50回以上の人生を繰り返してきた転生者、公女ルビア。
彼女が今世で切望したのは、何者にも邪魔されない「究極の怠惰」だった。

しかし、周囲の人物はルビアを放っておいてくれない。
ルビアは一計を案じて、自分の死を偽装する計画を立てる。
だが、協力者として雇った傭兵エスキヨの裏切りにより捕らえられ、緊縛・監禁・調教を受け堕とされていく…!

skebでリクエストを受けて制作した作品です。
https://skeb.jp/@Isogai_Button/works/9

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公女様は繋がれたい

 私は繋がれていた。

 鎖の一方は私の足に嵌められた足輪に、もう一方はベッドの脚につながれている。格子付きの窓から注ぐ月光が錆びとキズだらけの鎖に反射し、ギラギラとした、いびつな光沢を浮かび上がらせる。

 部屋の中は冷たく、澱んだ空気で満たされている。カーペットやタペストリーは見る影もなく朽ち果てて、それらが覆い隠していた石の床や壁が剥き出しになっていた。

 

 ところどころシーツが破れたベッドは寝心地がいいとは言えない。

 以前は、格段に上質で大きなベッドで眠っていた。ほとんどベッドから降りずに過ごした日もあったっけ。

 だけど、その頃よりももっと安らかに眠ることができているとすら思う。

 

 いま、私は監禁されている。

 監禁され、自由を奪われているのに安らいでいるだなんて、奇妙に思うかもしれない。

 だけど、重荷を全て下ろした安堵は何よりも甘美だった。

 

 それに、その気になればいつでも抜け出せる。

 

 私は、普通の人間ではない。

 長い時を生きてきた。ひとつの人生が終わると転生し、また新しい名前と体を得る。

 今の私の名前はルビア・ド・グランディア・ラ・ルクセン。公爵令嬢だったけど、堅苦しい実家を脱出し、アカデミーに入学した。前世の自分が作った学園に自分で入るなんて、おかしな話だけど……とにかく、アカデミーでなら静かに暮らせる……はずだった。

 

 すっかり聞き慣れた足音がした。

 重たげな扉を軽々と押し開けて、男が現れる。

 背が高く、それ以上にぶ厚い。体重なら私の3倍近くはあるんじゃないだろうか。

 彼の名はエスキヨという。この男が、私をここに監禁した当人なのだった。

 

「寒くないか」

 男は運んで来た荷物を棚の上に置きながら聞いた。

「寒いに決まっているわ」

「す、すまん。窓ぐらい塞ごうと思って」

 男はどこからか運んで来た布を、不器用な手つきで窓にかけていく。カーテンのつもりらしいけど、長さが足りていない。隙間風は防げないだろう。

 

「魔法を使って寒くならないようにできないのか?」

「できるだろうけど、魔法を使ったほうが疲れるのよ」

「そうか……。じゃあ、俺が温めてやるよ」

 即席のカーテンを作り終えたエスキヨが、ベッドに上がってくる。年代物のベッドが悲鳴のような音をあげた。

 

「あ、やめ……」

 声では抵抗するけど……エスキヨがやめないことはわかってきた。

 ルビアの足よりも太いエスキヨの腕が巻き付いてくる。服の中にぶ厚い手が入り込んで、乳房に触れる。

「いつまで、こんなことを続けるつもり」

「き……君が、俺の物になるまで」

 ふんわりとした乳房が、ゴツゴツした手で揉みしだかれる。嫌、と思うよりも、今の私は肌が触れあうことに安心していた。

 温かい。公女の体にこれほど無造作に触れてくる人はいなかった。

 

「こ、ここでは俺がご主人様だ」

 エスキヨは私の……ルビアの服を脱がせ、男もまた裸になる。

 ルビアのなめらかで白い肌に対し、エスキヨの体は日焼けし、筋肉と脂肪が重なってがっちりと大きい。

 突き出た腹を押し上げて、いきり立ったものが私に向けられていた。

 むっと濃いにおいがする。汗と……そして、男のにおい。

 

 我知らず、喉を鳴らしてしまう。

 何度も繰り返してきた過去の人生とは違った、鮮明な記憶……

 何度もあれに犯され、鳴かされてきた。この私が。

 

「今はもう、公女じゃないんだ」

 剥き出しの欲望を押し付けながら、エスキヨが言う。男根は生々しく震え、透明な汁をにじませている。

 これから、また犯される……。

 その期待に、おへその下がキュンと疼く感じがした。

 

 

 ◇

 

 

 話をすこし戻そう。

 私は堅苦しい実家を出て、アカデミーに入学した。

 自由都市リネットにあるアカデミーは、200年前……その時の「私」が創立した学校。それがいつのまにか、大陸最大の学園になってしまった。

 

 アカデミーでは、成績さえ優秀であれば衣食住に困ることはない。なにかと理由をつけて授業を休む術は心得ていた。つまり、入学さえしてしまえばあとはときどき試験を受けるだけで、人前に姿を現さずとも暮らしていける。

 だけど、ことはそう簡単ではなかった。寮に閉じこもって静謐な生活ができるかと思ったのに、公女であるルビアのことを周囲のほうが放っておかない。

 ひがむ人もいれば、うらやむ人もいる。それらはまだいい。厄介なのは、好かれることだった。

 

「ルビア様」

「公女様」

 ……と、たくさんの学生たちが、なぜか私を頼ってくる。

 

 他人の好意を裏切ることは最も安全からかけ離れた行動だ。

 最初から嫌われているなら、大したことはない。だけど、「好き」が反転したときは「嫌い」ではすまない。すぐに「憎い」と思うようになり、私が破滅することがその人の幸せだと感じるようになる。

 だから、もし誰かに好かれてしまったら……破滅を避けるためには、その好意を無下にするわけにはいかない。

 そうして「ちょっとした助け」を繰り返した結果、ルビアの存在感は増していった。

 

 私は二者択一を迫られた。

 みんなを助けるために走り回るか。

 それとも、周囲を切り捨て、憎まれて破滅するか。

 選べるわけが無い二択だった。

 

 そうして、私は気づいた。人々が私に構うのは、ルビアの地位が高すぎるからだ。

 ルビアが公女である限り、周りは放っておけない。まったく、貴族制ってやつは。

 

 だから、私は計画を立てた。

 公女をやめる。

 生まれ持った血は変えられない。……死なない限りは。

 もちろん、本当に死ぬつもりはない。また転生した先が、今より平穏な人生とは限らないから。

 

 私の死を偽装する。

 

 ルビアが死んだと周りに思わせ、別のところでやり直すのだ。

 アカデミーは豊かな場所だけど、面倒な人付き合いを避けるためなら仕方ない!

