*
久々にR18書きました。もしよければ感想いただけますと幸いです。
Pixivにもマルチ投稿しています。
「さっき、スタジオ出る前、女性のADさんと楽しそうでしたね」
テレビ局から車で帰る途中。助手席の琴葉がこちらを向くことなく、ぽつりと呟いた。外の景色はすっかり秋色で、街路樹が黄色と紅に染まっている。琴葉の言葉に視線だけやると、その奥に見える透き通った空を見つめていて、表情はぴくりとも動いていなかった。背筋に何かが走り、思わず震えた。抑えられない。
「え?」
「どうなんですか?」
「あー、いや、まぁ、それなりに?」
「それなり、ですか」
「……どうかした?」
「いえ」
「そ、そう……」
会話が途切れたと同時に、交差点に侵入する。右折。ハンドルを両手でゆっくりと回す。動揺が運転に現れないように、丁寧に。顔こそこちらを向いていないものの、いつの間にか琴葉から見られているのではないか、という彼女からの疑惑を感じながら、それをなるべく態度や姿勢に見せないよう、手に少し力を込める。
というのも、こういうことは最近少なくなかった。琴葉と付き合い出してから、琴葉の視線が向けられているのでは、という感覚に少し鋭くなった。特別何もやましいことはないと自分を信じたいが――高校生ぐらいの年頃の女の子と付き合う二十歳すぎの男、しかもアイドルとプロデューサーという関係に対する自分への罪悪感も含めて――何かまずいことでもしてしまったのではないか、という不安が頻繁にやってくる。彼女と付き合い出して早三ヶ月。その不安と彼女から向けられる疑念は日を追うごとに増している……気がする。
シアター前に車を寄せる。スピードを落としてハザードを点灯する。
「じゃ、車停めてくるから」
「あ、いえ、一緒に行きますよ」
「いいよ、外冷えてきてるし、先シアター入ってて」
「……分かりました」
助手席のドアが開く。彼女がそれを閉めたのを見届けてから、ゆっくりと動き出す。夕暮れ前の空は、オレンジ色に染まり始めていて、秋は今冬へ向かっている。駐車場へと曲がる前、ふとシアターの入り口をバックミラーで見ると、彼女はまだそこでこちらを見つめていた。その姿は、落ち葉の中に消えてしまいそうなほど、小さかった。
*
「ただいま戻りました」
「あ、おかえりなさい!」
シアターの事務室に顔を出すと、美咲さんが出迎えてくれた。緊張が抜けたからか、ふう、と一度溜息が出た。コートを脱いでハンガーにかける。自分のデスクの席に着くと、背もたれに一度だけ体を預けた。その時、左から視界に湯気がやってくる。
「ああ……すいません」
「お疲れ様です」
「ありがとうございます」
出されたコーヒーをひとくち。この苦さにもすっかり慣れてしまった。ブラックがちょうどいい、なんて、学生時代は思ったことなかったのにな。ワイシャツのボタンをひとつ開けて、額に右手を当ててみる。少し冷たいそれにコーヒーのマグカップを当てる。
「……お悩みですか?」
「ん、ああ……そんな感じですね」
向かいのデスク――美咲さんだ――から声がして、俯き気味だった顔を上げた。美咲さんと目が合う。にこっと笑った美咲さんは、俺の間抜けな表情を一瞬だけ見て、衣装を調整する手元に視線を戻した。俺も、手元のマグカップを見つめる。
「最近多いですよね、お疲れな様子」
「そう、かな……あんまり自覚はないんですが……」
「そうなんですか? てっきり琴葉ちゃんのことかと」
その言葉にまた顔をあげる。分かる人には分かるのか、と少し驚きの意味もあった。
美咲さんは琴葉との関係を知る数少ない人の一人だ。夏の終わりに琴葉に言い寄られた時に唯一相談したのが美咲さんで、その頃から度々世話になることがあった。こうして事務所に他の人がいない時には、たまに琴葉の話題になることもあった。
だから、コーヒーを出してくれて、静かな空気が美咲さんとの間にできた時、琴葉の話題が出るのでは、と少し思ったが、その予想は確かなものになった。
「……琴葉のことで疲れてるように見えますか?」
