「織姫」の名を冠しながら、バトルドレスデザイナーの折戸鶫(つぐみ)は凡庸な容姿にコンプレックスを持っていた。そんな彼女は因縁のあった少年にダンジョンで犯されてしまう。
創作意欲に憑りつかれて二人きりでダイブしたのが仇となった。人気の少ないダンジョンの中、ドレスの型取りをしている最中に欲情されたのだ。
十歳以上年の離れた少年に処女を奪われて喘がされた。子供扱いされた屈辱。彼に頭を下げさせたい。だけどダンジョンで鍛えられた少年には不屈の精神がある。恨みつらみは届かない。私の存在を認めさてやる。鶫(つぐみ)は魔性の少年のバトルドレスの縫製にのめり込んでいく。
花を持たない隠花植物の花がダンジョンに咲いた。
拙作「ダンジョン姫はじめ」で尺の都合でカットしたエピソードを仕立て直したものです。こちらのみノクターン様でも別バージョンで投稿予定。
入院で見飽きてしまう黄薔薇かな
適当に発句を作っては一人連歌で遊んでいた。身体はすこぶる健康だ、食事だって病院食とは思えない豪勢なもの。俺の部屋より綺麗な病室。貧乏性の俺にはVIPルームは居心地が悪い。散歩しようにも、外にはSPの人が警備している。護衛ではなく俺が逃げないようにだ。迷惑を掛ける訳にもいかない。スマホもパソコンも使用を制限されてしまった。昔風に言えば、座敷牢へ閉じ込められていた。
まあこれも栓なき事、暴走を止めるためとはいえ、ダンジョンを一つ消滅させたのだ。ダンジョンの討滅は25年ぶりとなる。このやらかしに世界中から報道関係者が殺到している。
有耶無耶にするから何もしゃべるな
これが政府の方針だった。実は俺も助かっている。結果として沢山の人を救えた、しかし一番大切な人は救えなかった、何より大好きだったダンジョンを弑してしまった。この罪は永遠に背負わなくてはならない。
百日紅 三日もすれば忘れサル
悲しい事は数日もすればお猿のように忘れてしまう。俺は元気が有り余っていた。そう、精気が溢れて我慢できなくなってきたのだ。俺達ダイバーは超常の肉体を持つ。そして魔法の様なスキルも授けられる。人間側に選択権はない。俺の場合は何故か房事に関わるものが多かった。ちょっと前までは童貞の高校生だったのが、女性を泣かすスケコマシになってしまった。
こうしたスキルはバッシブタイプが多く、夜がつらい。もしここがギルド付属病院でなければ、当直のナースさんをベッドに引きずり込んでいた処だ。一晩で何人も相手が出来る。嫌がる女性を悦ばせる妙技も授かっていた。ダンジョンで幾度も死線を超えて、心が世の理から外れかけてる。だけど地上にあるうちは人であらねばならない。
ダンジョンに潜ってストレスを解消しよう。そうしないと本当に犯罪者となってしまう。これまでの女性は最終的には合意してくれたから、俺は無罪である。でも普通にはダンジョンに入れてくれない。俺は一計を案じた。
バトルドレスを喪失したのも、元はと言えばギルドの招集に応じたからだ。限度額一杯の保証があるという。俺は手持ちの貯金をほぼはたいて同額を加えた。これで新調しよう。前のヤツは殺し合いの果てに、焼け焦げてボロボロになっていた。そして誰もがこう言っていた。
「生きているのが奇跡。君はこの服のおかげで命を繋いだ」
折戸鶫さん、バトルドレスの制作者を思い出す。『記憶』スキルを持ってしても、浮かんでこない平凡な顔。巨乳でも貧乳でもない、かと言って中庸の黄金比でもない見劣りのする胸、存在感のない人だった。女性ダイバーはその容姿で、殿方の視線を独り占めするのが普通なのに。
当初俺は彼女のドレスが嫌いだった。女々しそうな色とデザイン。何故かフリルが沢山ついている。もちろん、色や型に拘らないから大至急と頼んだ俺が悪い。高名なマイスターに無礼な注文をしたものだ。それでも願いを叶えてくれた。女物を仕立て直して間に合わせた。ひらひらとしたドレスを、流行だからと騙されるように着せられてしまう。彼女の顔は覚えていなくても、腫れぼったい眼だけは覚えている。無理に無理を重ねてたのだろう、断れなかった。