 どうやって暮らすのかは、環境を変えてから考えよう。私には50回以上の人生でつちかった知識と経験があるから、お金を稼ぐだけならなんとでもなる。

 

 そのために、協力者が必要。

 ルビアのことを知らない誰かに頼ろう。大きな組織にも頼れない。

 金で動く個人。傭兵がいいだろう。

 

 さて、具体的な方法はこうだ。

 まず、深夜にアカデミーを抜け出す。ルビアにはずっと仕えてくれている侍女のマリーがいるけど、彼女を起こさないように慎重に部屋を出る。あとは簡単。私はアカデミーの全容を知っているから、誰にも見つからずに抜け出すことができる。

 そして、自由都市の周縁部に向かう。夜の宿では、傭兵や旅人たちが溜まっている。

 

 いつもの姿のままでは目立ちすぎるから、着替えなければならない。学園祭で使った町娘の服を使う。あの後、私室に持ち帰って保管していたのだ。そのままではきれいすぎるから、少しずつ汚していた。

 服装だけは町娘になるけど、ルビアの髪は少しきれいすぎる。魔法を使って色を変えてくすませるしかない。アカデミー主席級の魔法使いがいれば見破られるかも知れないけど、さすがに心配する必要はないだろう。

 

 はたして、目立つことなく酒場にもぐりこむことができた。

 

 酒場には強いにおいがあふれていた。たばこがけぶり、安酒の甘ったるいにおい。獣の脂が焼けたにおい。そして何より、汗と垢のすえたにおい。獣の叫びのような会話がひっきりなしに続いている。

 

 私はある種のなつかしさを覚えていた。

 以前の人生で、彼らのような人種に混じって生きたことがある。都市からも農村からも外れた者たち。私は踊り子として、傭兵たちの間を渡り歩いた。その記憶が思いだされた。篝火の灯りを頼りに、明日を生きるために必要なことをした。

 その生活の中で最も大事なことは、単純なことだった――その場で一番強い男を見極めること。

 

 こういう場所での振る舞いを徐々に思い出してきた。絡まれるのは面倒だ。

 いかにも「事情があります」という雰囲気をにじませて、自分から声をかけず、しかし声をかけさせることもしない。隙を見せず、この場の力関係を見極める。

 人数が多い連中は、私の計画には使えない。どこから脚がつくかわからないから。それに軽薄なのも、機転が利きすぎるのも。

 私の計画通りに動いてくれる人。

 

 そのうちに、私は一人の男に目をつけた。

 ひときわ大きな体格の男。大きいだけじゃなく、分厚い。肩幅が広く、腹も突き出している。重量級のレスラーでも、もう少し控えめだ。

 遠い国ではこんな体型の男を「力士」と呼んだはず。

 

 その男は周囲から浮いているようにみえた。常人離れした体格のせいだろう。酒の勢いでひっぱたかれでもしたら、軽傷では済まない。

 ちびちびと、そう多くない酒に口をつけた振りをしていた。体格の割に、酒に弱いのかもしれない。

 仲間らしきものと言葉を交わすこともない。顔は知られているが、群れていない。条件にぴったりだ。

 私はその男の隣に向かった。

 

「こんばんは」

 あわれっぽく、声を出した。以前の人生で、娼婦として生きていたこともある。自分でいうのもなんだけど、お手の物だ。

「な……なんだ?」

 話しかけられると思ってはいなかったのだろう。大きな体に反して、男の声は小さかった。

 私は髪色を隠す頭巾の隙間から見えるように笑顔を作った。ルビアの美貌に彼はすぐに舞い上がり、最初の一杯をおごろうとした。

 

「お酒がいい」

 ルビアの体はあまり強くないから、自分が飲むつもりはなかった。ただ、一緒に飲んだのだと思わせられればよかった。

「あなたも飲んで」

 男はルビアに見せつけるために酒をあおった。

「お、俺はエスキヨ……というんら」

 すぐにろれつが回らなくなり、ふらつきはじめる。

 

「ど……どうして俺に?」

「話してみて」

「何を?」

「どこから来たの?」

 

 彼は従順だった。命令されることに慣れているのだと思った。自分の頭で考えることが苦手で、身の上さえ私が誘導して聞き出した。

 彼は辺境の生まれで、大きな体が幸いして……あるいは災いして、戦士として流浪している。その時々に近くにいる傭兵たちに身を寄せ、居づらくなったら別の場所へ移る。そうして、ここに流れ着いたのだった。

 

「大きな仕事があるわ」

「ど……どんな?」

 エスキヨは興味を示した。酒で判断力が鈍り、自分の話を披露する機会を得て気が緩んでいるせいだ。

「人を攫ってほしいの」

「そんなことは……」

「攫うのは私。私を攫ってほしい」

 

 エスキヨは驚きとともに私を見た。

 その時、男の瞳の奥に宿ったものが何だったのか、私は気づいていなかった。

 

 

 ◇

 

 

 それから、私はたびたび夜に部屋を抜け出し、エスキヨに計画を伝え、何度も練習をした。

 マリーの眠りが深くて助かった。彼女は昼に献身的に働いてくれるぶん、夜はぐっすりと眠る。

 私は正反対。昼はベッドの上で過ごし、夜はひそかに動き回る。

 

 それもこれも、このままでは怠惰ではいられなくなってしまう運命から逃れるため。

 勤勉を避けるためにアカデミーに来たのに、今度はアカデミーから逃れるために勤勉にならざるを得ないなんて、公女として生まれたルビアの宿命なのかもしれない。

 

