『聖女の魔力は万能です』 愛される度に『祝福』してしまう恥ずかしさで引きこもってしまったセイを心配した周囲が、一計を案じます。

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『祝福』しないと出られません

 

 

 

 

「それって大変な事じゃないですか!」

「そうなのよ、アイラ」

リズ――エリザベス・アシュレイ侯爵令嬢は、カップを傾けて上品にお茶を一口飲むとテーブルに戻した。リズの所作は何気ない動きでも本当に優雅で美しく、いつも見惚れてしまう。

貴族令嬢のお手本みたいな彼女とこの世界で友人になれた事を誇らしく思いながら、もう一人のかけがえのない友人――私、御園愛良と一緒にこの世界へ召喚された、聖女の小鳥遊 聖さん――セイさんがリズに相談したという悩みについて考えた。

 

セイさんは“黒い沼を浄化する”という聖女としてのお役目を全うした後、王宮第三騎士団 団長アルベルト・ホーク様と結婚した。

優しくて美人なのに可愛らしいところもあるセイさんは、結婚したからといって何も変わらず、今でも同郷のよしみで仲良くしてもらっている。

薬用植物研究所のお仕事も続けていてプライベートも充実しているセイさんは、私にとって憧れの存在でもあった。

そんなセイさんが悩んでいるのなら、私だって力になりたい。

だけど――…。

 

“真夜中に祝福の光が降り注ぐのは、聖女様が愛されている証――中でも強く輝いて降り注ぐのは絶頂の瞬間である”

 

そんな噂が流れ始めたのはいつからだろう。

そしてそれは噂ではなく事実なのだと聞かされ、他人事ながら赤面してしまう。

自分にはそんな経験はないけれど、それでも大好きなひとと結ばれたら、キスだってエッチな事だってしたいのは当然だと思う。

なのに愛される――エッチな事をして幸せだと感じる度にそれが『祝福』という形で街中に降り注ぎ、絶頂の際には一際強い輝きを放つなんて、恥ずかし過ぎて私なら家から出られなくなってしまうだろう。

実際、セイさんは周囲の視線に耐えられず、研究所のお仕事もお休みしていて、ホーク団長とも寝室を別にして自室に閉じこもりがちなのだそうだ。

 

「夫婦の危機よね」

扇子を開いて口元を隠したリズが、小さく溜め息を吐く。

「どうしたらいいの、リズ。このままだとセイさんたちが離婚しちゃう!」

離婚は極端だとしても、別居の可能性はあるかもしれない。

苦難を乗り越えてようやく結ばれ、本当に幸せそうだった二人の仲が、こんな本人たちの気持ちと関係ない事で壊れてしまうなんて悲しい。

“セイさんが聖女である以上、仕方がない”なんて絶対に思いたくない。

「アイラ、あなたはセイと同じ世界から来たでしょう。同じ文化を共有していた経験や知識から、何かお二人の仲を深めるいい案を思いついたりしない?」

「え? ……えっと……」

 

そう言われても、そもそも私にもアドバイスできるほど恋愛経験がない。でもいつも私の事を気に掛けてくれる優しいセイさんの為にも、できる事ならなんとかしたい。

そう、例えば読んだ事のある漫画や小説、観た事のあるドラマや映画に何かいい案がないかな?

 

「……そう言えば私の元いた世界に、強制的に仲を深めるテンプレートとして……」

「てんぷれーと?」

聞き慣れない言葉だったのか、リズが首を傾げる。

「あ、分かりづらい? ……えっと典型――定型? ……様式美? ……違うかな……」

何かもっと、納得してもらえるような――。

「そう、儀式!」

言った後に本当にその言葉で合っているか疑問は湧いたが、他にぴったりの言葉も思いつかないので押し切る事にした。

「儀式でね、『××しないと出られない部屋』というのがあって……」

「その『××』というのはなんですの?」

「あ、ええっと……」

周囲を見回し、他の人が近くにいない事を確認してから椅子ごと不思議そうな表情のリズの傍に寄り、耳打ちする。

「キ、キスとか、それ以上の事とか……」

ごにょごにょと言葉を濁したが、頭も勘もいいリズはそれだけで理解したみたいだった。

含みのある笑みを扇子で隠し、ちょっと悪い顔をする。

「へえ……♡」

 

 

 

「はあぁ……」

深い溜め息を吐いてしまっていた事に気付き、口元を慌てて抑える。

――いけない、いけない。幸せが逃げちゃうのよね、確か……

「でも……そうは言ってもなぁ……」

最近の悩みを思い返すと、また勝手に溜め息が出てしまう。

 

結婚した当初は本当に幸せだった。

盛大な式を挙げ、研究所から程よい距離の場所に新居を構え、その庭には様々な薬草や花々が植えられ、私が個人的に薬草を煎じたり抽出したりする為の離れも作ってもらったりと、希望をたくさん取り入れてもらった。

寝室の大きなベッドには毎晩緊張してしまったけれど、アルベルト様――ようやく名前を呼ぶ事にも慣れてきた――は決して無理強いはしないで私のペースに合わせてくれた。

けれどしばらくしてから、愛するひととの行為が街中に筒抜けだと知ってしまい、周囲からの“昨晩はお楽しみでしたね”という生温かい視線に耐えられず、ここしばらく研究所の方もお休みさせてもらっている。

所長は「お前は休日も休まないから、いい機会だ。席は開けておくから、安心してしばらく休んでおけ」と快く承認してくれているけれど、どうしても薬草のお世話や開発中の化粧品の事が気にかかって、落ち着かない。

