そこ書かれていたのはあり得ない内容だった。
オリジナルの読み切り短編です。
放置してあった話でござる
前作はウケが良くなかった。
市場読みが甘かったらしい。
思うところは多々あるが、外したものはどうしようもない。
次回作をどうするか。今考えるべきはそれだ。
文章作成アプリを使って、既に負けが確定した小説の終盤をタブレット内蔵のキーボードで打ち込んでいると、画面の上部に新着メールの報せがポップアップされた。
編集からだ。
タップして内容を確認、絶句した。
「男性向けのエロ小説を書けだと?」
何を言ってるんだ、こいつは。
一世を風靡した草食系男子の世代が壮年枠に加わって久しい昨今、エロに興味を持つ男は減少の一途を辿ってる。興味どころか性行為全般を嫌う者も少なくない。国が毎年公表している出生率から見ても、それは明らかな事実。
そんな連中向けにエロ小説を書いたって、ウケるわけがないだろう。
「市場読みもクソも無いな」
メールを閉じて、終わりかけの駄作に向き直る。
向き直って、自分も読みを外したばかりだという事実にため息が出た。
「推理小説主体のアラサー処女に、そんな無理難題を吹っ掛けられても困る」
自分の小説は仕事。自分の文章は受注生産の商品だ。
注文が来た以上は、気乗りしなくても書くしかない。
まずは読んだこともない男性向けのエロ小説とやらを覗いてみるかと、大手の小説サイトを一通りサーフィンしてみた。
草食系男子のイメージがぶっ壊れた。
「は。こいつらにとって女は道具なのか」
触手系を含む拘束、脅迫、集団暴行、催眠術、睡眠薬やら媚薬やら麻薬やらを使ったレイプ、精神操作系魔法に奴隷堕ち、パワハラ、恩着せ、自分勝手な言動しかしてないわりに何故か女という女に好かれて困る俺様な主人公。
どれもこれも人形と化した女の穴を使ってるだけの自慰だ。ヨイショされたくてしょうがない名誉欲と、モテたくてしょうがない承認欲求やら色欲やらが炸裂してる。
そこに出てくる女といえば、全員がその場の勢いや男の都合に合わせて物を言うだけで、一貫した目的意識や目標達成への気概や主体性ってものがまるで無い。
こんな風見鶏なんぞにちやほやされて、歩く脂肪の塊でしかない物体を自分の思い通りに操って、それが楽しいのか?
女児のお人形遊びと大して変わりないな。
「理解に苦しむ」
だが、理解できないものを理解するのも業務の一つ。
各サイトのランキング上位に並ぶ作品を読み漁り、読者が求める暇潰しの傾向を読み解く。
「こんなところか」
設定は大体決まった。
細かい部分は担当とのセッションで詰めるとして、問題は処女だ。
男性向けエロ小説のメインは男と女のエロ、もしくは女同士のエロ。
つまり、一にも二にもとにかくセックスなわけだが。
恋愛経験ゼロで自慰もしたことがない処女の自分に、性行為の良さなど解りようがない。ましてや男が求める快楽なんぞ知らん。
知らん物を使える物として形にするには、提供する側が知らん物をとことん追究するしかない。
男がエロに求めるエクスタシーとはどういうものか、だ。
「要は牛の搾乳みたいに男性器を締め上げて精液を搾り出せば良いんだろうが、それだけなら自分の腕一本で完結してるだろうし」
道具としか思ってない面倒な女の脂肪と穴をわざわざ使う辺りに、性行為の良さの秘密でもあるのか?