 決行には、夏の休日を選んだ。

 

「いいお天気ですね、ルビア様!」

 私はピクニックに出かけていた。お供のマリーも一緒だ。

「そうだね」

 一抹の寂しさを感じた。

 彼女がいなければ、こんなに手の込んだことをしなくてもよかったのだけど……。だけど、私の安寧のためだ。

 

「ねえマリー、滝を上から見てみようよ」

「は、はい。でも、少しゆっくり……」

 私はすたすたと歩いていく。

 マリーは荷物を持っているぶん、歩みが遅れる。ルビアは公女の立場を退いているんだから、そこまでしなくたっていいのに。

 彼女は私に逆らわない。疑いもしない。

 

 かわいいマリー。あなたのことは忘れない。

 

「ルビア様、あまり滝に近づきすぎると危な……」

 マリーの声をさえぎって、木陰から大きな影が飛び出してきた。

 エスキヨだ。大男がとつぜん、ルビアを抱え上げる。

「きゃ……っ!」

 マリーは驚きのあまり声もあげられないようだ。エスキヨは公女を抱えたまま川べりで振り返った。

 

「動くな! この女がどうなってもいいのか!」

 言われるまでもなく、マリーは動けなくなっている。

「私が誰かわかっているの?」

 我ながらわざとらしい。これはお芝居なのだ。観客はマリーだけ。

 

「もちろんだ。公国からたんまり身代金をふんだくってやる」

「無駄だよ。私は公爵家から家出してるんだから」

「お嬢様がそう思ってても、娘を誘拐された公爵はそう思うかな?」

 

 ショックを受けていたマリーも、ようやく事態を理解したみたいだ。顔が真っ青に染まっていく。

「ル、ルビア様……」

「落ち着いて、マリー。何もしなければ、危害を加える気はないはず」

「もちろんだ。大事な人質だからな」

「マリー、よく聞いて。私の枕元に置いてある『近世法概論』を開いて。あなたに必要なことが書いてあるはず」

「ルビア様、でも」

「家名に泥を塗ることはできない」

 心にもないことを言いながら、私は大男の腕の中から飛び出した。

 

「しまった!」

 と、エスキヨは叫ぶが、こんな体格差で抜け出せるわけがない。わざとだ。

 私は崖際に立ち、振り返った。

「マリー、『近世法概論』よ」

 再び言い含めて、私は崖から身を躍らせた。

 

「ルビア様!」

 マリーの叫びが遠くなっていく。滝が起こす水しぶきの中へ、ルビアの細い体が巻き込まれる。

 着水。

 滝つぼに沈まないように体を躍らせる。予定通りだ。

 

 少し濁った水の中で、私は外套を脱ぎ、身に着けた装飾品を外した。

 下流のどこかに流れ着くだろう。誰かが発見し、ルビアが川に流されたことを知る。だけど遺体は見つからない。

 ルビアは今、ここで死んだ。そのことを、マリーがアカデミーに報告してくれるだろう。

 枕元の本の中には、ルビアからアカデミー理事長に当てた紹介状が入っている。もちろん、マリーのためのものだ。彼女は家事も事務もできるから、働き口はいくらでもあるはずだ。公女の最後の頼みとあらば、アカデミーも無下にできないだろう。

 

 そして私は、今度こそ自由の身になる。この川を泳いで抜け出すのだ。

 ルビアは泳いだことはないけど、私は泳ぎ方をよく知っている。以前の人生で、漁師の娘だったことがある。海に深く潜り、貝をとって暮らしていた。

 だけど……冷たい水が体力を奪っていく。漁師の娘なら、これぐらいなんでもないのに。ルビアの体は、か細く、弱弱しい。

 水面から顔を出すことはできた。だけど、冷たくなった手足が思うように動かない。もう少し……もう少しで、岸にたどり着くのに。

 

 川の冷たさを甘く見ていたかもしれない。

 意識が薄れていく。

 まあ、また別の名前と体でやり直すだけだ。私はそういう存在なのだから。

 ごめんなさい、ルビア。あなたを幸せにしてあげたかった……。

 

 意識を完全に失う寸前。大きな温かい体が、私を受け止めた気がした。

 

 

 ◇

 

 

 パチパチ……。

 薪が爆ぜる音が聞こえた。

 

 うっすらとした意識が徐々にはっきりしていく。

 温かい。水の中にいたはずなのに。

 そうか、転生したのね。今度の人生は、赤い暖炉の火と、獣脂のにおいがする毛布とともに始まったのか。

 暗い石壁に囲まれた場所にいるようだった。暖炉のそばに、大きな影がうずくまっていた。

 

「お……起きたか、よかった」

 見覚えがある。エスキヨだ。

「もしかして、あなたが助けてくれたの?」

 川の中で意識が途絶える直前。誰かに受け止められた気がする。それが彼だったのだろうか?

 

「あ、ああ。俺も、すぐに川に飛び込んだんだ」

「どうしてそんなことをしたの。マリーが怪しむじゃない」

「あんたは魔法を使うから大丈夫だといったけど、魔法を使っているようには見えなかった。だから、心配になって」

「あー……」

 その気になれば水中呼吸の魔法を使うこともできたけど、川が荒れているわけでもないし平気だと思ったのだ。それよりも体を冷やさない工夫をするべきだったね。

 

「打ち合わせでは、国外に脱出するための馬を用意していたはずだけど……」

「気を失っていたみたいだから、ここに運んだんだ」

 嘘だ。直感で分かった。

 エスキヨは最初からこうするつもりだったに違いない。その証拠に……

「これを外してよ」

 ルビアの両腕に枷がはめられている。しかも、体の後ろ側に。

 手枷は両方の手首をつないでいて、そのせいで私は腕を背中に回して動けず、胸を突き出す格好になっている。

 服は……着ていない。濡れた服を脱がせてくれたのかもしれないけど、裸の乙女に枷を嵌めるなんて。

 