それでも俺は気に食わず、バトルドレスを虐めてみた。破れてしまえと思ったのだ。絹を裂く悲鳴を上げろ、地を蹴って、空を舞う。獲物へと襲いかかった。ハルバードの薙ぎ払い、神速の突きと、動と静を刹那に切り替える。ナイロンやコットンならたちまちに裂ける処だ。だけど新しいドレスは、密着して離れない。どんなに乱暴に振舞っても纏わりついてきた。
漲る魔力が奥底から噴き出す。スキル『衝撃波』、必殺技を食らわしてやる。初めてドレスはこれで逝ってしまった。あの時より激しくしてやる。ドレスのフリルが千切れんばかりにはためいた。このまま滅茶苦茶にして新品と変えてもらおう。だけど強烈な一撃とは裏腹に、彼女は最後まで耐えきってしまう。その後尽くすようにして俺の命を救って散った。
そんな訳で俺は彼女に指名依頼を出した。新しいドレスは素材にうんとお金をかけて、性能はそのまま、見た目は地味にしてもらおう。一品ものなら何度もダンジョンに潜り、試着しながらの微調整があるという。入院中もダンジョンで遊ぼう。仕事以外無関心の彼女なら、告げ口なんてしないはず。即座に担当にお願いした。
委託契約しているギルドから呼び出された。メールではなく直接話したいという、それも至急に。担当は私が人嫌いなのを承知している。よほど重大な案件なのだろう。つなぎから安物の既製品に着替える。躰の線が出ないのが好みです。鏡には、寝ぐせの取れない灰色の髪と生気のない瞳が映る。私はキャップとサングラスでこれを隠した。
この世はまさにダンジョン全盛時代、ダンジョンに選ばれさえすれば、義務と引き換えに将来が約束される。たとえ外れスキルあっても、魔法を使えない人からは奇跡の御業だ。何より過酷なダンジョンに適応するため、超人的な肉体を得る。生産職の私でさえ、男子のあらゆる世界記録を凌駕する身体能力を持っている。そして副産物として、持ち主に健康を、端麗な容姿をもたらしてくれる。ダイバーとなる年齢が早い程効果は高い。
私も小学生の頃に選抜された。しかも稀少な生産職、初期スキルは服飾系最上位スキルの『天梭』、未来は薔薇色かと思われた。ギルドの援助を受けながら若くしてマイスターの資格を取った。史上最年少だという。精密機械も凌駕するこの指で、天衣無縫を織っていく。複雑な付与の魔法を変幻自在に編み込んで、防御と耐久を限界突破させる。いつしか「織姫」の名を頂いた。
でも、この二つ名がやがて私を苦しめます。「織姫」、誰もが天の川で沐浴する美しき神女を連想するでしょう。その名に人は期待する。だけど次の瞬間男性は失望し、女性は憐れみの眼差しを向けてきた。ダイバーには美女が多いという。にも拘らず私の容姿は平凡だったのです。もちろん醜い訳ではない。しかしながら女性ダイバーと比較すると、どうしても格落ちてしまう。
視線が怖い、いつしか人に会うのを避けた。強化された身体能力は何徹しても平気だった。重いものでも軽々と持ち上げられる。助手など邪魔なのです。工房に引きこもり、ひたすら布を織っていく。孤独の中で美しいドレスをひたすら夢想した。やがて私の造るバトルドレスはとてつもなく優雅だと評判を呼んだ。だけど私が袖を通す事は決してない。自分が余りにも惨めになります。
商談室に通された。この部屋は『透視』や『盗聴』スキルさえ弾いてしまう。これからの話はギルド職員にも聴かせられない物でしょう。
「鶫(つぐみ)、無理を言って御免なさい。あなたに指名依頼が来ているの。分かっていると思うけど、緊急依頼。そして他言無用よ。でも危ない話じゃないから安心して」
説明してくれるのは私のギルドでの窓口であり、数少ない友人の一人である雪音だった。二つ名持ちの戦闘職であった彼女は新婚さんだ。結婚と同時に内勤となった。異性のみならず同性も羨望する美貌と曲線美の肉体、しかも男性を満足させるスキルまで持っている。夫とは上手くやっているのだろう。でもこれは私には関係ない話だった。
提示された予算に驚く。中々の金額。この内半分はギルドからの援助。しかも非課税。素材については最上のものを最優先で、それも原価で手配してくれるという。美味しいけど訳ありかも。
彼女がバックからぼろ屑を取り出して見せてくれた。『鑑定』するまでもない。私はその場で泣き崩れた。
「ヒィー、私の最高傑作が。誰がこの子をこんなひどい目に合わせたの」
心血を注いだドレスがぼろ屑のようになって還ってきた。辱められた娘の遺体と対面する母親の悲しみを思い知った。