それに何より、彼もプレッシャーに感じているのではないかと心配になってしまう。

愛している、という気持ちが溢れると『祝福』という形で表れてしまう私は、つまりは愛に関して嘘を吐く事ができないという事だ。

恋愛レベルが中学生並みの私は、今はまだ、新婚の夫婦らしいちょっとしたイチャイチャ――朝、耳元で「おはよう、セイ」と囁かれて起こされたり、急に想いが溢れたように抱き締められたり、甘えるようにキスをされるだけで反応し金色の光が漏れ出てしまうが、もし幸せに慣れてしまい、私が反応できなくなってしまったら。

いつか私が幸せだと信じてもらえなくなる日が来るのではないか、伴侶を幸せにする事ができなかったと自分を責める日が来るのではないか――。

そんな可能性に思い至り、私と結婚した事を後悔していないか不安を覚えてしまうのだ。

 

アルベルト様の様子に変化はないし、今まで通り――いや今まで以上に優しく接してくれている。私が「少しの間、寝室を別にしたい」と言った時も、一瞬わずかに表情を曇らせたけれど頷いてくれた。

 

ずっと幸せであり続ける物語などない。頭では分かっているけれど、それでも考えてしまう。

――どうしたらこの先もずっと、私が幸せだと信じてもらえるだろう――…

 

 

そんなもやもやした日々を過ごしていたある日、王宮からの使者が訪れた。

「……祝祭、ですか?」

「ええ、そうです。セイ様が黒い沼を全て浄化し、この国に平穏を与えてくださった功績を称え、聖女様の偉業を刻んだ石碑を建てた広場を整備して、改めて国民にも広く知らせ、末永く語り継ぐ為の祭典を開く事になりました」

「そんな大げさな……」

「大げさなどではございません。魔物の脅威を払ってくださっただけでなく、セイ様の祝福された土地では樹々や植物が若返ったように成長し、作物の収穫量も増えております。それにセイ様が開発作製された薬や化粧品、料理なども、我々の生活に大きく貢献されました。国中の民がセイ様に感謝しているのです」

「……………」

その聖女様の『祝福』についての噂が流れている今、皆の前に出るというのは考えただけで恥ずかしい。でも本人が欠席というのもどうなんだろうと逡巡していると、使者さんがなかなか首を縦に振らない私に告げた。

「お顔を知られて外出しづらくなるという事のないよう、祝祭の間は認識阻害の魔法を付与したベールを着けていただく事になっております」

「そ、そうですか……ちなみにそのお祭りはいつ開かれるのですか?」

「三か月後を予定しております」

「三か月後……」

気持ちを整理するにはちょうどいいかもしれない。

「分かりました。よろしくお願いします」

 

 

祝祭の話を聞かされた数日後、リズが遊びに来てくれた。

「いらっしゃい、リズ!」

「お邪魔いたしますわ、セイ」

お茶の用意をしている庭に移動し、互いの近況を聞き合う。

他愛もない話に花を咲かせていると、いつしか話題が祝祭の話になった。

「聞きましたわよ、セイ。三か月後にあなたの為の祝祭が催されると」

「ああ、うん。あんな噂――噂というか事実なんだけど、こんなタイミングで開かなくてもいいのに」

溜め息を吐くと、リズがなだめるようにまあまあと手を振る。

「魔道師団にもお話が行っているとアイラも言っていましたわ。なんでも当日は警備に当たる事になっていて、“セイさんの事は私が守りますから!”と張り切っていましたわよ」

「そっか~、アイラちゃんが守ってくれるなら安心だね」

二人で笑い合ってから、リズがちょっと真剣な顔になる。

「ところで、今日は、セイにお願いがありますの」

「ん、なあに?」

「実はわたくし、想う方ができまして」

「ええ!? リズに!?」

「……ちょっとセイ。驚き過ぎではなくて?」

リズが少し拗ねたような表情で扇子を広げた。

――いや、だって、いつだって自分の気持ちよりも貴族の娘としての立場をわきまえ優先させているリズが、恋!?

「どうしてもその方の御心をこちらに傾けたいのです。そこで、セイに作っていただきたいものがあるのです」

「作るって、何を?」

「媚薬ですわ」

「媚薬!?」

また随分と強引な手を思いついたものだと思いつつリズを見ると、扇子で口元を隠しながら恥ずかしそうにそわそわしている。

いつもは凛としたリズのこんな表情、初めて見た。

――なんだか、可愛い♡

「分かったわ。引き受けたからにはもちろん全力で頑張るけれど、でも本当に作れるかどうかは分からないよ?」

ホッとしたように顔を緩めたリズが頷く。

「それで構いませんわ。それにセイが作るんですもの、きっととても効果があるものができますわ」

 

――どういうアプローチをしたらいいだろう……?

媚薬という事は、催淫作用のあるもの? それとも精力剤的なもの?

催淫作用――エッチな気分になるものなら、やっぱりそのひとが好きな香りをベースに作るのがいい気がする。

 

「ねえ、リズ。お相手ってどんな人?」

「それは……まだ秘密です」

「ええ~? 媚薬を作るのに必要なんだけど」

「そうなのですか? それなら仕方ありませんわね……あの方の好みは分かりませんけれど……でも、そう――ライラック」

「ライラック?」

「少し前にセイが旦那様にライラックの香水を作ってプレゼントして、とても気に入ってもらえたと話してくれたでしょう? あれがいいと思いますわ」

「え? なんで? まさかリズの想い人って――」

アルベルト様!?

ハッとしたリズが、焦って私の言葉を遮った。

「ち、違います、違います! あの、これはその――ご、 ご兄弟であれば好みも似ているのではないかと思って……!」

「兄弟って、まさか……」

リズが好きなひとって、アルベルト様のお兄様、宮廷魔道師団 副師団長のエアハルト様!?