となると、最初に知るべきは女の体か。
「外で適当な女を取っ捕まえ……たら、犯罪だな。やめておこう」
仕方ない。
これでも一応、女は女だ。
自分を使おう。
「ちょっと来てくれ、クルス」
「はいはーい、お待たせ。今日の紅茶はアールグレイ、お供はバニラアイスを添えたホットアップルパイですよー」
「それは後で貰う。今は私の女性器を弄り倒して欲しい」
ガチャン。
呼ばれて少し経ってから作業部屋兼寝室の扉を開いた男型のホムンクルスが、持っていたお盆を床に落とした。
椅子に座ったままキャスターを転がして振り返れば、お盆に乗ってた二人分のティーセットが、中身も溢さず奇跡的にそのままの形で立ってる。
「女性器?」
「女性器」
「誰の?」
「私の」
「誰が?」
「クルスが」
「風邪でも引きました?」
ロボットダンスを連想させる動きでお盆を拾って作業机の上まで運んできたクルスの手が、椅子から立ち上がった自分の額をピタリと覆う。
「熱いか?」
「ビックリするほど超平熱」
「だろうな」
「説明を聞いても?」
「次回作が男性向けのエロ小説になった。男が好むエロを知りたいから、自分とセックスして欲しい。女性器の弄り方も挿入も自由にしてくれて構わない。要望があれば口で咥えるし、飲んでも良い。なんなら膣の中に射精してくれ。その場合は膣壁で感じるペニスと精液の感触の違いも知りたいから、できればゴム有りとゴム無しで最低二回。アナルとオモチャは椅子に座れなくなりそうだから、次回作の受け次第で別の機会に頼むかもしれない。クルスが嫌でなければ、だが」
「相手に心当たりがないからって、実子同然のボクをセックスの研究に利用しないでください。泣きますよ」
クルスを作ったのは自分だ。
錬金術がテーマの小説を書く時に錬金術を勉強してたら、なんだかんだで実際にホムンクルスが出来てしまった。
どうやら人工生命体にありがちな弱点である短命は克服しているらしく、件の小説を完結させた後も健康的に生き続けてる為、適当な戸籍を買い与えて同居している。
世界には、みなしごに優しい国もあるものだ。
「嫌なら良い。街頭に立ってお金をちらつかせれば物好きの一人くらい釣れ」
「ボクがやります」
「嫌じゃないのか?」
「嫌ですよ。好きな人とこんな形で性行為したがる人なんて、頭がどうかしてます」
「嫌なら」
「好きな人、の部分を歯牙にも掛けてくれないところが本当に嫌。もういいです。ボクは人間相手に暴力的な行為ができない設計なので、ご自分で服を全部脱いで、机に座って、ボクに向かって足を開いてみせてください」
「脱ぐのはともかく、M字開脚はちょっと」
「そこで処女の恥じらいを持ち出すくらいなら、最初からエロ動画鑑賞だけにしておいてくださいよ」
「他人の前で腹を剥き出す行為に生命の危機を感じる」
「野生動物じゃあるまいし」
肩をすくめたクルスが、生命の危機より先に処女膜の危機を感じてくださいと呆れた口調で言いながら、素っ裸で机に上がろうとする自分の背中に抱き着いてきた。
両腕両足を突っ張って立つ自分の背中に、シャツを脱いだクルスの体が密着する。
ホムンクルスも人並みに体温がある。結構温かい。
自分の手足とは違う体温の感じ方を頭の中で文章に直してたら、クルスの右手が自分の左肩を、左手が自分の腹を撫でさすった。
「クルス」
「なんですか」
「そこに女性器はない」
「ボクの初体験を作業扱いしないでください。こういうコトには順序ってものがあるんです」
聞き覚えがあるセリフだ。
どこで聞いたんだったか。
「ああ、大手で一番人気のエロ小説か。自分が男でクルスが女なら、エロ小説の条件に合致するんだな。このセリフ」
「フィクションとノンフィクションの境目を曖昧にするの、やめませんか」
「存在からして作り物のホムンクルスに言われても」
「少しはムード作りにも協力してくれませんかね。萎えるでしょうが」
「萎えるくらいには反応できてるのか?」
「あーもうこれ以上は喋らないでください。最後までできる自信がなくなるので」
「それは困る」
自分が分析できる女の体は、自分のこれしかない。
自分のこれを分析するには、男の目と手とペニスと感想が必要だ。
大抵の男は乳房をしゃぶるのは好きでも女性器を舐めるのは好きじゃないのか、そっちの場面は数が少なかった。よって、舌はどうでもいいんだが。
街頭調査に出ても、針に付けたエサがアラサー処女じゃ釣りが成功するとは限らないし、せっかく出してくれてるらしいクルスのやる気を削ぐのは上策じゃない。
言われた通り口を閉ざして、クルスの手に成り行きを預けてみる。
「やわらかい」
肩から二の腕をなぞって下りたクルスの右手が、自分の左胸の輪郭を遠慮がちに辿って中指と薬指でピンク色の乳頭を軽く挟んだ。
一瞬だけ、乳頭から心臓に向かって静電気と似た痛みが走る。
自分とは違う体温が皮膚に触ってると、そこだけが妙に熱い。
クルスは二本の指で乳頭を挟んだまま乳房をやわやわと揉み、開いた左手で自分のヘソ周りに大きな円を描いている。
その動きはまるで、食後に腹鼓を打つ中年親父だ。
笑える。
「くすぐったい?」
堪えた笑いが腹に出たらしい。
揺れた体を気遣うようなクルスの声が、自分の右耳に吹きかかる。こころなしか息が熱っぽくて荒い。
変態っぽいなどと口走れば今度こそ手を止めるだろうなと思いながら、無言で首を横に振った。
「痛かったら、言ってくださいね」
喋るなと言ったり、言えと言ったり、指示が忙しない。
黙って頷いたらクルスの左手の人差し指がヘソの穴に入ってきた。
爪の根元辺りまで沈んだ指先が、穴の中でぐるぐると円を描く。
痛くない。いや、痛い。
違う。尿意に近い刺激だ。
ヘソの穴が抉られてるのに、女性器の辺りがピリピリする。
何故だ。ヘソと女性器は繋がってるのか?