一カ月前、このドレスをある少年に引き渡した。元々はある女性探索者用に仕上げたものだ。彼女は稀有な身体能力と魔力を持っていたが、怪我で引退してしまう。引き取り手がいないまま死蔵していた。そんな折、雪音からとある少年ダイバーの身体データを渡され、バトルドレスを融通できないか相談を受けた。スタンビードで活躍をした功績に報いたいという。
一目見て衝撃が走った。『状態異常耐性』があって表情に出なくて本当によかった。とんでもない魔力量と身体能力を身に宿しながら、見た目は儚げな男の子。私のドレスで護ってやらなければ。
彼は色やデザインには拘らないなら、可能な限りいいものをと言ってくれた。その願いを叶えてあげる。元は女物でも問題ないよね。この子程あのドレスに似合うダイバーはいない。お値段の割には破格の性能だったけど、彼を逃せば、私の娘は二度と日の目を見ない気がした。彼に着てもらった私のドレスの晴れがましい姿。いい人にもらわれた、私の心は温かになった。なのに見事に裏切られてしまう。
呪ってやる
私たち生産職は誰しもが自分の作品に魔力を付与する。それは命を、魂を込めるのと同義だった。自分の妹や娘を蔑ろに扱われて平気なマイスターはいない。少年を気に入っていただけに余計に許せない。
悔し泣きする私を雪音が取りなしてくれる。
「あなたのドレスがこうなったのはダイバー同士の戦闘が理由。相手はあなたも知っている人。彼は人類を裏切って、ダンジョンの盾となったの。それをあの子が討ったのよ。遺体の一部も持ち帰られている」
先のダンジョン占拠事件、主犯の『魅了』の姫と、彼女を護る騎士の存在が話題になっていた。かの上級探索者は戦闘力だけなら日本有数、にも拘らず力に驕らず、プライベートではよき父親、騎士の鏡のような人でした。彼の爆炎魔法はあらゆるものを焼却するという。公式には姫の『魅了』に抵抗して、消滅したダンジョンと運命を共にしたとされている。かの人はギルドに多大な貢献をしている。シンパも多い。
私の心に火がついた。少年や上級探索者の生死に揺さぶられたからではない。私の最高傑作が、防御不可能と言われる業火を一度だけとはいえ凌いだのだ。
「残念だけどこの依頼は限りなく強制よ。あなたに断る権限はないの。だからせめて事情を察して。彼は崩れ行くダンジョンに、単騎で突入して暴走を止めた。あの子言っていたわ。自分はドレスのおかげでダンジョンコアへ辿り着けったって。彼は帰還のスクロールを使って帰って来たの」
帰還のスクロールはダンジョンを討滅したものだけが得る伝説のアイテムだった。それならば少年がコアを破戒して多くの命を救った事になる。私は自分の狭量を恥じた。少年はかくもドレスに愛されていたのだ。私のドレスは死して尚、彼を案じて私のところへ還ってきた。再び涙が止まらなくなった。彼女の願いを叶えなければ。
「いいわ、この仕事受ける。今すぐに」
さすがは主任、俺の担当はいい仕事をしてくれる。お願いした次の日にはマイスターの折戸さんを連れて来てくれた。最高のドレスを縫製してくれるという。しかも極秘かつ緊急の依頼のため、同行するのは大人しい彼女一人、思いっきり羽根を伸ばせそうだ。その前に誠実な俺はドレスを駄目にしてしまった事、しっかりと謝罪する。
「あなたのドレスを犠牲にして、僕は命を救われました。感謝と申し訳なさで一杯です」
「あの子は本懐を遂げた。あなたの全てを私に見せて。診合うドレスを織り上げて見せる」
今日の折戸さんは気合が入っている。前はあんなに眠そうだったのに。主任は母さんのように言い聞かせてくれる。俺は元気よく返事をした。
「いい、無理に無理を言ってマイスターに受けてもらったの。ちゃんといい子にしていなさい。何があっても彼女を護って」
「もちろんです。僕の命より大事にします。折戸さんは恋人よりも大切ですから」
主任はまた俺のやらかしを警戒している。それにマイスターの有資格者は三百人程だ。この人数には服飾だけでなく、武具や魔道具のマイスターも含まれている。その価値は、ダイバーの上澄み、俺達上級探索者の10倍となる。生産職の経験値はそっち方面に流れるので、戦闘能力は低い。命に代えても護らなければならない。堂々と宣誓した。折戸さんは何故か顔を赤らめた。
