さを理解した。

 

「幸い、今のところそう言う事は起きてないけど、今後ないとは言い切れないからね」

 

「わかりました」

 

見ず知らずの人と密室で裸になる。

 

それにはリスクがあると言う事は聞いてはいたけど、改めてどこの誰か知らない人に抱かれた事を考えると危険と隣り合わせだと分かった。

 

それと顔を見知った人の中とはいえ同時にバーで知り合った見ず知らずの女の子と身体を重ねた今までのあたしも相当、無茶な事をしてたと思う。

 

本名を名乗らず知り合うと言う面ではこちらと匿名性は変わらない。

 

店という後ろ盾がないだけあちらの方が危ないかもしれない。

 

「それで、今日のお客さんからのフィードバックだけどね。初めてで勝手がわからないとは思えないとは思えないほど献身的に自分の快楽に付き合ってくれたって仰ってるよ」

 

「本当ですか?」

 

「うん、自信持っていいよ。これから自己研鑽はして欲しいけどね。Mちゃんとしては手応えはどう?」

 

「流されただけでお客さんに気持ちいい事をして貰っただけであたしは何もできてなかった気がします」

 

「そうか。元々Mちゃんはネコ寄りな方なんだよね?」

 

「そうですね」

 

「今までの彼女のエッチと比べてどう?」

 

「ネコをするときでも今までの彼女はほとんどあたしの方からも触ったりもしてましたし、正直、感じさせちゃダメという縛りでどうして差し上げたらいいのかが分からなかったです」

 

「お客さんだから何かしないとって感じ?」

 

「そうですね」

 

「今日のお客さんはそれで正解だよ。完全にタチのお客さんは触られる事を苦痛に思うケースが多いから、したい事をしてもらう感じかな」

 

「それでよかったんですか?」

 

「そうね」

 

あたしはこれまでに短い間だけバリタチの女の子と付き合った事がある。

 

彼女は触らせないどころか服を脱ぐことすら嫌がっていた。

 

その気持ちはリバであるあたしにはわからない。

 

その子は可愛くて好みだったけどその子とのセックス正直楽しくなくて途中から苦痛に思って別れてしまった。

 

だから完全にタチという人はどうしていいか分からない。

 

これはセラピストとして働いていく上で学ばなければいけないだろう。

 

「Mちゃんはプロフィールに『ネコ寄りのリバ』って書いてるからタチのお客さんの対応方法は覚えておいた方がいいかもね」

 

「そうですね」

 

「ネコをやるときは身体でお客さんの欲求を受け止めてそれを流したり返したりを状況に合わせてしていくイメージをしているといいかも。武道で相手の力を利用して投げ飛ばしたりとか聞いた事があるでしょ? ああいうの」

 

「武道ですか……」

 

古い格闘技映画とかで聞いたことのある話だけどいまいちピンとこない。

 

武道とかそういうものとは無縁の文化系だからというのもあるけど、理屈先行型の考え方をしてるからもある。

 

「ピンとこないかな。わたしはこの言葉を聞いた時に『なるほど』って思ったけど、それはわたしが合気道をやってたからかもしれないね」

 

意外だった。Tさんは格闘技経験者か。

 

おっとりしてそうだから想像してなかったけど、風俗の運営側で働いてるからそれなりに逞しいタイプなんだろう。

 

それにしてもTさんがその話を聞いたのはどんな時だったんだろう。

 

ここで働くセラピストの経験談なのか、それとも自分がセックスをした女性からなのか。

 

同性愛者なのかどうかも気になるがそれは聞いていいか分からない。

 

ただ、タチにしてもネコにしてもセックスがうまそうな印象がある人だ。

 

バーで会ったならナンパしてたかもしれない。

 

「イメージとしてそんな事を頭に置いておくといいよ。Mちゃんの仕事はネコをやる事が多そうだし」

 

「そうなんですか? ネコ寄りって書いてるから?」

 

「それもあるけどお客さんは普段のセクシャリティはどうかに関わらずタチが多いから。ネコはこの業界、貴重なの」

 

