高垣楓さんが川島瑞樹さんと温泉旅行でいちゃついてモブ女子を性癖破壊してしまうお話 作:ふりーじ屋/家庭内禁書
原作:アイドルマスター
タグ:R-18 ガールズラブ アイドルマスターシンデレラガールズ 高垣楓 川島瑞樹
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(顔ちいさっ、頭身たかっ)
少女は地元があまり好きでなかった。いかにも田舎といった山々、硫黄が匂う古めかしい温泉郷、さらにもう少し山の奥に平安時代から有名だったらしい神社がある。世界遺産に認定されていると観光業以外の大人までが宣伝する勢いが他所に媚びているようにも見えて、少女にはむしろ気恥ずかしかった。
ふだんならそこで宿の一つを営む親戚から夏休みの手伝いを頼まれても、バイト代を弾んでもらえるならと、しぶしぶ赴く。
(指も細くて長くてきれいだなぁ……字は、ふつうだね、色紙のサインじゃあるまいし)
少女より一回りほど年上らしき女性二人組が、宿の入口に姿を見せて、歩いてきて、隣の従業員と会話しつつ受付で記帳しているところまでぼーっと見ていた。隣の従業員からこっそりヒジ打ちされてようやく仕事を思い出した。
「すみません、ご案内いたしますっ」
その宿は温泉街からさらに奥まったところで小ぢんまりと営業している。貸別荘がいくつかあって各棟にスタッフがつくと言うほうが実態に近い。世間では盆休みが明けたばかりの紅葉が色づくには早い時期で、ちょうど需要の谷間にあたる。
その二人がきょう唯一の客となっている。
「この空気を吸ってるだけで勝手に羽が伸びちゃいそう、これは絶対温泉も最高ね」
「気に入っていただけたなら幸いです、私の地元みたいなものですし」
少女がこれから案内するこの宿の客は、いまを時めくアイドル・高垣楓と川島瑞樹であった。
(……本当に、高垣楓さんだ)
楓のモデル時代から、近くの駅やお土産屋に楓のサイン付き等身大パネルが置かれていた。初めて見たとき、少女は出身の芸能人を誇る地元の田舎臭さに――(地元って言うけど厳密には隣町だし……)――苦笑いした。
「楓ちゃんも昔は宿でお手伝いとか?」
「この口下手に接客ができたと思いますか」
「できてたら、モデルより先に温泉宿の看板娘になってたかもね」
楓が泊まるこの宿を少女の親戚が経営していて、少女から見れば楓は親戚の親戚である。面識はなかった。けっこうな時間をかけて通う県立高校で各々の地元の話になったとき、主な出身者として挙げると相手に確実に通じてとりあえず便利、ぐらいの認識だった。
いつもしぶしぶ手伝う宿の仕事を、今回に限って延長して引き受けた理由も、有名人の顔を近くで拝めるなら、という野次馬根性のせいだった。
(川島さんもとっても素敵だけど、まだこっちに近い。高垣さんは……きれいすぎて、浮いてる)
少女の後ろ、楓の横を歩く川島瑞樹も全国に知られたアイドルである。多忙な仕事から離れようと、静かな湯の峰の空気を吸って存分にくつろいでいるらしかった。
瑞樹のようなリアクションが、少女には宿の手伝いで見慣れたものだった。
「もう少ししたら休みが、って口だけでもらってた時期がずいぶん長かったわ、どこのローマ皇帝なのって話よ」
「瑞樹さんったら、休みの最中もまた休みがほしいって話になっちゃうんですか」
「これは失礼……お酒はお風呂上がってからよ、すぐ入るでしょ」
「梅酒ですよ、ちょっとなら……撮影では露天風呂で昼から呑めたのに」
「舌の根も乾いてないわよ」
楓はどこか違っていた。瑞樹とのやり取りで軽い笑い声を立てているところだけならば、瑞樹に劣らずくつろいでいるようにも見えた。笑いが沈黙に移る一瞬、そばで事務的な説明をしているだけの少女の胸をざわつかせた。
(……芸能人のオーラってものなのかしら)
楓と瑞樹が泊まる部屋の説明を一通り終えて後にしようとしたとき、瑞樹に続いて楓が小さく頭を下げた。緑がかった右目と青みがかった左目で見つめられたと思いきや、右目だけ瑞樹に視線を注いでいると気づいた。胸のざわつきがもう一段ひどくなった。
※
「……のぼせちゃうでしょ」
「瑞樹さんにはのぼせっぱなしですよ、私」
「ツンケンしなくなった私なんて面白くないんじゃないかしら」
「南高梅は落ちるのを待って優しく受け止めて収穫するんですよ」
瑞樹は、楓の言葉遊びがいささか下品だと思った。誰が、いや何が梅だというのか、梅ほど甘酸っぱい関係のつもりか、あなたのどこが優しいのか、とも思った。チェックインして、部屋風呂と思えないほど広々した露天の温泉にさっそく浸かって、無心でくつろいでいるというのに、いきなり腕を絡めてきて寄りかかってくる楓がそれなりに重いと感じた。だいぶ無礼だとも感じた。
「好きです、夢かと思っちゃうぐらい」
「つねってあげましょうか」
「かじってください」
それでもくちびるを奪われてそのままキスに付きあってあげた。
かじってはやらなかった。
「……もう素面じゃなくなっちゃった?」