ギルドの通用口から俺達はダンジョンへ降りた。先のダンジョン消滅の際に目撃された高位生命体を探っている人達がいる。俺もその場にいた事になっている。二人だけで人気の少ない所を駆け抜ける。俺は病室から解放されてすっかりハイになっていた。
「逢引きみたいで楽しいです。急ぎましょう、追手が来るかもしれません」
マスコミの意を受けているダイバーもいるだろう。だけどそう言った人達の身体能力は総じて低い。それは生産職の折戸さんも同じだ。だけど戦える斥侯である俺は力が有り余っていた。最初は手を引いていたが、もどかしくなって、いつしか担ぎ上げて難所を跳び越えていた。これが準備運動代わりだ。そんな彼女は眉一つ動かさず、相変わらずの平常運転だった。
紳士な俺は自分だけ楽しむような野暮はしない。姫プレイをして折戸さんも愉しませた。上層とはいえ、ゴブリンやウルフの上位種ともなれば折戸さんは苦戦する。経験値稼ぎのため、止めを全部譲ってあげる。これには彼女も嬉しそうだ。無表情な人が喜べば、俺も嬉しくなってくる。
身体も程よく温まってきた頃、目的地へと着いた。ここは以前にも訪れた場所で、ちょっとしたアリーナになっている。モンスターの湧きが悪く旨味はないので、訪れるダイバーは少ない。偶に武器や装備の試運転や魔法の練習で使われたりしている。俺も前のドレスの試着の際に折戸さんと一度来ている。
彼女のアイテムボックスから全身白タイツが取り出された。踊り子が練習でつけるヤツみたいで恥ずかしい。でも俺には着なければならない理由があった。
メモリーズ・クロス、形状記憶ポリマーを参考にして蟲の繭やトレントの繊維から織り上げられた一枚布だ。ダイバーの肉体も魔法力もダンジョン内で最活性化する。しかしながら電子機材は使えない。最近までは観測をマイスターの経験と名人芸に頼っていた。それを補助する為に編み出されたのが、このメモリーズ・クロスだ。肉体の採寸のみならず、筋力、関節の可動域、魔力の量や質を記憶させる。ワンオフの場合、これが型取りの主流となってきている。
「服を脱いでに着替えて下さい。もちろん下着も全部ですよ。そうしないと正しいデータが取れませんから。反対側で待っています。着替え終わったら声を掛けて下さいね」
折戸さんは俺にマッパになれと堂々と言ってきた。女性としての慎みはないのだろうか。ちょっとドッキリを仕掛けてやろう。
「折戸さんの目の前で着替えますよ。主任から眼を離すなと言われてますから。ちょっとスキルを使います。目をつぶって下さいね。
僕が消えても心配しないで。ずっとあなたを見ています。着替え終わったら姿を見せます」
スキル『結界』は他者の視線があると発動しない。思わず彼女が瞼を閉じる。これを狙って『結界』を展開した。向こうからは感知できないけど、こちらからは丸見えとなる。素人女性を前にストリップしているようで、それは気分転換になった。彼女はどんどん不安になる。正直全身白タイツになるほうが何倍も恥ずかしかった。
眼の前で『結界』を解除して驚かすと、流石に叱られてしまう。
「いいスキルを持っているのね。悪戯に使っては駄目よ。そして信頼してくれてありがとう。今日の事は決して誰にも言わないわ」
スキルの説明をすると優しく諫められた。この場の事は誰にも漏らさないでくれるらしい。
彼女は正直好みではなかった。もし俺に媚びを売るならそっぽを向いてしまっていた。だけど入院生活で俺の欲望は際限なく膨らんでいた。折戸さんはドレスに入れあげ、女を捨てている。その潔さが美しい。もしも彼女が女性に戻るとしたら、それはどんな時だろう。
まず基礎的な身体能力を記憶させる。彼女の指示に従って、垂直跳びや幅跳び、サイドステップや50m走と基礎的なところから始めていく。体操をする。高く跳び、股間を大きく開いては折戸さんにアピールする。女性にはありふれスキルでも、男性にはレアな『柔軟』を持っているのだ。バレリーナのように優雅に踊る。これには彼女もにっこりだった。そして閃きがあったのか思い詰めた貌をする。
次はハルバードで『戦斧術』の型を演じる。スキルで強化された『強靭』な肉体がしなる。『風衣』を纏って速さを乗せれば、旋風が巻き起こった。折戸さんまでよろめかせてしまう。
