※この作品はR-18です。

OCA『女王のいる家』   作:XYZ_L

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3. 審判の日(グランド・セレクション)

聖セントラル上級学院、大講堂。

数千人の卒業生が整列する空間は、静寂と緊張に支配されていた。

正面に浮かぶ巨大なホログラム・スクリーンが、生徒たちの運命――「区分」を次々と宣告していく。

 

「A区分(市民権付与)」

「B区分(家庭用アセット)」

「C区分(公共・産業用アセット)」

 

名前が呼ばれるたび、歓喜の悲鳴と、絶望の慟哭が交錯した。C区分を宣告された女子生徒がその場で泣き崩れ、警備ドローンによってゴミ袋のように引きずられていく。だが、最前列に立つ西園寺レイカの背中は、微動だにしなかった。

 

父との連絡は未だにつかないままだが、彼女はそれを「極秘任務中だから」と自分に言い聞かせ、精神の均衡を保っていた。自分がA区分になれば、全てが報われる。彼女はそう確信し、顎を引いて毅然とした態度を崩さなかった。

 

そして、ついに彼女の名前が表示された。

 

「登録番号:SC-001 …… 西園寺 レイカ」

 

レイカが一歩前へ出る。優雅な礼をする準備をしていた彼女の頭上で、スクリーンが突如として警告色の赤に染まった。

 

「判定:S級・特待管理資産」

「状態:全権利剥奪・即時凍結」

 

会場の空気が凍りついた。レイカの完璧な笑顔が引きつり、思考が停止する。

 

「……は? な、何かの間違いよ。私は西園寺家の……S級アセットって、家具? 私が……?」

 

間髪入れずに、冷酷な合成音声が彼女の言葉を遮り、罪状を読み上げた。

 

「保護者である西園寺当主の国家反逆罪、及び敵対勢力への技術供与が発覚。当主は本日未明に処刑済み。全資産は没収。当該生徒は連座により市民権を喪失。負債補填のため、最高級生体競売へ出品とする」

 

「う、嘘よ! 父様が反逆なんて……私はA区分よ! 管理する側なのよ!」

 

彼女が絶叫し、檀上に駆け上がろうとする。しかし、今まで彼女を守っていた家柄という名の鎧はもうなかった。黒いスーツを着た執行官たちが、無慈悲に彼女の両脇を抱え上げた。

 

「離して! 私は人間よ! 家具なんかじゃないわ! 調べ直しなさい! 私たちは連合に忠誠を誓っているのよ!」

 

執行官は冷ややかな目で見下ろし、鼻で笑った。

 

「おやおや。数日前、貴女は教室で高らかに仰っていたそうですね? 『裏切り者はアセットに堕ちて、肉体で罪を償うべきだ』と」

 

「ッ……!?」

 

レイカの顔色が蒼白になる。教室で、紅茶を飲みながら言い放った自分の言葉。それが、そのまま巨大な刃となって喉元に突きつけられた。

 

「その言葉通りにして差し上げますよ。……連行せよ」

 

「いやぁッ! 嫌、嫌ぁッ!!」

 

彼女は暴れ、美しい脚で執行官を蹴りつけた。その拍子に、完璧にプレスされていた制服のスカートが無惨に捲れ上がる。

衆人環視の中、露わになったのは純白のスキン・スーツ――だが、ジンがあの日のデータから彼女の『驕り』を確信していた通り、その鋭いハイレグのラインからは、場にそぐわないほど華美で扇情的なレースと、細いガーターベルトのストラップが剥き出しになっていた。

 

「……ほう。検査の時は素直に従っていたようだが、今日は随分と『A区分』らしい、贅沢な武装を隠していたものだな。計測の邪魔になるとは思わなかったのか、お嬢様」

 

執行官の嘲笑が飛ぶ。規律を破ってまで守ろうとした彼女の女としてのプライドが、今や彼女の淫らさと傲慢さを証明する証拠として、会場中の男たちの好奇の視線に晒された。

 

「あ、が……っ!!」

 

脇腹にスタンロッドを押し当てられ、激しい放電音が響く。レイカは白目を剥いて床に崩れ落ちた。痙攣する彼女の視線の先に、一人の男の靴が見えた。ジンだ。彼は最前列に立ち、冷ややかな目で彼女を見下ろしていた。

彼女は縋るように、震える手を伸ばす。

 

「く、久我山くん……助け……て……。貴方なら、知っているでしょう? 私がどれだけ真面目か……私が、人間だって……貴方の襟を、直してあげたじゃない……」

 

ジンは無表情のまま、手元のタブレットを操作した。軍の将校にのみ許された特権枠、即時購入申請。

 

「ああ、知っているよ。その隠し持っていた下着の趣味も含めてな。……君は実に真面目だ。だからこそ、自分の言ったことには責任を持つべきだな」

 

「え……?」

 

ジンは執行官に画面を提示した。

 

「決済完了。所有権移転:久我山 ジン」

 

「彼女は私が引き取る。……手続きは済ませた。初期化の監督と最終設定は私の新居で行う。専門の業者を手配し、そのまま搬送してくれ」

 

レイカの顔から希望の光が消え、もっと深く暗い絶望の色が浮かんだ。同級生に買われる。それは、見知らぬ他人に買われるよりも遥かに残酷な、逃げ場のない地獄の始まりだった。

 

「待っ……イヤ……久我山くん、貴方……その目……」

 

ジンは優しく、しかし絶対的な捕食者の目で微笑んだ。

 

「安心しろ。君のその高尚な教養も完璧な姿勢も、俺の家ですべて役立たせてやる。……一生な」

 

彼女の絶叫は、頭から被せられた黒い拘束袋によって遮断された。それが、彼女が人間として発した最後の言葉となった。

 

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