女の子の鼠径部フェチのレズ風俗嬢が理想のあそこを持つ恋人と出会うまで 作:喋家月餅太
部屋にあるテーブルにルームサービスのワインを乗せてその左右にグラスを置くとあたしはお客さんに促されて座った。
「ルームサービスなら安心して飲めるでしょう?」
「そうですね。裸で飲むというのは気恥ずかしいですけど」
お客さんはあたしの向かいに座るとあたしに嬉しそうな顔で言う。
Tさんから事前に聞かせて貰ったけど、うちのお店はシティホテルや素性のわかるラブホテル以外での宿泊対応を認めていない。
普段の2時間制やその延長ではお客との飲食は厳禁だ。
信用できるお客さんとの泊まりのみこうしてルームサービスでのみ飲食を共にすることが許される。
それは簡単な理由でレイプドラッグなどの薬物や危険物を飲食物に入れられるリスクをなくす為だ。
風俗は無防備な状態になるのでそれだけ警戒が必要なのだ。
そして、なるべくデートに似てると思わせない必要がある。
客とセラピストである事を忘れられるリスクはセックスをしてしまっている以上大きい。
本来、それは最も親密な関係で行われる行為なのだから。
だからルームサービスならワインを勧められてもまだ安心できる。
それでも安全には配慮してルームサービスを頼む前にトイレには行かせて貰った。
イった後は感覚が似てるのもありおしっこをしたくなるし、飲み干す前にこの場を離れるのはこの常連さんでも警戒した方がいい。
それはあちらも同じ様で交代でトイレに行った。
お互いアルコールの利尿作用がどれだけ左右されるかによるが、しばらくはテーブルを離れる理由がない。
ルームサービスが届きあたし達は裸のままテーブルに向かい合わせについた。
ルームサービスはワインとつまみにチーズとオリーブ。
とてもシンプルだ。
「少し酔いたいの。長くセックスをするならお酒が入った方が私もしやすいわ」
お客さんはボトルのワインをあたしに注ぎながら言う。
「あの、あたしが注ぐので」
「いいわ。確かに私は客だけどこれは常連客としての個人的なお礼。信頼するプロに値段以上のサービスをしていただいているのだからこのくらいはさせて」
「はい」
正直、レズビアン向け風俗嬢としてネコはこういう時にやりづらいと思う。
いつも気持ち良くさせて貰って金をもらってるからだ。
サービスを提供出来ているのか未だに自信が持てない。
これは多分、あたしがネコ寄りとは言えリバだからそう思うのだろう。
セックスにおいて何かをしてあげる事がタチをする事という感覚がどうしてもある。
ある程度、ネコの側で相手を喜ばせるコツを掴んだつもりだが感覚的にはまだ分かっていないのが実情だ。
値段以上と言ってもらえてるのだからあたしがこの人に抱かれる時、望む通りの抱かれ方を出来ているのだろう。
「ところでね、Tさんから聞いたのだけど……」
お客さんはあたしをじっと見て言う。
おそらく、この先のあたしの予定のことだろう。
もうお店には話しているし手続きの準備もしてある。
「お店、辞めるんですってね」
やはりそうだ。
そう、あたしは二ヶ月後に退店する。
お金が貯まったし、大学院に合格したのだ。
そろそろ準備を始める頃だ。
「はい、あと少しですね」
「元々、予定してたのかしら? 何かの目的のためにお金を貯めるとかで」
「そうですね」
「差し支えのない範囲で聞いてもいいかしら?」
この人なら目的くらいなら話してもいいだろう。
「大学院に進学するためです」
「なるほどね。学生さんだったのね。大人びてるからもう少し歳が上だと思ってたわ」
その認識で合っている。
あたしは社会人で少し前まで会社員で今も風俗嬢とフリーランスのエンジニアの二足草鞋を履いている。
「はい。大学院浪人ですけど。お金の都合で」
このくらいの嘘はついた方がいいだろう。
深く関わることのない人なら説明は簡単な方がいい。
「そうだったの。あなた、理系か法学部じゃない? とても考え方がロジカルだから。もちろん、知られて困るなら答えなくていいわ」
「はい。学部は工学部でした」
「やっぱり。そんなつもりであなたを買っていたわけじゃないけど、私の欲望が未来ある若い人の役に立ててたなら光栄だわ」
「そんな……」
「これは本当よ。尤も、これを知るたった今まであなたの身体とセラピストとしての実力しか興味はなかったのだけどね」
そう言ってお客さんは口元を緩める。
こう言う表情は今までもしたことはあるが、今までと大きく違う柔らかい雰囲気。
逆と風俗嬢という一線を踏み越えて一人の知人として見せてくれた表情のように感じた。
「そんな風に言ってもらえると嬉しいです。実際、——さんがお得意様だった事にはお金を貯める上で助けられましたから」
「よかった。でも、寂しいわ。あと少しであなたを抱けなくなるのね」
「そうですね」
「これは今思いついたんだけど、私から提案をしてもいいかしら。表裏なく、断ってもいいという前提で」
「何ですか?」
お客さんはあたしが尋ねるとあたしの手を取った。
裸で向き合ってこうされるのはセックスとは別の方向で恥ずかしい。
「あなた、私の愛人にならない?」
「愛人、ですか? それはどういう?」
「友人として会って、夜にはベッドの上でセックスをするの。恋愛じゃなくセックスもする友人だと思ってもらえればいいわ。お互いに責任のない一線を引いた関係。それ対してお手当は払うわ」
愛人。古い時代を描いた小説などで聞いた事がある。
今もお金持ちなどでそういう関係の相手を持つ人もいるのかもしれない。
妾というやつか。女同士でもそういう言い方をするのかは分からないけど。
「私から見たあたなはセックスフレンド、あなたから見た私はパトロン、そういうものだと思ってもらえればいいわ」
あたしはあまりに想像のつかない提案に言葉を失った。
個人的にお金をもらって身体を重ねる関係を継続するというのだ。
悪くない申し出かもしれないが怖いとも思った。
「恋人とはどう違うんでしょうか? あまりピンと来なくて」
「友人という言い方が良くなかったわね。親しくならない事よ。あくまでセックスという目的だけの関係」
悪くない申し出だと思った。
この人にはすでにそういう間柄の人がいるんだろうか。
それは何となく聞くのが怖いけれどバリタチのこの人ならあたしは会う日には気持ち良くなれる事が保証される。
その上でお金がもらえるのだ。
今とあまり変わらないだろうが、風俗嬢である今のように毎日不特定多数の人と身体を重ねるわけじゃない。この人の専属。
風俗の客としてこの人に会うよりは愛人として会う方が頻度は上がるだろうが、その他大勢の人たちとのセックスは予定通りなくなる。
それに大学院生ならアルバイトする余裕はなさそうだ。
だから蓄えを作ったとはいえ収入源があるのはありがたい。
だけど……。
あたしには抵抗があった。
あたしが理系に進んだのは自分の力で生きていく力が欲しいからだ。
研究者としてきちんと身を立てたい。
それなのに誰かに養われてしまえばあたしの性格ならそこに甘えてしまう。
会社員時代にお酒とオナニーに溺れて身を持ち崩したこともある。
今だって、大学院進学の為に決意を揺らがせないように細心の注意を払っている。
魅力的だがこれは受けるべきではない話だ。
それにあたしはこの人の素性を知らない。
もう一つ、あたしの頭には愛人になるべきじゃないと止める感情があった。
まずは断らないといけない。