同作者の連載作品『構わないで!上原さん!』の主役(仮)と同好会のメンバーとの濃密な絡み(?)を描いた作品……を纏める場所。
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普段と何ら変わりのないその日。自分『御影玲』はアルバイトに勤しんでいた。今日は特段作業が多いというわけでも、はたまた人がたくさん来たなんてこともなく、平和とも呼べる時間を過ごしている。
「よし、こっちも終わったから……」
額を袖で拭いつつ、左手に巻いた時計へと視線を落とす。おや? おやおやおや? 上がりの時間じゃないですか。早いところ片付けして帰るか。その思考とともにバックヤードへと戻る自分。えーっと、カートを定位置へと戻して……ゴミ片して、タイムカードを切るだけ。ヨシ!
某メット猫のポージングをした後、タイムカードを切りに行く。帰ったら何しようかな。この後の予定を組み立てながら歩いていると、曲がり角でオレンジブラウンのロングヘアーが特徴的な方と出会う。
「おや、これはこれは玲君」
「近江さん」
自分の前に現れたのは『近江彼方』さん。アルバイト先並びに学校の先輩だ。というか近江さんはこんなところでどうしたのだろうか?
「玲君今帰り~?」
「はい、そう……ですけども?」
近江さんから投げられた言葉に首を傾げる自分。近江さんからこの手の質問されるの滅多にないんだが……何かあるのだろうか?
「ほうほう。この後予定あったりする?」
「特に決まった予定はないですけども……」
「そっか~」
何かを納得するように頷く近江さん。なんか、この後の流れ、以前にもやった希ガス。あれは確か数学のノートを……ウッ。深層心理に深く残っている痛みに額を抑えていると、改まった様子の近江さんが新たな言葉を投げてくる。
「ヘイ、少年。この後お姉さんと遊びに行かないかい?」
微かに口角を上げ、不敵な笑みを浮かべる近江さん。どこか艶めかしさを纏った近江さんに暫し目を奪われている自分であったが、我に返るなり震える口を動かす。
「え、えーっと……どこで何するんですか? というか近江さんも上がりなんです?」
「うん、彼方ちゃんも今日は終わりなんだ。それで何するかって言うとね、うーん、お台場辺りでお買い物かな~」
「……荷物持ちとしてくらいならお供しますけど」
恐る恐る、といった具合に返答してみると近江さんの表情が、目に見てとれるほど明るくなる。……今ので喜ぶ要素あった、か? というか近江さんもシフト終わりなんですね。じゃなきゃわざわざ遊びになんて誘ってこないか。でもやっぱ今の一連の流れで喜ぶ要素ないよな……?
あれやこれやと思考を巡らせていると、近江さんに手を取られる。
「そうと決まれば、早速出発だよ~」
「いや、あの、先にタイムカード切らないと」
「おっと、そうだったね」
後頭部を軽く抑えながら緩い笑みを見せる近江さん。対する自分は、ため息交じりの苦笑を返答代わりにする。
「じゃあ玲君、着替え終わったら通用口で待っててねー」
そう言ってバックヤードの奥へと消えていく近江さんを見送った自分は、足早に退勤処理を行いにいくのであった——
スーパーを出た後、近江さんとバスに揺られながらお台場入りをした。うーん、いつ来ても混んでますね。流石お台場。そこに痺れる憧れるゥ! などと一人ふざけていると、傍らで寝ぼけ眼を擦る近江さんが問いかけてくる。
「う~ん、玲君どこか行きたい場所とかある?」
「あー、そうですね。すぐに、ではなくていいのですが、どこかでお茶したいですね」