「目を開けて夢を見てるんです」
すぐ近くに感じられる楓の表情も吐息も、名状しがたいほどかすかな身動ぎも、瑞樹の理性や羞恥心を揺らした。
さっきまで堪能していたはずの、深山幽谷の澄んだ空気も静寂を引き立てる葉擦れも、いかにも温泉という気分を盛り上げる硫黄臭も、かすんでしまった。お湯の温かささえ不純になってしまった気がした。
「もし5年前に出会ってたら、冗談でも許せなかった」
「5年前だったら、冗談の一つも言えませんでしたよ」
温泉に浸かってこれからのぼせそうになるとわかっていながら、なんでキスして、セックスまで〝してしまう〟のだろうと、する前から思った。
もともと楓のことをうっすらライバル視していた。かたや女子アナ、こなたモデルと別業界で結果を出しているにもかかわらずアイドルの世界に挑んできた、というちょっとした共通点でよく比べられた。同じステージに並ぶと、楓の顔の小ささと手足の長さが本当にずるいと思えてしかたがない。元モデルだけあってその強みの魅せ方も堂に入っている。瑞樹がスタイルでここまで強く引け目を感じた相手は初めてだった。
そのくせ楓のトークが見ていられないほど下手だった。フォローを入れているうちに楓が懐いて、ユニットを組むようになった。そこまではいい仕事仲間として付きあえていた。
「誘われたのあしらうのだけは最初から上手かったのに」
「誘うのは下手っぴでしたか」
楓が名声を得て多忙になったころ、一線をうかがうようになってきた。瑞樹はそのとき自分が女性と付きあう姿に初めて想像が及んだ。それまでは知っていても自分と無関係な人間の話だと思っていた。
楓が右手の中指であからさまにくちびるをなぞっていた姿を初めて見せられたとき頬をつねってやった。
「あなたは、私が出会った中で、一番わがままで不器用でどうしようもない人間よ」
「ありがとうございます」
「褒めてないったら」
楓をきれいだとは思った。それに誘われて少し気が迷ったら、少しも優しくしてもらえなかった。あの無駄に神秘的なオーラを振り回して駄々をこねるように絡みついて泣いたり笑ったりしていた。
もう遠くなった気がする最初の瞬間からきょうに至るまでずっとそうだった。
「……まぁ、楓ちゃんのお誘いに、まんまと乗っちゃってから言ってもね」
「この素敵な宿と温泉に免じてくだされば」
「そのいい雰囲気を台無しにしちゃうのよね」
くちびるを塞がれる。軽くかじられて神経がぴりつく。関係が始まったころはもっと噛みつきあうように肌を重ねていた。終わったらしばらく事務的な用件以外で口を聞いてやらなかった。
「何かを本当に自分のものにしている瞬間があるとしたら、それはその何かを自分から投げ捨てているときだと思うんですよね」
「じゃあ、私たちが本当に自分の人生をものにしているのは、自殺する瞬間かしら」
あの高垣楓が自分の前だけで身も心も乱れるというのは、それが楓のわがままのせいであっても、しばらくするともう一度見たくなってしまう。アイドルが人の心を魅了する生業と定義するなら、アイドル同士となる楓との関係は、どちらがどちらを魅了するか、という負けん気もくすぐる。楓もたまにそれを煽ってくる。
そのうち自分も乱されてしまう。
朱に交われば赤くなる、のことわざどおりになってしまったかと思う。ぞっとするほどぞっとしない。ダジャレのノリまで伝染してしまったかもしれない。
「それだけじゃあ、ちょっと寂しいです」
「含まれるんだ。冗談のつもりだったのに」
「ただ、その瞬間を空費するだけでもいい。自分から、もう何もいらないって思えるぐらい」
「私は二人このままぼーっとお湯に浸かるだけで満足よ」
「半身浴にしましょう」
瑞樹が腰を上げる前に楓の手が肌に迫る。無遠慮に乳房のふくらみをまさぐってくる。
「お湯に浮くなんでずるいです」
「楓ちゃんだって浮いてはいるでしょ」
「〝は〟ってなんですか」
「体組成だってそう変わらないでしょ」
脂肪、筋肉、骨、水分。浴室に入る直前に少し身構えつつ乗った体組成計でも二人の値は大差ない。公表しているスリーサイズでは瑞樹のバストのほうが大きい。
対して楓は瑞樹より一回り身長が高い。肩幅の差も相応にある。
「楓ちゃんのほうが土台が広いじゃない、重さや体積で比べたら同じぐらい浮いてる」
「触ったことないみたいな口ぶりを」
アンダーバストで勝手にもぞもぞして、くすぐったくてうるさい楓の手の甲をつねる。楓がもう片方の手を伸ばして指を絡めてこようとするので、ごつんと額どうしをぶつけて抗議する。
「他の人にもちょっとぐらい触らせたことあるでしょ」
「瑞樹さんの前に瑞樹さんはいませんでしたよ」
「あるんだ」
「忘れちゃいました」
むにゅん、と無遠慮に、ぴりりとかすかに痛むほど指先を押しつけてくる。皮膚がうずうずとしてくる。不意に楓の手が離れる。もう一度やってくるのでは、とここまで身構えてしまう愛撫なんて楓が初めてだった。
「男だった? 女だった?」
「内緒です」