魔力量の計測に移る。少しずつ放出する気を強めていく。
「限界まで溜めなさい。そして思い切り爆発させて」
指示をする彼女の元、『衝撃波』を放つつもりでぶっ放す。周囲の空気が激震した。だが俺の躰で最高品質の魔力を放出するのは逸物なのだ。何故ならここを通して【魔導】の神秘を教わったから。観測不能の魔力がほとばしった。その瞬間、クロスが痙攣を始めて締めつけてきた。なんだか逝ってしまったようである。
「どうしましょう。メモリーズ・クロスの測定限界を超えたわ。とんでもない魔力量ね。凄い、こんなの初めて」
俺の読んでいる小説では、ギルドでの魔力測定で水晶玉が割れるのが必須だった。驚くのが折戸さんでなくて受付嬢なら尚良かった。物語の主人公の気分だが、現実には全身タイツが突っ張って着心地が悪い。特に息子が締め付けられた。それに反発して条件反射で突っ立っている。
「動かないで!」
浮ついた気持ちを一喝された。彼女の本気モードだ。俺も安全のため結界を張る。これで二人きりだ。
「これから糸を解きます。何があっても我慢しなさい」
縺れてしまった見えぬ糸を解いていく。俺も器用自慢だが、彼女の指には見惚れてしまう。さすが最上位スキル『天梭』を持つだけはある。普通の人には魔法の指で撫でているだけに見えるだろう。くすぐったいのだが、話しかけるのも憚られた。
折戸さんが顔を押しつけるようにハア、ハアと昂った息がかかる距離、俺を裸に剥いていく。でも彼女は恥ずかしい等とは思っていない。極限まででの集中だった。彼女はクロス以外見ていない、考えてしない。頸から胸、腹から腰とメモリーズ・クロスを慎重に解体していく。そして精緻な指が腰へとかかり、遂に布を剥がす時が来た。
逸物がダンジョンへと解き放たれた。病院での禁欲生活、クロスの締めつけで不自由を強いられた。ここに鬱憤を晴らす。健やかに、伸びやかに高らかと聳え立つ。おあつらえ向きに、目と鼻の先に大人の女性が跪いているではないか。驚いて口を開けようとしている。考えるより先に、雁首が中へと飛び込んだ。
折戸さんは悲鳴も上げないし、嫌とも言わない。頭を押さえて黙らせたからだ。もごもご唸って狼狽している。人の世では俺は子供で、彼女は立派な社会人。尊敬すべき大人なのだ。だけどダンジョンでは別の理がある。ここでは彼女はひ弱な雌、肉食獣の獲物である。立場の違いを教えてやろう。
言うまでもなく口へ食べ物を含むと唾液が分布される。これは生きるための反射である。折戸さんも俺の逸物を加えるや、唾液が口いっぱいに広がってきた。これも男性に奉仕するための自然な反射である。嫌がっていても、彼女の咥内は蒸れるように興奮してきた。俺の息子を促しているようである。
「僕を受け入れてくれたね。ありがとう、ヌルヌルとして気持ちいい。頑張るから期待してね」
「んんん~~~、うぅぅぅ~~~」
もじゃもじゃの髪を掴まれ、折戸さんはポロポロとダンジョンで泣くだけ。頃合いだろう、逸物が抜き差しを始めた。だが俺は不動だ。動いているのは彼女のほう。折戸さんは息子を咥えさせられたまま、頭を前後に振らされている。股間へと引き付ければ、喉元奥までペニスが呑まれ、押せば雁が前歯の裏へ引っかかる。絵面だけ見れば、年上の女性が夢中で子供に奉仕している。
「ああ、もっと気持ちよくなりたい。折戸さんのお腹の中に射精したい。僕の子種で一杯にする。それが嫌なら励んでよ」
俺は掴んでいた頭を離した。無理やりより、年上の人から積極的にされてみたい。果して折戸さんは自分の意志で首を振る。逸物を咥えてご奉仕を始めた。だけどあまりにも下手糞だった。もしかして男には疎いのか。手伝ってやろう。
頸の動きに息子を合わせた。雁を舌で絡めとらせて,敏感な処を指導した。折戸さんはこの苦界から苦れたい一心で、極限までの集中をする。その職人気質が裏目に出た。たちまちに舌の動きが絶技に変わる。もう我慢できない。
彼女の真心を受け取った。溜まりに溜まった俺の精を心ゆくまで射精する。折戸さんは悶絶しながらも呑み込んでくれた。くしゃくしゃの涙顔には安心感がみられる。こうやって抜いてしまえば貞操だけは護られる。