「おっけーおっけー。じゃあ後でいこっか〜」
近江さんの言葉に頷いた後、歩き始めた彼女に続いて歩き始める。そうして、ブティックへ行ったり、アクセサリーを見てみたり、自分が希望したティータイムを取ったりと、色濃い時間を過ごす。この前の放課後も、こんな感じだったな、なんて思いながら。
そしてそれらを終えた現在、近江さんの希望ということでとある場所へと移動している。どこに行くかは言われてないんですけど、もうどこに向かってるかはバレバレなんですよね。行き先が非常に目立つから。
「着いたー」
近江さんと共にやってきたのは、パレットタウンにある大観覧車。お台場を一望できるほどの大きさを誇る。後、天気が良いと東京タワーは愚か、スカイツリーも見えるという代物。なんで知ってるかって? 乗ったことあるからですね。一応これでもお台場近辺に住んでる人間ですので……はい。
「それで、これに乗る、と?」
「うん。いいかな〜?」
「構いませんけども……」
歯切れ悪く返答した自分は近江さんと共に列に並ぶ。結構混んでるかな。ここも人が来るところではあるから当たり前っちゃ当たり前なんだけども。
そんな思考を片隅に乗車券を買ったりしつつ並ぶこと十数分、ゴンドラへと乗り込んだ自分と近江さんは向かい合って座す。
「久々だな〜」
「近江さんは、観覧車とか好きですか?」
「うん。景色が綺麗で好きだよ」
微かに茜掛り始めた陽光に照らされた近江さんが柔らかな笑みを向ける。引き込まれそうなその表情を前に、自分は再び目が離せなくなった。どうしてこんなに……近江さんに魅せられているのだろうか。自身の中で生まれたその一言が、不思議なまでに強く己の中を駆け回る中、目の前の近江さんが口を開く。
「玲君は、観覧車好き?」
「正直に言うと、あまり好きじゃ無い、かもですね」
近江さんに留めていた視線を青海の方面の景色へと流しながら答える。その最中、僅かに近江さんの表情が曇ったが、それを気にすることなく下界へと意識を向ける。そこに広がっていたのは西陽に照らさられ
「——以前までは」
先ほどまでの言葉を否定する、意味を込めて付け足した一言。つい数瞬前までは、確かに好きではなかった。けど、誰かと乗った時の心地良さを、今こうして感じた事で悪くないな、とも思えた。
そんな気持ちを言葉にすると、近江さんは驚きを見せた後にどこか満足そうな笑みを浮かべる。
「そっか」
その近江さんの言葉を最後に、ゴンドラ内には静寂が訪れる。時折入る掠れた音声アナウンスがそれを破っていく、というのを幾らか繰り返した後、自分が徐に言葉を溢す。
「高いな……」
自身の左後方——新木場方面を眺めていると、そちら側にも観覧車の姿を捉える。葛西臨海公園に設置された大観覧車だ。自分が物心ついてから初めて乗った観覧車でもあったりする。
どこか感傷的になりながら景色を眺めていると、自分の傍らに人の気配を感じる。
「近江さん?」
視線を向けて見れば自身の傍らに座す近江さんの姿が。あのー、いつそこに移ったんですか? 全然気づかなかったんですが? 音がログアウトしてたんよちょっと。
内心で浮かび上がった疑問を一人問答していると、近江さんが口を開く。
「ところで玲君、今日彼方ちゃんと一緒にいる時に、他の子のこと考えてなかった〜?」
「……え?」
突拍子も無い問い掛けに戸惑う自分。他の子の事って……どういう意味なんですか、それ。だってこういうやり取りが発生するのは……交際とかする手前、もしくはしているの人間同士で生じる内容ですよ?