「本当は覚えてるんだ」
「細かいこと気にしないでくださいよ」
身を寄せられると、本当に男の肌とまったく違っている。女どうしだからか、スキンケアに人一倍気を使っているアイドルどうしだからか。寄せあっているとお互いの肌が勝手になじんでいく。裸でくっついているだけで、そうする前にいろいろ気にしていたことが、まぁしょうがないかと心の端っこに退けられ、ほどなくどうでもよくなる。
「んっ……楓ちゃん、ここ、外……や、ん……!」
「人っ子一人、クマの子一匹いませんよ」
最近は山から降りてきたクマが人間の生活圏をおびやかしているとニュースで見聞きするが、熊野のツキノワグマは絶滅危惧種らしい、とさっきの少女の世間話を思い出す。そのクマがいまやってきたら二人でむしゃむしゃ食われてしまうのか。嫌な想像だが、老衰死よりはマシかもしれないと思えてしまう。
「んくっ……」
「声、聞きたいですね」
何もしないままでいてほしいのに、楓の手も腕もくちびるも舌も歯も勝手気ままに動きつづける。性感帯が気だるいまま目ざめていってしまう。本当に眠いのに揺り起こされているときの感覚と似ている。妙な連想だった。朝の弱い楓はいつも瑞樹に起こしてもらう側だ。
力強い腕やペニスを持たないくせに、楓は男よりずっといやらしく攻撃的に思える。美貌が狙いを定めてこちらを睥睨してくるだけで肌の奥までざわつくのに、こちらを逃すまいと腕を絡めて指先を立ててくる。
「……ぃ、たっ……」
「強いですか?」
「……痕、残さないでよ」
「私と瑞樹さんしか見ないところなら、いいってことですね」
「よくないわよ」
楓はいつだって、これが初めてのように探り探りで、これで最後のように思い切った愛撫をしてくる。いつも余裕ありげにゆったり構えているのにこのセックスのときに限ってせっかちで図々しく手を伸ばしむしゃぶりついてくる。
「……中は」
「お湯が入っちゃ、ダメですよね」
「ぇ、あっ……もう……んくっ……ん……!」
クリトリスとその周りを撫でられる。そのまま楓が、瑞樹の体を手すりに寄りかけさせるようにしつつ瑞樹の乳房をちゅうちゅう吸ってくる。170センチちょっとある背丈をわざわざかがめて吸っている。どっちかにすればもっと楽な姿勢だろうに、と呆れる。
「……ちょっと、もう……楓ちゃん……んんっ……」
他人の乳首をくわえたり乳輪をなめていながら、楓が妙に繊細げな目線で見上げてくる。寂しくて心が痛くてたまらない、と目つきで語ってくる。
こんな顔をしながら今夜何の酒を飲もうかと考えているのが高垣楓である。モデルやアイドルに向いている、といまさら思う。
「くっ、ふぅ……」
「瑞樹さんからはしてくれないんですか」
「お風呂ではお風呂を堪能したいわよ」
「一人だったらそうですね」
「人に責任転嫁してぇ~」
執拗に乳房をいじられて、もう自覚してしまうほど乳首がぽってりしている。楓にここをいじらせてしまうと、一線を超えてしまったのだという気分がしみじみと広がる。あくまで気分だ。アイドルが胸の谷間を見せても乳輪を見せてはならない、という業界の線引きのせいにした。
「んきゅっ、ふ……!? くっ……」
触ってほしくないわけではないが、安直に触らせてやるのが癪で、つい痛がるふりをしてしまう。自分もいつのまにか聞き分けが悪く子供っぽくなってしまった。そうだと自覚している最中は気まずいが、素面に戻って思い返すと、たまにそういうときがなければ人生やっていられないと開き直れてしまう。大人らしく、と言い聞かせて日々積み重ねている配慮や妥協をかなぐり捨てると奇妙に心地良い。楓が同調してくれるならなおさら。
「もっと触ってほしいんですか」
「……気持ちよくしてくれるのかしら?」
「瑞樹さん、触り甲斐がありますねぇ」
楓がわがままに体を求めてくるにつれて、瑞樹もこうやって触って、あんな触り方いや、などと注文をつけてみるようになった。本当にそうしてほしいというわけではなかった。楓の指先は、楓のものと知っていれば、いつも刺激的だった。私だってわがままを言う、とただ主張したかっただけだった。
すると楓がにんまりするのが常だった。
「ぁ……はっ……そ、こっ」
「私が人のお世話をしてあげる側になるなんて」
「……世話ってね」
「一人ではこうなりません、できません」
わがままを聞かせているうちに楓の愛撫が口惜しいほど上手になっていった。いちおうこちらの話を聞いているのか、と見直した。
いまはもう、ぴくん、と肩や腕が露骨に反応してしまう。神経まで見透かされているように触ってほしい加減で、触ってほしいところのすぐそばを撫でたりつねったりしてくる。
「あ、あっ……はぅっ……!」
「いつまでもこうしていられたらいいのに」
「のぼせるわよ……」
一度たどり着いたらもう二度と戻れない境地にじわじわ近づいている気がした。月並みに言えば幸福だった。楓の一挙手一投足ばかりか、昼過ぎと夕焼けのあいだの日光を受けてきらきらする湯面が虹色めいてきれいに見えた。自分たちのほかに何の生き物もいなくなったふうな静寂が耳にしんみり沁みた。