そうか。こんなところは気にしたことがなかった。人体の構造に対してもっと興味を持たなければ。
針の先端で股間を軽くつつかれてるような、この感覚を小説でどう表現するか考えてる隙に、クルスの右手の人差し指と親指が乳首を摘まんで扱き始めた。時々強めに潰されるが、こっちも別段痛くはない。
それよりも首筋を舐められたり甘噛みされたり吸われたりしてるほうが気になる。くすぐったいし、これにも女性器が反応してるっぽい。
何故だ。舐められてるのは首筋なのに。
「足、閉じないで」
閉じたつもりはなかったが、言われてみればいつの間にか太ももをすり寄せてた。意識して足を開いた途端、強めの尿意に襲われる。
やばい漏れる。机の下がびしょ濡れになる。部屋が尿臭くなる。
大人としての尊厳と矜持と掃除の手間が気になって尿道を締めようと力を入れたその時、ヘソから離れたクルスの左手が股間に滑り込んできた。
「うわ、わ」
慌てて覗いたそこに自分のじゃない手が挟まってる。薄く生え揃ってる陰毛ごと陰部全体を包み込んでマッサージみたく揉み始める。
なんだこれ。足先から腹から血液が頭部に集まってくる感覚。視覚的にも感触的にも落ち着かない。
「ちょ、まっ、クルっ」
クルスのザラついた舌が外耳を舐めて、人差し指の爪先が乳首を転がして、手のひらが陰部全体を押し上げるように捏ねてる。
文章で何度も読んだ前戯の場面。挿絵で何枚か見たバックハグの構図だ。
これはまずい。女達が身をよじりながら顔を真っ赤にして涙目になってた、あの理由が分かった。
尿だ。これは尿意がやばい。本気で漏れる。
「クルス、いっ、ひゃあん!」
一旦トイレで用を足してきたいって言おうとしたら、陰部を捏ねてるクルスの指先が大陰唇を開いて小陰唇を撫で上げ、クリトリスを爪先で弾いた。痛みとも違う鋭い刺激が喉を衝く。今まで聞いたことのない声が出た。
なんだ、今の甲高い声は。
まさか嬌声? これが、性交中の女が出すという喘ぎ声なのか?
普通に気持ち悪いな。引く。
「口元、押さえないで」
「う、えあ? ふあ、っんやあああああっ!」
咄嗟に両手で隠した私の口内にクルスの指先が入り込んで舌を掴み撫でる。
唾液が溢れ出して汚いと思ってたら、いきなりクリトリスを押し潰されて体が跳ね上がった。
「やっ、う、ふるふっ! ゆひ、や、やらっ、やっああ、あ、ああああっ!」
グリグリグリグリと、痛みを感じない程度の力でクリトリスを撫でられ、弾かれ、転がされて、腰が勝手に逃げ回る。汗が滲んで震え出した足からは力が抜けていく。それでも刺激から逃げようとして体は『く』の字に折れ曲がり、両腕はクルスの両手を引き離そうと突っ張っている。うまく呼吸ができなくて視界が滲んできた。
逃げてももがいても執拗に弄られる舌とクリトリス。
体が内側から沸騰していく感覚。耐え切れなくなった尿意が爆ぜた。
「ああっ…………は……あ、」
クルスの体が離れてすぐ、自分の体が膝から崩れ落ちる。
耳鳴りがする。両目は開いてる筈なのに、体全体が心臓になったみたいに血流音だけが真っ黒な世界で鳴り響いてる。短距離を全力疾走した直後の気分だ。
しかし、一番ドクドク言ってるのは何故か膣のような気がする。クルスの指先からは解放されたのに。これは痙攣? 膣が痙攣してるのか?