あまりに意外なお相手に、確かにあの方なら媚薬くらい使わないと女性に興味を示すとは思えない、と納得してしまう。

「……じゃ、じゃあ、ライラックをベースにそういう効果があると聞いた事のある精油を合わせてみるね。そうだなぁ……ジャスミンとかローズとか……バニラとかちょっと香辛料を加えてみてもいいかも……あとは精力剤的なポーションも作ってみようかな。昔よく飲んでた滋養強壮剤みたいなものなら作れるかも……あ、それにエナジードリンクみたいにカフェインの入った覚醒作用のあるポーションなんていうのも新しいアプローチかも……?」

色々と考えていたら、だんだん楽しくなってきた。

リズのお願いを引き受けたのは、もちろん親友の恋を応援したい気持ちからだけど、やる事があると悩んでいる事を忘れていられるのもある。

ふと、リズがニコニコとこちらを見ている事に気付き、首を傾げた。

「どうしたの、リズ?」

「いえ……やはりそうして楽しそうにしているセイが一番だと思っただけですわ」

「うん、この間は変な相談しちゃってごめんね。あんな相談されてもリズだって困っちゃうよね」

「いいえ」

リズがふわっと笑う。

「話してくれて嬉しかったですわ。あのような悩み、本当に心を許している相手でも難しいはずですもの。それだけセイがわたくしを信頼してくれている証のようで嬉しかったです」

「リズ……ありがとう」

 

 

そんな訳で翌日早速、媚薬香水と媚薬ポーションの作製に取り掛かった。

まずは材料になりそうな素材をリストアップし、オスカーさんにお願いして商会で取り寄せてもらう。

それを待つ間、香水の調合をしてみてはアルベルト様に確認してもらい、いくつか候補を絞った。アルベルト様とエアハルト様の好みは違うかもしれないけれど、その辺りの事情を話す訳にはいかなかったので、“友人の為に作っているので協力してほしい”とだけ言って、彼の好みに作る事にしたのだ。

「……ああ、とてもいい香りだ――わたしはこれが一番好ましいと思う」

一番手応えのあった候補をアルベルト様が選んでくれて、心の中でガッツポーズをする。

これに魔力を込めれば、媚薬香水は完成するはずだ。

魔力を込めなければ普通の香水だから商会で売り出してもいいかもしれないと思い、今度オスカーさんに相談してみようと考えながら、お願いしていた素材の並んだテーブルを見回す。

「さて、次は――…」

 

色々と試行錯誤をしているうち一か月があっという間に過ぎ、祝祭まであと二か月となった頃、アルベルト様が遠征に出る事になった。

「すまない、セイ。祝祭の前に、黒い沼の発生した地域を実際に回り、改めて確認する事になってしまった。長く留守にしてしまう事になって本当にすまない」

「寂しいけれど、大丈夫です。やらなければいけない事もありますし。お帰りをお待ちしていますね」

「祝祭までには帰還する予定だが、その間はヨハンや兄上たちに様子を見に来てもらえるよう頼んである。困った事があれば力になってくれるはずだ」

「はい。こちらの事は心配せず、行ってきてください。体調や怪我だけはくれぐれも気をつけてくださいね。あ、念の為、万能薬も持っていって――」

アルベルト様が、ギュッと私を抱き締める。

「アルベルト様?」

「二か月もの間会えないのはつらいが、今は君がわたしの妻として待っていてくれるという確信があるから耐えられるよ」

私が待っているだけでそれが支えになると言うのなら、待つのだって悪くない。

「無事に帰ってきてくださいね」

「ああ、こんな素敵なひとが待っていてくれるんだ。必ず帰るよ」

しばらくそうしてお互いの温もりを感じ合ってから、アルベルト様がそっと囁いた。

「――ねえ、セイ。以前君が試作していた香水――あれをわたしにも分けてはもらえないだろうか?」

「構いませんけど……?」

「今夜あの香りを纏った君を愛して、香水を遠征に持っていけば、離れている間も君を近くに感じられるのではないかと思って」

一瞬、祝福の事がよぎったが、それよりも二か月もの間 離れ離れになる旦那様を励ましたい気持ちの方が勝った。顔を上げて頷く。

「はい……私も今夜は一緒に過ごしたいです」

「ああ、セイ――愛しているよ」

結局その夜は明け方近くまで愛され、王都に一晩中祝福が降り注いだ二日後、アルベルト様率いる王宮第三騎士団は遠征に出発した。

「覚悟しておいて? 戻ったら、会えなかった分もたっぷり君を愛するからね」という、とびきり甘くて熱い囁きを耳元に残して。

 

 

 

 

 

「セイ、とても綺麗ですわ」

「セイさん、今日は頑張ってくださいね」

「二人ともありがとう」

 

祝祭の日がやってきた。

お祭りは国中に知らされ、三日三晩かけて行われるそうだ。

私も前日から王宮に泊まり、朝からピカピカに磨き上げられ、聖女の正装を着付けられている。

祝祭の会場である広場は、この日の為に三か月かけて整備されたそうだ。

アルベルト様たちは旅程が遅れているらしくて結局間に合わなかったが、お祭りは三日もある。もしかしたら最終日までには間に合うかもしれないという事だった。

結婚してから二か月も会えないのは初めての事で、思った以上に寂しく、早く会いたくて仕方がない。

出発する為に階段を下りていくと、王宮の入り口でリズとアイラちゃんが出迎えてくれた。

「アイラちゃんは会場で私の護衛をしてくれるんだよね。よろしくね」

「あ、はい! すみません!」

「どうして謝るの?」

「いえ、あの……すみません……」

なんだか様子のおかしいアイラちゃんにリズが何かを囁いてから、こちらに顔を寄せてこっそり訊ねる。

「例のモノ、できまして?」

「うん。この箱に入っているけど……なんでこんなに大量に必要なの?」

「それはまた今度説明いたしますわ。ではお預かりしますね」

魔力をたっぷりと込めた媚薬香水の瓶と二種類の媚薬ポーションが入った箱をアシュレイ家の御者の人が重そうに馬車に積み込んだ。

リズはニコニコしながら私を会場へ向かう馬車へと押し込み、見送ってくれたが、なぜかアイラちゃんはとても申し訳なさそうな顔をしていた。

 

