【完結】もし衛宮士郎がメディアリリィを拾ったらというお話 作:ふりかけ@木三中
アーチャーの音速の剣戟が空気を切り裂くようにして俺の身に迫る。
繰り出される一撃は明らかに致死のそれ。
手にした剣で受け止めたところで防ぎきれずに俺の体は真っ二つになるだろうし、避けることもまず不可能だ。
そんな中で俺が取った行動は……
「投影ーー開始」
投影にてアーチャーの持つ剣を複製する。
渡された一振りだけではアーチャーに敵わないだろうが、二振りになればあるいは……!
「っ……この阿呆が!」
だが、そんな俺に向かって投げかけられる罵倒の声。
「ガッ……!」
次の瞬間には奴の振るった剣が俺の体を切り裂いていた。
投影した剣は盾代わりにすらならずあっさりと打ち砕かれて破片が地面にこぼれ落ち、斬られた傷口からはダクダクと血が流れ出る。
「チッ……そんな杜撰な投影でサーヴァントに太刀打ちできるわけもないだろうに……」
イラついたような声と共にアーチャーの体が光の粒となって消えてゆく。俺が何かしたわけではない、ギルガメッシュにやられていた傷が今の攻撃で限界を迎えたのだろう。
俺は、せっかくアーチャーがくれた試練を不意にしてしまったのか……
「その傷ではもはや助からんだろうが、どの道お前ではセイバーを取り戻すこともギルガメッシュを倒すことも叶うまい。自らの歩んできた道すらも信じられぬ愚か者ではな」
血まみれで倒れる俺に向かってそう吐き捨てながらアーチャーの体が消滅する、その言葉はまるで恨み節のようでさえあった。
「ガハッ……」
肺から込み上げてきた血を咳き込んで地面に吐き捨てる。あいつホントに容赦なく俺のことを斬りやがった。
いや……それも俺が防げると確信していたからなのか、俺はその期待に応えられなかった。
「…………」
奴の言っていた言葉を思い返す。
『衛宮士郎……お前は弱い』
そうだ、俺は弱い。
まともに魔術を使うこともサーヴァントに届くほどの剣の腕もない。
それでもせめて一番アーチャーに太刀打ちできる可能性があるのが投影魔術だと思って挑んだのに結果はこのザマだ。
『お前の強さを証明して見せろ』
強さ……?俺の強さとはなんだったのだろうか?
分からない、分かっているのは投影魔術では……鍛え上げることもしない精度の甘い投影ではアーチャーの攻撃は防げなかったということだけだ。
「………………」
力なく地面に倒れる俺をキャスターが静かに見つめる。
「キャ、スター……」
息も絶え絶えに呟いて、なんとか顔を上げて彼女の表情を見る。
「あっ…………」
そこには少女の哀しげな青い瞳があった。
まるで捨てられた子犬のように揺れる青い瞳。
「……………」
その瞳を見た瞬間に俺は察した。
俺は彼女のことを裏切ってしまったのだと。
キャスターと共に歩んできた道を、その中で得た強さを信じられなかった。
土壇場で付け焼き刃の投影に頼り、中身の伴わない空虚なその剣はあっさりと打ち砕かれた。
「ご、めん、キャスター……」
薄れゆく意識の中でそう呟く。
俺のことを信じてくれと、キャスターのことを信じるとそう誓ったはずなのに、結局俺はその言葉を守ることができなかった。
「大丈夫……えぇ大丈夫ですよ、悲しくなんかありません。裏切られるのには慣れていますから」
震える声でキャスターが優しく語りかける。
暗闇に閉ざされていく視界では彼女がどんな表情をしているのかももう見ることはできない。
「安心して眠ってください。セイバーさんはなんとかわたし1人で奪還してみますから」
無茶だ……キャスターが1人でセイバーを取り返せるわけがない……
そう叫ぼうとしたが、もはや言葉を出す体力も残っていない。
「おやすみなさい、シロウさま……」
意識が急速に闇へと落ちていく。
結局、俺の強さとはなんだったのか……そんな疑問さえもそのうちにプツリと途切れてしまった。
BAD END