「最近ここに琴葉ちゃん連れてくること減ったなって思って。前はよく一緒に来てましたけど」
「ああ……確かにそうですね。最近はレッスン室によく行ってるみたいです」
「ちょっと距離ある感じですよね」
「やっぱりそう感じます……?」
「そうですね……琴葉ちゃんは何か言ってなかったんですか?」
「あー……今日は女性のADさんと喋ってたね、みたいなことを言われましたね」
「実際そうなんですか?」
「番組のことで少し」
「それを琴葉ちゃんが?」
「ええ……そうですね」
その答えを最後に、二人の間に沈黙が横たわる。美咲さんも、さっきの俺と同じく、デスクに入れていたマグカップ――美咲さんのは紅茶だ――をひとくち飲んで、ふう、と息をついた。それを見て、一度話も切れたと思い、おもむろにPCを立ち上げ、メールソフトを開く。カチカチとマウスの音だけが響いた。
「琴葉ちゃんですけど」
「は、はい」
マグカップを持ったままの美咲さんが、唐突にその空気を破った。目は、いつもの優しげなものではなく、真剣だ。
「寂しい、んじゃないでしょうか?」
*
シアターを出る。琴葉には、メッセージで十分前に退社の時間を伝えておいた。エントランスのドアを開くと、少し冷たい風が頬を撫でる。ドアの前で右手で頬を触ってみる。少しざらついた肌。剃り残しの髭。溜息が、またひとつ。
「お待たせしました……!」
その時、後ろから彼女の声がした。振り向くと、まだしっかりと巻けていないマフラーと、真っ直ぐで滑らかな赤毛が、ふわりと揺れていた。思わず見惚れそうになる。
「いや、待ってないよ。それより、寒いからちゃんと巻いたほうがいい、マフラー」
「あ、はい……すいません、気づいたら時間だ、ってなっちゃって……」
「大丈夫だって。別に待ってないから」
何度もすいませんと謝りながら、手早くマフラーを整える彼女を見つめる。そろそろか、と思ったタイミングで、いつものように左手を差し出した。彼女も、慣れたように右手で握り返してくれた。
「冷えるな」
「そうですね……手袋、持ってますか?」
「ん? ああ……大丈夫だよ。今はこうやって繋いでるし」
「そうじゃなくて、結局シアターの敷地を出たら離さないといけないじゃないですか」
「それはそうだけど……」
「で、持ってるんですか?」
「いや、持ってない」
「じゃあ、今度一緒に買いに行きませんか? 次のお休みにでも」
「そうしようか」
シアターの駐車場が広くてよかった、と思うのはこのタイミングぐらいで。エントランスを出てから、駐車場を出るまではこうして彼女の手を握っていられる。ほんのりと伝わる温かさは、幸せという概念が現実に現れているひとつの形だと思う。
その幸せは、一歩踏み出す勇気をくれて。
「昼、さ」
「はい?」
「現場からの帰り、怒ってなかった……?」
「えっと……別に、怒ってはいません、けど」
「けど?」
「なんか、いいな、って思ってしまって」
「いい、のか?」
「シアターの外で、あんなに楽しそうに話せるなんて……私はいつもここまでなのに」
「ああ……そういう」
「そういう、って……! これでも結構気にしてるんですから!」
ふふ、と俺の口元から笑みが溢れるのを、琴葉は見逃さない。左下から来る、不服そうな彼女の視線。駐車場の出口。普段なら、ここで彼女を見送って、俺は車で帰るけれど。
「じゃあ」
「今日、いつもの部屋、とったから。一緒に帰るか」
*
予約していた部屋に入る。もう何度か来ているホテルの部屋。値段の割に豪華な部屋は、「そういう場所だな」と改めて思わせてくれるにはちょうどよくて。
「あ、お母さんには、シアターに泊まるって、連絡しておきました」
「ん、分かった」
靴を脱いで、カバンを置く。コートは、いつもならハンガーにかけるけれど、今はもうそんなことどうでもよくて。ソファーに投げる。そんな俺とは対照的に、律儀に服をハンガーにかける琴葉の後ろから腕を回した。
「ちょ、ちょっとプロデューサー……待ってください」
