5.
【 孵化まで、残り 1時間 】
その時だった。
私を抱えていたライダーが、ビクン、と動いた。
休眠状態から、覚醒したのだ。
(…なに?)
ライダーは、ゆっくりと立ち上がった。もちろん、アナルに杭を挿したままの私を、抱えたまま。
「それ」は、シェルターの分厚い扉を、じっと見つめている。
キィィィン…
遠くから、音がする。
扉の向こう…コロニーの外からだ。
オルガマシンの、高周波エンジンの音。
…救援? 連合の、救助部隊…?
(だめ…!)
(来ちゃダメだ…!!)
私の心が絶叫する。
ここに来ても、助からない。
ここにいるのは、「苗床(わたし)」と、それを守る最悪の「騎士(ライダー)」だけなのだから。
ライダーの体から、ゴゴゴゴ…と、地響きのような唸り声が漏れ始めた。
アナル(神経)の杭を通じて、凄まじい量の「支配パルス」が私の体に流れ込んでくる。
(やめて…!)
私の意思とは無関係に、私のオマンコ(性エネルギー発生源)が、あの惨劇の夜と同じように、強制的に「オーバーロード」させられていくのが分かった。
体が、熱い。
あの時、仲間たちを虐殺するために使われた「燃料」が、今、私の体内で再び、満タンにされようとしている。
ライダーは、私という「生体バッテリー」を抱え、扉の向こうの「新しい脅威」を迎え撃つために、その黒い爪を、ギチリ、と鳴らした。
ドゴォォン!
扉が、外から爆破された。
土煙と閃光の中、ライダーは私を抱えたまま、エネルギーの奔流を解放して飛び出した。
シェルターの外で響く、数秒間の絶叫。
『な、なんだ、こい…』
『ぐああっ! コックピットが!』
『やめろ、リナ! なぜだ!』
ああ…コロニーの、あの旧型のがらくた(オルガマシン)だ。
生き残りのパイロットが、私を助けに…?
ガギィン!
金属が引き裂かれる、耳障りな音。
そして、静寂。
すぐに、「それ」は私を抱えたままゆっくりと踵(きびす)を返し、再びシェルターの暗闇の中へと「戻った」。
返り血(オイル)を浴びた黒い外骨格で、再び私をシェルターの隅に固定する。
脅威は、排除された。
これで、もう邪魔は入らない。
私のエネルギーで、助けに来てくれたかもしれない、最後の人たちが、殺された…。
(…もう、いい…)
意識が、朦朧としてきた。
子宮が、張り裂けそうに熱い。
オマンコの奥で、「それ」が身じろぎしているのが分かる。
もうすぐだ。
もうすぐ、この悪夢は、次の悪夢に「孵化(ふか)」する。
6.
【 孵化(ゼロ・アワー)】
その瞬間は、突然訪れた。
(あ…いや…)
それは、「予感」だった。
私のオマンコ…その遥か奥深く、「子宮」の中で、72時間かけて培養されてきた「何か」が、「完成」してしまったという、おぞましい実感。
次の瞬間、内側から爆発するような激痛が、私を貫いた。
それは、出産の「陣痛」のような、波のあるものじゃない。
まるで、私のオマンコの奥の行き止まりを、内側から「ドリル」でこじ開けられるような、肉が引き裂けていく、鋭い痛み。
「―――――ッ!!」
声なき絶叫。
産卵の時に無理やり押し広げられたのとは、訳が違う。
「それ」は、もう「卵」ではない。
完成した「生物」として、私の狭い産道を、力ずくで、破壊しながら突き進んでくる!
膣壁が、内側から裂けていくのが分かる…!