「それは……できない」

 エスキヨは暖炉に背を向けて、私を見つめた。その瞳が暖炉の炎よりも熱く、ギラギラとした輝きを発していた。

「あんたを俺のものにしたい」

 エスキヨの大きな体が、ベッドをきしませる。腕枷はベッドにつながれていて、逃げることができない。

「あんたが俺に教えてくれたことの意味を考えてたんだ」

 体をひねって逃れようとするが、力の差は歴然だ。肩を掴まれて、ベッドに押し倒される。

 

「あんたはこの世から消えようとしていた。外国に逃れて、全部やり直すつもりだった……」

 エスキヨに全てを話したわけじゃない。だけど、計画を説明し、練習するうちに推測したのだろう。ルビアが貴族であることや、死を偽装して国外に逃亡しようとしていたこと。

 そして、その間……ルビアを守るものが他にいないこと。

 

 甘く見ていた。傭兵なら、お金さえ払えば言った通りにすると思っていたのに。

「手の込んだことをしたのは、あの女の子のためだろ。主人が死んだら、侍女なんて行くあてがなくなる。後を追うかもしれない。そうならないように彼女に目撃させた」

 エスキヨの手はルビアの頭をわしづかみにできるほどに大きい。その手が、白い乳房に触れた。

「んんっ……!」

 冷えた体は、その体温すら心地よく感じてしまう。それとも、公女の体を今まで誰にも触れさせないようにしてきたから?

 

「賢くて、優しくて……こんな女、会ったことない。たぶん、俺なんかじゃあんたみたいな人に二度と会えない」

 エスキヨの目は熱を増していた。情欲だけでなく、彼にとって制御できない気持ちが満ちていた。ぼろぼろと涙をこぼしていた。

「嫌だ。あんたと離れたくない」

 力強い指が胸に食い込む。痛いくらいにもみくちゃにされても、私は身じろぎするのがやっとだ。

 腕枷ががちゃがちゃと鳴る。

 

「やわらかい。なんてきれいなんだ」

 エスキヨは私の体に覆いかぶさり、胸に吸い付いた。

「いやっ、こんなことをして……」

「ほかに思いつかないんだ。あんたならもっといい方法を考えるだろうけど。俺はこれしか……」

 べっとりと濡れた舌の感触が乳房を這いまわる。飽きもせず、何度も何度も。

 腕を背中で戒められて、胸を突き出す形だ。ただでさえ丸く突き出したルビアの乳房は男の手と舌でぷるぷると弾み、形を変えていく。

 

「話なら聞くから、これを外して……」

「だ、だめだ。今まではあんたが俺を雇っていたけど、今は俺があんたを好きにできる。つまり……俺が主人だ。あんたはもう貴族じゃない。俺のものだ」

 ルビアの大きな乳房は唾液まみれにされてしまった。そして、冷えた体の中で、そこだけが温かく感じられる。何度もなんども揉みしだかれ、体温が高ぶっている。

 熱を帯びて乳房は淡いピンクに染まり、乳首がぷっくりと立ち上がっている。

 

「俺のものになるって誓ったら、外してやる」

 男の目は本気だった。

 なんということ。まったく予想外だった。

 私の言う通りに動いてくれる傭兵を探したつもりだった。エスキヨは孤独で、頭の巡りもよくはないように思えた。

 しかし、私が計画を教え、演技や手順を教えるうちに、彼の中の何かに火をつけてしまったらしい。

 従順だったはずの男は相手の考えを読むことを覚え、イニシアチブを握る方法を考えるまでになってしまった。

 

 今までの人生でも、ちょっとしたことで急成長を遂げる人間を何人も見てきた。

 だけど、性欲をきっかけに目覚めることがあるなんて。

 

「絶対に俺のものにしてやる」

 エスキヨがルビアの頭を掴んで引き起こした。ベッドの上にぺたんと座る。

「俺は童貞なんだ。娼婦を買おうとしたこともあったけど……」

 そして、大男が服を脱いでいく。突き出した腹を持ちあげるように、太い肉棒が飛び出した。

「こんなもの入らないって逃げられた」

 逸物が突きつけられる。大きな影が顔に落ちた。ルビアの細いあごから、頭頂のきらめく髪まで届く長さ。太さは、ルビアの手首と同じくらいではないか。

 

「うっ……」

 熱とにおいが直に感じられる。人間の一部とは思えないほど巨大なものには血管が浮き上がり、どくどくと脈打つ。熱気は陽炎をあげんばかりだ。

「さっきちゃんと洗ったんだけど……」

 男根からは獣のようなにおいが立ち上っていた。鈍器のように膨らみ、張り詰めた亀頭から鼻の奥にねばりつくようなオスの濃いにおい。一度洗ったくらいで落ちるはずがない。しみついているのだ。

 

「や……やめなさい、こんなものを……」

 思わず、声が細くなってしまう。前の人生を過ごして以来、どんな相手にだってひるんだことなどなかったのに。それほどに目の前の性器は凶悪だった。

「もうあんたは俺のものなんだから、俺が好きにしていいんだ!」

 身動きできない女を前に、卑怯なふるまいをしている自覚はあるのだろう。そんな自分の思いを断ち切るようにエスキヨは叫び……

 

「そ、その口をふさいでやる!」

 両腕でルビアの頭を掴み、ねじ込むように突き出した。

「んぐぅうう……!?」

 ルビアからしてみれば、拳骨をねじ込まれるのと大差がない。顎が外れるのではないかと思うほどに口を広げられ、猛烈な臭気が喉から鼻の奥に抜けていく。

 

「おおおおおっ! あったけえっ! そ、それに、ぬるぬるして……たまんねえっ!」

 必死に抵抗しようとしても、大きな手で頭を掴まれて逃れることができない。何とか首を振って逃れようとしても、

 

 ぐっちゅっ! ちゅぐっ! ぐっぷっ!