「いいじゃん、これぐらい」
少し緊張気味な琴葉の背中は、少し震えているようだった。脱いだコートの下に現れる灰色のタートルネックの生地に、ほんのり彼女の温かみを感じる。滑らかな赤毛に顔を埋めてみる。いつもは薄くしか感じない彼女の香りが顔の前に広がる。大きく息を吸い込む。
「……プロデューサー、こういうところ慣れてますよね」
「琴葉だってもう何回も来たじゃん」
「そ、それでも、やっぱりラブホテルはちょっと緊張します」
「じゃあ家がよかった?」
「それは……見つかっちゃうとまずいですし……」
「ここだって十分まずいけどな」
「そ、そうですけど……あっ、ちょっと」
「こっち向いて」
「あっ、ん……っ」
後ろから抱かれていた琴葉は、服をかけ終わるとこちらを向いて俺の腕の中にすっぽりとおさまった。飼われた猫のように俯く彼女の頬に手を当て、唇を寄せた。唇同士が触れ合うだけの、軽いキス。柔らかくて、麗しくて、さっきまで感じていた彼女の香りを、より強く感じる。
「ちょ、ちょっと……いきなりすぎます……」
「……駄目だった?」
「だめ、じゃない、ですけど……!」
頬を上気させて、細かく息をしている。余裕のなさそうな彼女が愛おしくて、普段は真面目に振る舞っていながら今余裕のない彼女を、めちゃくちゃにしたい。身体中が、昂ってくるのを感じる。
「でも……どうして今日なんです……? 明日なら土曜日だしお休みだったのに」
腕の中で少し涙目の彼女が見上げている。彼女の赤毛を右手で撫でる。抱き寄せる。
「今日の帰り、なんだか寂しそうだったからさ」
「……え?」
「怒ってるのかなーとか、やきもちなのかなーとか、思って」
「怒ってる、と思ったから……ってことですか……?」
「そんなところ……かな」
彼女の香りが顔いっぱいに広がる。その幸せに浸りながら、頭に浮かぶ言葉を紡いでいく。この時だけは、罪悪感が消える。消えていく。
だけど、その瞬間、背筋が震えた。何かを予見するように。
「……ということは、私は、こういうことをすれば許すと思ってるんですね?」
「え?」
「女性のADさんと話してたことですよね? 私、あれ結構怒ってたんですけど」
「え、え?」
「プロデューサーは、私が、こういうことで靡くような、軽い女だって思ってるってことですよね?」
「ちょ、ちょっと待って」
背筋が震えた瞬間、思わず彼女を抱きしめていた腕を離そうとしたが、今度は彼女の方から強く引き寄せられる。左耳の近くで、彼女の声が響く。表情が見えないことに加えて、その、どことなく冷たい声に、体が固まる。
「そこに座ってください。今日はお仕置きです」
*
「ちょ、ちょっと待とう。え?」
「黙ってください。あと、手を出して」
ベッドに座らされて、両手をタオルで縛られる。かなりきつく縛ったのか、手が少し赤くなる。枕を俺の腰の位置に調節した彼女は、両手をベッドの枕元の柱に結んだ。困惑するまま、服もそのままに、彼女の香りが近づいたり遠のいたりするこの状態に、少しやきもきしてしまう。
「プロデューサーは、分かってません」
「な、何が……?」
「プロデューサーは、きっと私がキスひとつでドキドキするような、ちょろくて初心な女だと思っているんでしょうけれど」
黒のロングスカートを少したくし上げて、ベッドの上に膝をついた琴葉が、ゆっくりとこちらへにじり寄ってくる。少しの怒りと緊張を、表情に携えて。
「そんな初心でもなければ、幼くないんですから」
少し後ずさった俺に向かって、手を伸ばす。俺の両足を跨ぐように被さってきて、そのまま、首元を指先でゆっくりと撫でた。
「だから、ちゃんと分かってもらいたいんです。私が、どれだけ、貴方のことを愛しているのか」
そのまま、手のひらを頬に当てて、呆然として開いたままになっている唇を撫でていく。見たことのない彼女の表情が、今俺が置かれている位置が彼女の支配下にあることを伝えてくる。
「舌、出してください」
「え?」
「いいから」