その、あまりの激痛の直後。
72時間、私をアナルから支配し続けていた「神経の杭」が、ス…と引き抜かれていく感覚がした。
同時に、私を抱えていた「親」のライダーの拘束が、ふっと緩む。
見ると、「それ」は、すべてのエネルギーを使い果たしたかのように、黒い外骨格のまま動かなくなっていた。
役目を終えて、「死亡」したのだった。
「…かは…っ、ぁ…っ!」
3日ぶりに、自由を取り戻した私の体。
でも、動かない。
麻痺が解けた途端に襲ってきたのは、自分のオマンコ(産道)が、内側から物理的に「破裂」させられているという、絶望的な現実の痛み。
流れ出るおびただしい量の血液が、シェルターの冷たい床に溜まっていく。
私は、死ぬ。
この「出産」で。
でも、その前に、見てしまった。
血の海と化した私の股間…原型を留めないほど引き裂かれ、広げられた私の「オマンコ」から、ぬるり、と。
血まみれの、小さな「それ」が這い出てくるのを。
「親」をそのまま縮小したような、完璧なフォルムの、生まれたばかりの「子ライダー」。
「あ…ぁ…」
私が、産んだもの。
私の体液とオルガエネルギーを吸って育った、私の「こども」。
それが、目の前にいる。
子ライダーは、血糊(ちのり)の中からゆっくりと体を起こし、そして、私を見た。
瀕死で横たわる、自分が出てきた「穴(わたし)」を。
目が、合った。
(やめて…)
私は、何を期待したのだろう。
産んでくれてありがとうと、言ってほしかった?
馬鹿みたい。
その小さな怪物の目には、何の感情も、何の認識もなかった。
私は、「母親」ではなかった。
ただ、孵化(ふか)を終えた「抜け殻」であり、「培養槽(インキュベーター)の残骸」でしかなかったのよ。
子ライダーは、私を一瞥すると、もう一切の興味を示さなかった。
「それ」の本能は、既に「次」を求めていた。
生まれたばかりとは思えない、俊敏な動きで、子ライダーは私の体を「障害物」として乗り越えた。
そして、救援隊(犠牲者)が爆破していった、あのシェルターの扉の「穴」に向かって、一直線に走り出した。
(あ…だめ…そっちには…タカシ…)
私の声は、もう出ない。
私は、自分が産んだ「絶望」が、コロニーの残骸の向こう…まだ生き残りがいるかもしれない「外の世界」へと解き放たれていくのを、ただ、見ていることしかできなかった。
(タカシ…)
大量の血が、体から流れ出ていく。
寒い。
でも、不思議だった。
あの怪物が走り去っていく最後の光景を、その目で見届けるまでは… …私の意識は、まだ、この冷たいシェルターの床に、確かに繋ぎ止められていた。
エピローグ:抜粋(機密資料)
【U.L.A. 戦術分析局 - 症例報告】
識別コード:ハック・エコー (Hack Echo) - 精神的・行動的後遺症
概要:
「ハイドラ・ジャック」あるいは「苗床(N.G.P.)」の状態から、奇跡的(あるいは、戦術的価値から意図的)に生還・回収されたパイロット(サンプル)に見られる、回復不可能な精神的・肉体的汚染を指す。
主な症状:
アナル・インターフェースへの固執:
「神経の杭」による脊髄支配の残響(エコー)。サンプルは、アナル(直腸)への物理的な「挿入」と「圧迫」に対し、異常な受容反応、あるいはそれを求める禁断症状を示す。これは、ライダーによる「支配」の感覚を、脳が誤って「安定」として記憶した結果と推測される。
オルガエネルギーの漏出(リーク):
「強制オーバーロード」の後遺症。サンプルは、戦闘時以外の状況(日常的なストレス、あるいは前述のアナル刺激)においても、オルガエネルギーを無差別に漏出させるようになる。
『脅威』への敵対反応:
最も危険な症状。サンプルは、ライダーの「苗床防衛本能」の一部を継承(インプリント)してしまう。
自らを「苗床」と誤認し、周囲の人間(特に男性)を「排除すべき脅威」と認識する。回収されたサンプルが、医療スタッフ(男性)に対し、拘束を振りほどいて攻撃を試みた事例が報告されている(症例 3-B)。
結論:
「ハック・エコー」は、オルガマシン・パイロットが「人間」から「苗床(の抜け殻)」へと、不可逆的に変質したことを示す。
現在の医療技術での「治療」は不可能である。
生体サンプルとしての価値(対ゼノブルード抗体の研究等)が認められない限り、すべての回収サンプルは、連合規定に基づき、即時「廃棄指定(焼却処分)」とする。
ステータス(テラ・ノヴァ / サンプル 01-R):
……回収待ち。バイタル低下。
廃棄指定、実行猶予 0.5時間。