「瑞樹さん」
楓のことはかわいらしいと思った。楓に何をされても受け入れてしまいそうな自分が、うっすら怖かった。
「っ、んっ」
くちびるを押しつけられた。血が出ないぎりぎりの加減でかじってやった。
「ん、ふふ、あは……」
「瑞樹さん?」
「ああ、おかまいなく……いたっ」
「おかまいなく……は、ないと思います」
「そうね」
楓とのセックスに溺れていくのはいつも気持ちよくかすかに悲しい。楓のことは誰でも知っているのに、自分と楓とのことを誰かに話したくてたまらないのに、誰にも言えない。手をつないでいるところを誰かに見られたとき、女子学生みたいに茶化して誤魔化すのが苦しい。同性愛者が困るのはこういう感じなのか、と考えてみる。それよりずっと大きな問題を、つまり楓と自分はアイドルどうしであることを思い出す。ほかの人間の歓心を引いて稼いでいるのに、幸せを味わうためにほかの人間をじゃまだと感じてしまったら、在り方が揺らいでしまう。
「あっ、ぁあっ……んふ、あは……」
「またぁ、笑わないでくださいよ」
ついに風呂場の床に押し倒される。こちらを見下ろしてくる楓なんかすべて夢のようだった。肩甲骨や腰にくっつけられた人造石が冷たく濡れてひんやりして、そこだけ現実味があった。ちょうどいいアクセントだった。
「細いわねぇ、楓ちゃんの脚」
楓が勝手にこちらと足腰を交差させるように、有り体に言う貝合わせに持ちこもうとしている。押し倒されているのに楓の下半身が気にかかる。反則のように細くてしなやかで長い。それで戴冠したときはハイヒールのガラスの靴を履いていた。
楓が瑞樹の片足を抱えながら腰を密着させてくる。ついに陰唇を重ねあわせる。
「濡れてますね」
「別に?」
楓といろいろなやり方を経験して、女性どうしの行為に、異性とのそれよりもうすっかり慣れた感じがする。
例えば指と、たまにくちびると舌による単純な愛撫と抜き差し。楓の秘所に瑞樹が指を入れたこともあったし逆もあったし、双方同時に入れあったこともある。
〝貝合わせ〟だけは、異性とのそれとだいぶ味わいが違う。
「えい、えいっ」
「んきゅっ!? ど、どここすってるのよ」
「濡れてますよね?」
「……別にぃ」
体を重ねているが抜き差しではない。指より不自由である。気を抜くとすぐ刺激の焦点があちらこちらにずれたり、恥骨どうしがぶつかってしまったり。なかなか神経を使う。
「瑞樹さんと私の、いやらしいおつゆが混ざってしまって」
「んっ……ふ、ふふっ、コメントは求めてないわよ」
お互いにクリトリスがぷっくり腫れた性器を上下左右前後に、悪戦苦闘しながらこすりあわせ会話する。単なる快楽だけでなく遊び、からかい混じりで、熱っぽい快楽のほかにいたずらに興じて子供っぽく慌ただしい楽しさも味わえる。肉体だけでなく精神もかすかに酔い始める。
「楓ちゃ……んんっ……!」
「ちょっと、足開いてくださいね」
楓が貝合わせで瑞樹の片足を抱えたまま体を起こす。松葉くずしに似た、楓が男側で瑞樹が女側のような体勢に変わる。
「ほら、これなら指でも」
「……人のこんなところ、いじって、楽しい?」
「瑞樹さんとなら」
楓が細長い指で瑞樹の秘所のそばを撫でてくる。手を広げて、陰唇と恥丘を覆うようにしてからこする。同時に自分の腰を瑞樹の内ももにゆっくりこすりつける。湯気のよう生々しい感触にお互い息が詰まる。
「もっと濡れてきましたね」
「楓ちゃんさぁ、そういうこと言われてイラッときたことないの?」
「男の人からですか?」
「……誰からでもいいけど」
「あんたの体は俺になびいてるぜ、みたいな言い草はお笑いですよね」
楓のいきなりおどけた声音に、意図通り笑ってしまうのが悔しいと思いつつ笑ってしまう。それから合図もせずに愛撫を再開する。楓のほうも腰を使って自分の秘所に摩擦を与える。ときどき悩ましげに眉や首筋を震わせる。
「っん、ふ、あっ……」
楓が腰を揺らして自分で自分の秘所を慰めている。片足を抱えられなすがままにされておきながら楓を見上げる。肌に幾筋も雫が乗ったり垂れ落ちたりしている。その半分はもう温泉から汗に入れ替わってしまっただろうか。頬に載ったそれらが汗か涙か、と思う。汗が流れているに決まっているのに恋慕か悲哀で泣いているようにも見える。
瑞樹は内心で苦笑する。こういうときの楓はたいていくだらないことを考えている。
「ずいぶんお楽しみのようで」
「瑞樹さんも一緒に楽しんでほしいですね」
瑞樹に向けられている楓の指がカギ型に曲げられる。自分の愛液をつけたまま瑞樹の肉襞に迫る。瑞樹がひくりと緊張する。答えるように、クリトリスのふくらみを挟んで軽くつままれる。細く高い吐息が漏れる。
「楓ちゃ……っ」
楓の指がクリトリスを抑えながら容赦なく割れ目に潜り込む。表ではリズムを変えつつクリトリスの表面を磨く。裏では腟壁の粘膜をすりすりと探る。
「っあ、あ、ぅ……」
