「虫みたいな存在感だよね」 学園の至宝・結城美桜にそう蔑まれ、底辺の生活を送っていた白石透。
だがある日、彼は図書室で『催眠アプリ』を拾う。 復讐のつもりで打ち込んだ「俺を好きになれ」という命令。

翌日から、傲慢だった美桜は透の顔を見るだけで赤面し、放課後の教室で自ら服を脱ぎ、四つん這いで「抱いてほしい」と泣いて縋るようになる。

だが、透は彼女を抱かない。 「次はもっと上手におねだりしてみろよ、犬」 これは、偽りの支配から始まる真実の恋の物語。歪んだ命令の先に、彼女が隠し持っていた『本当の秘密』を、俺はまだ知らない。

1 / 1
第1話

「結城先輩、今日も美人っすね!」

「やべー……マジで、顔面国宝じゃん……」

 

昼休みの中庭に、男子たちのざわめきがこだまする。

 

中央に座っているのは、

言わずと知れたこの学園の“顔”──結城 美桜。

 

長く艶のある黒髪、切れ長の瞳。

くっきりした口元と、少しだけ意地の悪そうな笑み。

 

制服は誰よりも正しく着ているのに、

それだけで淫靡に見えるのは、たぶん顔が良すぎるせい。

 

「美桜さーん、次の講義、いっしょに行きません?」

「え、今日ヒマ?じゃあ教室まで荷物持ちますよ!」

 

取り巻きの男子たちが競うように声をかけて、

彼女はそれに「うん、お願い♡」と、ほんの少しだけ笑って返す。

 

その笑顔で、またひとり、男が恋に落ちる。

 

──でも、それは表の顔。

 

俺が中庭を通り過ぎようとしたその瞬間、

ふと、美桜と目が合った。

 

……しまった。

 

そう思った時にはもう遅い。

 

「……あれ??」

 

彼女の声が、スピーカーみたいに通る。

その場にいた何人かが、視線をこっちに向ける。

 

「いたんだ? てか、……なに、こっち見てたの?気持ちわる」

 

ざわ……と周囲の空気が揺れる。

 

「ほんっと、なんでこの学園入れたんだろ。

 虫みたいな存在感だよね」

 

言葉に毒はある。

でも、笑顔は崩れない。

 

取り巻きの男子も「やべー」と笑いながら、

俺の肩を小突いて通り過ぎていく。

 

ああ、いつも通りの光景だ。

 

美人で優等生で、男子人気トップ。

でも──本性は、こんなふうに人を踏みつけて笑う女。

 

俺は視線を落とし、無言でその場を離れる。

 

心臓が痛いわけじゃない。

慣れてる。言い返す気もない。

 

ただ──

 

(……あの顔が、“好きです”って言うところを見てみたい)

 

そんなことをふと思った。

冗談みたいな、くだらない妄想。

 

けれど──その日の放課後。

俺の手に渡った一つのスマホが、

 

その妄想を、“命令”に変えることになる。

 

◆

 

放課後の図書室。

人影もまばらな静寂の中で、俺はプリンターの列に並んでいた。

 

たった一枚のプリントを出すためだけに、無駄に長い時間を費やす場所。

でも、ここだけは誰の声も、視線も届かない。

 

……そう思っていた。

 

印刷が終わり、席を立とうとしたとき、

隣の机に、誰かのスマホがぽつんと置かれているのに気づいた。

 

画面がついている。ログイン状態のまま、ロックもかかっていない。

 

思わず覗き込む。

 

《スキルアプリ:命令式催眠 ver1.03》

起動中:対象の名前を含んだ命令文を入力してください

※スキルは一度発動すると対象の潜在意識に影響を与えます。

 

「……は?」

 

アプリのデザインは、ゲームのようでいてどこか無機質。

悪ふざけにしては妙に作り込まれていた。

 

スクリーンの下に、“最後の入力履歴”が残っていた。

 