「それは意外です。気持ち良くして欲しいから利用するものだと」

 

「それはそうだよ。でも、同じ気持ちいいでも性感帯の刺激は一人でもできるからね。他人の身体を触る気持ちよさは相手がいないと出来ないから」

 

なるほど。

 

ネコの立場のセックスは感情次第ではオナニーで代替できる。

 

恋人のしばらくいないあたしも実際にやってる事だ。

 

だけど、今日のお客さんの様子を見てるとあんな風に誰かを感じさせて心が気持ち良くなるなんてのは一人では無理だ。

 

それにレズビアンかどうか自分で結論のついてない子や言い方は悪いがなんちゃってレズビアンを除けばあの世界はタチが多い。

 

正確に言えばタチ寄りのリバが。

 

それなら恋人のいない寂しさに付き添ってくれる誰かが必要だ。

 

「という事だから。期待してるよ。テクニックとか上手くやってくれる事よりもお客さんの気持ちと快感に寄り添ってくれればいいから。まずはそこからだから」

 

「わかりました」

 

「疲れたでしょ? 報告書を一緒に書いて今日はこれで上がりにしようか。ゆっくり休んで」

 

あたしはTさんからの指示に従って方向書を書いていった。

 

会社の日報に近いが行った行為について簡単ながら共有しなければいけないのは気恥ずかしいやら気まずいやら。

 

「よく書けてるね。これで大丈夫よ。次は一人でこの調子で書いてね」

 

Tさんは笑顔で言う。

 

エンジニアをやってるともっと細かいもので客観的な内容を求められるのでそれに比べれば楽だった。

 

「さて、今日はこれで上がってもらうけど質問とかある?」

 

質問。ふとあたしの頭にお客さんのあそこがよぎった。

 

一つ、大事なところで気になるところがある。大事なところで気になるところがある。

 

「あの、あそこの毛って剃った方がいいですか?」

 

「ああ、特にお店としては無いよ。どうしたの?」

 

「あたし、風俗の利用経験があってその時来てくれた人も剃ってたし、お客さんも……」

 

口に出してあたしはまずいと思った。

 

行為については報告しなければならないがあそこの毛についてまで言うべきじゃ無い気がしたからだ。

 

「まぁ、常連さんで毛を処理してる人は多いね。うちで働いてる子も半分以上ツルツルだけど、その辺は自由だよ」

 

「剃った方が望ましいことは」

 

「衛生管理としては望ましいくらいかな。ツルツルが好きな人もいるし毛が生えてて欲しいって人もいるからね」

 

「毛があった方がいい人もいるんですね」

 

「うん、毛を掻き分けてあそこについてるものを探すのが好きな人も多いよ。だから、Mちゃんがどうしたいかでいいかな」

 

「なるほど?」

 

「おすすめはしばらく毛を生やしたまま仕事してみることかな? 毛を剃るのは数分だけど伸ばすのは時間かかるし大変だからね」

 

「そうなんですね」

 

「Mちゃんはどっちが好きなの?」

 

「特には。その時に風俗で来てもらったセラピストが初めてのツルツルだったし……」

 

「お客さんにもツルツルの人は結構いるししばらく仕事してから考えてみるといいよ。わたしとしてはこの辺は需要なバラけてるからそこを考えるより性癖や生活の中での事を考えるといいかな」

 

「それじゃあ、様子見てみた方がいいですね」

 

「そうだね」

 

あたしは以前は毛の生えた女の子としかした事がなかったからこの辺は考えてみた方がいいかもしれない。

 

毛が生えてる方が好きと言う人がいるのは意外だった。

 

「さて、疲れはこの仕事の大敵だから今日はもう帰って休んで。明日も予約が入ってるからね」

 

「分かりました。これで失礼します」

 

あたしはお辞儀をすると面談室をTさんと一緒に出た。

 

実際にかなり疲れている。

 

セックスした事そのものとならない環境での緊張の両方でだ。

 

早く横になりたいなとぼんやり考えながらあたしは初仕事のこの日、お店を後にした。

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