瑞樹が声を漏らすたびに楓が満足げに微笑む。頭の中身が色ボケのくせに面の皮がミステリアスな雰囲気を残していてずるいと思う。
「ぁあっ!?」
「瑞樹さんのこんな声、聞けるの、私だけかも」
不意打ちで弱いところを突かれる。楓の中指と薬指が腟奥をうかがっている。指の腹が瑞樹の粘膜を探る。瑞樹は反射的に足を閉じかけるが、すでに楓に片足を抱えられていて阻止される。身をよじって逃げるより早く、楓がクリトリスを軽く爪で引っ掻く。
「ゃんっ!?」
「私は、これぐらい瑞樹さんにしてもらいたいです」
腰が浮いてしまう。浮かせ具合も読み切っています、と言いたいだけのように楓が指を追従させる。男どうしならたまたまだろうと流せる追従が、女どうしだと洒落にならない。同じような器官を通して同じような快楽を与えたり受け取ったりできる。その事実が、そのもの以上に大きくまばゆい幻想となって広がる。
「んんぅっ……! 楓ちゃん、激し、ぃ……!」
楓が自身の秘所を瑞樹の太腿にさらに強くこすりつけながら、指の動きも加速させる。中指と薬指が瑞樹の膣内をずるずる出入りしたりくいくい曲がったり、同時に親指でクリトリスを柔らかく押しつぶすように刺激する。
瑞樹の喘ぎ声が風呂場に響く。湯煙の中で二人の肌が湿り気を通り越してぬめっていく。楓の指が瑞樹の奥深くへと侵入すると、ついに瑞樹の背筋が弓なりに反り返る。楓がそんな反応を見逃さず、さらに敏感なポイントを行き来する。
「瑞樹さんが感じていると、どうしてこんなにうれしいんでしょうね」
楓の指が焦点を膣口へ移す。クリトリスを内からも外からも責められ、瑞樹は抵抗できないまま腰を浮かせてしまう。楓はそこで瑞樹の片足を担いで自分の肩に乗せ、秘所と秘所を完全に密着させる。楓は瑞樹の愛液を自身の割れ目に塗るように腰を揺する。二人の秘所が混ざって垂れて温泉を汚してしまう。瑞樹の膣内を責める楓の指が三本に増える。
「っくぁああっ……! もぅ、それ、以上……!」
「ふ、ふふっ、うふふっ、瑞樹さん……っ」
瑞樹がヒザを曲げて楓の肩に引っ掛けて必死に耐える。瑞樹の絶頂寸前の震えで楓がかえって勢いを得て、膣内のきゅうきゅうきつく引き締まる部分を執拗にこする。指を執拗に出し入れするうちに、瑞樹の秘所から前より白く粘り気のある愛液があふれ出す。楓はそれを自分の秘所に塗りこみながら、素面とは思えないふらふらした表情と声で笑う。責めている側だというのに、責められている瑞樹に劣らず昂っている。
「あっ……えっ……く、ぅ……んぅうッ!?」
「……出すのなら、浴びせてくださいね、瑞樹さんの」
「あ……あ、あっ、あ、だ、めぇっ、来るっ」
訳知り顔をされるとさすがに腹が立つが、それも織りこみ済みとばかりに楓の指がエスカレートして瑞樹を追い詰め、ついに瑞樹の秘所から透明な潮が飛び散る。松葉くずしじみた体勢から潮が勢いよく飛び散ったので〝浴びる〟ことは叶わず、飛沫の筋が楓の視線をただ横切って落ちた。
「……もう」
「いや……もう、じゃないでしょ……しょうがないですね、みたいな顔して」
楓が呆れたようなため息をつきつつ優しく微笑む。それからまだ絶頂の余韻冷めやらず震える瑞樹の下腹部へ顔を埋めて秘所に舌を這わせる。
「ああぅっ!? ちょっといま一区切りつきました~みたいな顔してたわよねっ」
「もう、じゃない……のですよね?」
楓が改めて瑞樹から浴びようとしたせいで、温泉にしばらく荒い呼吸と嬌声と悲鳴が入り混じって響いた。
※
「隠しなさいよこの痴女が」
「まぁ、すみません」
少女が楓と瑞樹に見惚れるあまりいくつか宿の説明を忘れていて、それを思い出して二人の部屋を訪れると、しばらく時を止められた。
「……っくしゃんっ」
「ほらそんな格好だから……呆れられてるわよ」
「リラックスしすぎちゃいまして」
「私たちがオフだからってね~っ」
楓が少女を待たせるのも悪いと思ったのか、タオルを巻いただけの格好でいきなり応対に出てきて、少女は時間感覚が消し飛ぶほど面食らわされた。
頬どころかデコルテまで紅潮した肌や、ほとんどぎりぎりまで見えてしまっている長い脚。タオルも慌てて巻いたためか、乳房のふくらみやウエストと腰のくびれがシルエットで浮き出てしまっていた。
同じ人間とは思えないほどきれい、と少女は数歩先から心を奪われ言葉も奪われた。楓の後ろからしっかり浴衣を着た瑞樹がたしなめていなかったら、いつまでそうしていたかわからなかった。
「ええと、その、あのっ……おくつろぎのところ恐れ入りますが」
「ごめんなさいね、お見苦しいところを」
瑞樹が楓を部屋の奥に引き戻し――「その格好をどうにかしてきなさい、大人なんだから」「独占したいんですか?」――それからどうにか少女は本来の用件を説明した。面前で応対していたのは、そのまま宿の宣伝にも使えそうな、くつろいでいても〝見苦しく〟ない姿の瑞樹だけになったが、説明の声が上ずってなかなかはかどらなかった。
(……楓さん、お風呂に入っていただけだったのかな……あれで……?)
