※この作品はR-18です。

オルガ・コード・ゼノ(OCZ)   作:XYZ_L

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OCZ『赤錆色の監査(オーディット)』3. 冷たい部品

3. 冷たい部品

CEU兵舎のドアが閉まると、あの澱んだ熱気と酸っぱい匂いが遮断され、再び基地の無機質な通路の空気が肺を満たした。

一行は、パルスマシン用のオルガコア保管庫へと向かう。

 

「……ご案内いたします、監査官閣下」

 

マイルズ司令官の額に、脂汗が滲む。

 

数分後、一行は基地のさらに深部、厳重なセキュリティゲートの前に立っていた。

CEU兵舎とは異なり、ここは徹底した温度管理と無菌化処置が施され、冷たい消毒液の匂いだけが漂っている。

 

ゲートが開き、冷気が霧のように溢れ出した。

 

そこは、巨大な倉庫だった。

しかし、棚に並んでいるのは弾薬や食料ではない。

 

「……!」

 

護衛の伍長が、再び息を呑んだ。

壁一面に、金属製の巨大なラックがそびえ立ち、そこには無数の「密閉カプセル」が、まるで巨大なサーバーラックのように整然と並べられていた。

 

カプセルは直立型だ。

強化ガラスの向こうには、生命維持液の微かな気泡の中で、一体ずつ、全裸の女性が浮かんでいる。

 

彼女たちは皆、虚ろに目を開き、金属のフレームで手足と腰を固定されている。

その肌は青白く、人間的な生気は感じられない。

 

その股間(オマンコ)にはパルスマシンの動力源となる「極太のエネルギー抽出チューブ」が、そして臀部(アナル)には栄養液の供給と排泄管理を同時に行う「生命維持ポート」が、無慈悲に接続されていた。

 

「当基地のオルガコアは、現在、稼働待機中が32体。メンテナンス中が8体。合計40体を常備しております」

 

マイルズ司令官が、まるで工業製品の在庫を報告するように説明する。

セレスティーナは、その光景に一切の感情を見せず、カプセルが並ぶ通路をカツ、カツ、と歩き始めた。

 

彼女の視線は、カプセルのガラスの向こう側にある「人間」には向けられていない。

彼女が見ているのは、カプセルの下部に表示される識別コードと、手元のデータパッドに映る「稼働ログ」だけだ。

 

「……ID: C-204。稼働率低下。前回の戦闘から復帰後、エネルギー効率が7%低下しています。原因は?」

 

「そ、それは……旧式のフィルターでは除去しきれない、微弱な精神的ノイズ(スクリーム)の蓄積かと」

 

ピシッ。

 

セレスティーナが歩みを止めた。

彼女が視線を向けたカプセルの中で、裸の女性の身体が、まるで感電したかのように小さく痙攣した。

 

「……んぅ……」

 

自我を破壊されたはずの唇から、意味をなさない吐息が漏れる。

 

「……メンテナンス・パルスです」

 

司令官が慌てて付け加える。

 

「コア機能の維持のため、AIが定期的に最小限の刺激を……」

 

「規格外の“揺らぎ”ですわね」

 

セレスティーナは、データパッドを静かにタップした。

その動作一つで、カプセルの中の女性は「要交換(廃棄推奨)」というタグを付けられた。

 

「……この個体は廃棄なさい。戦場でノイズを撒き散らすだけの不良品を、これ以上維持するコストが無駄です」

 

「は、はい……!」

 

レベッカが、カプセルの一つに指先を這わせ、ふっと息を吐いた。

 

「……生身の連中(CEU)よりは、よっぽど清潔に“管理”されてるみたいね」

 

ガラスの向こう側で、自分とそう変わらない年頃の女が、モノとして浮かんでいる。

元エースパイロットである彼女にとって、それは「あり得たかもしれない未来」の姿でもあった。

 

伍長は、CEU兵舎の生々しい地獄とは異なる、この冷たく、清潔で、完璧に管理された地獄に、ただ立ち尽くすしかなかった。

 

「……監査は終了です。司令官、ブリッジへ案内なさい」

 

セレスティーナは、まるでワインセラーの視察を終えたかのように踵を返し、冷たい保管庫を後にした。

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