沿道にはたくさんの人が並び、笑顔で手を振ってくれていて、私も馬車の窓から手を振り返す。もちろん、認識阻害のベールを被った状態でだ。

会場に到着すると すでに大勢の人々が詰めかけており、広場の端には立派な石碑が建ち、その足元に屋根のある祭壇が作られて人々から捧げられたお花が飾られていた。

私の役目は祭壇で決められた時間に祈りを捧げ、できれば『祝福』をする、と聞いている。

祭壇の傍には控室としてテントが張られていて、まずはそこへ通されて開始の時間まで待つように言われた。

テントはしっかりと目隠しの布が下げられていて、人目のない事を確認した私はベールを上げてホッと息を吐く。顔が隠れているとはいえ、やはりたくさんの人たちの視線に晒されるのは緊張してしまう。

と、テントの外から声が掛かった。

「聖女様、警備の方が入ります」

「あ、はーい」

入ってきたのは宮廷魔道師団 師団長ユーリ・ドレヴェス様だった。

「セイ様、ごきげんよう」

「ドレヴェス様! 今日から三日間よろしくお願いします」

祝祭の間、宮廷魔道師団が会場の警護をしてくれる事になっている。

「では参りましょうか」

挨拶もそこそこにドレヴェス師団長が私の手を取り、なぜかテントの床に開いた穴から地下へと続く石造りの階段へと誘う。

「え!? どこへ行くんですか?」

声を上げると、彼は不思議な微笑みを浮かべて口元で人差し指を立てた。内緒、という事らしい。

――まあ、相手はドレヴェス様だし、このまま誘拐される、なんて事はないよね……

階段を覗き込むと中はしっかりとした真新しい造りで、足元を照らす明かりもついている。

思い切って足を踏み入れ、先に階段を下りていく師団長様の後をついていく。

「これ、どこに続いているんですか?」

「あなたの――聖女の魔力の源泉へと続いています」

「へ、へえ~…」

はぐらかされたと思いながらどんどん下りていき、地下二階くらいまで来たところで、扉に行き当たった。

扉の先は控室といった感じの小さな部屋で、その先にも扉がある。最初の扉と違って頑丈そうな扉だ。

重そうな扉を、ドレヴェス様が体当たりするように体重を乗せて開けた。

「どうぞ」

師団長様は、自分は部屋に入らずに扉の先の部屋を示す。

「入っても大丈夫なんですか?」

なんとなくイヤな予感を覚えながら開いた扉から奥を伺うと、聞き慣れた声がした。

「セイ?」

――アルベルト様の声!?

急いで部屋に入ると、まだ帰ってきていないはずのアルベルト様がベッドに四肢を枷で拘束されている。

「ええ!? これは一体―― !?」

何がなんだか分からないけれどとにかく助けなきゃと思い、ベッドに駆け寄る――と、ガチャンと重い音を立てて扉が閉じられてしまった。

「ちょっ!?」

慌てて扉に戻って取っ手を引いたがビクともせず、拳で叩く。

「ドレヴェス様!? ここを開けてください! これは一体どういう事ですか!?」

扉の上部についた羽目板がずらされ、師団長様の目だけが見えた。

「これからお二人には『祝福』の儀式をしていただきます」

「はい!?」

「セイ様の故郷では“××しないと出られない部屋”という儀式が存在するそうですね。我々はその伝統に従い、聖女の――セイ様の今後の為に、このような策を弄させていただきました」

「いや、儀式でも伝統でもないですから、それ!」

一体誰がそんな事――そう思った時、今朝私を送り出してくれたアイラちゃんが申し訳なさそうな顔をしていた事を思い出す。

「とにかく、このままだと祝祭にも出られませんし、困ります!」

「その点はご心配なく。この祝祭自体が今回の計画の一環ですし、陛下の承認も得ておりますから」

――何を承認してるんですか、王様!!

「計画って、なんの計画ですか」

ちらり、とドレヴェス様がベッドにいるアルベルト様に視線を送った。

「セイ様、夜に祝福の光が降り注ぐのを気にされて、彼との間に小さな溝ができているそうではありませんか」

「う……それは……」

「国王陛下以下、皆あなたの事を心配しているのですよ。だからこそあなたの幸せを願い、こうして策を弄した次第です」

「お話が見えないんですが……」

「この部屋で三日三晩 愛されるあなたの頭上の広場では、聖女の正装をした身代わりの者が祈りを捧げ、常に祭壇に姿を見せています。つまり、“降り注ぐ『祝福』の光が旦那様に愛されている証だ”という噂を否定する事ができるという訳です」

「そんな事――」

「身代わりの聖女役はよく似た体型の者を集め、認識阻害の魔法を付与したベールを着けて交代しながら常に祭壇にいるようにします。地面から下には声が漏れないように消音の魔法を掛けていますから、どれだけ声を上げても大丈夫です。ああ、そうそう――」