親指で上唇を撫でてから、琴葉は少し低い声で呟いた。語気が強くなる彼女の声にさらなる困惑が襲う。有無を言わさない彼女の表情が、すぐそこにある。
「え、と……か……う……?」
「もっと」
「あ……う……?」
「そう、そのまま、じっとしててください」
無力に舌を突き出した俺の顔を、両手で優しく包んだ琴葉は――
「んんっ……!?」
「ん……じゅ、ちゅる……んっ……じゅじゅ……っ」
甘美とは言えない音を立てて、舌が、その柔らかいふたつの唇に襲われる。その感覚が途切れて、一息つけた……と思えば、琴葉は一度大きく息を吐き出したあと、また音を立てて吸い上げる。その動きに必死な琴葉は、幼い娘が慣れないフォークやスプーンで食事をするようで。余裕のない彼女の表情が目の前にあって。困惑が埋め尽くしていた頭の中に、ゆっくりと、彼女の香りと甘さが浸食してくると、その必死さが可愛らしく見えてきて、愛おしい。
「んっ……ちゅ、ちゅる……ふ、ぷぁ……はぁ、はぁ、ちゅる、じゅるじゅ……」
そのまましばらく貪り続けた琴葉は、俺のワイシャツのボタンを外し始めた。上から順に、ひとつ、ふたつ……唇は、舌をとらえたまま。ワイシャツを脱ぎ捨て、ベルトを外し、シャツを捲られる。上半身に冷たい風がうっすらと当たる。
「ぷは……ふう、ふう……そのまま、動いちゃ、だめ、ですからね……」
「え? ……あ、ん、んんっ」
口の中に、琴葉の右手の親指が入ってくる。四本の指で顎を優しく包まれ、親指だけが力強く口の中を掻き回す。答えるように、その親指を舌で追いかける。彼女の甘さが少しだけ広がる。先ほどより薄いその甘さと、少し苦しい感覚とともに、もぞもぞと動く赤毛があたって上半身をくすぐってくる。そして。
「ん、んんっ……!」
「ちゅ……ん、じっとしてください。ちゅむ……ん、あー……む、んん……」
左の突起を舐められて、思わず震えた。舌の上で転がすように舐める彼女の表情は、俺の上半身に埋められていて見えない。それに、下を向こうとすると口の中に入った親指が、それを許してくれない。もがくように体をくねらせると、分かってますよ、と言わんばかりに右も同様に舐め始める。そうじゃないんだけど、そうでもあって。唾液に濡れたであろう左の突起が冷たくて、また彼女の温かみを求めてしまい、体をよじらせる。
「ふふ……寂しいんですね、こっちも。ん……っ」
それに気づいたのか、左の人差し指をひと舐めして、濡れたそれで左の突起を撫でる。同時に、右は彼女の温かい舌が蹂躙する。口と、上半身の、三箇所が同時に彼女に襲われているこの感覚に、彼女の愛という幸せがついてくる。とはいえ、彼女との力の差を考えれば、今すぐにこの姿勢を反転することも、結ばれているこのタオルを無理やり内側から解くことも、容易いものではあるという事実もあって。それら全てが混ざり合って、目の前の彼女を抱きしめたい衝動に駆られる。
そして。
「こっちも、ですよね?」
左手で下腹部を撫でられる。俺の唾液で濡れた親指を舐めて、うっとりとした表情を見せつけた彼女は、そのまま軽くキスをする。その後、スラックスのジッパーをゆっくりと下ろして両足から剥ぎ取ると、軽く畳んでベッドテーブルの上に優しく置いた。顕になったのは、さっきから自制が効かなくなっているもうひとつの突起。
「これ、なんですか?」
「なに、って言われても」
「口の中、掻き回されて、乳首も舐められて、興奮しちゃいました?」
「そりゃ、するだろ」
「ふふ、そうですよね。……これ、どうしてほしいですか?」
「どうして、って、分かってるだろ」
「んー……? 分かんないなぁ……?」
「……琴葉」
「えへへ、いじわるしちゃいました。分かってますよ」
下着をずらした瞬間、跳ねるように現れたそれにゆっくりと近づいて――止まった。
「分かってますけど、ちゃんとしなきゃ、ですよね?」
「……何を?」
「おねだりです。いつも私にさせてるみたいに」
「……ちっ」
「あー! 今、今舌うちしましたね!?」
