女の子の鼠径部フェチのレズ風俗嬢が理想のあそこを持つ恋人と出会うまで 作:喋家月餅太
「申し訳ないですけど、お断りさせていただきます」
あたしはその答えにどういう反応をされるかを恐れながらではあるがはっきりと答えた。
「そう……」
お客さんは目を伏せて何かを考えているようだった。
沈黙が流れる。
その沈黙が怖く感じた。
密室で素性を知らない人と二人きりでこういう空気は何かあるんじゃないかと不安になる。
「残念だわ。いい申し出だと思ったのだけどね。どうしてかは聞いても構わないかしら?」
お客さんは沈黙から一転、笑顔で言った。
怒ってはいないようだ。
「あたしはきちんと自立して生きていきたいんです。だから理系に進みました。もし、これから研究の日々を始めるという時に経済的に寄りかかれる誰かがいてしまったら甘えてしまうと思うんです」
「なるほどね。それは分かるわ。私もそれを第一に考えて仕事を選んだからね。私たちはノンケの人達のように夫に経済的に頼るなんて出来ないわ。今の時代は共働きじゃないと生活の成り立たない夫婦も少なくないけどね」
「なのでせっかくですけど」
「それなら年長者として、私は黙って応援するしか無いわね。でも、惜しいわ。あなたのような女性ならなおさらお近づきになりたかった」
「それは……?」
「私は恋愛は絶対にしたくないけど、Mさんのような人なら友人になりたかった」
「そんなたいそうなものじゃないですよ」
「でも、見込みはあるわ」
お客さんはそう言うとグラスに入っていたワインを飲み干して、瓶から注いだ。
「あたしが注ぎます」
「いいのよ。手酌で飲むのが好きなの」
この人と初めてセックス以外のコミュニケーションをしたけどずいぶんと淡々としている。
自分の感情と一歩線を引いたような感じ。だけどそれは作っている感じはなくこちらが素にも思える。
ベットで抱かれている時はまだ情熱的な方だ。
不思議な人だと思う。
「それはそうと、私の申し出を断る理由がもう一つありそうね」
「えっ……?」
あたしが愛人になることを拒否した理由は経済的自立の為だ。
それ以外に理由はない。
「あなた、恋人がいるの?」
「いません」
「そう? でも、誰かに恋をしているんじゃないかしら?」
「そんな……」
「気の所為だったらごめんなさいね。でも、愛人の申し出に返答を考えている間に誰か特定の人を思い出しているように思えたけど」
その瞬間、あたしの頭には最近、あたしを指名してくれるようになった女の子のEちゃんが頭に浮かんだ。
そして、彼女を思い出した意味もすぐに分かった。
まさか……。
「それならしょうがないわね。パートナーのいる人を愛人にする趣味はないわ」
「パートナーじゃないです。その、最近知り合った友人というか」
「片想いなのね。いいじゃない。恋ができるならした方がいいわ。こんなおばさんに構っている場合じゃないわね」
自分でも意外だった。
Eちゃんは確かに可愛いし、身体もあたしの好みだ。特にあんなに触るにも見るにも理想的な形をしているちょんちょんを持つ女の子なんてそういない。
この所、Eちゃんのことをオカズにオナニーをしているし、時折、頭に彼女が浮かぶ。
自覚していなかったがあの子の事をずいぶん気にかけている自分がいる。
「まさか、今までその人を好きだと自覚していなかったとか?」
「そうみたいです……」
「若いわね。それなら迷わずその人に振り向いてもらえることを頑張った方がいいわ」
「こんな話、すいません」
「謝ること無いじゃない。確かにさっきしたし、これからニ度目のセックスもするけど私たちは顧客とサービス提供者でしかないわ。それとも今日はやめておく?」
「いえ! 仕事はきちんとします」
「ならいいけど。恋愛は出来るならした方がいいわ。私のように恋愛が出来なくなってからじゃ遅いからね」
「それってどういう事ですか?」
恋愛が出来ない。すでにあたしもここ何年かその状態だ。
お客さんはモテそうだし、私生活でも沢山の女たちを抱いているのかと思ったけどそうじゃないのだろうか。
「私ね、ビアンのくせに女嫌いなの」
「女嫌い、ですか?」
「意外? セックスが大好きで、女にしか興奮できない癖に女という性の人間が嫌いなの。もちろん全員じゃないけど。言ってしまえば女体好きの女嫌いね。可笑しいでしょ?」
思いがけないパワーワードにあたしは思わず笑いそうになったがそれを堪えて話を聞いた。
でも、気持ちは分かる。あたしも女に嫌気が差して恋愛から、レズビアンのコミュニティから遠ざかったからだ。
「私は根っからのタチで初めてのセックスでも触られる事が苦痛だった。相手に触れて感じさせる事でしか気持ちよくなれないの。でも、純粋なタチだとどうしてもネコと付き合うんだけど、あたしと付き合う女はテイカーばかり。セックスで受け身なのはしょうがないけど、食事やホテルを奢れと言ったり、責任の押し付け先にしたりそういうので嫌になったの」
完全にあたしと同じ理由だった。
その傾向はネコに顕著なのは観測している範囲でもそうだが、タチやリバにもいる。
「テイクを求める癖にこちらがテイクする事を許さないし、タチならそうすべきという空気もあったから恋愛が嫌になったのよ」
「分かる気がします」
「無理に共感しなくてもいいわ。私が厳しすぎるのもあるから」
表面的な共感じゃない。あたしもお客さんと同じ理由で恋愛対象としての女が苦手になった。
「でもね、知っての通り性欲は強いの。身体の欲求には抗えなかった。しかも、一人でしても駄目。誰かの身体に触れないと気持ちよくなれない性癖がセックスの無い生活を耐え難いものにしたの」
これはタチの辛い所だと思う。
ネコは相手に触れられる心地よさもあるが、性感で満足ができる。
でも、タチは性欲を満たすためには相手が必要だ。
女嫌いのビアンがタチなのは悲劇だと思う。
「だから必死に稼いで女の子を買う事にしたのよ。幸い、忙しい時期を除けば好きなだけ気持ちよくなれるだけのお金はある。だからあなたのお店の常連になったの」
どの程度かは分からないがかなり頻繁な風俗利用をしているのかもしれない。
それだけのお金を稼いでいるのならかなり社会的地位は高そうだ。
「愛のない肉欲だけで私は満足だけど、寂しいものであるのは確かよ。Mさんには恋が出来る間に真っ当な人と結ばれて欲しいわ」
そう言ってお客さんは気がついたら空になっていたあたしのグラスにワインを注ぐ。
図らずもあたしは気にかけている若いお客さんへの意外な感情に気づいてしまった。
あたしも幸いオナニーで満足出来ていたとはいえ、女体好きの女嫌いだ。
でも、まだ恋をするという感情は持てる。
ただ、これは帰ってから考えることにしよう。
「ごめんなさいね。おばさんの昔話なんてつまらないわよね」
「そんな事ないです」
「さて、好きな人がいる事に気づかせてしまったばかりで申し訳ないのだけど、これからあなたを抱いてもいいかしら?」
「もちろんです! その為にあたしはここにいるんですから」
「それじゃあ、始めない? 手がムラムラしてきたわ」
お客さんはそう言うとグラスを置いてあたしの前まで来た。
このままこの人に抱かれるのはまんざらでもない。
でも、感情としては複雑だった。