なんだかやけに楽しそうに、ドレヴェス様が声を潜めた。

「アイラ君からあなた方の故郷の知識を聞き出して、魔法を付与した玩具など睦事に使えそうなものを色々と作製してみましたので、ぜひ試して感想をくださいね」

「へ!?」

真っ赤になった私の顔を楽しむように眺めた師団長様がくすくすと笑う。

――それにしたって……

こんな計画、私ひとりの為にいくらなんでも規模が大き過ぎる。

「……どうしてそこまで?」

「さっきも言ったでしょう。皆あなたには感謝しているし、幸せを願っているのです。例えそれが真実なのだとしても下世話に噂され、そのせいであなたの幸せが壊されてしまうのは看過できないのですよ。それにわたし個人としても、聖女の魔力の源泉――愛の力のその先を見てみたいからですね」

そう言ってドレヴェス様は意味深な流し目で微笑むと扉の羽目板を下ろし、後はもう、消音の魔法の効果なのか何も聞こえなくなってしまった。

今聞いた話がぐるぐると頭を回って立ち尽くしてしまっていると、アルベルト様が遠慮がちに声を掛ける。

「セイ……?」

途端に、まだベッドに拘束されたままの旦那様の存在を思い出した。

「ああ! すみません、すぐに外しますね!」

枷を見ると、鍵が必要なタイプのようだ。

「鍵は、そこの壁に掛けられている」

アルベルト様の視線を追うと、確かに壁の鉤に分かりやすく引っかけられている。

枷を外し、解放された彼は、待ちきれなかったように私を抱き締めた。

「セイ……セイ、会いたかった――」

彼の匂いと温もりに包まれて、ようやく愛するひとに二か月ぶりに会えた実感が湧く。

「私も――会いたかったです、アルベルト様……」

部屋に、黄金色の光が漂っていった。

「二日前には王都に戻っていたのだが――陛下にご報告に上がったところを軟禁され、今朝早くここに連れてこられて拘束されてしまった」

「そうだ、枷のところ、赤くなっていましたよね。痛みはありませんか?」

「少し痛むが大丈夫――だけど、そうだな……」

アルベルト様が壁際にある大きな棚に並ぶ小瓶を見る。

「ポーションがあるようだから、君が飲ませてくれたらきっと、すぐに痛みも消し飛んでしまうと思うんだが」

改めて周囲を見回すと、シャンデリアが明るく照らす二十畳くらいの大きな部屋にはキングサイズの天蓋付きのベッドに立派な家具、料理や果物、お菓子に水やワインなどの飲み物などが用意されたダイニングテーブルなどが並び、居心地の良い雰囲気にここが地下だと忘れてしまいそうになる。

棚には私が研究所で作っているいつものポーションから、ディルドやバイブらしきもの、粘性の強い液体――たぶん潤滑剤的なやつ――に加えて、今朝リズに渡したはずの媚薬ポーションまで並んでいた。

つまり今回の件、リズも一枚噛んでいるという事だ。

――まったくもう……みんなおせっかいなんだから……

けれど、イヤな気持ちではない。

ポーションの小瓶を取り、栓を抜いてアルベルト様の口元に持っていくと、彼は「君が飲ませてくれないのかい?」と残念そうに上目遣いをする。

「え? だから飲ませようと――あ、え?」

――口移しでって事!?

恥ずかしかったが、二か月もの間 国中を回っていた彼を労いたい気持ちの方が強かった。

それにこうして甘えてくれる事が嬉しくて、瓶からポーションを口に含むと、そっとアルベルト様の顔を上に向けて唇を重ねる。

こぼれないよう少しずつ口の隙間からポーションを流し込むと、彼はそれを美味しそうに飲み込み、微笑んだ。

「君が作るポーションは効き目だけでなく美味しさも他のものとは違うのだが――こうして飲ませてもらうと数倍美味しい」

「もう……こんな事で喜んでいただけるなら、いくらでもしますよ?」

「うん……いや」

いや?

「わたし以外には、しては駄目だ」

「し、しませんよ!?」

「いいや、君は例えわたし以外の人間でも、目の前に意識のない怪我人がいれば、こうしてポーションを口移しで飲ませるだろう――わたしに、そうしてくれたように」

そう言ったアルベルト様は、ちょっぴり苦笑いする。

「本当に、わたしは心が狭いな。こんな事では君に嫌われてしまうだろうか」

「嫌うなんて、そんな事ある訳ないです! むしろ私の方こそこんなに素敵な旦那様と結婚できて幸運だったというか――」

「幸運だったのはわたしの方だ。君と出会う事ができたのだから」

二人で顔を見合わせ、やがてどちらともなく吹き出す。

「……ねえ、セイ。先程のドレヴェス師団長の話――実は聞こえてしまったのだけど」

「あ、あー……聞こえちゃいました?」

バツが悪くて頬を掻くと、彼は私の手を取った。

「わたしも、とてもよい案だと思う。何よりわたし自身、君を抱きたくて仕方がない」

いつになく直球で迫られ、顔が熱くなってしまう。

「アルベルト様……」

「二か月もお預けされたんだ。たっぷりと君を感じさせて――味わわせて」

 

 

淡白そうな雰囲気のアルベルト様だけど、エッチは優しいながらも結構激しいし、実は絶倫だったりする。

そして二か月間の遠征では常に部下たちの視線があって自慰すらままならず、禁欲を強いられていたらしい。

おそらく、それも計画の一環だったのだろう。

「んっ……っ♡」

しっかりと抱き締められた腕の中でする久しぶりのキスは、溶けてしまいそうに情熱的で、頭の芯が痺れてしまう。ぬるぬると絡められる舌の感触に気を取られているうちに、いつの間にか私は身に着けていたローブを脱がされ、下着だけにされていた。