それなら、と、下着を脱がして、これも同じようにベッドテーブルに置いた琴葉は、反り返ったそれに顔を近づけて、指で、裏筋をゆっくりと撫でる。指が先端に近づくたびに震えるそれを見ては、好奇心と悪戯心に満ち溢れた笑みで、こちらを覗き見てくる。
「いいんですか? しなくても」
「……構わない」
「ほんとに、いいんですね?」
「ん……っ」
「ふふ、こっちはそう言ってないようですけど?」
「分かってる……くせに……っ」
「あは……余裕ない表情、久しぶりに見ました。でも、だーめ」
先端を人差し指で突く。透明な欲望が、今にもと言わんばかりに滴っている。抑えられないそれに向かって、彼女が息を吹きかける。
「ちゃんと言わないと、ですよね?」
「……くれ」
「はい? ちゃんと言わないと聞こえませんよ?」
「……舐めて、くれ」
「くれ、ですか……そうですか……ふーん」
「ああもう、舐めてください! これでいいか!?」
「ふふ、やっと素直になってくれましたね」
自棄になった俺の声に対して、優しげな笑みで返した琴葉は、じゃあ、と言って顔を突起に近づける。
「いただきます……♪」
先端に軽くキス。腰が浮く。声が出そうになる、と思った瞬間、突起全体を熱が包み込む。先端から溢れ出た透明な欲望を舐め取って、そのまま吸い上げて、ぶるぶると震える俺の突起をまた優しく包み込む。彼女の慈愛に満ちた瞳が、ゆっくりと蕩けたものになっていくとともに、下腹部を襲い続ける快感が背筋や腰をも震えさせる。のけぞる体を抑えることもできず、彼女の顔が上下するのに合わせてやってくる快感が、頭の中の感覚という感覚を支配していく。
「琴葉……っ、もう――」
「んん、じゅ、じゅる、いい、ですよ、出しても、ん、じゅ、じゅるじゅじゅ――」
彼女の瞳がこちらを見て、笑いかけたかと思った瞬間、下腹部の快感が頂点に達して、そのまま――
「ん、んんんっ!! ん、む、んんんんっ!!」
溢れ出したそれを、目を見開いて驚いた表情のまま飲み込んでいく。吐き出された快感は、止まるところを知らないまま、何度も、何度も、琴葉の喉へ流し込んでいく。
「はぁっ……はぁっ……」
「ん……っ、ん、ぷは……えへへ、全部飲んじゃいました。ご馳走様でした……♪」
舌なめずりをして、口元を指で軽く拭う彼女は甘美で、さっきまで下品な音を立てていたのが嘘のようで。軽く微笑んでから、自分の舌を見せて、口の中にはもう残っていない、と見せつけてくる。
「でも、まだ、これだけじゃ終わりませんよね?」
出し切って少し萎んだ突起を撫でて、両手が縛られた俺の胸に顔を寄せて、上目遣いで見つめてくる。彼女の髪の香りが鼻腔をくすぐる。いつもならそれだけでもまた反り返るけれど、さすがに、さっきの今では。
「元気になってもらわないと、ですよね?」
「今度は……何をするつもりだ……?」
「今度は、私です」
俺の両足に跨ったまま、スカートを脱ぎ捨てる。白いレースの下着も、片足ずつ脱いでそのままベッドの横へ投げ捨てた。そこにあるのは、さっきの俺の突起と同じように、透明な欲望を滴らせる秘部。
「こういうの、好きですもんね?」
「……ノーコメントで」
「ふふ、知ってるんですから。プロデューサーが、私のことを知っているように」
俺の体を掴んで、寝転がせると、その顔の上に跨ってくる。
「さ、舐めてください。私も……もうこんなになってるんですから」
秘部を右手の人差し指と中指で開いて見せる。我慢できないと言わんばかりに、口を開いたり閉じたりしているそれが、目の前にある。出されたご馳走を、無碍にすることなんてできない。こんなにも、欲望に満ち溢れているのに。頭の中にこれを拒否する選択肢はひとつもなかった。舌を突き出し、顔を近づける。そして――
「んぁっ……! あ、あっ、そ、そこです……そこ……っ、あ、あぁっ……んっ……!」
秘部の中でも赤く膨れ上がった突起を舐めてみる。彼女の嬌声が響く。脳内の理性を奪っていく。そのまま、秘部を包む整えられた毛と共に、溢れ出る蜜を舐め取っていく。どれだけ舐め取っても、吸ってみても、溢れ出るそれを何度も何度も味わっていく。
