空間騎兵隊の頼れる姉御、その魅力をエロス描写を交えて書いてみました。永倉が不特定多数の男と寝ているなど、人によっては気分を害する描写があるかもしれませんが、原作の彼女と乖離しない心中を描いたと思っております。
永倉は部下の雷電と共に、空間騎兵隊の官舎で宿直だった。
"あれ"が落ちてくる前と、何ら変わらない夜だ。赤と黒を身に纏った招かれざる客と、友軍の背信。未来の地球人を名乗る彼ら、デザリアム。
あまりに多くのことを見、聞かされた地球人には、却って実感し難いところもあったろう。夜の帷と共に床につく者、ネオンの下で歩き回る者、それぞれが常と変わらぬ日々を送っていた。戦場に急行し、三本脚のデカブツと戦った(司令長官でない方の藤堂氏曰く「暴走」)空間騎兵隊にとっても、そうだった。
「ひと風呂浴びてくる。悪いけどここ、頼むよ」
眠気はそうでもないにしろ、無聊をかこつ雷電は両手のダンベルを上げ下げしていたが、急に怪訝な顔をしてこちらを向く。
「ここの浴場使うんスか?」
「そりゃあ、ね」
「未来人どもが監視カメラハッキングして、出歯亀してるかもっスよ。生身の肉体のデータ収集だー、って」
雷電はよくも悪くも、器用な冗談や皮肉が言える性質ではない。軽い口調だが、半ば以上本気なのだろう。気遣いは気遣いとして受け取っておく。
「別にいいよ。見られて困るモンじゃないしさ」
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官舎には数十人が一度に入れる大浴場と、せいぜい同時に三人ほどの小浴場があり、宿直の時間帯には光熱費節約のため、前者は閉まっている。
小浴場の更衣室で手早く服を脱ぐ。まるで色気のない下着だが、それは当たり前だ。いつ汗まみれ、血まみれになるか分からないものに、金はかけられない。
背中に手を回して金具を外すと、揺れる気配と共に解放感が去来する。秋の只中だ。先端を掠める空気は微かに冷たい。愛撫されているようでもあった。
浴場への扉を開けると、立ち昇る湯気と暖気が永倉の裸身を迎え入れた。流し場の椅子に座す。鍛えているために、尻は跳ね返すような弾力を湛えていた。流し場の椅子が小さいので、双臀が溢れそうになるのは悩みの種だが。
シャワーヘッドから飛び出した湯を頭から被る。栗色の髪の毛、筋のある裸体の上を滴が滑り降りる。前に突き出た乳房に湯が溜まって、滝のように流れ落ちた。
石鹸を手に取って泡立てると、それだけで小刻みにぶるぶると揺れる。鬱陶しさは中々他人に分かってもらえない。無造作に鷲掴む。柔らかさの奥に、跳ね返す感触がある。
谷間もそうだが、裏側には汗が溜まって仕方ないので、意識して洗う必要があった。どこまでも無遠慮に、強く擦る。
洗体を終え、髪を纏めた永倉は浴槽に身を浸した。爪先から頭へ、じわりと波及する温もり。唇の間から溢れた吐息が、浴場の壁に反響する。
眼下に二つの島がぷかぷかと浮き、水滴を纏って揺らめいている。肩の重荷から解き放たれる入浴中は、頭の中を片付けるのにちょうどいい。雷電の言葉を思い出す。身体、そう、生身の肉体だ。
スカルダートとかいう"敵"の首魁がぶち上げた演説を信じるなら、千年後の未来、地球人は機械とない混ぜになった肉体を受け入れることとなる。人間であり続けるために、人間らしい営みの許されない存在となるのだ。
ガトランティスを思い出す。人を模して生み出されながら、血を繋ぐ機能すら与えられなかった、生ける兵器。似ているようで、違う。しかし、奥底で共通するところもある。哲学とか、そんな高尚なものを通して感じたことではないが。
抱えるように膝を立てる。膝に伝わる柔らかさを感じながら、永倉は左の鎖骨に目を向けた。稲妻のように走る傷痕に血の気配は最早無かったが、刻まれた時の感触は今でも思い出せる。だから、努めて意識しないようにしていた。
ガトランティスに蹂躙された第十一番惑星から、救援を求めての脱出。"ヤマト"の助けを取りつけて戻った時、既にその男は死んでいた。隊長、どうして死んじまったんだよ。あれだけでかい口叩いておいて、そんなのナシでしょ。唇だけを動かして言えば、浴場には響かない。
それから、敵に弄られて端末と化した身体を取り戻したその男が、戦友と共に消えていった時のこと。"ヤマト"の艦長に、行かせてほしいと頼んだのは、他ならぬ永倉だった。そうしない途もあったのだ。縋りつき、麻酔銃まで使って行かせないことができた。強引に同道して最期を共にすることもだ。
軍人、否、大人とすら思えないような甘ったれたことを考えられるのも、生き残ったおかげなのだろう。
落ち着かなくなって、浴槽から上半身を出した。乳房が縁に横たわる。風呂は好きだが、詮ないことばかり考えてしまうのはどうにも困る。前線で命を張っている間、それから、情欲に身を任せている間。無心になれるのは、そんな時だけだ。
空間騎兵隊の仲間に、そうした欲の対象として見られたことはなかった。ガサツだからだろうか。酔った勢いで、自分を抱きたくないのか、とふざけて絡んだこともある。品の無ェ女だと倉田には毒を吐かれ、紳士の集まりなんだよと天城には嗜められた。
だから、相手を見繕うのは自分でやる。記憶に残るような交際をしたことはないし、家庭を持つなど考えたこともないが、媾り自体は好きな方だった。基本的には軍務で知り合う相手ばかりで、艦隊所属の空間騎兵、陸軍の士官、教導隊の教官といった具合である。
互いに生まれた時の姿でベッドに座ると、目につくものがある。傷だ。裸身に縦横に走る傷痕。始めからそこにあるように、馴染みきっている。修羅場を潜り抜けた勲章だと誇る者もいれば、下手をこいた証だと恥じ入る者もあった。
それが刻まれた由来を聞くのが、交合が始まる前の挨拶のようなものだ。裸になっているからなのか、大抵饒舌になる。歴戦の栄光を忘れたくない時も、失態を懺悔したい時も。前線での戦闘とはまるで縁のない科学局職員の背中に、袈裟斬りでもしたかのような傷があったのには驚いた。ガミラス戦争の最中、暴動に巻き込まれて生死を彷徨ったという。
戦の痕が残る肉体同士が、重なる。汗と、そうでない液体を散らしながら。
突き入れられている時。シーツを掴み、くぐもった喘ぎを枕に溶かしている時。永倉は妙に静かな心持ちになる。死線の中で生きる男が、交合の果てに何を求めるのか。唇を這わせながら、乳房に顔を埋めながら、自分を忘れたく思っているのか。自分を、取り戻したいと望んでいるのか。
偉そうなことを言えたものではない。己を顧みて、永倉は自分を笑いたくなった。
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火照りきった身体を起こし、永倉は浴槽を後にした。明日からまた、忙しくなるのか。忙しくさせてはもらえないのか。湯煙に隠れているように、先のことははっきりとしない。
ただ、永倉は今、生きている。それだけは確かだった。