「……ん?」
息苦しさと脱力感の狭間で自分の状態を分析してたら、体が浮き上がって背中から沈んだ。クルスが抱え上げてベッドに運んでくれたのか。
考えてみたら、最初から風呂場でやるべきだったな。尿素でタイルやなんやらを傷めるかもしれないが、わざわざ真冬に部屋の換気と掃除をするよりは楽だったろうに。
「…………すよ」
「ほえ? あ」
耳鳴りが落ち着いて呼吸が楽になってきた頃、ベッドに乗ったクルスが私に覆い被さって両足を持ち上げて開き、まだ脈打ってる小陰唇の奥に指先を当てた。しっかり見えてるわけじゃないが、部屋の空気と指との温度差でそこが濡れてると分かる。
けど、濡らしたのは尿じゃない気がする。水とか尿で濡れた皮膚は撫でた時に微妙な引っ掛かりを感じるものだが、これはヌルッとしてまとわりつく感じだ。
もしやこれが愛液というものかと納得してたら、クルスの指先がクリトリスの近くまで登り、その周辺にぬめりを塗り広げ始めた。
にちゃ、くちゅ、と粘性の高い音が聞こえる中で爪先がクリトリスの先端を掠める。
静電気とよく似た刺激のせいで、一瞬息が止まった。
「やっ、待ってクルス、ちょっと待って。まだ膣が痙攣してる」
「見ればわかります」
「え、見えるのか?」
「ええ。クリトリスと膣口が湿り気と赤味を増して物欲しそうにヒクヒク動いてますよ。でも挿入するのはまだ難しいと思うので、しばらくは指で解します」
「ひゃうっ! ま、やっ、ああ!」
クルスの左手の人差し指と親指がクリトリスを摘んで扱き、右手の中指が膣の中に浅く沈んだ。
足の間に誰かの頭があるだけでも落ち着かないのに、腰が浮いた状態で自分の秘部が弄られてる光景は凄まじく心臓に悪い。
ただ、浅いとはいえ指を入れても痛くないというのは意外だった。
どの小説でも、処女は指一本で死ぬほど痛がっていたのだが。
「……奥まで入れます」
「ん……んんんっ!」
左手がクリトリスへの刺激を続ける一方、膣への出入りを繰り返してた中指も根本まで一息に沈んだ。ぷちゅんと気泡が弾けたような音がしたと思ったら、間を置かずに曲げられた中指で膣壁を撫でられ、小刻みに揺らされる。
「わ……これ、すごい。ヒダが多くて、根本が、キツ……」
「っ、そ、それ! なんか、や……っ! やだ、やめっ」
「ここ? イキそう? 感じてくれてますか?」
「わかっ、わかん、ない! けど! また出る! また来ちゃ……っ!」
収まりかけてた痙攣が、膣とクリトリスへの刺激でまた活性化していく。顔に熱が集まって、呼吸も浅くなっていく。膣壁への振動が速度を増していく分、クチュクチュ音も派手になってる気がする。
また尿意が刺激されてる。
「大丈夫。掃除はボクがしますから、何も気にしないで……イッて?」
「い、やっ…………、いやあああ…………っ!」
トイレ以外で放尿することへの背徳感とか罪悪感とか羞恥心とか。
そういうものが、二本目に突き入れられた人差し指で全部吹き飛んだ。
二本の指でクリトリスの裏側辺りを突かれた瞬間、詰まった息が掠れた悲鳴に変わって背中が反り返り、視界にチカチカと光が点滅してまた真っ黒になる。
「は……あ……」
熱い。とにかく熱い。
息苦しいし、耳鳴りは酷いし、全身汗だくだし、秘部はベタベタに濡れて落ち着かないし、膣周辺に残る異物感が気になって仕方ないし、体はガクガク震えるし、なにより尿意を刺激されるのが一番嫌だ。
唯一行為中は臭いを感じにくいらしいことだけは分かったが、こんなことをして何が面白いんだ? まったく理解できない。
「すなおさん」
「…………ん」
「分かってると思いますけど、ボクにも生殖機能はありますからね?」
「…………………」
「ちゃんと確認は取りましたよ」
声も出せないくらいグッタリしてる自分を見下ろして、クルスが笑った。
と思ったら自分の腰を持ち上げて反り立つペニスを膣口に当て、ズブリと押し込んだ。
「いっ────…………!」
指とは比べ物にならない質量とか書いてある小説が何本かあった。あれはこれのことか。股裂きの刑じゃないが、破瓜の瞬間に連想したのはそれだ。
指での前戯に何の意味があったんだ。愛液が役に立ったのは挿入の瞬間だけ。ペニスが奥へ奥へ進むほどに痛みと圧迫感が増して、異物への恐怖から背筋と内臓が冷えていく。