「んん……っ! そこ……! きもち、あっ、あっ、そこ、そこぉっ……! いい、です……っ、あ、あっ……!」
蕩け切った声が欲望の歯止めを壊していく。両腕は頭上で固定され、顔でしかこの秘部を味わえないもどかしさはありながらも、琴葉のその声が、俺の体の中の熱を滾らせて、滾らせて――
「あ、ああっ、そこ、まって、ちょ、ちょっとまってくださいっ……! もう、だいじょうぶ、だいじょうぶですからぁっ……!」
待て、という声が聞こえた気がするが、気にせず舐め取り続ける。こんな甘い幸せが目の前にあって、待てと言われて待てるほど、できた人間ではない。目の前の秘部は、ぱくぱくと開いたり閉じたりを繰り返し、その頻度は段々速くなっていく。
「いっ、いっ、ひゃう、うっ、ああっ、あああああっ!!!!」
そして。
「いく、いっちゃう、いっちゃいますぅっ……あああ……っ!!! あ、ああっ……で、でひゃう……っ、でひゃいましゅ……あっ……ああ……」
声と共に、顔全体に吹きかけられる透明のシャワー。秘部から溢れ出るそれを受け止めてみる。何度も何度も秘部から湧き出ては、顔、そして首を彼女の香り一色に染め上げていく。口の中に入ったそれは、甘くて、芳醇で。
「あ……ごめんなさい……私……すいません……」
出し切って、息を肩でしている。涙目でびしょ濡れになった俺を見つめる琴葉。すっかり濡れた俺の顔に、涙まで降り注ぎそうで、顔を彼女に近づけて――そのまま、軽くキスをした。
「……あんまり自分の味は知りたくなかったですね」
「そんなこと言うなよ。美味しいのに」
「ば、ばか……っ!」
ぺち、と頬を叩いてくる。それすらも可愛く思えて、下腹部の滾りが最高潮に近づいていくのを感じる。それから、枕元にあったティッシュで顔を拭ってくれる琴葉は涙目のままだった。
さて。もう、頃合いかな。
「これで終わり、じゃないよな?」
「え……?」
「俺の、もうすっかり元気なんだけど」
「いや、でも……私もう限界……」
「そんなの、許すと思った?」
「う、うそ……」
「今度は俺の番な」
「えっ、え……!?」
両腕に巻かれたタオルを、無理やり内側から解くと、今度は彼女を押し倒す。琴葉の両足を開かせて、秘部に突起を当てがう。腰を引き寄せ、突起で秘部を撫でる。濡れたそれと滾ったこれが触れ合い、水音を立てる。同時に、彼女の嬌声が部屋に響いた。
「続き、したいよな?」
「あ……っ」
「これ、欲しくない?」
「そ、それはぁ……」
「こういう時、なんて言うんだっけ」
「い、いじわる、しないで、ください……」
「琴葉だってさっきしたじゃん」
「う、うぅ……それは、そうなんですけど……っ」
「で? こういう時はなんて言えばよかったんだっけ」
「く、ください……」
「何を?」
「……わ、わたし、そこまで言わせませんでしたよね?」
「知らない」
「そんな……」
「で? なんて言うんだっけ」
「……ん、ください」
「んー? よく聞こえなかったなぁ」
「ちょっと! 聞こえてますよねっ……!」
「聞こえないなぁ。耳が遠いのかも。ほら、琴葉におっさん扱いされてるし、最近」
「……ん」
「ん?」
「お、おちんちん……! わ、たしの、おまんこに、ください……っ!」
顔を赤らめてこっちをにらみつける琴葉。うっすらと目じりに浮かぶ涙さえ愛おしくて、我慢できなくて。
「よく、言えました……っ!」
入れる。狭い狭い、蜜壺の奥へ。突起を押し込んでいく。奥まできて、少し硬い壁に触れると、琴葉の嬌声はより大きくなった。出し入れの前に、そこへぐりぐりと押し当ててみる。
「ああっ、まだ、まだいったばかりなので……っ! そこ、そこはぁ……っ」
「ここが、何?」
「きもち……っ、きもちよすぎちゃいますからぁっ……だ、め……っ」
「琴葉好きだよね、ここ。えいえい」
「なんで……なんでそんな、へいきなんですかぁ……っ!」
「琴葉が可愛いからかな」
「そ、そんなことばには……だまされませんから……っ」
