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雨の夜、提督から「部屋のオルゴール、お気に召したら壊してしまってもかまいませんよ」と告げられた男は、客間に足を踏み入れる。そこには、天井から吊るされた時雨がいた。「…んっ…あ、待っていたよ…」絡みつく瞳は海の底のように深く澱み、薄暗い部屋の空気が湿り気を帯びてゆっくりと重くなる…
(1)提督からの贈り物
「ところで今日は、贈り物を用意しました。
部屋のオルゴール、お気に召したら壊してしまってもかまいませんよ」
今夜泊まる部屋を案内してくれた提督からそう告げられて、男は正直に戸惑っていた。
「いったいなんのことですか?」
「いま言ったとおりです。貴殿にはお世話になっていますから、ほんの気持ちです」
含み笑いを浮かべながらそれだけを告げると、提督は「執務に戻らねばなりませんので」と足早に去って行った。
ただ、コツコツと鳴る革靴の足音が遠くなるにつれて入れ替わりに部屋の扉の向こうから、チリン…チリン…と、どこか切ない音色が微かに男の耳に聞こえてくる。
窓の外は既に暗く、しかも雨が降っているようだった。一人残された男もいつまでも廊下に立っているわけにもいかず、客間であろう重厚な扉のノブを押しさげる。
そして軽く軋みながら扉が開いたとたん、チリン…という音色が先程よりはっきりと聞こえてきた。
やはりこれが、提督の言うオルゴールが奏でる調べなのだろうか。首を捻りながらもすっかり扉を開けて、男は暗い部屋の灯りをつける。
と、ゆらゆらと揺らぐ灯りに照らしあげられた光景に、男は息を呑んだ。
そこには、天井から垂れた縄でセーラー服の少女が両手を吊されていた。
白露型の黒いセーラー服に、お下げに結った漆黒の髪。そして項垂れた細い首にはチョーカーが巻かれ、小さな鈴がついている。
先程からの音色はその鈴が揺れているからだった。
ただ、その少女は吊るされたつま先立ちで、時折揺れながら横に張られた縄に跨がっていた。スカートで隠れているから見えなかったが、間違いなく秘部に跨がっている。
そして少女は、小さく鈴を鳴らしながらゆっくりとこちらに視線を向けてきた。
「…んっ…あ、待っていたよ…」
絡んでくる瞳は潤み、まるで海の底のような深く澱んだ輝きを帯びていた。
そして、薄暗い部屋の空気が湿り気を帯びて、ゆっくりと澱んでいった。
(2)乱れゆく調べ
戸惑っていた彼の目線が熱を帯びるのを感じて、僕はうっすらと彼を誘う。
「待っていたよ…」
同時に、提督のあの言葉が耳奥でふわりと蘇った。
「…壊してしまってもかまいませんよ」
そのとたん、僕の背筋をぞくっと電気が駆ける。
どうやって僕は壊されてしまうのだろう。でも、これからどんなことをされるにしても、僕はきっと受け入れてしまう。
だって僕には拒む理由がない。
それに、もう結構なあいだこうして吊されて。痛かったはずなのにもうすっかり忘れて身体が熱くなって、胸がきゅんとして、腰がふるっと揺れて、唇が綻んで、なによりあそこがじっとりと濡れているのだから。
だから「待っていた」というのは本当。むしろ待ちくたびれて、こうして視線を浴びるだけで身体の芯がさらに熱く火照ってしまう。
でも僕は、僅かに身体をくねらせて首の鈴を鳴らすことしかできない。
結わえられた手はびくともしない。つま先立ちの両脚は身体をかろうじて支えるだけで、脚の間にくぐらされた縄は容赦なく食い込んでくる。
だから、たまらなくなって腰を小刻みに前後に揺らす。そうすると食い込んだ縄が擦れて。スカートの中で秘部を覆い隠すサテンの薄布がじわっと甘く湿ってくる。
「あ…ふ…」
彼の視線がさらに僕に注がれる。
かまわず僕は、腰を前に。
