※この作品はR-18です。

オルガ・コード・ゼノ(OCZ)   作:XYZ_L

2 / 22
人類が、ゼノ・ブルードと未知との遭遇を果たした、初期の頃の記録のようですね。


OCZ『残響、あるいは苗床』
OCZ『残響、あるいは苗床』1


私の名前はリナ。17歳。

このプロキシマ・ケンタウリ系第4惑星「テラ・ノヴァ」の小さな開拓コロニーで、オルガマシンのパイロット訓練生をしている。

 

オルガマシンは、女性の性エネルギー(オルガエネルギー)を燃料とする巨大兵器。

私は、そのパイロット訓練生。…と言っても、このコロニーにあるのは、旧型のがらくたみたいな機体がたった一つだけ。

本当の脅威なんて、誰も想像していなかった。

あの日までは。

 

すべては、聖暦2055年、10月23日。

外がいつものように赤茶けた砂嵐に覆われていた午後に始まった。

 

「キィィィィ…!」

 

耳障りな警報が、コロニーの全区画に鳴り響いた。

スピーカーから流れる音声は、ノイズ混じりで、ひどく狼狽えていた。

 

『緊急警報! 居住区画、第3ゲートより…コード:キメラ、侵入! 繰り返す、コード:キメラ侵入!』

 

『住民は直ちに中央シェルターへ避難! 自衛隊は第2防衛ラインまで後退せよ!』

 

「リナ!」

 

ヘルメットも着けずに飛び込んできたのは、右腕と両脚を機械化した、サイボーグ兵である兄のタカシだった。

彼の顔は、生身の部分が青ざめている。

 

「先にシェルターへ行け! 俺たちはここで食い止める!」

 

「キメラって何!? 連合のリストにもなかったわ!」

 

「分からん! だが、ヤバい! 第3ゲートが…『こじ開けられた』!」

 

タカシの言葉に、全身の血が凍る。

あのゲートは、オルガマシンが通るための分厚い隔壁。

爆薬でもなければ開かないはずだった。

 

彼は私の背中を強く押し、仲間たちが待つ防衛ラインへと走っていく。

 

「タカシ!」

 

叫び声は、けたたましい銃声に掻き消された。

 

私は、他の非戦闘員たちと一緒に、シェルターへ続く通路を必死に走った。

 

壁に取り付けられた監視モニターが、一瞬だけ、兄たちがいる第2防衛ラインの様子を映し出す。

 

「な…に、あれ…」

 

モニターの向こう。暗い通路の天井や壁を、信じられない速さで這い回る「黒い影」がいた。

濡れたように艶めく、2メートルはあろうかという異形の生物。

 

『撃て、撃ち続けろ! 怯むな!』

 

タカシの仲間であるサイボーグ兵たちが、アサルトライフル(7.62mm)を連射する。

火花が「影」の外殻に弾かれるが、まるで意に介していない。

 

『機関砲、撃て! 20ミリで吹き飛ばせ!』

 

通路の奥に設置された機関砲座が火を噴き、轟音と共に曳光弾が「影」を追う。

けれど、「影」は人間では不可能な角度で跳躍し、弾丸を回避する。

 

そして、一瞬。

機関砲のリロードで射撃が止まった、ほんの0.5秒にも満たない隙。

 

「影」は壁を蹴り、砲座へと一直線に飛びかかった。

モニターに映ったのは、鋼鉄の砲身が、まるで紙細工のように引き裂かれる光景。

 

そして、サイボーグ兵の機械の腕が、宙を舞った。

 

『ぐ、ぁああああっ!』

 

『タカシ! 後ろだ!』

 

ノイズと共に、モニターが暗転する。

その直前、私が見た最後の映像は、兄のタカシが持っていた12.7mmの対物ライフルが、「影」の爪によって、中央からへし折られる瞬間だった。

 

「…あ…」

 

声にならない悲鳴を飲み込み、私はシェルターに転がり込んだ。

数人の女性と子供、そして老いた男性整備士が数人。生き残りは、それだけだった。

 

分厚いチタン合金の防爆扉が、重たい音を立てて閉鎖される。

このコロニーで、最も安全な場所。

 

私たちは、息を殺して、固まって震えていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。