残念、俺の逸物はこれ位では萎えたりしない。今のは唯の前菜だ、性欲が増すだけ。メインディッシュを食わせろと、折戸さんへと迫る。ニヤニヤしながら決め科白を言った。
「僕は一度出した位では満足しない。そのまま咥えいるべきだった。おかげで増々元気になった。躰で責任を取ってもらう」
彼女は後ずさるも、直ぐに結界の壁で遮られる。逃れえぬ運命が彼女を絶望へと染めた。
「大人を騙したのね。なんて悪い男の子。初めて男の人をしゃぶったのに。頑張ったらもうしないって言ったのに。嫌なのに一生懸命心を込めた。私、子供にあそばれちゃった」
そんな口約束、守る男性など存在しない。満足したら許してあげると言ったのは様式美だ。
ちょっと前まではバトルドレスの型取りは、マイスターが直接採寸したり、魔力を肌で感じたりして調整したという。「織姫」の称号を持つ折戸さんなら出来るはずだ。手伝ってやろう、さっきとは逆に俺が彼女を脱がしにかかった。嫌がる女性の脱がし方も中々なものだと思う。
「ついでにドレスの型取りを続けようよ。クロスがダメなら、肌を合わせて採寸して。僕の魔力は躰に注いであげるから」
折戸さんはカサカサの肌、貧弱な乳房と、確かに肉体的な魅力には欠ける。寝不足の上に泣き腫らした眼が睨みつけて、最後の抗議をする。そして恨みの念仏を唱え始めた。
「男なんか大嫌い、私を蔑む。子供にまで玩具にされた。乱暴されて散らされるなんて……」
こんな事を言われたら、男の良さを教えたくなる。ダンジョンから授かった種々のスキル、『性豪』、『性技』を駆使して責め立てたる。いたぶりながら、慈しみながら『わからせ』てやった。乳房を含んで舌で遊ぶと、乳首はあえなく硬くなる。濡れた小径に指を這わせば、枯れた泉に水が湧いた。小鳥のような鳴声が聞こえる。素人女はたちまちのうちに陥落した。処女を奪われて折戸さんが喘ぐ。
「はぁ~、これが男の人。ああ、入ってこられた。どうして抵抗できないの。凄い、こんなの初めて。あっ、あぁ~~~」
じっとして破瓜の感触を楽しんでいると、彼女が俺を愛撫する。腕から背中、そして臀部へと、細指が走る。それだけではない、時に止まって指先でグリグリする。そして掌で皮膚の感触を味わっている。もう堕ちてしまったのか、ちょっと興ざめと思ったが、喘ぎ声の中に数字が混じっていた。
「あっ、あっ、26 45 37. んっ、ん~、0.829 1.006 0.745……」
俺の躰を計測していたのか。この人は犯されながら仕事をしている。その執念に頭が下がった。何だか気持ち良くなってきた。
俺の躰の性能もテストしてもらおう。初めての膣に抽挿を開始した。初めはローで、慣らしながら平常運転、時にリバースにして雁の後ろで掻きむしる。むろん緩急自在でスピンだって利かせてある。初めての躰が俺のテクニックで翻弄された。
「あはぁ~、はあ~っ、許して、許して。あああぁぁぁ~~~」
赦す訳がない。まだ力は有り余っている。攻撃は激しさを増す。突進すれば跳ねるように腰が浮く。逸物が力強く痙攣する。殊更大きな悲鳴が上がった。初めてでもこの意味は分かるのだろう。濃厚な魔力を含んだ精子を注入されて、遂に撃沈されてしまった。目を覚ましても折戸さんは茫然自失としている。
「どうしよう、どうしよう」
いい気分転換になった、スッキリした俺はレイプなどなかったように彼女に接する。疲れた彼女を背負ってあげて帰路についた。
三日後、折戸さんから連絡があった。型取りの続きを行うという。さすがは仕事人、公私はきっちり分けるらしい。二人とも何事もないようよう振舞った。相変わらず根を詰めているのであろう。顔には隈がかかっている。紳士な俺は彼女を背負ってダンジョンを走った。
いよいよ型取りという段になって彼女の様子がおかしくなった。黙り込んで動かない。恨みつらみの籠った眼で俺を見ている。俺は急かされるように脱がせにかかった。
「イヤっ 嫌っ、やめなさい」
口先だけの抵抗だった。為すがままに裸に俺に剥かれる。折戸さんは押し倒されるのを待っていた。
「ああ凄い、激しすぎて今のクロスは耐えられない。新しい縫い方を工夫しないと」