縄がいちばん敏感なところをぎゅっと押しつぶして、僕はピクンと跳ねる。チリン、と鈴が鳴る。
今度は腰を後ろに。敏感なところを裏側からやさしく擦りあげられて。やっぱりチリンチリン、と鈴が鳴る。
「これがオルゴール、というわけか」
「そう…だよ。これが…オルゴールさ…」
静寂の中に、息を呑む音が微かに響いた。
じっと彼に見つめられながら、オルゴールはゆらゆらと、時にはテンポを少し速めてどこか虚ろで甘い調べを奏で続ける。
彼はこのオルゴールを気に入ってくれるだろうか。壊してくれるだろうか。そう思った瞬間、チリンとやや強く鈴が鳴って、僕の奥がきゅうっと溢れてきた。
「あ…ああ…」
サテンの薄布はもうすっかり濡れて、太股まで溢れ始めているのがわかる。秘部だけでなく胸も、唇も、もう甘く蕩けてひどく切なくなってくる。
そんな気持ちが伝わったのだろうか。いままで見ているだけだった彼の指が僕の頬に触れてきた。
視線を絡めると彼の顔がさらに近づいてきて、そして唇が重ねられる。
チリン…
ただ、小さく鈴が鳴っただけで彼の唇は離れてしまった。だから僕は喉の奥から熱い吐息を漏らす。
「ねえ…もっと…」
今度は先程よりも深く、唇が重なる。
重なるだけでなく、ねっとりと貪るような彼の唇から舌が触れてきて誘われるように僕の唇も緩む。
程なく唇だけでなく舌同士も求め合って鈴が新しい調べを奏で始めると、彼の手は僕の身体を撫でまわしながら腰から胸へと這い上っていく。
そうして胸を探られて僕の唇から小さな吐息が彼の口の中へと零れると、彼も僕の口の中に吐息を零し、さらに頬が、胸がかあっと熱く火照って無意識に腰がくねってしまう。
「あふ…んっ…」
重なり合っていた唇がようやく離れて息を整える間もなく彼の手は僕のセーラー服の中へ。そしてセーラー服を捲りながら、ピンクのサテン地のブラに触れてきた。
びくんと僕の身体が勝手に震えてチリン…と鈴が鳴り、その音色に惹かれたのか男の瞳が喜色に染まる。
「触るよ」
そう言ったときにはもうカップの縁を飾る白いレースに彼の指がかかり、引き下ろしていた。
すっかり尖った胸の頂がこぼれて、彼の視線と外気に晒されてさらに硬く張り詰める。そしてその尖った頂を指で摘ままれて、僕の身体は文字通り跳ねた。
「はあんっ…」
跳ねた身体が戻る弾みで縄が食い込んで、もう一度身体が跳ねる。
そのたびにチリン、チリンと鈴が鳴る。さらに彼はきゅうっと摘まみ、僕が跳ねてまた鈴が鳴る。
「もっと、優しく…」
応えるように今度は彼の指が円を描くように胸の頂を嬲る。摘ままれたときの激しい刺激とは違う、じわじわ広がるような熱くて間断のない心地よさに僕はたまらず腰を振りながら甘く悶え、溢れた蜜が床に滴り落ちていく。
「こんなに濡らして、可愛いね」
耳元で恥ずかしいことを囁かれて意識がぼうっと霞み、ぞくっとして頭の中でなにかが夜戦のときの輝きのようにきらきらと弾けて、僕はさらに甘く乱れていった。
「ねえ、おねがい…僕を、もっと…」
壊れはじめている。
その自覚はある。でも、まだオルゴールはとまらない。むしろその乱れる音色を愉しむように彼は僕が跨がる縄の結び目を、わざと揺らしながら解いていく。
「ずいぶんときつく縛ってあるな」
「ああっ、いじ…わる…」
「でも嬉しいんだろ」
僕は答える代わりに腰を揺らして鈴を鳴らす。
そうして焦らされた縄がようやく解かれ、続いてファスナーを下ろされたスカートも腰から滑り落ちて床に広がると、秘部を覆うピンクのサテン地が薄明かりを浴びてゆらゆらと輝いた。
そこに刺さるような視線を感じて僕の下腹部はきゅんと疼く。
さらに指がショーツを這って秘部へと伸びてゆっくりと一番敏感なところを探り当てると、僕の嬌声と鈴の甘い音色が混ざり合った。