瑞樹の格好や振る舞いが整っているほど、さっきまでそこにいたしどけない楓の姿の落差がひしひしと感じられる。少女も年齢なりの性知識や経験があった。そのせいで、楓が瑞樹とそういった行為に及んでいたのでは、と邪推してしまう。お客さんにそんなことを考えては、と理性で押さえつけても止まらない。わけもなくノドやくちびるが渇き舌がにちゃにちゃしてくる。
「さきほどは失礼を……あの、ドアサインってあります? 〝Don't disturb〟とか〝清掃は不要です〟とか書いてあってドアにぶらさげる、あれです」
説明の途中で、きちんと浴衣を着た楓が戻ってきた。仕草も言葉も軽くするりと少女のところまで自然に届いた。
けれど横で聞いていた瑞樹が一瞬、ひどく眉根を引きつらせた。普通の人間であればさほど気にも止められない変化だったが、西施の顰みと言うべきか、瑞樹の表情が見せるとわずかな変化も少女の意識に引っかかる。
「あら、私、また何か妙なことをしてしまいました?」
「……身支度もそこそこに人前に出ちゃううっかりさんが、そこ気にするんだぁって思っちゃったの」
「瑞樹さんなんだか私にチクチクしてませんか」
「そうかしら」
「ええ。少しだけ。本当に気分を害されていたなら口も聞いてもらえませんでしょうが」
「そこまで子供じみてないわよ」
少女は、部屋の下足入れの上にある木札を示した。表が「清掃してください」裏に「清掃は不要です」と記してあって希望する側が見えるよう扉に引っ掛けておくだけの単純な使い方を、やっとの思いで二人に説明した。
(……人払いする必要があることを、するの? しちゃうの?)
楓が木札を手にとって、子供が新しいおもちゃを与えられたような目つきでしげしげと眺めていた。文字をなぞる人差し指と中指とに目を惹かれ、ぞくりと背筋が震えた。
「あとはご夕食ですね、ここは梅酒に合わせてくださるんですよ」
「ええと、そうですね……私は、まぁ、まだ飲めないのですが」
「こっそりいかがです?」
「こら」
「すみません、冗談が過ぎました……大人になってからのお楽しみ、ですね」
用件を済ませて二人の部屋をあとにしても、少女の頬は火照ったままだった。ほかの従業員から体調不良を心配され、仕事を早く切り上げて寝るように言われても、なかなか寝つけなかった。
※
「……朝から瑞樹さんと、夢みたいです」
「寝ぼけてるんじゃない? ひとっ風呂浴びてきたらいいわ」
お互い一目で察せられるほど、きのうの酒色が二人の表情と声に残っていた。どちらもアイドルとして表に出せないほど腫れぼったくなっていた。
「朝寝、朝酒、朝風呂、身上つぶして……ふふふ」
「よく知ってるわね、地元じゃないでしょ」
「瑞樹さんこそ……お年寄りとのお付き合いもありましたからね、お仕事では」
瑞樹が朝風呂の支度をしようとすると、楓からくいくいと浴衣を引っぱられる。
「私も入りたいです」
「ああ、そう」
「脱がせてください」
「子供みたいなこと言って」
「たまに大人を止めたくなりませんか」
楓の浴衣を引っぱりかえす。はだけて肌があらわになって視線を吸われる。
楓がにんまり笑いながら、瑞樹の手を引き寄せて肌に触れさせる。
「朝、弱いくせに」
「そりゃあ瑞樹さんと比べれば。朝の顔だったでしょう」
「きのうのお返しにちょうどいいかしら」
「朝から瑞樹さんと、やっぱり夢みたいです、うふふ」
こんどは布団のうえで、瑞樹が楓に体を重ねていく。
「んぷ、んぐ……! ちゅ、れぅ、むぢゅっ、んんぐ、ぁぷ……っ!」
楓は瑞樹の体重を受け入れつつ、時折キスを止めて息を継ぐ。瑞樹の細い指で鎖骨をくすぐられ、鎖骨の窪みに舌先を押しつけられなめられる。超然としたふうだった楓もびくりと肌を震わせる。
「ほんと、楓ちゃんったら、朝はおとなしいんだから」
「まだ歯磨きも、寝汗を流してもないのに……」
「お風呂よりはお布団のほうがふさわしい場所でしょうよ」
瑞樹がくちびると舌を使って丹念に楓の胸も、脇腹も、肋骨のラインも、腋の下も印をつけていく。瑞樹が乳首を強めに吸って甘噛みすると、楓はどうしても甲高い声が漏れて赤面する。
「気乗りしない顔しておいて、そそるわね」
「やぁん、瑞樹さんのえっち」
楓も手を伸ばして瑞樹の尻を揉み、尻の谷間に指を這わせる。
「んっ……! ちょっ……あぅっ」
