※この作品はR-18です。

女の子の鼠径部フェチのレズ風俗嬢が理想のあそこを持つ恋人と出会うまで   作:喋家月餅太

26 / 59
身体と違う性別を持つ人

引き受けると返事をしてから仕事の後でTさんと予習をした。

 

今日のお客さんはデリケートな事情がある。

 

レズビアン向けの風俗をやってるとデリケートなお客さんは少なくない。

 

あたしの働く店は比較的高い価格帯なので面倒なお客さんは少ない方だ。

 

それでも自身の性への向き合い方に悩むお客さんは若い人にもそれなりに歳を重ねた人にもいる。

 

マイノリティはロールモデルが周囲にいない事もあり悩みがちだ。

 

性的少数者のコミュニティは実はそこら辺にあるのだが、辿り着けない人もいるし抵抗のある人もいる。

 

そういう人たちが風俗にたどり着いて同性に対する制欲を見つめることは珍しくない。

 

同じ事はあたしも経験したし個々の事情の違いを除けば悩みは想定可能だ。

 

だけど今日のお客さんは違う。

 

トランス男性。つまり、女性の身体を持つ男性だ。

 

精神的に男性で自己を男性だと認識しながらあたしと同じように女性器を持って生まれてきた人。

 

そんな事情を持つ人の初めての性体験を今日は手伝う。

 

知り合いにとそういう人はいないしメディアやネットでしか知らない。それだって十分じゃないし間違った知識かもしれない。

 

せっかく勇気を出して安くない料金を払ってあたしからのサービスを買ってくれるお客さんに楽しんでもらえるように、それ以前に傷つけるような事をしてしまわないようにあたしはTさんとこの一週間予習してきた。

 

トランス男性の一般的な事情やお客さんが身体を変えた状態がどんなものなのか。

 

知識や情報として事前に知る事が出来る事は覚えた。

 

とはいえ、あくまで知ったのは一般論だ。

 

今日のお客さんにはそのお客さん個人の事情や感情がある。

 

そこは探り探り確認しなきゃいけない。

 

風俗を利用する以上、あちらもそれなりに考えているだろうしセンシティブな質問もされる前提だろう。

 

身体が女性とはいえ男性だ。

 

察する事ができなくても言葉で確認する事を許してくれそうだ。

 

あたしはお店から徒歩圏内のラブホテル街に向かう道中、Tさんと予習した内容を頭の中で繰り返していた。

 

お客さんと会う前はいつも緊張しているが、今日は今朝の度合いも質も違う。

 

うまくいく事を祈りながらあたしは不安いっぱいの頭で約束の場所までの歩みを進めた。

 

 

 

「Mさんですよね?」

 

約束場所の駅前広場に着くと若い細身の男性が声をかけてきた。

 

「はい、そうです」

 

あたしがそう返事をすると男性は目印として写真を送ってきたアクセサリーを見せる。

 

「よろしくお願いします。——です」

 

「よろしくお願いします。今日、対応させていただくMです」

 

「ホテル、このすぐ近くに予約しています。すぐに行く形でいいですか?」

 

「はい」

 

あたしは失礼だとは思いながらお客さんを頭の先から爪先まで見た。

 

小柄だがこの人が女の身体だなんて信じられない。

 

確かに幼さを感じる丸みのある顔立ちではあるけど生まれついての男性だってこのくらい可愛らしい顔立ちの人はいくらでもいる。

 

爽やかな雰囲気だし、不自然な異性装という印象はない。

 

ボーイッシュな女性という感じもしない。紛れもなく男性だ。

 

あたしはこれからこの人と身体を重ねるにあたりどんな気分でいていいか分からなくなった。

 

「実はラブホテルって初めてで。いろいろ調べたんですけど、間違ってたら教えてくださいね」

 

ラブホテルの前まで着くとお客さんは照れ笑いをしながらドアを開けて中に入る様にあたしに促した。

 

女性経験がないとの事なので一生懸命調べて来たんだろう。

 

洋画を参考にしたのか何処か行動がバタくさいしワザとらしいのはご愛嬌というところか。

 

あたしは男性として振る舞う事に水を刺してはいけないと思い横で見守る事にした。

 

「ネットで予約したんですけど、内装が良さそうな部屋にしてみたんですよ」

 

なんだか可愛く思えた。

 

あたしの最初の彼氏もこんな風にぎこちなく一生懸命だった。

 

人によってはイライラするだろうがあたしにはこういう恋愛に慣れていない男性の空回り気味の一生懸命さは好ましく思える。

 

「こっちです。部屋に行きましょう」

 

お客さんは端末でチェックインを終えると緊張した様子を見せながらあたしを部屋まで案内した。

 

部屋に着くとお互い鞄を置いて向かい合った。

 

これから三時間、彼の初めてのセックスの相手をする。

 

まず、初めてセックスする人である事、体と心が異なる性別である事から他のお客さんよりも丁寧に行為についてヒアリングをするように言われている。

 

人によって触られたくない部分やされたくない行為はあるがシスジェンダーなら不快で済む事でもトランスジェンダーなら傷つけてしまうかもしれない。

 

丁寧に確認することは大切だ。

 

「まず、座ろうか。色々あなたのことを聞かせてほしいの」

 

「身体とかそういうのですか?」

 