あらゆる体位で身体データを測定してもらう。体重を計ってもらうために馬乗りになった。折戸さんは獣の様にいなないて、正確な数値を言い当てるのだ。次は彼女を馬乗りにさせた。騎乗位で跨らせて、胸部データを取ってもらう。指先が愛撫のようにくすっぐったい。むろん俺達は繋がっている。ペニスからヴァギナへと、リズムよく魔力を注ぐ。彼女はその旋律に乗って腰を振る。俺は乳房を揉んで協力していた。
ふと涙が落ちてきた。見上げれば、折戸さんは無念の表情で泣いている。もう俺を呪い殺さんばかりだった。恨みの声で大きく喘ぐ。何て可愛いんだろう。逸物に力を籠れば御柱が立った。
「わぉぉぉ~~~~」
人ではなく牝の咆哮。恩讐の彼方で折戸さんが笑顔で眠る。目の周りの隈が和らいだようだ。いつものように背負いながら移動する。これがルーティンとなった。
それからの私はバトルドレスの縫製にのめり込んだ。寝ても覚めても考えるのは彼の事だけ。なんでこんなにも憎らしいのか。少年は人のタガを外れつつある、彼を服で縛るのだ。怪物を縛る布を織るには、ありきたりの素材や技法では駄目。
宗教家や芸術家は、自らを極限に追い込む事で、天啓や啓示を得るという。非才な私は凌辱の中でこそ霊感が湧いた。悶絶しながらアイデアが走馬灯の様に浮かぶ。斬新なデザイン、素材同士の新規軸、少年を恨みながら法悦に喘いだ。
縛るだけではまだ足りない、少年に相応しく、美しく着飾らせねば。幾度も計算し直していく。彼が美しくなれば私も嬉しい。なんて賤しい女でしょう。それでも奮い立つように糸を紡いだ。ドレスを織れない私など、彼にとって犯す価値もないからだ。
淡いオレンジと薄い緑のパステルカラーを基調としたフリル付きのバトルドレスが出来上がる。このフリルがラジエーターの役割をして魔力爆発から護る。彼のような高魔力者にはふんだんに使用する必要があった。弱そうで庇護欲を誘うデザインと色は、小鳥の雛を模したもの。これは保護色となってモンスターからは迷彩となると説明した。
薄く柔らかくどこまでも優美、納得のいく傑作が出来上がった。もう一部の隙も無い完璧なものだ。今日が彼との別れの日となる。震える指でバトルドレスを着せていく。これからは私に変わって彼と居て。
少年はダンジョンの最果てへと探求に向かう。もう私はついていけない。彼ならば見送る女は直ぐに忘れる。行った先でも息を吸うようにヤリ捨てるでしょう。ならば、せめて初めてになりたい。一糸纏わぬ姿になって、まだ無垢なドレスを着た彼の腕に抱かれたい。
「お願い、ドレスを着たまま私を抱いて。あの時みたいに私を犯して」
プロポーズより勇気のいる言葉を口にした。私はこの先、自分から殿方を求めたりは絶対にしない。
震える指でバトルドレスを着せていく。名残を惜しむ様に、それは丁寧に生地を撫でて、肌と重ねた。これは私の前戯なのだ、そう思った瞬間、私の心は爆ぜていた。
「いやぁぁぁ~~~」
下着ごとレギンスを降ろされるや、両脚を半肩にかけられる。一瞬の早業、膝に乗せられ気がつけば挿入されていた。この子は私より私の躰に慣れている。だけど、望んでいるのはこれじゃない。
「ヒィー、やめて、やめて、ゆるしてください」
少年は私を乗せて突き上げる。彼の心棒は揺らぐ事なく苛んでくる。私の掌は反った躰の腰の後ろで地につかされた。脱がされたい。裸にされてドレスと一緒に抱きしめたい。でも私の願いは届かない。今、正しく犯されているのだ。
庇護欲をそそる無垢な瞳が加虐心へと色を変える。意地悪をされてる。見詰められるだけで絶頂しそうになる。彼が微笑んでくれた。
「早く助けて。好きだから、大好きだから、私を破って目茶目茶にして」
スキルだろうか、私の服を切り裂いてくれる。防刃のシャツも薄紙の様、インナーもビリビリ破れて音がした。
「ヒャン、ヒャン、はやくぅ~、もっと、もっとぉ~~~」
情けなく、恥も外聞もなく男の子に甘える。殿方に服を破られるのはこんなに気持ちのいいものなの、私はドレスの本当の気持が初めて分かった。
好きで好きで憎くて堪らない男を抱いている。両足を巻き付け、頸に手を回して、離すものかと密着した。初めて自分から積極的に男を求めた。ドレスと一体となって彼の全てを包み込む。わたしはこの子の母であり、姉であり、玩具になった。そう思うだけで幸せだった。