 

 その動きがかえって、口内の粘膜をこすり付けてしまう。

 びぐっ! びぐっ! 逸物は魚が暴れるように弾み、どろりとした粘液を口内ににじませる。

 

「ふううっ! ふっ……く、ぅうううううっ……!」

 のどまでねじ込まれると、気道が塞がれてしまう。川の中でおぼれたときと同じように、意識が白んでいく。肉槍のにおいをかぎながら窒息なんて。

 涙がにじむ。ぐっと喉を締め付けて押し出し、わずかな隙間から息を吸い込む。男の性臭を肺の中に必死に吸い込む。そうすると、また締め付けさせようとして肉杭が打ち込まれる。

 

「ぐうううっ! 出すぞ! 俺のにおいと味を覚えろ!」

 ぶく、と亀頭が膨らんだ。だめだ、と思う間もなく、エスキヨは私の頭を抑え込み、喉奥に突き込み……

 

 ぶっびゅううううううっ! びゅるるるるっ!!!

 

「ふっうううっ! ぐ、ん、むうううううっ!!!」

 逃げようもない喉奥に、どろどろの粘っこい精液が撃ち込まれていく。

 のどをふさぎ、逃げようもなく腹の中へ熱いものが垂れ落ちる。

 

 ぐっぽぉ……っ。

 

「うっ……ぇ、っふぅう……はああっ……!」

 泡まみれの肉棒がルビアの喉から引き出されていく。おさまりきらない精液が唾液と混ざってぼたぼたと垂れ落ちた。

 強引に飲まされた精液が喉に絡む。必死に呼吸を喘がせる。精液のむせ返るようなにおいを必死に吸い込み、飛びかけた意識をなんとかつなぐ。

 

「おおおっ! こ、こんなに出たのははじめてだっ……!」

 エスキヨは私の頭上で興奮に満ちた声を上げていた。大蛇のようにぶるりと肉棒が跳ね回る。

「ぜんぜん、おさまらねえ……興奮しすぎて、金玉かゆくなりそうだ!」

 何を口走っているのか自分でもわかっていないのだろう。

 

 私は必死に考えた。

 ここは石造りの建物の中のようだ。使われなくなった古城か何かだろうか。

 川に飛び込んでからどれぐらい経ったのかもわからない。今頃、マリーはアカデミーに帰り着いているだろうか。

 誰かが助けに来ることはない。私自身が足跡を消し去り、ルビアが死んだと思い込ませたのだから。

 

 自力でエスキヨから逃げ出すことはできるか?

 無理だ。

 魔法を使えば、枷を外すことはできるかもしれない。だけど、腕力の差がありすぎる。

 

「ああ……なんてきれいなんだ。たまんねえよ……!」

 にちゅっ! にちゅっ!

 考え事をしている間にも、エスキヨは何かをうわごとの様に言っている。それに、ねばついた音がして……

 

「待っ、何をして……」

 はっとして顔を上げたのが悪かった。目の前にはぶっくり膨らんだ亀頭があり、エスキヨは興奮のあまりそれを自分で扱きたてていたのだ。

 

「俺のにおいをつけてやる! あ、う、おおおおおおっ!!!」

 獣の叫びのような声をあげながら、大男が腰を突き出した。鶏卵ぐらいはありそうな玉がふたつ、ぶるんと揺れる。そこに貯えられたおぞましい量の精汁がぶちまけられる。

 

 ぶびゅるるるるっ! びゅぐっ! びゅるるるっ! ぶっびゅううううううっ!

 

 熱いものが顔に浴びせられて、思わず体をよじった。

 ぐつぐつに煮詰めたような熱さの精液がぶちまけられていく。

 ルビアの美しい顔に。紅潮した胸に。きらめく髪に。上流貴族にさえ触れさせなかった高貴な体に、生臭いマーキングがされていく。

 

「うっ……や、やめっ……」

 抵抗しようとしても、枷のせいで動けない。震える声は自分でも驚くほどにか細い。

 なめらかな肌にさえべったりと張り付き、垂れ落ちることもなさそうな粘り汁。

 頭から塗料をぶちまけられたように、公女の体は汚されてしまった。

 

 思わず涙がこぼれる。54回の人生でも、こんなことはなかった。

 娼婦になったこともある。奴隷として扱われたことも。

 だけど、私はいつも男の欲望を利用してきた。逆らえないことはあっても、体を売ることで安全や財産を手に入れてきた。

 今は、ただ欲望を浴びせられているだけだ。

 

「ごめん、ルビア」

 思わず口からこぼれていた。この体の本当の持ち主が守ってきた美しい体が、汚されてしまった。

「ルビアは、あんたの名前だろ」

 エスキヨの男根はさらにいきり立っている。満足するということがないのか。

「お付きの女の子が呼んでたからな。ルビア……きれいな名前だ」

 呼吸が整う前に、体を抱えられる。髪が顔にはりつく。精液が浴びせられたままだ。でも、腕をいましめられているから拭うこともできない。

 

「ルビア……俺のものになってくれっ」

 エスキヨの大きな手がルビアの腰を掴む。強引にヒップを突き出す姿勢をとらされる。

 精液まみれの胸がベッドに押し付けられる。呼吸が落ち着かない。膝をつかされ、腕は後ろに縛られたまま。

 自分の体のことはよく知っている。シミひとつない、磨いた真珠のようなつややかなお尻が、エスキヨの目の前に向けられているはずだ。

 

「こんな方法でしか、女に思いを伝えられないの」

 ベッドに伏せたまま、肩越しににらみつける。

「俺は……」

「ただでさえ自分より弱い女を縛り付けてからでないと、向き合うこともできないの」

 いくら汚れていてもルビアの美貌は大男を一瞬、たじろがせたようだ。

「……そうだ」

 だが、たじろがせただけだった。

 

「あんたは賢いから、対等に話をしたら俺が間違ってることを言い当てられるだろう。俺は正しいことを言われたら、受け入れるしかない」

 熱い感触が尻に当たった。ゴツゴツした、粘液まみれの肉棒。ルビアの足の間に押し付けられていく。逃げようとしてもベッドに体を押し付けるだけだ。その体に、エスキヨがのしかかってくる。

「でも、正しいことをしたら、もうルビアに会えなくなる。間違っててもいいから、俺はあんたと一緒にいたい。

 エスキヨの大きな腹がルビアを押さえつける。逃げられない――

「だから、こうするしかないんだ」

 

 ずっぐ……ん!