自分も近江さんも、付き合うの頭文字すら出ない関係なのに、こんなことが出てくるなんてあり得ないはずなんだ……だって、自分も彼女も
だがしかし、次に投げられた近江さんの言葉は自分の思いとは真逆の方向へと進むものであった。
「ずっと、歩夢ちゃんのこと考えてたよね?」
どこか寂しげな表情を浮かべながら問いかけて来る近江さん。対する自分は、何も言えずにただ黙り込んでしまう。それが、肯定であると言わんばかりに。
現に今日、先日上原さんと放課後に遊んだ記憶と照らし合わせていた節などはある。加えて、上原さんのことを考えていた、というのも事実であり否定ができない。その上で自分は、なんて返答して良いのかわからなくなってしまった。
俯きがちに言葉を探していると、突然近江さんの暖かな両手が自身の頬を捉え、顔を上げさせられる。そうして見つめ合ったかと思えば、近江さんは今の本心とも取れる言葉を溢す。
「今日ぐらいは——彼方ちゃんのことをしっかりと見てよ」
その言葉が自分の耳に届いたとほぼ同時に、自分と近江さんの唇が触れ合う。自身がキスをされたと理解するのに、そう時間は要さなかった。その事実に戦慄していると今度は、自分の口内に近江さんの舌が滑り込んでくる。
「……ッ?!」
予想の範疇を超えた事態を前に、自分は激しく取り乱す。自身の知らぬ未知の感覚に次第に思考を奪われていく中、彼女の舌が自分の舌へと絡みついてきて、それを皮切りに奥歯や前歯の裏などをマーキングするかの様に、彼女の舌が這っていく。
「ングッ……ムゴッ……」
未だ理解の追いつかない自分は、現状を打破しようと抵抗を試みたが、内心で近江さんをもし傷付けてしまったら、と言った懸念が浮かび上がり結果として自分は、抵抗することもできぬまま近江さんの蹂躙を受け続けてしまう。
「……プハッ……ハァ、ハァ……なん、の……つもりです、か」
漸く互いが離れたところで、荒い息を整えながら近江さんから僅かに距離を取りつつ問いかける。ここまでされても、自分は分からないでいた。彼女の真意を。
「なんのって、そのままだよ」
伏し目がちになりつつ、開いた距離を埋めるかのように身を寄せてくる近江さん。対する自分は、反射的に距離を保とうと彼女から離れていったところ、いつしか座席の隅に追いやられていた。
そして、逃げ場を失い戸惑っている自分の元へゆっくりと近江さんが近付き、再び互いの肩と肩が触れ合う。
「彼方ちゃんは、玲君のことが好きだよ」
向けられた言の葉に、自分は驚愕した。近江さんが……自分のことを好き? 何故なのか。どうして自分なのか、全くもってわからない。
近江さんが自分なんかを好きになってくれる要素の心当たりがなさすぎたがために。
「そ、そう……なんですか」
「うん。玲君は……彼方ちゃんのこと、どう思ってるの?」
問われた自分は口を噤んでしまう。どう、と聞かれても自分にとって近江さんはバイト先の先輩という枠にしか収まらない存在なのだ。故に自分は、意を決してそのことを彼女へと伝えていく。
「自分は……近江さんのことを……先輩として、尊敬しています。ですが、それ以上でも、それ以下でも……ありません」
言い切ったところで、自分は彼女から視線を逸らす。今の近江さんが、どんな顔をしているのか。それを見るのが怖かったから。仮に見て、悲しませたりしたら今あるこの関係が、崩れてしまう。そう、思ったから。
内心で怯えていると、隣に座していた近江さんが自分の正面で立膝のような状態になる。
「……そっか。玲君は、そう思ってるんだね」
「はい……」
「でも、彼方ちゃんは——もう止まらないよ?」
不可思議な返答に目を細めながら視線を彼女へと向けた途端、突如として彼女が自分のズボンのファスナーに手を掛け、ゆっくりと下ろしズボンを開いていく。
「な、何を!」
幾分かの硬直を経て、近江さんへと制止をかける自分。だがしかし、彼女はそんなことも気にせず遂に、自身の下着の下にあったペニスを表へと出し切った。
「少し彼方ちゃんのワガママに……付き合ってね」
その言葉を皮切りに、自分のペニスを咥え込む近江さん。途端、味わったことのないような刺激が、自分の全身を駆け抜けていく。なんだ、これ……全身が痺れるような……。
「ア……ガッ……!」
「
初めて味わう感覚に脳が支配されていく中、近江さんから向けられた上目遣いな視線。普段よりも妖美な魅力に、思わず視線が釘付けになる。その状態でしばらくいると、不意に口を離した近江さんが何やら制服の胸元のボタンを外し始める。……なん、で?