まだキスだけなのに、部屋にはもう金色の光が満ちている。

――時間的にはもう祝祭が始まっている頃なので、おかしくはないはずだけれど……

アルベルト様が私の心を見透かしたように囁いた。

「セイ、今はわたしに集中して」

「あ……はい」

「わたしの服も、脱がせてくれる?」

「は、はい」

言われるがままボタンを外し、シャツをはだくと、私がプレゼントしたネックレスが胸元で揺れる。

「嬉しい……着けていてくださったんですね」

「もちろん。遠征中は肌身離さず着けていたよ。それにあの香水も眠る前には必ず枕元に垂らして、君を感じながら眠りに落ちていた」

――そうだ、香水……

リズに渡したはずの媚薬ポーションがあるという事は、アルベルト様に渡したものと同じ香水に魔力を込めた媚薬香水もここにあるはずだ。

「ちょっと待っていてください」

棚に行き、目当ての瓶を見つけ、ついでに媚薬ポーションも取り上げてベッドに戻る。

「それは?」

「アルベルト様に差し上げた香水に魔力を込めて作った、媚薬です」

「媚薬? ……まったく――」

苦笑交じりにアルベルト様が嘆息した。

「君の魔力は万能だな」

「あはは……」

リズに頼まれなければ作るどころか考えもしなかった媚薬だけれど、おそらくこれも、祝祭計画の一環なのだろう。だって、三日三晩も『祝福』しなければいけないのだから。

 

師団長様の話を聞いた時は、突然の事だったのと戸惑いでとても受け入れられないと思った計画だけど、こうして大好きな旦那様に抱き締められ、落ち着いて考えてみると、悪くないように思えてくる。

私が我慢するしかないのだと、自分の気持ちに折り合いをつけようとしてきた日々をようやく終わらせる事ができるのだ。

ならばもう、何も考えず、愛するひととのエッチに溺れてしまおう。

今だけは、こうして辺りに漂う祝福の光を気にしなくてもいいのだから。

 

「アルベルト様、これを飲んでください」

「このポーションは?」

「こっちが精力剤――滋養強壮の効果と“あっち”が元気になる効果があります」

「あっち……?」

首を捻ったアルベルト様が、何を指しているのかに気付いて赤くなる。

「う、うん……それは明日以降に使わせてもらおうかな」

「で、こっちが覚醒作用――神経を興奮させて眠気を覚まし、高揚させる効果のポーションです」

「ほお」

興味深げにポーションを眺めたアルベルト様に、ついこの二か月の成果を語ってしまう。

「以前一緒に飲んだコーヒーにはカフェインという成分が含まれていて、眠気覚ましや興奮する作用があるんですけど、そこから思いついたのが――」

「セイ」

「いずれはこの二つのポーションをひとつにしたいと考えていますが、少し時間が足りなくて――でも作っている時、手応えはあったので――…」

「セイ」

少し強めに呼ばれて、言葉を切った。

「は、はい」

「確かに凄いものができそうだし、そうやって薬の事を話す君を見るのは好きなのだが――今はわたしだけを見て、わたしの事だけ考えて」

「えっと……ポーション、いらないですか?」

「今日のところは必要ない。二か月禁欲した男の性欲を舐めないでもらいたいな」

その言葉でつい視線を落とすと、ズボンの前がはち切れそうに主張している事に気付いた。

――あ、アルベルト様、もう勃ってる……

嬉しいという気持ちが湧き上がるのを抑えられない。

――いつもは恥ずかしくてこんな事できないけど――今日は特別だよね

手を伸ばし、ズボンの上からスリスリと彼の股間をさすった。

「セイ!?」

「私だって、アルベルト様に愛してもらえるの楽しみにしていたんです。今日は、私にさせてください♡」

 

 

 

「セ、セイッ――ぅああっ♡」

――セイが――わたしの可愛い妻が、愛おしそうに陰茎を舐め回している――…

真面目で恋愛に疎い彼女は、結婚後の夜の営みもとても恥ずかしがり、寝室の照明を落とした薄明りの中でもあまり顔を見せてくれない。

けれど今、目の前の彼女は恥ずかしそうにしながらも、シャンデリアが明るく照らす部屋で積極的に口淫をしてくれていた。

じっくりと根元から先まで舐め上げ、裏筋を擦り、カリ下を舌先で弾き、亀頭をぺろぺろと舐める。

愛おしい妻の淫らで積極的な様子に、これは長い禁欲が見せている夢なのではないかと思ってしまう。

と、セイが心配そうにこちらを見上げた。

「もっとこうして欲しい、とかありますか? 初めてなので、教えていただきたいです」

「ああ、セイ、とても上手だよ。でもそうだな、その――セイが嫌でなければ、口に咥えてもらえないだろうか」

「はい♡」

微笑んだセイが口を開け、ぱくりと亀頭を含む。

温かな口内に包まれ、ぬるぬるとした舌が当たる感触だけで達してしまいそうになった。

「いいよ、セイ、そのまま口の中で舐め回して――ああっ♡ そう、そこ――ああぁっ」

希望通りに舌を蠢かし、吸い、美味しそうに肉棒を頬張ってしゃぶるセイに、簡単に果てるような情けない姿は見せられないという小さな男のプライドが砕け散る。

「ああ、セイ、もう出るっ! 口を離して――」

けれどセイはむしろ深く咥え込んで吸い絞った。

「っあ――くうぅッ」

ビュルルッと勢いよく彼女の口に精を放ち、大きく喘ぐ。

「すまない、すぐに吐き出して――」

慌てるわたしを見てセイは微笑むと、コクン、と喉を鳴らした。

「え……?」

「……飲んじゃいました♡」

そう言ってから少し苦しそうに咳き込む。

「セイ!?」

「大丈夫です。アルベルト様のすっごく濃くて、喉なかなか落ちていかなくて……まるで喉の奥までアルベルト様のものだとマーキングされちゃったみたい……♡」

愛おしさと征服欲と背徳感をごちゃ混ぜにしたような感情が身体を走り、陰茎に血が集まっていくのを感じた。

「本当に二か月も我慢してくれていたんだと分かって、嬉しいです♡ だからアルベルト様の、全部私に注いでください♡」

「ああ、もちろんだ。最後の一滴まで君に注ぐから、全て受け止めて――♡」

 