 

「あっ……ぐ、ぁああああっ……!」

 破瓜の痛みより、体の内側を押し広げられるような息苦しさを感じた。準備をすることなくねじこまれた男根は、精液を絡みつかせながらルビアの膣内に入り込んでくる。

 誰にも侵入を許したことのない秘境が、あっさりとやぶられた。

 逸物はいきり立って反り立ち、ルビアの体をほぐすことも思いやることもなく、強引に入り込んでいる。

 

「ああっ、なんて気持ちいいんだ。これが女の中か」

 エスキヨが感極まって声を上げる。大きな体を揺らし、腰を引き出しては、体重をかけて突き入れられる。そのたびに、押しつぶされそうなほどに苦しい。

「ふっ! ぐぅ……あぁっ、く、ぅ、ぁああっ!」

 息がこぼれる。長い肉棒が突き入れられると体の内側が押し上げられ、勝手に息を吐かされる。抜かれたときになんとか息を吸い込む。呼吸さえ、男にされるがまま。

 

「ルビア、ルビア……! これで俺のものだ!」

 エスキヨは容赦なく腰を振り始めた。獣のように夢中で、ひたすらに。

 どちゅっ! どちゅっ! どちゅっ! どちゅっ!

「っああっ! あ、く、ぅうう! はっ……んん、ぁああっ!」

 突き入れにあわせて言葉にならない声が漏れる。衝動のままに胎内を蹂躙され、全身を揺さぶられる。

 後ろで組んだ腕に力がこもる。いましめた枷が食い込んで痛い。全身に汗がにじむ。

 

「ルビアの中が絡みつくみたいだ。おおっ! 俺を受け入れてくれてるっ!」

「そんな、わけっ……」

 言い返そうとするけど、言葉が出ない。エスキヨは突き出た腹でルビアの体を抑え込み、角度をつけて膣内をえぐってくる。そうすれば、肉棒は繰り返し奥をこする。ルビアの胎内が男の形に広げられる。

 ぐちゅっ! ぐちゅっ! ぐちゅっ! ぐちゅっ!

 抽挿の音が、粘着質になっている。ルビアの膣が潤滑油のような愛液をにじませている。

 

「濡れるのは、気持ちいいからなんだろっ。気持ちいいのは、喜んでくれてるからだ!」

 後ろからのしかかりながら、エスキヨが叫ぶ。女の体の仕組みについて講義してやりたいと思ったけど、そんな余裕はない。

 上半身を縛られ、下半身を男に使われている。娼婦として生きたときでさえ、ここまで屈辱的な目に遭うことはなかった。

 

 いままで……ルビアとして生きてきた中で、私はいつも自分のことを自分で決めてきた。

 公爵家から出奔したときも、アカデミーに入学してからも。私がそうしたいと決めて、その通りにやってきた。

 なのに今、計画は失敗し、その果てに男の欲望を満たす道具に成り下がっている。

 くやしさで胸がいっぱいだった。だけど同時に、わずかな安堵があった。

 自分で決められることなんて何もない。彼の言う通りにするしかない。だったら、もう自分で何も決めなくていい――

 

「あっ♡ う、くっ…ぁああっ♡」

 ルビアの声が甲高く、甘いものになっている。自分の声を聞きなれていたつもりだったけど、こんな声も出せたんだと驚いた。

「うくうっ……! ルビア、ますます締まって……!」

 エスキヨが情けなく声を上げた。女を攫って手籠めにしようとしているくせに、妙なところで弱弱しくなる。

 私はこれまでの人生で、幾度も権力者や陰謀家とやり合ってきた。拘束されながら、この男を意のままに操ることだってできる。

 

「はあ、はあっ……ねえ、出してっ♡」

 拘束と圧迫でほとんど体は動かせない。だけど、挿入された男根を締め付け、射精をねだる動き……娼婦として生き、男たちを篭絡してきたテクニックを魂が覚えている。

「ルビア……おおおっ!」

 今度はエスキヨのほうが悲鳴じみた声を上げた。

 濡れた媚肉が絡みつく。女を初めて味わうエスキヨにとって、腰が抜けそうなほどの快楽に違いない。

 

「中に出して……!」

 ルビアの膣内がわななく。男が欲しがってるなら、与えてあげればいい。骨抜きにすれば、なんでもいうことを聞くだろう。

 ずっぷっ! ずちゅっ! ぐちゅ、ぬちゅうっ!

「ふっ……あっ、っく、ぁああっ……!」

 大きな逸物が中を突き上げるたび、私の体も震える。ベッドに押し付けられた乳房や、のしかかられてひしゃげた臀部が弾む。

 体が男を欲しがっている。でも、それは逃げ場のない状況で仕方ないことだ。

 

「ルビア、ルビア! 出すぞ……ぐ、お、ぉおおおっ!」

 獣じみた声を上げ、エスキヨが腰を突き出す。限界まで膨らみ切った肉棒がルビアの奥の奥までむさぼろうと突き入れられた。

「ぁぁああっ♡ く、ぅ、ぁああああんっ♡」

 男を喜ばせるため、たっぷりと甘い声を上げる。エスキヨを強く締め付けると、彼はあっさりと絶頂を迎えた。

 

 どびゅうううううっ! びゅぐっ! びゅううううう!

 

「ああああぁっ♡ あついのが、なかに……出てるっ! ああ、ぁあああっ♡」

 同時に、私も頭の中が白み……衝撃が脳裏まで突き抜けるようなあの感覚に襲われた。

 ルビアの体で初めて感じる絶頂。骨の髄までとろけて、全身が浮き上がってしまいそうだった。

 

「ふううっ! っく、ぁああああっ!」

 エスキヨは容赦なく大量の精液を吹き出し、ルビアの中を白く染めた。

「はあ、はあっ……俺のものになるって、誓うか?」

「んっ……♡ ぁああっ……♡」

 聞こえないふりをして、絶頂の余韻に体を震わせる。

 

「わかった。それなら、誓うまでこのままだ」

 やがてエスキヨは、別の拘束具を取り出した。今度は足枷だ。腕は自由に動かせるようになったが、ベッドにつながれてこの部屋から出られない。

 彼はいつの間にこんな道具を用意したのだろう。もしかして、私が計画を準備している間に、彼もここに私を監禁する気で準備を進めていたのかも。

 だとしたら、計画性を彼に教えたのも私ということになる。つくづく人選を失敗してしまったかも。

 