その所作に息を荒くしつつ疑問を抱いていると、近江さんが自分のペニスを開いた胸元へと挿入した。
それと同時に自分へと襲いかかる先程とはまた違った刺激。口内とはまた違った暖かさと柔らかさに、自分の理性はさらに削ぎ落とされていく。
「ガッ……ッ」
見ず知らずの感覚に呑まれまいと必死に格闘する自分とは対照的に、柔和な笑みをこちらに向けてくる近江さん。情け無い声を上げながら右腕で目元を覆い目の前の光景を見ないようにしていく自分であったが、寧ろ逆効果であり視覚を封じたことで却って触覚が敏感になってしまう。
そうして暫くの間なされるがままでいると、自身の奥底から何かが込み上げてくる感覚を覚え始めるた。
「出そう?」
どうして感じ取れたのか分らないがそんなことを問うてきた後に、柔らかく豊満な双房の合間に挟んでいたモノを抜き出すと、再び口で咥え込み亀頭を舌でなぞりながら、先よりも強くしごかれる。徐々にペースを増していくフェラチオに負け、自分はとうとう近江さんの口内へ劣情を吐き出してしまった。
そうして自分には果てしない快楽と共に倦怠感と罪悪感が降りかかって来た。
「アッ……ウアッ……」
左腕で目元を覆いながら声にならない声を溢して暫し放心する自分。その傍ら咥えていた自分のペニスをヌルッと離し、口内にあったナニかを飲み込む近江さん。
その様を焦点が定まらないまま眺めていた自分だったが、徐ろに鞄へ手を伸ばすと中からポケットティッシュを取り出し近江さんへと差し出した。
「どう、ぞ」
「んっ」
ティッシュを受け取った近江さんは、何かを飲み込む仕草をしつつ口周りをティッシュで拭う。
その様を回らない頭のまま見つめていると、近江さんと目が合い微笑みかけてきた。
「精液って少し苦いんだね〜」
「飲んだん……ですか?」
「うん。
そう言って口腔内見せてくる近江さん。その中は吐き出した自分のものと、近江さんの唾液とが混ざり合った糸が軽く引くのみで、大元となるものは見当たらなかった。彼女の言う通り、飲み込んだのだろう。でも、あんなものなんで飲んだんだ……いや、出したのは自分なんだけど。少なくとも飲むものじゃないって……。
「……気持ち良かった?」
暫し黙り込んでいると首を傾げながら近江さんが問いかけてくる。気持ち良かったかどうかと問われたら、気持ちよかったのかもしれない。けど、状況等のせいかその実感が全くといって良いほど湧いてこない。
「分かり……ません」
茫然自失としながら首を横に振った自分は、徐に身なりを整えていく。そうしてほとんどの服装を直し終えたあたりで、同じく身なりを整えていた近江さんが自身の耳元へと顔を近付けてきた。
「今日彼方ちゃん家、誰もいないんだよね」
耳打ちされた近江さんの言葉に一瞬寒気が走る。ここで彼女の家に赴けば恐らく——否、確実に食われる。
しかし、今の自分は逃げ出せる状況にもない。宙に浮いた密室内なのだから。下へ戻って降りたところで逃げられる気もしない。結局何も答えられないまま、観覧車は一周りした——
観覧車を降りた後、近江さんの自宅へと連れ込まれた自分はベッドの上に転がされ、彼女に貪られていた。
「んっ……んむっ……」
ある程度身包みを剥がされた自分のペニスをしゃぶる近江さん。さっきも見た、この光景。違うことといえば、彼女の
「……そろそろかな」
彼女の口からこぼれた不可解な言葉に、露骨に背けていた視線を彼女の方へと向けた。すると、下着を脱ぎ始める近江さんの姿を認識する。その際、脱いだ下着と彼女との間に糸のようなものが見えた。
「近江……さん……?」
意図の分からぬ行動に目を白黒させていると、横たわる自分に馬乗りになる。え、なに……もしかして挿れる……?