【例】:橘あやか は 市川直人 を好きになる

 

冗談だろ。

でも──もし、本当に効くとしたら。

 

背中に、ひやりとした汗がにじむ。

ふと思い浮かんだのは……あの女。

 

結城美桜。

 

あの顔で、あの声で──俺の名前を呼んで、

「好き」って言ったら。

 

くだらない。

でも、言葉はもうキーボードに打たれていた。

 

【入力】:結城美桜 は 白石透 を好きになる

+ 白石透 に対してエッチな命令に逆らえなくなる

 

“送信”ボタンを、指が押していた。 

 

──ピロン。

 

軽い通知音と同時に、画面に表示される。

 

《スキル発動成功》

 

対象の潜在意識に反映されました。

発動時間:翌朝以降の最初の接触時より有効

 

「…………」

 

嘘みたいに軽い音。

ゲームと変わらないUI。

 

だけど──何かが変わってしまった気がした。

 

本当に効くなら、明日からあいつは俺を好きになる。

しかも、“エロい命令”には逆らえない。

 

まさか。

いや、でも──

 

そのままスマホを閉じて席を離れる。

空っぽの図書室が、どこまでも静かだった。

 

◆

 

「……あれ? 透くん、おはよ」

 

……透くん、だと?

 

教室に入った瞬間、結城美桜がこちらを振り返って笑いかけてきた。

笑顔。まっすぐ目を見て。口角がやや下がり気味の、柔らかいやつ。

 

……あの女が?

 

「……おはよ」

 

ぎこちなく返した声に、美桜は嬉しそうに頷く。

 

「いつもより早いじゃん。もしかして、あたしと同じバスだった?」

 

「……いや」

 

「そっか、偶然かぁ。でも、なんか嬉しいかも」

 

──なにこれ。

 

昨日まで「虫」「存在しない扱い」だった相手が、

いきなりまるで“友達以上”みたいなテンションで距離を詰めてくる。

 

教室の空気もどこかおかしい。

まわりの男子たちも美桜のテンションに驚いてるのか、静かにこっちを伺っている。

 

「ねぇ、今日の一限、めんどいね」

「……透くんって、ノート綺麗そう。見せてくれたり、する?」

 

机越しに前かがみで話しかけてくる。

 

胸元、空いてる。

昨日と同じ制服なのに、どこか……いやらしく見える。

 

「見せてもいいけど」

 

「やった♡」

 

その一瞬。

ふと、笑顔がふるえる。

 

目線が、俺の唇に落ちた──ように見えた。

 

(……効いてる)

 

確信した。

 

アプリは本物だ。

催眠は、成功している。

 

そして次の瞬間──

 

「ねぇ、放課後……時間ある?」

 

その声が、かすかに熱を含んでいた。

 

「ちょっとだけ……話したいこと、あるから」

 

◆

 

放課後。

教室には、俺と結城美桜──ふたりだけだった。

 

窓の外は夕焼けが差し込んでいて、

黒板の影が床にゆっくり伸びていた。

 

美桜は、俺の机の前で立ち止まると、

ゆっくりと振り返った。

 

「……来てくれて、ありがとう」

 

その声は、普段のあの威圧感とはまるで違う。

上ずって、震えて、熱を孕んでいた。

 

「なぁ、美桜」

 

透けかけた夕陽の中、俺は一歩だけ前に出た。

 

「……おまえ、俺のこと好きなの?」

 

「……うん」

 

小さく、でも即答だった。

 

「……すごく、好き。……どうしようもないくらい」

 

嘘みたいに素直な声だった。

 

でも……それは催眠のせいだ。

 

言わせたのは、俺だ。

命令したのは、俺の指だった。

 

だけど──目の前の彼女の顔は、

泣きそうで、必死で、

本当に俺を求めているようにしか見えなかった。

 

「……抱いてほしいの?」

 

「……うん。だめ、かな……?」

 

声が小さくなる。

 