 

 ◇

 

 

 こうして、私は囚われた。

 足かせに繋がれて、古いベッドの上で暮らすのは快適ではなかったが、安らいではいた。

 陰謀を巡らせたり、責任を果たす必要はもはやない。本当の意味で、怠惰な生活を手に入れていた。

 

 エスキヨは昼のうちに出かけ、食べ物や、時には新しい服を手に入れてくる。

 そして、一日も休まずにルビアを求める。

 

「ああっ! ルビア! 俺のものになれっ!!!」

 飽きもせずに繰り返しながら、全身でのしかかるようなピストンで私を犯す。

「ああっ♡ またイっちゃう♡ 出して♡ 熱い精液♡ 出してっ♡」

 公女のルビアなら一生口に出すことがないような甘い言葉を吐きながら、されるがままに受け入れる。

 のしかかりながら、エスキヨは絶頂した。

 

 どびゅうううっ! びゅる、びゅうううううう!

 

「ぁああああっ♡ イくううううううっ♡」

 エスキヨはいまだに交合の快感に慣れておらず、繋がって数分もすれば絶頂する。そのたびに、ルビアの体も達している。この状況に適応していると言えるのかも。

「はあ……はあ、ルビア……」

 出した後は甘えるように抱き着き、ルビアの白い胸に吸い付いてくる。

 

「体は大きいのに、赤ん坊みたい」

「赤ん坊なんだ。俺は、母親に愛されたこともないから、赤ん坊からやり直したいんだ」

「赤ん坊はこんなことしないよ」

「だって……ルビアと一緒にいたいんだ」

 こんなことを、もうひと月以上も繰り返している。

 

 歪んだ欲望をひたすらにぶつけるエスキヨを言いくるめることはできるだろう。

 だけど、私はこの環境をそこそこ気に入っていた。

 権力闘争や足の引っ張り合いからはかけ離れた、何もしなくてもいい日々……。エスキヨに求められるままに体を差し出せば、あとは怠惰なままに過ごせる。

 これこそ、私が人生で求めていたものだ。

 

「ルビアと一緒にいるようになってから、今まで気にもしなかったことが気になるようになってきた。なあ、あの花はなんていうんだ?」

 エスキヨは花を摘んできていた。冷たい石壁を飾るように、無造作に置かれている。明日には枯れてしまうだろうその花を、彼は私が喜ぶと思って摘んできたのだ。

「ランプランサス……マツバギクよ」

「そうか……。俺が知らないことでも、あんたなら知ってるかもしれないと思うようになった。誰かと一緒にいるって、こんな感じなのかな」

 自分が監禁調教強姦の加害者である自覚はあるのかな。

 

 足に繋がれた鎖を撫でる。

 私がその気になれば、ここから逃げ出すことは難しくない。

 エスキヨがいない間に鎖を腐食させて断ち切り、この部屋を抜け出すだけだ。

 あまりにも簡単だ。いつでもできるからと思って、後回しにし続けた結果……

 私の体には、変化が起き始めていた。

 

「そういえば、あの侍女……」

「マリーのこと?」

 胸がずきんと痛んだ。マリーに対する責任を放棄したことは、ルビアとしての人生に刺さった大きなトゲだった。

 

「公女様の捜索を続けているらしい」

「……愚かな子ね」

 目の前で川に落ちるところを見たのだから、あきらめてもよさそうなものを。遺留物だって見つかるようにしておいたのだ。捜査されれば、ルビアが川に流されてしまったという結論がつくはずだ。

 

 でも、仕方ない。もう私にできることは何もない。

 そう思っていたのだけど……

 

「だから、考えたんだ。それはな……」

 そうして、エスキヨはついに彼自身の計画を語り始めた。

 

 

 ◇

 

 

 その日の窓から差し込む光は柔らかく、よく晴れていることが分かった。

 私は変わらず、ベッドに繋がれている。今は、ルビアの細い首に鉄製の首輪がかけられていた。

 

「ふっ♡ ぐううっ♡ ぁ、っは、ぁああああっ♡」

 そのうえ、ベッドの上で四つん這いになり、後ろからエスキヨに犯されている。

 野太い肉棒が卑猥な音を立てて前後する。膣内をこすられるたび、ごぽ、ごぽっ、と空気を巻き込んで泡があふれる。

 

「ルビアは苦しいのが好きなんだな。ほら、もっとしてやる!」

 首輪につながるリードを、エスキヨがぐいっと引っ張る。そうすれば首輪が首に食い込んで呼吸が詰まる。背をそらして首の位置を高くすれば、なんとか息ができる。だけどその分、おなかの裏側をゴリゴリと男がえぐる。

「ふううっ♡ あ、ぁああっ♡ ううううーっ♡」

 声を出すこともできず、私は必死に呼吸を喘がせるしかない。出し入れされる肉棒の形をすっかり体は覚えていて、膣襞はみっちりと男に絡み、媚びる。

 

「おおおおっ…イくぞ! ぐ、ぉ、ぁあああ!」

 エスキヨは大きな体をぶるりと震わせ、精液を放った。

 びゅうううっ! びゅるるるるるっ! どくんっ、どくんっ……!