「人がなめてるときにいたずらしないの」
「まぁ、いいですよ、瑞樹さんの歯型なら」
湿っぽく甘ったるくなってきた肌のあいだで、甘えた苦笑いが交わる。次第に口惜しげにもだえ、熱っぽい嬌声も混じってくる。吐息がぶつかったり視線が合ったりするたびに恥ずかしさとうれしさがこみあげてきて困る。
「こ、声、出ちゃ……あうっ、うぅっ……」
楓が乳首を舌先で弾かれて一段と声を上ずらせる。瑞樹の気分が乗ってか、秘所にまで指が伸びてくすぐり始める。瑞樹の指や手のひらの気配だけでも感じて興奮してしまう。秘所から垂れてきた蜜を指ですくってクリトリスの周りをなぞる。
「ふ、むぅっ、んんっ……」
「もっと濡らして」
楓が腰を浮かす。瑞樹の指から逃れながら煽る。瑞樹も誘われて楓の秘所へさらに集中する。
「んひぃっ……! そ、そこぉ……んんっ」
自分の足も使って楓の股を開かせ無防備にする。指先が花弁を開きつつクリトリスをうかがう。秘所がぬらついてきて指と花弁に糸を引く。秘所全体がほんのり盛り上がって熱っぽく喘ぐ。
「もう眠気も吹っ飛んだようね」
「んっ、ふ……次の朝からこうやって起こしてもらいたいです」
「さすがに冗談きついわ」
瑞樹の指が楓のクリトリスの包皮を剥き上げ、敏感な芯を優しく撫でる。楓の腰がびくりと跳ねて、長い脚がもがくようにシーツをこすって衣擦れを立てる。瑞樹の指がさらに小刻みに動きつづける。楓の秘所から蜜があふれ出て水音がくちゅくちゅと響く。
「半分は冗談じゃなかったんですけど……瑞樹さん、私のこといじるのお好きでしょう」
「……どうかしら」
「そこは素直に認めたほうが大人らしくて……ぁはあっ……やぁっ、あぁっ……!」
瑞樹の指がクリトリスを押し包んだり摘んだりして、楓の喘ぎ声を部屋中に響かせる。楓の手が瑞樹の手首をつかむが、抗議するようでも催促するようでもある。
「ぁああぁっ……!」
指の動きが早くなる。楓の呼吸も浅く速くなる。全身でもだえ始め、足がさらに乱暴にシーツを蹴る。瑞樹は楓の太ももに乗りかかって逃さないようにしながら指をさらに奥へ進める。
「もうっ……瑞樹さんっ……あっ、あ、あぁっ……!」
「まだ、でしょう?」
秘所から愛液が大量にあふれて瑞樹の指を伝う。楓のクリトリスを重点的に責めつつ、指を一本、二本と秘裂に抜き差しして、腟壁を優しく、時に強くこすりながら楓を追い詰めていく。指が動くたびに楓の嬌声が高く低く波打つ。
「ゃあぁあっ! だめ、だめぇっ……瑞樹さんっ……あっ、は、は、はああっ……!!」
瑞樹の指が根本まで楓の秘所に埋まってゆるくうごめく。腟壁の一点を集中的に押しながら、クリトリスを親指で円を描くように撫でる。楓が興奮のあまり手足をばたつかせるが、肝心なところをとらえられたままで刺激を逃せない。
「何がダメなのかしら、ねぇ」
「……瑞樹さん、いじわるです」
「デビルミズキになっちゃうかしら」
瑞樹の指先が腟の天井を優しく引っ掻くと、楓の全身にかすかな痙攣がひたひた広がって震える。指の動きが緩慢になると楓が泣きそうな表情で首を振る。
「やっ……だめ、だめぇ……! もっと強くして……お願い……!」
「私はじっくり楽しみたいわねぇ」
楓の耳元にくちびるを寄せ、熱い吐息を吹きかけながらささやく。
「イキたいのおねだりするなんて、いやらしいのね」
指の動きがさらに遅くなる。楓の秘所からは既に愛液がこぼれるあまりシーツに染みを作っている。腟がむずかるように収縮し瑞樹の指を締めつけるが、指が奥まで入るのを躊躇するようにじりじりとしか進めない。
「やぁあっ……瑞樹さん、どうしてぇ……」
「……楽しいから」
「自分だけ楽しんで、ずるいです……くひっ、ひんっ! はぁぁっ、んぅぅぅっ……!」
「楓ちゃんは楽しめてないの?」
楓が恨めしそうに睨むが、瑞樹は悠然と微笑むだけ。楓の秘所を指でこねながら、時折、花芽を弾くようにこする。楓の腰が跳ねて、ついに我慢できず自分から瑞樹の指を導こうと秘所を押しつけてくる。
「腰、動いちゃって」
「言わないで……っ、あっ、あぁっ……! 早くっ……!」
瑞樹が指を再びゆっくり奥へ沈めると、楓の膣壁がうねって吸いつく。瑞樹が指の角度を微妙に変えただけで楓が悲鳴のような嬌声をあげる。
「お願いします……い、いかせて……瑞樹さん……お願い、お願いです……!」