脳裏を過ぎるこの後に起こる事象が受け入れらなかった自分は、定まらなくなってきた視界で自身に跨る近江さんを見やる。
「いいよね」
「……あ、の、それ、は」
滑り気を帯びた陰部へ自分のモノを当てがい、荒い吐息と共にソレを擦り始める近江さん。それ以上は不味い。その思考がよぎった直後、自身の一物が内包感と何かを突き破る感覚を覚える。
「ううッ……入っ……」
入った……え、まさかほんとに? 伝わってくる感覚とは裏腹に懐疑した自分は、僅かに頭を上げ件の箇所に視線を向ける。そこには、彼女と自身の秘部が繋がり、彼女の内から鮮血が滴る情景があった。
「近江……さん……?」
目に映った事象から不安が湧き上がった自分は近江さんに問いかけていた。出血してるってことは……自分が彼女の
「平気……だよ」
「でも……」
罪悪感に押し潰されそうになりながら食い下がっていると、不意に近江さんの両手が自分の顔に優しく触れたかと思えば、彼女の方をゆっくりと向かされ本日二度目のキスをされた。
暫く唇を重ねた後、離れたところで近江さんが柔らかい笑みを浮かべながら溢す。
「玲君と繋がれて、彼方ちゃんはすごく嬉しいんだ〜」
そう言われた自分は、驚きのあまり放心してしまう。こんな自分との行為で喜んでいるのか、と。
己の中で自身という存在は生きている価値のないもの、と考えてしまう方向性が出来上がってしまっている。故に、自分という人間に対し好意を持ってくれていること、何より肉体関係を持つことに喜びを感じる旨を告げられて戸惑ってしまった。
そうして自分の内を整理できない感情がぐるぐると回る中、不明瞭な思考とは別に言葉を溢していく。
「だけど、自分は近江さんのことを……」
本心を伝えようと動く自分の口。それを制するように近江さんは自身の左人差し指を当ててきた。さながら『静かに』のジェスチャーのように。それに伴って自分は言葉発するのを止めた。
「観覧車の中でも言ったけど、これは彼方ちゃんのワガママだから玲君が気負う必要はないよ」
優しく諭すように告げてくる近江さん。親からの愛情とはまた違った、向けられたことのない『愛情』が彼女の表情に、言葉に宿っていた。とても……温かい。これが、人の持つ温かさってやつなのだろうか。……だけど、それを貰ってどうするべきなのかを、自分は知らない。
正解を探し考えあぐねていると、彼女の両手が自身の両頬に添えられた。
「だからもう少し、彼方ちゃんのワガママに付き合って?」
その言葉を皮切りに全てが加速した。そんな風に、感じられた。動きも、熱も、吐息も、彼女から向けられる想いも。全部が。
それと同時に彼女から目が離せなくなった。彼女の手が添えられているが故というのもあったが、それとは別に自分の思考が視線を逸らすことを拒んでいた。何故かは分からない。ただ言えることとすれば、瞬きする間も惜しいと感じていたことぐらいだ。
そんな自分の眼前では、近江さんがひたすら腰を上下に振っていた。こちらを見つめ、甘い声を吐き出しながら。
——近江さんはこんな声を出すのか。
普段とは違った様子を見せる目の前の彼女に驚きつつも、互いに互いの瞳を見つめながら一方通行気味な行為を続けていく。ただ流されているだけの自分と、艶かしい表情を浮かべながら自分を求める近江さんとで。
これと言った言葉を交わすことなく、互いの荒くなった息遣いのみが反響する時間の中、自身の下腹部付近の感覚が過敏になっていくのをジワジワと感じていた。
——なんか、不味いかも。
危機察知が働いた自分は、いつの間にか力の入らなくなっていた体を無理に動かして上体を起こす。あ、腹筋キッツ。ピキッ、とか言ったよ今。
そして、自身の上に跨る彼女の腰に両手を伸ばし掴んだ。動きを抑えるために。
するとその行動の意を理解したらしい近江さんが問いかけてきた。
「出そうなの?」
「……多分」
自分でも正確な状態がわからないがために曖昧な返答を近江さんに渡す。その直後のことだった。突如として、自身の肉棒を咥え込んでいた彼女の膣が大きく締め上げられる。
「……ッ。なんのつもりです……?」
圧迫感と快楽の入り混じった感覚に顔を歪めながら問いかけると、小さく笑みをこぼした近江さんが自分の耳元に顔を近づけてくる。彼女の細かな吐息一つ一つが聞こえるほどの距離まで。
「——彼方ちゃんの
彼女の言葉の意を脳が受け止め理解した瞬間、言い得ない恐怖と背徳感に襲われる。出すって今は、避妊具なんてものはつけていないから……。
「え、いや、え、直接って……」
「大丈夫だよ。今日は