「はいはい」
何度か押し付けてみる。その度に気持ちよさそうな嬌声を何度もあげては、息を絶え絶えにこちらを睨みつけてくる。余裕のなさそうな、可愛いその表情を見つめていると、両手で顔を覆ってしまった.。彼女の腰を支えていた両手で、彼女の両手を両耳の横に押さえつける。
「だめだめ、可愛い顔見せてもらわなきゃ」
「いま、いまぜったいかわいくないですからっ……! だめ……!」
「はいはい、背けないで。可愛いよ、琴葉」
「んんっ、そ、そのことば、いま、だめ……! あ、あっあっあっ――」
琴葉が好きな言葉を並べて、同時にストロークを始める。腰を少し浮かせては、ぐっと奥へ押し込む。その度に、自分の突起にも深い快感がやってきて、同時に締め付けが強くなって搾り取られそうになる。奥の壁まで届いたら、また腰を引く。ゆっくりと、それでいて深く、長く、打ち付けていく。その一回一回に、「好き」が溢れていく。脳内を染め上げて、快感で溺れさせていく。溢れ出る愛を、琴葉の顔に近づいてキスをして送り出す。
「あっ、ああっ、そんなっ、うっ、だ、め……っ」
「駄目なの?」
「だ、め、ですっ」
「じゃあ……こう?」
「あっあっあっあっ、は、はやいのだめっ、だめだめっ!!」
「こっちはこっちで好きだよね、琴葉」
「あ、あっ、あっあっ、きちゃうっ、きちゃいますぅっ!」
「いいよ、イっても」
「まだっ、まらぁ……っ!」
「どうして?」
「だって……ぷろりゅーしゃーが……まだ、れすから……っ」
「俺はいいのに」
「だ、だめなんです……っ」
「いいの。ほら、イっちゃえ」
「だ、だめ……です……! あっあっあっあっ」
「いいんだよ。ほーら、イっちゃえ」
「んんんんっ、イ、きません……んんんっ!!」
「じゃあ……イけ」
「んぁあっ!! だ、だめっ! それ、だめっ!」
「あはは、命令弱いもんね、琴葉」
「あっ、ああっ! らめ、らめれしゅっ、あああっ、らめぇっ!! ああああっ!!」
琴葉の嬌声が最高潮に達した時、下腹部に温かい感触が広がる。出し切った頃合いで、もう一度キス。涙が溢れる目元を拭って、紅潮した頬を人差し指で軽く撫でた。
「きょうは……今日は、わたしが、おしおきするばんだったはずなのに……」
「いつまで経ってもそんなのできそうにないな」
「ううっ……プロデューサーの、ばかぁ……」
「ん? もしかしたら、何か勘違いしてるかも、だけど」
「へ……?」
「俺まだイけてないんだけど」
「え……あっ、ま、まさか――んんんっ……!!」
奥まで差し込んで、ぐっとその狭さを実感して――ああ、そういえば。うっかりここまでの快感で忘れそうになっていたことをひとつ思い出した。
「琴葉、ばんざい」
「ふ、ぇ……ばんざい、ですか……?」
「はい、ばんざーい」
そのまま、灰色のタートルネックを脱がす。下着が一枚、琴葉の胸を包んでいる。
「あ、あっ……今日、かわいくないのだから、あんまりみないでください……」
「ああ。それでさっき、下はさっさと脱ぎ捨てたんだ。気にしないのに」
「わたしが、気に、するんです……!」
「はいはい、こっちも俺が脱がすから、ほら、ちょっと頭あげて」
「ん……はい……」
顕になる、琴葉の胸の膨らみ。小さな突起は、すっかりピンク色で真っ直ぐ立っていた。それを見て一度生唾を飲み込んだ。差し込んだままの自分の突起を、まずは一番奥まで押し込む。
「んあっ!」
「じゃ、ラストスパートだから、ちょっと激しくするぞ」
「ふぇ……っ? はげしく……はげしくなんて、だ、だめです……! ちょ、ちょ、ああっ!」
押し込んでから、ピンク色の突起に顔を近づける。そして、ひとくち。唇で挟み込むように摘んで、そのまま舌で先端を転がす。腰のストロークは速く、そして深く。琴葉が一番気持ち良くなる場所へ、自分のものを押し付けていく。
「ちくび……っ、ちくび、らめっ……!」
「ん……これ、好きだよね、琴葉」
「しゅき、しゅき……っ! あっあっ、そこっ、おまんこの、おくっ、らめっ、らめらめっ、らめっ……!」