「い、いっ…………くる、ぅぐっ」
「こういうのは、多少強引でも最後まで一気にしたほうが、慣れるのも早いらしい、ですよ」
「な、れるっ、とか、ムリ……ぃいっ!」
「だから、エロ動画視聴だけで、済ませておけば良かった、のに」
「し、ごと、だからっ!」
「…………デリカシー無いですよね、ほんと……に!」
「ひっ! やだ、クルス、やだ! 動かないで痛い!」
「今のは、すなおさんが悪い!」
「うあっ! い、やっ! やあああ!」
膣に収まって一度は止まったペニスが、奥にある何かに当たるまで狭い道を強引に進み、先端際まで一気に引き抜かれた。腰から頭の裏まで、得体の知れない焦燥感のようなものが駆け上がっていく。
かと思えば奥の何かを叩くように突かれ、引き抜かれ、突かれ、引き抜かれ。
際限なく加速していくそれは、ピストン運動というよりすり鉢と棒で肉を捏ねてるみたいだ。ペニスの出っ張りが膣口まで引き抜かれるたびに、粘液以外の中身までほじくり出されそうで怖い。
「ふ、う……っ」
恐怖を受け流そうとして硬直する体を何分、何十分、何時間揺さぶられ続けたか。
慣れたり気持ちよくなったりするどころではなく、早く終わってくれとすら思いながら好きにさせていたら、苦悶の表情を浮かべたクルスが自分の淫部に男性器の根本まで擦り付け、ぐったりしたそれを膣から抜き取った。
自分の股間とペニスの間で、あり得ない量の白く泡立った精液やら愛液やらが絡まり合い混ざり合い、糸を引いて滴り落ちる。
これは一度や二度の量じゃないだろう。中肉中背の体のどこから、こんなに大量の体液が出てくるのか。
ゾッとする光景から顔を逸らして、重なった視線に息を飲んだ。
「……ゴム無しとゴム有りの違いも知りたい、でしたっけ。参考にできる余裕があれば良いですね?」
上半身を起こしたクルスが、額に張り付いた前髪を掻き上げながら挑発的で底意地の悪そうな顔をして笑ってる。
「二度目からは、ご自分から挿れてとせがんで善がるくらいドロドロに溶かして差し上げます」
粘る体液が絡みついた手を自分に見せつけるように舐め上げる。
異物感しか残ってなかった下腹部と心臓が、いきなりキュンと締まった。
なんなんだ。かつてない運動をしたせいか?
まずいな。ホムンクルス相手の腹上死とか、生命保険がどうなるのかわからん。
いや、そうじゃない。
「クルス」
「なんですか」
「私が善がるとクルスは嬉しいのか?」
「嬉しいですよ。好きな人に気持ち良くなって欲しい、気持ち良くさせたいと思うのは当たり前でしょう?」
「そうか。合点がいった。だから男性向けのエロに出てくる女は軒並み快楽堕ちするんだな。女とは感性とかが違いすぎるだけで、あれはあれで男なりの好意の表現だったわけだ」
「分かってましたけど、ここまでしても度外視するんですね。ええ、分かってましたけど」
「クルス」
「はいはい、次はなんですか」
動き出す気配を感じ取ったのか、クルスが脇に避ける。上半身を起こした自分の背中に布団を被せて、あさっての方向を見ながらため息を吐いた。
その横顔を覗いたら、また心臓と下腹部がキュンと締まった。
唐突で意味不明な感覚だが、不思議と不快じゃない。
「はっきり言ってセックスは痛いし苦しいし、疲れるだけで気持ち良くはない。だが、男も男なりに相手のことを考えてるらしいのは理解した」
「そうですか」
「私も、クルスには気持ち良くなって欲しいと思う」
「え」
「どこまでできるか分からないが、クルスが読んで気持ち良くなれるエロ小説を目指して頑張ってみるから」
「上げて落とす天才すぎてもう嫌」
「次は、クルスがして欲しいと思うセックスを教えて」
「はいは…………え?」
「クルスが嫌じゃなければ、だけど」
やはり、何事も下調べと経験が重要だ。
処女だった自分が考えた設定はボツにしよう。女目線の偏見が目立つあれじゃ男は喜ばない。女でも楽しめないだろう。
自分がこれから書くべき小説は、男が楽しめて女も納得できる、そういう話。
「二人で一緒に高みを目指そう」
重たい腰を引きずり、机の上の紅茶に手を伸ばす。
そして、真っ赤な顔のクルスとアールグレイ味のファーストキスをした。
万事エロ成分不足で気が乗らぬう
エロだけ書きたい人生だった……がくっ