相変わらず耳元で発された彼女の言葉に、不意に締め上げてくる膣圧に、自分の感覚値は極限まで引き上げられた。そして、抵抗する間も無く抑制していた『モノ』を吐き出す。彼女の内に。
「ンッ……」
甘い声を漏らしながら咥え込んでいた自分のペニスを引き抜く近江さん。離れた部分が糸を引いている様を呆然と眺めていると、彼女の秘部から先ほど吐き出した劣情が溢れ出てきた。
「いっぱい出たね〜」
「あ、ああッ……」
自分の犯してしまった事象を直視した気分になり頭の中が真っ白になる。処女を奪ってしまっただけに留まらず、彼女の膣内まで
自身の中で激しい後悔に襲われていると、近江さんが身に纏っていた制服を脱ぎ捨てていく。
「え……」
戸惑う自分の手前で、生まれたままの姿になった近江さんが再び自分の上に跨り、二度の射精で萎えている自分の逸物に手を伸ばす。
「まだ、付き合ってね」
その言葉を聞いた自分は驚愕すると同時に確信した。彼女に搾り取られるのだと。
そんな思いを抱えていると、彼女が自分の肉棒を手で弄り刺激を加え始める。射精後でまだ敏感な自分のそれは、近江さんの手によりあっという間に肥大化させられてしまう。
そこからは早かった。あっという間に彼女に咥え込まれた。先よりも柔く、しかしながら熱い感触が下腹部から脳に向けて駆け上がってくる。
もう何度目かわからない快楽に脳を侵されていると、近江さんが唇を重ね舌を絡ませてくる。まるで自分の全てをしゃぶり尽くすかの様に。
多方面からの感覚とそれに伴った数多の情報、加えて彼女との
性欲なんてものは小、中学生の時に虐めに遭い生きる意味を失った時点で死滅したと思っていた。普段から自慰行為すらしないし。
だがしかし、彼女と交わったことで自身の中の生殖機能としての『ソレ』は死んでいなかったことが証明された。なんとなく複雑だ。
心中で呟きながら、本日三回目の射精を彼女の中に行う。それと同時に彼女も絶頂に達したらしく、『潮』を吹き出したらしく体温とはまた違った熱が自分の肌に走る。
「達した……のですか?」
「うん……玲君のが気持ちイイところに当たってたからね〜」
その言葉と共に意地悪な笑みを浮かべる近江さん。揶揄われている気がするが、今の自分はそれに反応するほどの余裕なんてなかった。
それを知ってか知らずか、彼女の『攻め』は激しさを増していく。結果、下部から上がってきた快楽に脳を侵され、思考をやめてしまう。……もうどうなってもいいや。
全てを投げ出した自分は、目の前のことについて考えるのを完全に放棄した。ああ、宇宙に放逐された
心の中でそう吐き捨てた自分は、浮遊感と倦怠感に襲われながら意識を手放していくのだった——
次に目が覚めた時、窓の外のには明るい空が広がっていた。まばらに雲を携えた青空が。……朝までコースだったなこれ。いわゆる『朝チュン』ってやつになるのだろうか。
普段の自分であればこんなことにはならない、と断言こそできないがある程度のところで制動をかけることはできたであろう。しかし結果はそうではなかった。
それぐらいに彼女のペースに飲まれ、魅了されていたのだろう。昔何かの本で読んだことがある。肉体関係を持つとホルモンの関係により相手が魅力的に見えるって……それはそれとして物凄く希死念慮に襲われてます。これからどうやって生きて行こうか。声を抱えて生きればいいのだろうか? それで解決するレベルじゃないよなぁ……。
「はぁ……」
上体のみを起こした自分はため息をついた後に頭を抱える。どうすべきか……分からないフリをしているだけで本当は
意を決した自分は布団から出ると、リビングであろう方向に歩みを進めていく。するとなにやら、食欲をそそる良い香りが漂ってきた。
不思議に思いながら廊下の終端部を超えて部屋に入っていくと、卓上に並べられたいくつかの料理と、キッチンにてフライパンを振る近江さんの後ろ姿を捉える。
「おはよう、ございます……」
「あ、玲君。おはよう〜」
「朝ご飯、ですか」
「うん。丁度作り終わったところで今から玲君の事を起こしに行こうと思ってたんだ〜」
フライパンの中身をお皿に盛り付けながら答えてくれる近江さん。エプロンしてお料理してる姿がやけに様になっている。なんなら朝っていう時間帯も相まってるかも。
「座って座って〜。あったかいうちに食べて欲しいから」
「え、あ、はい」
彼女の姿に見惚れていると着席を促されたため、少し畏まりながら椅子に腰を下ろす。素直に従って座ってしまいましたが、普通に考えたら手伝うべきなのでは?
