午後のカリキュラムは「身体機能論」。
その実態は、女子生徒にとっての事実上の製品耐久テストであり、男子生徒にとっては品定めの時間であった。
ジンたち男子生徒は、上層にあるガラス張りの見学室、通称VIPルームから、眼下の女子特別体育館を見下ろしていた。
「おい見ろよ。今日の衣装、新型だぜ」
友人の下卑た声に、ジンは視線を落とした。
暖房が意図的に切られ、吐く息が白くなるほどの寒さの中、女子生徒たちが整列している。彼女たちが身に纏っているのは、純白の極薄レオタード。正式名称を計測用スキン・スーツ Type-Mという。
それは衣服というより、第二の皮膚であった。ナノファイバー製の生地は真空パックのように肌に吸着し、胸の膨らみから肋骨の浮き沈み、そして股間のラインに至るまで、肉体の起伏を容赦なく露わにしている。心肺機能を計測するために胸元は大きく抉れ、ハイレグのラインは腰骨の位置まで鋭角に切り上がっていた。
『テスト開始。ポーズ、四つん這い・水平維持。テーブルトップ』
無機質なアナウンスと共に、女子たちが一斉に床に手をついた。背中を反らせ、腹筋を引き締め、背骨を地面と完全に平行にする。それは、将来テーブルや椅子といった生体家具として加工された際に求められる、基礎的な姿勢維持能力のテストであった。
「うぅ……っ、くぅ……」
開始から十五分。寒さと筋肉の疲労で、数名の女子が震え出した。レオタードの背中部分に警告色のオレンジ色が灯ると、即座に警備ドローンが飛来し、彼女たちの背中に不適格を示す電子スタンプを投影していく。
だが、西園寺レイカだけは違った。
彼女は顎を引き、背筋を定規で引いたように真っ直ぐに保ち続けていた。彼女のスーツは体温と発汗量に応じて透明化する特殊仕様であり、過酷な運動熱によって肌が桜色に上気すると、生地が透けてその下の血管や、寒さで尖った乳首の色までをうっすらと曝け出し始めた。
「見ろよ、西園寺の背中。完璧な平面だ」
ジンは手元のタブレットで、彼女の生体データを拡大表示した。
筋電位は極めて安定しており、骨盤底筋群の数値はSランクを記録している。ストレス耐性値にいたっては規格外のオーバースペックであった。
そして、深く食い込んだ股間の粘膜センサーが、ある数値を弾き出した。
湿潤度、上昇中。
「ハ、彼女……興奮してるのか? こんな晒し者の状態で」
隣の友人が喉を鳴らす中、ジンは冷静に分析していた。
「逆だ。極限の緊張と視線に晒される強烈なストレスを、彼女の脳は見られている快感や耐えている優越感に無理やり変換して、精神崩壊を防いでいるんだ」
それは、支配欲求が従属欲求へと反転する、極めて優秀なアセットとしての資質であった。
私は特別。
私は完璧。
誰よりも美しく耐えてみせる。
その強烈な自尊心が彼女の肉体を鋼のように硬くし、同時に秘部を濡らしているのだ。
ガラス越しに、レイカがふと顔を上げた。汗で濡れた黒髪が頬に張り付いている。彼女は見学室のジンを鋭く睨みつけたが、その瞳に宿っていたのは屈辱ではなく、完璧な私を見なさいという誇らしげな光であった。
ジンはタブレットに映る彼女の美しい背中を指でなぞった。そこには、将来彼女の背中に置くことになるであろう熱いコーヒーカップや、重厚な革張りのシートの幻影が見えていた。
「合格だ、西園寺。君は素晴らしい素材だよ」
彼女がまだ自分を人間だと信じて疑わないその瞬間、ジンの中での彼女の区分は同級生から所有物へと、静かに書き換えられていた。