「楓ちゃん自身の指のほうが奥までしっかり責められそうだけど」
「いやです、もう、そんな……瑞樹さんの、じゃないと、だめ……」
楓が懇願する声から、普段の悠然とした余裕がさっぱり消え失せている。アイドルとしてファンの前で見せる凛とした佇まいも、どこか掴みどころのないミステリアスな笑みもどこへやら。目の前にはただ快楽に溺れる一人の女がいる。
元がそうであれば少し退廃的な仕草を見せただけでギャップで色気が出る。あまつさえ瑞樹の前では、遠慮も何もあったものでなく愛液と嬌声を垂れ流し愛撫をせがんでいる。
「……見てるこっちも、めまいがしそうよ」
彼女の表情は蕩け切っていた。長いまつ毛が震え、涙が潤んでいる。白くすべすべしていた頬は薄紅色に染まり、額には玉のような汗が浮かんでいる。普段は涼やかな声がハスキーに掠れて、ぜぇぜぇ途切れ途切れの呼吸音も痛々しい。
「お、ねが……とめちゃ……ふああっ!」
楓の肢体が瑞樹の愛撫によって乱れてのたうつ。ほっそりとした長い手脚でシーツにめちゃくちゃにシワがよって、あの少女をどう誤魔化したらいいのかわからない。楓の桜色の小さな乳首がぷっくりと勃って、瑞樹の指先が気まぐれに当たると、ウエストと腰がびくびく切なげにくねる。
「ねぇ、楓ちゃん、こうしてあげるから……もうお風呂で盛っちゃダメよ?」
「わかりましたっ、わかりましたからっ」
「お風呂ではお風呂を堪能したいのよ、私は」
楓が言い訳に必死になるあまり、むせて空咳までもらす。瑞樹の指に翻弄されて喘ぎすぎたらしい。普段の楓からは想像もつかない姿で、瑞樹にとってもいきなり見せられたら困惑していただろうが、それが自分の報復の結果だと思えば、大人らしくない嗜虐心が満たされる。
「素直になってちょうだい」
瑞樹の指が曲げられ、クリトリスも膣壁もずりずりとくすぐる。楓の身体が一番高く跳ねる。加減がほんの少ししか変わっていないが楓には敏感に伝わる。
「あぁっ……! だめ、そこっ……気持ちよく、なり、すぎて……っ!」
「なら、逃さないようにしないとね」
楓の愛液がとめどなくあふれ、瑞樹の手首まで滴る。指で陰核も腟も弱い箇所を執拗にとらえる。これまで手足をばたつかせて幾分散らしてきた刺激がまったく逃せなくなる。
「やっ、だめ、だめっ……! もうイッちゃうっ……!」
あっというまに楓の四肢がこわばり、わななくように震える。楓が嬌声を我慢しようと枕に顔を押しつけるがそこからも漏れて瑞樹を笑わせる。
「だめ、だめぇっ……! 出ちゃ、でちゃ、ぁあああああっ!!」
瑞樹の指先が楓のクリトリスを三本指で囲んでしごくと、楓の全身が一際激しく震える。膣内が急激に収縮しながら愛液を噴き出し、布団どころか畳までぱたぱた雫を飛ばしてしまう。
「あー……これちょっとすぐに拭かなきゃ」
「や、やぁ、抜いちゃ……」
「楓ちゃんが飛ばしたんでしょうが」
「あぅうう……お風呂場だったら流せば済むのに……」
「……それはそうだけど」
楓が名残惜しそうに唸る。蜜壺がまだ物欲しげにひくひく震えており、瑞樹の指を迎え入れたいと露骨に訴えている。
「むぅううっ……」
「そろそろ朝ごはんに向けて身支度しなきゃ、ね」
楓の手が瑞樹の腕をつかんで自らの秘所へと導こうとするが、瑞樹はつかまれたまま自分の手に力をこめて動かさせない。奇妙な綱引き状態が数呼吸ぶん続いた。
「……じゃあ、瑞樹さんに食べさせてもらいたいです」
「赤ちゃんじゃないんだから、もう」
ちょうど部屋の外では、〝清掃は不要です〟の木札の前で少女がぼうっと立っていた。少女はきのうのハプニングを受けてわきまえていたので、部屋へ聞き耳を立てたり不用意に声をかけたりといったまねをしなかった。
(……朝から……それとも、もう終わって汗を流してたり……?)
であっても、二人の爛れた気配がどこからか漏れて伝わってしまったのか、胸騒ぎがしてたまらなかった。
(楓さんと、瑞樹さんが……きれいで、いやらしくて、遠い)
足が止まってしまって、しばらく立ち尽くしていて、また親戚から体調を心配された。
楓たちが温泉を満喫して帰っていって、夏休みが明けて少女自身の家に戻ってからも、ふと楓たちを思い出して物思いにふけることが多くなった。口さがないクラスメイトから、高垣楓のまねのつもりか、などとからかわれても何も弁解する気にならなかった。
(おしまい)