「ぁああああっ♡ っ、ああーーーんっ♡」

 娼婦の声を抑えきれない。すっかり体が、彼の精液で喜ぶようになってしまっていた。

 

「はぁ……はぁ、見ての通り、これが今の私の姿だよ……マリー」

 部屋の隅に彼女が立っていた。

 アカデミーに残って私の捜索を続けていたというマリーを、エスキヨが連れてきたのだ。計画性だけでなく、誘拐の才能まで目覚めさせてしまったのかもしれない。

 彼女は、拘束もされていない。ただ立ち尽くして、私がエスキヨに犯されるところを見ていた。

 

「そんな……ルビア様」

 ショックに震えるマリーに向け、私は体を起こした。

 エスキヨは私の動きを察して、体ごと抱き上げる……ちょうど、マリーに向かってつながっている場所を見せつける格好だ。

 

「あれから、ずっとここで犯され続けて……ほら、この大きなちんぽの形にされてしまった」

 ぐっぽっ……♡

 姿勢を変えたことで、エスキヨの肉棒が抜けた。中に出された精液がぼたぼたと落ちていく。ぽっかりと広がった入口は、マリーの前でひくひくとうごめいた。

 彼女を傷つけてしまうことに罪悪感を感じながらも、同時に安心していた。だまし続けたマリーに、真実を伝えたことができたからだ。

 そしてこれから、もっと罪深いことをしようとしている。

 

「それに、見て……もう膨らみ始めてる」

 私はそっとおなかに手を添えた。マリーは、ルビアの裸を見たことがある唯一の人だった……この計画の前までは。

 だから、すぐに分かっただろう。ルビアのほっそりとしたウエストに、ぽこっと膨らんできていることが。

 私は妊娠していた。エスキヨの精液を毎日注がれていたのだから、当然だ。

 

「ど、どうして……こんなことを」

「私、あなたのことをうらやましいと思ってたの」

 エスキヨの手がルビアの膝を掴み、ぐいっと広げさせる。我慢が利かなくなった彼の逸物を、私はすでに精液まみれの膣内に受け入れた。

 

 ぐ、ぷ、ずぶぶぶぶっ……!

 

「っ、ぁあっ♡ いつでも私の後をついて、『どうしますか、ルビア様』って……ん、ぁっ♡ 誰かに決めてもらって、その通りに従えばいいあなたのことが……っ♡」

 今までずっとため込んだものを履きだしながら、腰を上下に動かす。肉棒がずぼずぼと体の奥を遠慮なく出入りする。そのたびに、しびれるような甘美な快感が広がる。

 

「私、そんなつもりは……」

「こうなって……ああっ、自由をなくして、支配されて、わかったよ。う、っく、はぁ……っ♡ あなたこそ私の理想だったんだ。守ってもらえて、決めてもらえて、自分をぜんぶ誰かに明け渡すのは……ああっ♡」

 どっちゅっ♡ どっちゅっ♡ どっちゅっ♡ どっちゅっ♡

 エスキヨの大きな体に背中を預けて、力強い腰振りに全身を揺さぶられる。長い肉棒が、胎児のいるおなかを揺さぶっては抜けていく。

 

「……こんなに気持ちいいなんて、知らなかったんだっ♡」

 ぷしっ♡ ぷしゃっ♡ ルビアの体がのけぞって、熱い潮を噴いた。

「ルビア様……」

 困惑するマリー。私の目は濡れて、彼女の姿がぼやけて見えた。うっとりと陶酔しきった顔をしているんだろう。

 

「こんな体になってしまったから、もっと落ち着けるところに行きたいんだ」

 その間も、エスキヨの自分勝手なピストンは続いている。ここでは彼は好きにルビアの体を使っていい決まりだ。そして、私はその決まりに身を預けているのだった。

「だから、マリーにも……ううっ♡ ぁ、っく、ぁあああぁっ♡ 待って、もう、イっちゃ……ぁあああっ♡」

 話の途中でも構わず突き上げられて、体がのけぞる。首輪をつけられた主人が無様に絶頂する姿を、マリーに見せつけている。

 

「はぁ、はぁ……だめ、しゃべれない……っ♡」

「ルビアは君にも一緒に来てほしいって言ってるんだ」

 私の両足を広げさせているエスキヨが、ピストンを続けながら言う。

「国を出て辺境で暮らすんだ。身の回りの世話を君に頼みたい」

「そ、そんなこと……」

「あ、あなたのことを、信じてるからっ……♡」

 ずぼずぼと自分の体を使われる感覚に浸りながら、私はなんとか言葉を漏らした。

 

「嫌なら、私のことは忘れて、アカデミーで働いて……ああっ♡ あなたが誰にも漏らさないって、信じている、からっ♡」

 男の腹の上で体をくねらせて言っても、威厳はまるでない。

「イくぞっ! ぐ……う、おおおっ!」

 私たちのことなどお構いなく、エスキヨはぐっと腰を突き出した。

 

 ぶびゅるるるるるるる! びゅううううううううっ!

 

「っぁ、ぁあああああああああっ♡」

 彼の精液で喜ぶように調教されたルビアの体は、強制的に絶頂に駆け上っていく。

「ルビア様……」

 唾液を垂らして呼吸を喘がせる私を、マリーがまっすぐ見つめていた。

 彼女は迷ったのちに、前に進み出た。そして、こぼれだした体液で汚れた床に膝をついた。

 

「私は……私は、ルビア様と一緒に行きたいです」

 そして、ルビアのおなかにキスをした。

 私は長い絶頂を味わっていた。

 

 

 ◇

 

 

 こうして、私は数カ月ぶりに繋がれていた部屋を出た。

 国境を越えて辺境へと移住し、住む場所を見つけて……おなかの子が生まれるまでに環境を整えなければいけなかったから、少し忙しかったけど。ルビアのことを気に掛ける貴族たちとかかわるより、ずっと気が楽だ。

 

 エスキヨは相変わらずの内弁慶だけど、よく働いている。父親になったからってそうそう人は変わるものじゃないと思ってたけど、教育の成果だろうか。

 身の回りのことはマリーに任せて、ただ自堕落に日々を過ごしている。

 そうしてついに、私の望みはかなえられた。平穏で安らかな、泥濘に沈むような幸福。

 もう鎖につながれてはいないけど、私はここから動くつもりはなかった。

 

 ひとつ懸念があるとすれば……性欲をみなぎらせた夫は、産後すぐにまた私の体を求め始めるだろう。

 すぐにまた妊娠して家族がどんどん増えたら、けっきょく忙しくなってしまいそうだ。

 ……まあ、そのぶん気持ち良くしてもらおう。「ご主人様」には、きちんと責任を果たしてもらわないとね。

 

(了)




skebでリクエストを受けて制作した作品です。
https://skeb.jp/@Isogai_Button/works/9

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