 

セイにプロポーズをし、受け入れてもらえた瞬間、彼女から溢れた祝福の光は王都中に降り注いだ。

そこで初めて、彼女がわたしを想ってくれていた事、そしてその想いこそが聖女の力の源なのだと知り、喜びと共に改めて彼女を幸せにする事を心に誓った。

けれど彼女は、その聖女の力のせいで自分の気持ちを偽る事ができない。

睦む度にセイから溢れ出る金色の光は、わたしへの愛の証明であるのと同時に不安の種となってしまった。

いつかわたしがどんなに愛を捧げても、彼女から光が溢れなくなる日が来るかもしれない――そんな事を考えてしまう自分が嫌だった。

聡明なセイもきっと気付いているだろうが、優しい彼女の事、できるだけ表に出さないように気を遣っているようだ。

そしてそこに最悪のタイミングで、夜に降り注ぐ祝福の光についての噂が流れた。

芽吹いた不安を助長し、愛する行為を好奇の目に晒すようなその噂のせいで、わたしと彼女との間には小さな溝ができ、彼女から寝室を分けたいと申し出るまでになってしまった。

この状況を打開したいといくら考えても、自分の考えを押し付けるような案しか出てこず、できる事といえば噂など気にしていないふりをし、ただこれまで通りに振る舞う事だけだった。

そんな折に命じられた、セイが浄化した土地の調査の為の遠征は、自分の気持ちと向き合うよいきっかけとなった。

まるで彼女と過ごした日々を確認していくような二か月の間、行き着く結論はひとつだった。

わたしは――…。

 

「セイ、わたしは君を離す気はない。例え君がわたしに愛情を感じなくなって、君から祝福の光が溢れなくなったとしても、わたしから離れていくなんて事、決して許さないよ」

 

 

 

アルベルト様は私をベッドに押し倒すと、枕を腰の下に入れて脚を開かせ、いつもは絶対に見せない秘部を露わにした。

「やっ――見えちゃうっ、こんな明るいところで――この格好イヤぁ、アルベルト様っ」

――いつもならこんな強引な事、しないのに――

「見たいんだ、君の全てを――それにわたしが愛しているところも見てほしい」

太ももの内側にキスをしたアルベルト様が下着に手を掛ける。ゆっくりと下ろされていく下着と秘部との間に糸が幾筋も引いて垂れ落ちていった。

「君は触れられる事をとても恥ずかしがるのに、ここはいつもたっぷりと濡れてわたしを受け入れる準備をしてくれていて、本当に可愛い」

自分のものよりも太く長い指が膣穴に入ってくる感触に、ゾクゾクと腰が震える。

アルベルト様はじっくりと膣内を探るように指を抽送してから引き抜き、愛液のたっぷりと絡まる指を舐めた。

「ああ、セイの蜜は、どうしてこんなに甘酸っぱいいい香りがするのだろう―― 一晩中だって舐めていられるよ」

そう言って太ももの間に屈んだアルベルト様が上目遣いで私を見る。

「こっちを見て、セイ。わたしが君を可愛がるところ、ちゃんと見て。目を逸らさないで」

アルベルト様は私を見つめたまま、秘部へと舌を伸ばした。

誰にも見られた事のない場所をまる見えにされて顔を近づけられるだけでも恥ずかしいのに、舌をぬるぬると擦りつけられ、愛液を舐め取られ、まるでキスでもしているかのように唇で覆い、吸われる。

綺麗な顔が愛液まみれになるのも構わずに自分の性器に顔をうずめるアルベルト様の様子に、言われたからではなく目が離せない。

「は♡ どんどん溢れてくるね、セイ♡」

「あ……っ……んっ………♡」

お腹の奥が痛いくらいに疼きだし、声が勝手に漏れ出てしまう。

「君はいつも恥ずかしがってさせてくれないけれど――こんなに悦んでくれるなら、もっと早くすればよかったな」

顔を上げた彼の舌先にトロッと愛液が糸を引き、その愛液を擦りつけるように、被っている皮から顔を出したクリトリスを舐め上げた。

「んああぁぁっ♡」

「ああ、いいね、セイ。もっと声を出して――喘ぐ声、聞かせて。ドレヴェス師団長が消音の魔法が掛けてあると言っていただろう? どんなに声を上げても外に聞こえる心配はないのだから」

――外――…

その言葉で、頭上では祝祭の為に集まった人々がいるという事実を思い出し、その足元でこんなにも下品なポーズで恥ずかしい部分を晒して舐め回されているのだと気付いた瞬間、背筋に何とも言えない震えが走り、タガが外れた。