「ひああっ、あっ…そこっ…」
僕がそこで言葉を飲み込んだのは、指が薄布越しにその敏感な尖りを甘く押しつぶしてきたからで。仰け反った僕は声にならない悲鳴を上げていた。
ぞくっと身体中に激しい波が次々と走って全身が震え、その波に続いていままで味わっていたものより激しく熱い衝動が全ての感覚を塗りつぶしていく。
「あっ…は…ああっ!」
まだ彼の指が触れているというのにぐっしょりと蜜が溢れて、しかもさらにおねだりするみたいに脚を内側に擦りあわせてしまう。
しかし彼は脚の間に手を捩じ込んだまま、僕の蜜を指に絡めながら敏感な尖りを優しく、しかし追い詰めるように弄り、胸の頂もぴんと弾いた。
「だめっ、んあっ…そっちもだめぇ!」
口ではそんなことを言いながら、実際のところ僕は求めていた。だってとても敏感なところふたつを同時に攻められて、絶え間なく甘い快感が僕を貫いていくのだから、我慢できるはずがない。
もう、とまらない。僕は両手を縛られたまま、彼を欲しいという欲求のままに身体全体で艶やかにねだり、甘い調べを奏で続ける。
そして「もう、壊されちゃおうよ」と、脳裏に甘い声が囁いていた。
「いいんだな」
そう言うと彼は僕を吊したまま濡れそぼったピンクのショーツを脱がせて、硬くなったものをゆっくりと埋めてきた。
「んっ…あ、ああ…はいってぇ…」
待っていた僕は両手で縄を握りしめ、腰を押しつけて彼を飲み込んでいく。
チリン…
すっかり飲み込んでしまうまで鈴は震えるような調べを奏でていた。が、不意にすっと静かになる。
しかしそれも一瞬。
彼が僕の腰を掴んで動き始めるといよいよ鈴の音は緩急の激しい乱れた調べを奏で始める。
チリン…チリンチリン…
鈴の音に僕と彼の吐息、そして男と女の重なり合う音が混ざりあって、でもそれの調べは雨音にかき消されて部屋の外には届かない。
それをいいことに、僕はいよいよ壊れかかったオルゴールのような声を上げる。艶やかに悶え、奥深くまで満たされて途切れ、腰を引かれてよがり、そしてまた深く抉られてたまらず裏返る。
「あっ…あっ…んああっ…」
そして僕の腰の動きも激しくなり、鈴の調べもさらに乱れていく。
ただ、あんなに欲しかったはずなのに、僕は満たされない。むしろつながる前よりもひどく疼いて渇いて、壊されてもいいからもっと奥まで欲しくなる。
「お願い…ああっ…壊して。僕、んあっ…もう...こわれちゃう…」
唇から漏れる言葉はひどく途切れて、甘く、切なくなってしまう。
そんな僕の身体を優しかった彼は次第に荒々しく貪り、僕の反応を探りながらオルゴールを鳴らしていく。
「あはっ、だめ…だよぉ、こわ、れ…」
「壊していいと聞いたからな」
繋がったまま一番敏感なところを捻られ、僕は弾けるように仰け反る。秘部から蜜がどんどん溢れていくのがわかるのに、隠すどころか晒したくすらなってくる。
いや、もう隠せていないのかもしれない。
「んああああっ!そこぉ!!」
指が縄を掻きむしり、縄が軋む。
彼は構わず僕を突く。深く、浅く、激しく、優しく。
オルゴールは狂ったような調べを奏で続け、僕は悦びの中でどんどん虚ろに、どろどろになっていく。
「あっ…あっ…ねえ…ぼく、もう…」
いよいよ乱れた調べは頂点に達し、僕は悲鳴を上げながら仰け反り、きゅうっと甘く締まる。そしてついに僕の中に熱いものが広がり、僕は悦びのなかで弾けた。
その瞬間、チョーカーのリボンが解けた。
鈴はチリンチリン…と胸元を転がり落ちて床の上に。そして最後に小さく鳴ったきり、止んでしまった。
「ふふ…こわれ、ちゃった…」
ひどく揺らめく僕の視界にその鈴が映り込む。ただそれも僅かの間で、僕もまた後を追うように虚ろに壊れていく。
そしてひどく澱んだ部屋には、湿った雨音だけが静かに満ちていくのだった。