「ここかな」
差し込んだままの突起は、琴葉の痙攣に合わせて何度も搾り取られそうになる。快感も、そろそろ限界に近づいてきているのを感じていた。ただ、もう少し琴葉をいじめてみたくて、もっと可愛い琴葉が見たくて。そんな愛おしさに、もうそれも終わりに近づいている寂しさが加わって、下腹部に響く快感の限界を狭めてくる。
「あぁぁっ!!! おちんちん、しょこ、らめれすっ……!!」
「んんっ、ほんと、琴葉って、エロい声、出すよなっ!」
「ああっ、しょんなこと、いわないでくらひゃい……っ」
「んっ、まぁ、俺も、そろそろ限界かな。……どこにほしい?」
「な、なか……なかぁっ! なかに、くだひゃい……!!」
「……今日、大丈夫な日なの?」
「おくすり、のんでますからぁっ、だから、なかに……なかにぃ……!」
「はぁ……分かった。そんなに欲しいなら、くれてやる……っ!」
「ああっ、また、またいっひゃうぅっ! おおきい……おおきい、の……っ!」
「俺も……出るっ!!!」
「いっしょに……っ、いっしょに……!! あ、ああっ、あああああっ!!!」
二人の絶頂は同時で。白い欲望を全て吐き出すのと、透明な愛液が吹きかけられるのが、同じ快感として脳を焼きにくる。電流が走ったように、下腹部から背中、首から脳へびりびりと痛みと共にくるこの感覚に、名前をつけるとするならば、きっと「幸福」なのだろう。そんなことを思いながら、ベッドに突っ伏した。二人して、息を荒げながら、もう一度だけ、キスをした。
「好きだぞ、琴葉」
「わたしも、です、プロデューサー……」
唇を離すと、上気した肌に部屋の冷たさが突き刺さった。思わず琴葉を抱き寄せる。今この時だけは、彼女のぬくもりに触れていたい。そう思った。
*
次の日の朝。どこかで見られてもまずいので、早い時間にチェックアウトしよう、となった。二人とも六時に目が覚めてしまったのもあって、そのまますぐシャワーを浴び、服を着て、マスクをつける。
窓の外はまだ薄暗い。秋の朝は遅い。空は灰色と青をパレットで混ぜたような色だった。窓から見える冷たい空気が透き通っていて、でも、部屋の中は温かい。昨日の余韻が、まだ残っているからだろうか。
「準備できたか?」
「はい、ばっちりです」
「ちょっと早いけど、出るか。忘れもんないか見てくれ」
玄関先から、中にいる琴葉へ声をかける。鏡を見る。俺、まだおっさんじゃないよな。なんて、呟きそうになってやめる。昨日の晩、あの後、琴葉に年齢のことを気にしてる話をしたら「プロデューサーはまだまだ若いですし……その、かっこいいんですから、気にしなくていいんです。年齢でいじっていいのは、私だけなんですからね」と言われて、悪い気はしなかったのはある。ただ、それでも、こうして寝るだけで生えてくる髭や、前髪に一本大きく目立つ白髪は、おっさんであることの証明のように思えた。若くいるためには、もう少し頑張らないといけないのかもしれない。
「そういえば、ですけど」
「ん?」
「昨日のADさんと、何喋ってたんですか?」
「……気にする?」
「そりゃもちろん。彼女ですから。内容によってはまだ怒ってます」
「……琴葉が最近可愛くなってきただけじゃなくて大人っぽくなってきたなって話」
「え?」
「プロデューサーさんから見てもそう見えます? って聞かれて、ちょっと嬉しくて、色々話してた」
「そ、そうだったんですか、へ、へ〜」
「……なんだよ、その反応。怒るんじゃなかったのかよ」
「お、怒るに怒れないですよ! その話題じゃ!」
「まぁ……それなら、話した甲斐もあったかな」
「ただ、そういうのは私にもちゃんと教えてくださいね」
「だから今言ったじゃん」
「私から聞く前に、ってことです」
「……はいはい」
「またそうやって流すんですから……まぁ、今回はいいですけど」
「じゃ、出るか」
「はい、また来ましょうね」
「あんなにしたのに?」
「何度したっていいんです、だって」
「愛しあってるんですから!」