内心でおろおろしていると、先程のお皿を卓上に置いた近江さんが再び卓から離れていく。
「あの、何か手伝うこととかは」
「大丈夫だよ〜。玲君は座ってて。あ、パンとご飯ならどっちがいい?」
「うぇ、あ、じゃあ、ご飯で……」
あまりにも着々と進む朝食の用意に戸惑うばかりの自分。えっと、なんか普通の朝感満載ですけど、昨晩という昨日がアレですからね?
近江さんが普通に過ごしてるせいで自分が異端なんじゃないかと思い始めた……異端だったわ。踏み絵しなきゃ。あとやっぱ座って待ってるのは落ち着かない……そう言う性分なんだよねきっと。
「どうぞ」
「ありがとう、ございます……」
ご飯をよそって貰ったお茶碗を受け取りながら謝意を述べる。白くて艶々のお米からは、炊き立て特有の甘く芳ばしい香りと湯気が上がっている。
とても美味しそうという感想と共に、昨晩の近江さんの素肌を連想してしまった自分を殴り飛ばしてやりたい。寝起きとは言え頭の中身がお花畑なのか自分は?
煩悩塗れの自分に苦言を呈しながらお茶碗を卓上に置くと、その隣にお味噌汁の入った汁椀が置かれる。あら、お味噌汁まで……自分の家で朝用意してもここまでは作らないな。
「お味噌汁まで……」
「うん。なめことお豆腐だけど大丈夫?」
「全然全然。むしろ好物です」
「ふふっ。なら良かった」
穏やかな笑みを携えた彼女の言葉に、自分の中の『何か』を射られた気分になる。あ、あれなんだろう……なんかこう、近江さんのことをいつものように……ただの先輩として見れなくなってる気がする。
故に自分は、昨日のことを掘り返した。このままではいけないと感じてしまったから。
「近江さん、昨日は……」
「気にしないで。寧ろ、ごめんね?」
対面の椅子に腰を下ろしつつ、こちらの言葉を遮り謝罪してくる近江さん。所作の一つ一つに無駄がない……とかしょうもないこと考えてる場合じゃなくて。否定しなきゃ。彼女は悪くない、って。こうなってしまったのも全部、自分のせいだったって。
「いや、そんな、謝らないといけないのは」
「——彼方ちゃんの方だよ。玲君はただ、彼方ちゃんのワガママに付き合ってくれただけ。だから、自分のことは責めないでね」
彼女の言葉に対して食い下がった自分であったが、それも彼女によって遮られ自責しないようにと念押しされてしまった。……違う。彼女の気持ちを知りながら知らない振りを続けた自分の蒔いた種だ。
だから、近江さんは悪くない……悪くないんです。でもあなたは優しいから、自分が悪いっていうんです。あなたは芯が通っているから、一度決めたことは余程のことがない限り曲げようとはしません。分かってる……そんなこと、分かっている……。
「確かに、近江さんの仰る通りなのかもしれません」
だから自分は、彼女の言葉を肯定した。あなたが言う通り、あなたのワガママに付き合ったのだ、と。だけどそこで終わってはいけないから、間髪入れずに続きを述べていく。
「だからと言って、一度関係を持ってしまった以上は自分の方にも責任は伴うと感じてますし、それを
「玲君……」
自分の内心を前面へと押し出していく。その途中、彼女から向けられた視線を避けるようにして俯く。気恥ずかしさと、後ろめたさ故に。……いつの間にか、彼女の事を意識してしまっていたようだ。本当に、気付かないうちに。