「好き♡ 好きっ♡ 気持ちいいっ♡ アルベルト様ぁっ♡」

「ここが好きなんだね、セイ。たくさん可愛がってあげるからね」

指でクリを剥き出し、舌先でチロチロと弾く。

「ふふ……セイの陰核は君の人柄そのままに控えめで愛らしいね。でもわたしの前ではもっと主張してくれていいんだよ♡」

そう言って、まるで吸い出して突出させようとでもするように強く吸い絞った。

初めてのクンニのくすぐったいような気持ちよさで、漏らしてしまいそうな感じが込み上げてくる。

「あ、ま、待って、アルベルト様っ、何か出ちゃいそうで――」

「いいよ、セイ。そのまま出して」

「ええ!? だ、駄目ですっ! 絶対駄目!!」

いつもであれば私が嫌がれば無理強いはしないのに、今日のアルベルト様はとても強引だ。

そしてそんな彼にゾクゾクしてしまっている自分がいる。

「本当に――駄目です、漏らしてしまいそうで――」

「構わないよ。君は気持ちいいのを少し我慢してしまう感じがしていたから。そのままわたしの愛撫に身を任せてみて。もし漏らしてしまったなら、あっちに浴室もあるそうだから」

「え、そうなんですか?」

「今朝ここに連れてこられた時、浴室やトイレ、簡単な調理場などもあると言われたんだ」

「でも――」

「セイ、この三日間はお互い素直になって、これまで我慢していた事、遠慮してできなかった事、全てをさらけ出し合って、うんと淫らに過ごさないか?」

「……どうなっても知りませんよ?」

「いいよ。どんな事も、やってみなければ分からないのだから」

「でも本当の私をアルベルト様が知ったら、幻滅してしまうかも」

「いいね、本当の君をわたしに見せてくれるんだね」

「……本当は私、とってもエッチなんです」

「うん?」

「こんな風に強引にいやらしいポーズをさせられて興奮しているし、さっきフェラ――口淫をしていた時も、アルベルト様の雄の匂いとか精液を飲んでいる自分にゾクゾクしていて、会えなかった間も毎日あなたのベッドで自分を慰めていたんです」

「わたしを想いながら、してくれていたのかい?」

「そうです。いっぱいいやらしい事をされる妄想をしながら――」

「ならこの三日間は、それを全部しよう」

聖女としての私をずっと近くで見ていたアルベルト様にはどうしても見せる勇気の出なかった私のいやらしい一面を聞いたのに、彼はなんだか嬉しそうにしている。

「……幻滅しないんですか?」

「むしろ光栄だよ。君のそんないやらしい部分を知っているのはわたしだけなのだから」

こんなにも愛してくれる旦那様を前に、私の方がもう我慢できなかった。

秘部を広げて、はしたなくねだる。

「では、あの……アルベルト様の逞しいおちんちんで、私の事、滅茶苦茶に突いてくれますか♡」

アルベルト様がゾクッと震えたのが分かった。

「……どこでそんないやらしい誘い文句を覚えたんだい? わたし以外に使う事は絶対に許さないからね」

彼はガチガチに勃起した陰茎の根元を持ち、愛液をたっぷりと纏わせてから一気に膣穴を貫く。

「んああぁぁあぁっ♡ 凄い! 凄いぃ♡ アルベルト様の太いので満たされるの好きっ♡ 滅茶苦茶にしてっ♡ 滅茶苦茶に突いてっ♡」

「お望みのままに」

アルベルト様が少し乱暴に腰を打ち付け始めた。いつもの私の様子を確認しながらの抽送ではなく、愛おしさを一方的にぶつけるような腰振り。

けれど、それがむしろ貪られているようでゾクゾクと身体を痺れさせる。

「アルベルト様っ♡ アルベルト様ぁ♡」

「セイ、わたしの事は“アル”って呼んで」

「アル♡ もっと♡ もっとぉ♡」

「もっと、どうして欲しい?」

「いやらしくえぐって♡ ぐちゃぐちゃに掻き回して♡ 奥突いてっ♡」

「は♡ 可愛いよ、セイ♡ そんなに乱れるの、初めてだね♡」

「アルがいやらしい私でも受け入れるって言ってくれたから♡ 気持ちいいの、止まらない♡ 止まらないのっ♡」

「普段の君からは考えられない、涙と唾液をこぼして悦ぶその顔――最高にいやらしくて可愛いよ♡」

「アルの――奥にキスする度、背中と頭がふわってする♡」

「ここがイイんだね♡ 分かるよ、先に吸い付いて――この奥に出してと誘っている♡」

「アル♡ アルぅ♡ もう、私――♡」

「わたしもだよ、セイ♡ 出すよ、君の奥にっ」

「出して♡ アルの熱い精液、奥にいっぱい出してっ♡」

腰をしっかりと掴んだアルが、ズンッと奥へと突き上げたまま息を詰めて食いしばると、お腹の奥に温かいものが広がっていく感じがした。

アルは少しでも奥へと精液を流し込もうと、射精しながら腰をゆすって子宮口へと亀頭を嵌め込む。

同時に絶頂した私も、気持ちよさがいつまでも続くような長くて深いオーガズムで指先まで痺れて身体に力が入らないのに、膣内でビク、ビクと脈打つ陰茎が硬いままなのを感じていた。

「困ったな……君が可愛過ぎて、全然治まらない――…♡」

 

祝祭の宴は始まったばかりだった。

 

 

 

 

 

 




…そしてこの後三日三晩、ポーションと媚薬ポーション、アイラちゃんプレゼンツ師団長謹製の性玩具を駆使して、二人はヤリまくります。噂もなくなります。夜中に祝福が降り注いでも、”聖女様が祈りを捧げているのだな”と誤解してくれます。ハッピーエンドです\(^o^)/
アニメ最終話の両想いで祝福の光が降り注ぐのを見て、”Fin”どころか”これから大変だな、この二人”と思って終わったんですが、ふとその後を書きたくなってしまいました。あと、聖女の魔力が万能なら当然媚薬作るでしょ!というノリもありました。
キャラ絵が綺麗でとりわけ表情の表現がよくて、あと、リズのドレスの配色がめっちゃ好みでした♡

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