一人暮らしの私のベッド。
前は冷たくて、自分の体温で温まるのを待たなくてはいけなかったけれど、今は違う。
「あれ~? 舞(まい)ってばそんな恰好でどうしたの?」
「……夕夏(ゆうか)のバカ。アンタがこれで待ってろって――ッ!?」
今はもう、待たなくていい。我慢しなくていい。
待っててくれる彼女がいて、私の為に温めてくれるから。
だから私は毛布の下で、私が選んだ下着姿で期待と強がりを秘めた目で睨む舞の唇を、我慢できずに襲い奪う。
「ちょっと……」
「なぁに? 嫌だった?」
「別に……嫌とかじゃなくて、その……ばか」
「え~?」
照れて背ける舞の頬に私も顔を合わせ、耳元で「心外、だな」と囁いてみる。
感度のいい舞の体は分かりやすくビクリと跳ね、それからバレてしまったと私から更に顔を背けようとベッドに埋めようとする。
あぁ、本当に愛らしく、愛おしい。
だからもう少し意地悪をしたくなって、私は舞に覆いかぶさるようにして彼女の耳元でまた囁く。
「あ~あ、初めて会ったときは野良猫みたいだった舞も、今じゃすっかり家猫みたいに甘えちゃって」
「……悪い?」
「ううん。可愛い」
「アンタこそ、家出中の学生に色目使って誑かして……」
「恋は盲目だからね」
「変態。ロリコン女」
「あー。そういうこと言うんだ……悪い子」
私が囁く度、彼女はスピーカーみたく反応して、振動を体で増幅させた。
動く度、プルプルと震える度、私の嗜虐心も増幅する。堪らなくなった私はつい、彼女の可愛い耳を舌先で舐め、クッキーを食む程度の力で噛む。すると舞はヒャッと甘く鳴いて、ようやくこっちに顔を向けてくれた。
「馬鹿! 変態!」
「ふふっ。ホント、二年も待ってよかったよ」
「なッ!? ……嘘つき。最後の半年以外、ずっとエッチしてたくせに」
「誘ったのは舞だよ?」
「変にしたのは夕夏でしょ!? 責任……ずっと。……もう、早く来て」
逸れていた視線が、こっちを見る。
伸ばされた手に誘われて、結局ダメなのは私の方で。
八歳も年下の女の子に、私みたいな人生半分諦めてたような人間が。なんて思った時もあったけど、今はただ彼女が選んでくれたのが嬉しくて、こうして求められるのが嬉しくて。
「期待通り、今日はバターになるまでしちゃおっかな」
「何それ古くない?」
「猫なのは否定しないんだ」
「ライオンだもん」
最後の強がりを聞き届けて、私はまた唇を重ねる。
本当はトラだけど、強がりで可愛いのは確かにライオンだ。だから一口、二口と、そのパンケーキみたいに柔らかな唇を何度も食み、啄むように触れていく。するとしつこかったのか、舞は自ら私の頭を抱いてギュッと唇を押し付けてくれた。
本当に、意地悪のし甲斐がある。
どうしても欲しそうな彼女の、まだまだな求愛の舌使いに応じ、まずは舌先同士で挨拶を交わすと、恥ずかしがりな舞はピクリと震えてすぐさま舌を引き戻す。もちろん、私は追いかけて、震える彼女の舌を優しく撫でた。
「んんっ!」
「……んはぁっ、はぁ、はぁ。あ~あ、舞ってばホントに可愛い」
顔を上げて見る、とろけた舞の表情。
余韻に口を開いたまま、時々そのはみ出た舌がピクリと動く。
誘っているのか。いや、本当に欲しいのは私の方だ。舞はズルい。こんなに可愛くて、健気で、強がりで。合わせた肌が吸い付いてくる。雛鳥みたく欲しいよと待っているのに、触れたら最後まで放してくれないなんて。
そのうえ敏感で、私が動いて少しこすれただけで甘く鳴く。
ズルい。ズルい。ズルい。もっと、もっと欲しくなる。年上なのに、余裕も理性もかなぐり捨てたくなる。
「あっ、いいよ夕夏。乱暴……して」
だから、だからズルいんだ。
そんな気持ちを込めて、舞の首を噛み、ごめんねと舌先でなぞる。
蜂蜜のように甘い蜜は下に行くほど濃くなっていき、首から鎖骨、脇から胸へ。
そして私の手も蜜を欲して、彼女の脚の内をなぞって上へと進む。すると舞の声色もまた甘いピンクから期待の蜂蜜色に変わっていった。
「舞、噛んでもいい?」
「優し、くぅッ! ん!」
弓なりになる彼女を、体重をかけて押し戻す。
逃がさない。右手は密に、左手は果実を優しく撫でまわし、口で期待に突き出た種を弄びながら味わう。ぎゅうっと締め付け、吸い、グニグニを噛んでみる。違う感触、違う興奮と幸福に、舞はそれぞれ違った反応をしてくれて、私が「どれがよかった」と聞くと「バカ」と恥じらいながら余裕の無い表情と言葉で求めてくるのだ。
もっと、もっと、と。
互いを求め、互いが求め。互いの尾に向けて求め進むあの本のトラのように、気付けばふかふかのパンケーキに沈むまで、私達はバターみたく溶け合った。