彼が躰を揺すってくれる。きつく深く、少年の太いボルトが奥へとねじれる。このまま永遠に外れないで欲しい。経験した事もない絶頂が迫ってくる。女としての私の性はこの刹那の為だけにあった。怒涛の奔流に抗いながらも私は逝く。飛んでいく意識の中、私は最後の付与をドレスに掛けた。魔法が服に縋りつく。魂が削れた。
「うぁぁぁ~、うぅぅぅ~、うぉぉぉ~~~」
私の心はここにあらず、牝犬となって吠えていたらしい。
あれから一カ月、彼に会う事も無ければ、こちらからも連絡も取っていない。無意味な日常に戻ってしまった。でも今日は何かおかしい。ダンジョンがざわついている。エントランスを覗けば、彼にかまっていた受付嬢が抱き合って泣いている。傍らでは対人武装の自衛隊が展開を始めた。雪音は私を見つけて首を振る。そして気丈に振舞っていた。
彼が死んだ。
ダンジョンの最奥で要救護者を逃がすため、たった一人殿となって、非合法の武装集団と闘ったという。生存は絶望視されている。フラフラと家路についた。職員からは憐れみの目で見られる。もう彼への執着はとっくに皆に知られていた。15歳の子供を狙うなんて犯罪すれすれ。十以上も歳が離れているのよね。あの行き遅れの根暗女。私の評価は最低だった。
「嘘つきめ、生きているに決まっているじゃない。何故なら私のドレスが生きているから」
私が命を注いだドレスだ、彼の鼓動も、筋肉の運動も、気持ちだって手に取るようにわかるから。さっきまで黄泉の比良坂で死と戯れていた。今は女を虐めている。ダンジョンの奥底に何で女がいるの。嫉妬に狂って股間が決壊してしまう。
生存を教えてなんかやるものか。誰もが彼を諦めるのなら、その間、あの子を一人で独占できる。
雑然とした薄明りの工房、男を知らないベッドにはドレスの歯切れが散乱している。たまらずに自慰を始めた。あの子はこうしてくれた、両の乳房を揉みしだく、陰核をいじりながら、余った指で膣の中をかき回す。私の精緻な指は超絶技巧の動きをする。あの子の事を想うだけでのたうってしまう。大声で喘いだ。指先に力がはいる。少年の名を唱えながら絶頂を繰り返した。
スキル『天梭』。このおかげで彼の指の動きを忠実に再現できる。一人でも満足できた。私の性には男性は必要なくなった。鏡には乱れた私が映っている。笑顔に花が咲いていた。嘘偽りもなく綺麗な自分がそこに存在していたのだ。
作者が尊敬するリアルハーレムマスターにC.G.ユング(ペルソナの人)がいます。彼は大変な愛妻家(奥さんはスイスの高級時計メーカーの経営者一族。超お金持ち。夫の研究を経済的に支えた)でありながら、患者(多くは上流階級のご令嬢)に手をつけて、愛人にしたり助手にしたりしていました。しかも全員がユングを崇拝するのです。そんな彼女達はユングフラウとかヴァルプルギスと呼ばれていたそうです。カッコいいですね。
華やかな浮名とは裏腹に、若き日のユングには隠花植物のような女性が寄り添っていました。ヘレーネ・プライスベルク、霊能者の家系である母方の従妹であり、優秀な霊媒師、そして従兄に慕情を寄せる十五歳の少女でもあります。
ユングは彼女の好意につけ込んで、2年間に渡り交霊術を実施させ、その結果を医学博士論文に纏めました。そこで彼女はこう紹介されています。
知能は平均以下、特別な才能も、音楽の才能もなし。本を好まず。肉体労働か、空想にふけるのが好き。
おつむの弱いちょっとおかしな女の子です。
ユングはこの論文で学位を取り、心理学ならずあらゆる分野で歴史に名を刻む事になります。しかしヘレーネは身バレしてしまい結婚も流れ、故郷にも居ずらくなりました。ザマァのない婚約破棄からの追放、結果としてユングの野心の踏み台にされたのでした。
その後、ヘレーネ・プライスベルクはファッションデザイナーとしてパリで成功を収めますが、ユングはここでも彼女と関りを持ちます。なんと妻のウェディングドレスの縫製を依頼するのです(彼女の作った夜会服を着た妻の幻影を見たとの話もある)。憤怒か、未練か、諦観か、それとも感謝? 果たしてどんな想いで彼女はドレスを縫ったのでしょう。自分で試着はしなかったのでしょうか。
ヘレーネは独身のまま、結核により三十歳の若さで生涯を閉じました。姪の手記によれば生きる意思が乏しかったとの事。本作はこの逸話に感銘を受けて筆を起こしました。