「それもだしどんな事に興奮するかとかもね。あまり構えなくても美容室のカウンセリングみたいなものだと思えばいいから」

 

そう言ってあたしはお客さんをベッドに座らせて自分も隣に座った。

 

今回の仕事はトランスジェンダーの支援団体の仲介でのものだ。

 

このケースではあたしのいる店では基本プランが他のお客さんの二時間よりも多くて三時間。

 

初回に限り30分までの延長は自動的に行え無料だ。

 

これはヒアリングの時間を確保するためでもある。

 

同性愛者でもそうだがトランスジェンダーは特に自分の身体や性欲について分からなくて困っている人も多い。

 

その辺を事前のヒアリングと行為を始めてからの要望や提案での調整である程度、方向性を定めていく必要がある。

 

自分がタチかネコかわかってないレズビアンのお客さんでもそれはあるが、自分の身体をどこまで受け入れる事ができてどこまで拒絶しているかについてもいざ行為をしてみないと分からないこともあるようだ。

 

だから通常より長い時間をかけて初回はその辺を確かめる。

 

「身体の状態について確認させてもらえるかな?」

 

支援団体経由でお客さんのプロフィールはもらっていてどこまで身体を変えているかは知ってる。

 

だが、本人からの説明をもらってそれを踏まえて女のままの部分について持ってる感覚を聞いていこうと思う。

 

本人の言葉での説明なら感情的なニュアンスも読み取れるだろう。

 

「今の身体の状態について聞いていい?」

 

「もちろんです。男性ホルモンの定期的な投与を受けていて、乳房は切除済みです。下半身はまだ何もしていません。骨格はともかく股間以外は男に見える状態ですね」

 

「どのくらい前にそれはしたの?」

 

「胸は半年前に取りました。ホルモンは三年くらいですね」

 

これはお店から受け取ったプロフィール通りだ。

 

更新漏れとかはないようだ。

 

「実はあたし、仕事でもプライベートでもトランスの人は初めてなの。その、上半身は男で下半身は女のままって理解でいいのかな?」

 

「それで合ってます」

 

あたしは思わずお客さんの足の付け根を見た。

 

トランス男性だという事前情報はあるが彼の股間があたしと同じだという事が信じられない。

 

裸が想像できないと思った。

 

「身体をどこまで見たり触ったりしてもいいのかな?」

 

「特に見られるのが嫌とかはないです」

 

「あそこを触ったりとかしても?」

 

「はい」

 

「それはどの辺まで? クリトリスだけとか、膣までいいとか」

 

「挿入もして欲しいです。女性がネコをやる時にしてもらう事は一通り経験したいので」

 

このお客さんは「ある程度触らせて欲しいけどネコをしたい」という希望だった。

 

そうなるとあたしの方から彼の身体に触るわけだけど、相手はあそこが女でも男性。

 

女性器を触られる事に対する抵抗感がどの位かは知っておく必要があるだろう。

 

中に挿れてもいいとなるとこちらとしても自由度が高い。

 

だけど、その際の細かい会話とかに配慮が必要かもしれない。

 

何をするかは行為を始めてからのにするとしてそれ以外の面を確認しておこう。

 

「ネコをするとなると完全に女の立場になるけどどうしてネコをしたいか聞いてもいいかな?」

 

「俺、まだ童貞で処女でもあるんですけど、彼女ができた時に女性の側の事をきちんと身をもって知っておきたいんです」

 

「オナニーとかはする?」

 

「はい。でも、オナニーじゃ相手にしてもらうっていう事は経験できないですから」

 

「オナニーはどうやってるか聞いてもいい?」

 

「クリでですね。穴は使ったことないです」

 

「他の部分は触ったりは?」

 

「乳首くらいですかね。縮胸手術を受けてからですけど」

 

「あたしが触っても大丈夫?」

 

「はい。ただ、たぶん手術の影響なんですけど左の方しか感じないので左だけにしてもらえると助かります」

 

「左ね。了解。そこは気を付けるね」

 

神経を傷つけたとかなのか。どんなふうに手術が行われるか分からないけど感じなくなるっていう事もあるんだろう。

 

「他は?」

 

「特に、というかクリを触る以外にどんなことをするのか分からなくて」

 

「なるほどね。それじゃあ、その辺も経験して知ってもらうイメージで進めればいいのかな?」

 

「はい。お願いします」

 

この一週間、あたしはTさんからのレクチャーとネットや本での調べものでトランス男性の事を調べた。

 

彼らは単に男になりたいという憧れを持った人ではない。

 

女の身体であることに違和感、人によっては強い苦痛を持っている人たちだ。

 

多分、彼も自分の股間や胸に同じような感覚を覚えていたんだろう。

 

自分の身体の形に苦痛を感じるというのは想像が出来ない。

 

あたしは太めの身体なのがコンプレックスだがそういうものとは違うはずだ。

 

言葉で説明をしては理解できるが経験することの出来ない気持ちで苦しんだ人のデリケートな部分にこれから触れる。

 

まずは要望通りにあたしの持っている技術を使って彼の女性器を気持ちよくさせよう。

 

それを進めながらどうして欲しいかどうされたら嫌かを確認していこう。

 

あたしはこれまでの仕事と大きく異なる緊張を持ちながら普段通り行為の手順を頭の中で組み立てた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。