そんな思いを抱え込みながら、続けて言葉を吐き出していく。
「だから、近江さんが嫌でなければ……自分とお付き合いして、いただけないでしょうか。責任を取らせて欲しいなんて、自己満な部分が滲んだ物……になってしまいますが」
自分のため、と言われたら否定はできない。けど、今自分から提案できる最大の責任の取り方だと思う。ただし、あくまでも自分にとってのメリットしか提示できていないため、彼女がどう取るかというところに委ねられている。ダメならダメで別の方法を模索するだけ、なのだが。
彼女からの返答を待ちながら俯きがちだった視線を上げてみると、両手で口元を押さえ驚愕した様子を見せる近江さんの姿が。……へっ?
「彼方ちゃんで……いいの?」
「それは、そっくりそのままお返しします。自分でも良いですか?」
質問に質問を返していく自分。ああ、そんなことすると腕だけ残して爆発させられちゃうよ連続殺人鬼に。どうでもいいけど創作の殺人鬼って爆弾使い多い気がする。ボマーには気をつけろよ、とかさ?
要らぬ思考を回す自分の手前で、近江さんがゆっくりと首を横に振り始める。
「ううん……違う。玲君じゃなきゃ、ヤダ。だから、凄く嬉しいよ」
その言葉と共に、細めた紫の双眸から涙を溢れさせる近江さん。どれだけ彼女が喜んでいるかが伝わってくる。……そっ、か。自分じゃなきゃ、嫌ですか。
「ありがとう、ございます」
椅子から立ち上がって頭を下げる。精一杯の感謝を示すために。それから、熱を帯びて来た顔を隠すために。すると、近江さんも立ち上がったようで、自分の右隣側に移動してくる。は、はぇ……?
「玲君、顔上げて?」
戸惑いながらも彼女の言葉に従い顔を上げると、柔らかな彼女の両手が自分の両頬に添えられる。今度はその動作に首を傾げていると、彼女がこちらへと顔を寄せ唇を重ね合わせて来る。昨日のように激しいものでは無く、ただ互いを重ね合わせるだけの穏やかなもので。
触れ合ってから暫くして、互いに離れた時。彼女の顔からは涙は消えて喜びが、自分の顔にはそれとは対照的に恥ずかしさが浮かび上がっていた。
「玲君凄い照れてる〜」
こちらを揶揄う近江さんの言葉。心なしか、普段よりも嬉しそうに聞こえる。そんなに嬉しいんですか……余計に恥ずかしく感じちゃいますよちょっと。
「それは、まあ……当然のことというか……」
「ふふっ。お味噌汁温め直すね」
軽く微笑みながら自分の前の汁椀を下げる近江さん。……この後というか今後というか、彼女の顔をまともに見れる自信無くなって来ちゃったんだけどどうしよう。昨日のこともあるから余計に……ええい、ウジウジしててもしょうがないだろ御影。決めたことなんだから頑張れよ。えいえいむん!
自分で自分に発破をかけていると、火の元の前に立った近江さんがこちらへと振り返ってくる。反射的にそちらを向いてみると、彼女が本日何度目かの笑みと共に口を開いた。
「これからよろしくね、玲君?」
「はい、こちらこそ……」
彼女の言葉に応えるようにして返答した自分は、ぎこちなく椅子に腰を下ろしていくのであった。
尚この時の自分はまだ知る由もなかった。朝食後に再び抱き潰されることになるとは——