唇を噛んで、視線を伏せて──

そのまま、美桜は制服の第一ボタンに指をかけた。

 

「脱ぐ、ね……?」

 

「……ああ。脱いでみろよ」

 

「……うん」

 

──カチ。

 

最初のボタンが外れる音が、やけに大きく響いた。

 

2つ、3つ。

リボンが外れて、白いブラウスの下から、

ブラのレースが透けて見えた。

 

恥ずかしそうに目を逸らしながら、

それでも美桜の指は止まらない。

 

スカートのホック。

左の太ももをなぞるようにして、制服が床に滑り落ちる。

 

「……ねぇ、透くん。

 ここで、していいから……」

 

彼女は、机に手をついて、

自分から脚を開いた。

 

「見て……すっごく濡れてるの、わかる……?」

 

パンツの奥に指を這わせ、

くちゅっ……と音が鳴った。

 

指を見せつけるように俺へ向ける。

 

「お願い、透くん……抱いて……っ。わたし、もうおかしくなりそうなの……っ」

 

俺は、机の縁に腰をかけて、

腕を組んだまま、彼女を見下ろした。

 

そして、言う。

 

「……じゃあ、“犬のポーズ”してみろよ」

 

「……え……?」

 

「四つん這い。俺のことが好きで、抱いてほしいんなら、

 “発情したメスのマネ”してごらん?」

 

美桜は、一瞬固まった。

 

でも──ゆっくりと、しゃがみこみ、

脚を開いて、手のひらと膝を床につけた。

 

制服の裾が背中から落ちて、

下着のラインがむき出しになる。

 

「……こ、こう……?」

 

「そうそう。……よくできました」

 

美桜の背中が震えていた。

 

でも──そこには、確かに快感と、屈辱と、期待が入り混じっていた。

 

「これで……いいの……?」

 

「……おいで、美桜」

 

俺が指をくいっと曲げて呼ぶと、

彼女は少し戸惑ってから、ゆっくり四つん這いで近づいてくる。

 

制服はすでに脱ぎ散らかされ、

下着姿のまま、床を這って近づいてくる姿は──

 

かつて“虫”と罵った女王とは、到底思えなかった。

 

「……好き、だよ。ほんとに……」

 

唇を噛みながら、

彼女は俺の目の前で、じっと膝を揃えて座り込む。

 

「お願い……抱いて。透くんのこと……ずっと考えてて……

 もう、私、おかしくなりそうで……♡」

 

「じゃあ……“お手”」

 

「……え?」

 

「犬でしょ? 俺のこと好きな、発情したメスなんだろ」

 

「…………っ」

 

顔を真っ赤にして、美桜は俯く。

 

でも──俺を睨んだり、拒んだりはしない。

 

催眠は、確かに効いてる。

今の彼女には、“命令”に逆らう選択肢がない。

 

「ほら。言って。“透くん、大好きです。わたし、お手します”って」

 

「……っ……透くん……大好き、です……

 わたし……お手……します……」

 

震える声と共に、

右手が恐る恐る上がる。

 

指先は、微かに汗ばんでいた。

 

俺は、それを軽く叩いてみせる。

 

「よしよし。じゃあ……“おすわり”」

 

「……っ」

 

美桜の身体が、小さくびくんと跳ねた。

 

羞恥と快感が入り混じって、

息の端から、あえぎ声が混じっている。

 

「お、おすわり、……します……♡」

 

ゆっくりと膝を曲げ、正座の体勢に。

 

太ももの内側が、かすかに濡れていた。

 

「今度は、“抱いて”って言ってみろよ」

 

「……透くん……私を抱いて……?」

 

彼女の声は甘く、でも泣きそうで、

今にも俺に飛びつきそうだった。

 

でも──

 

俺は、ふっと立ち上がった。

 

「──やっぱ、いいや」

 

「……っえ?」

 

「そう簡単にやらせねぇよ。

 お前がどれだけ“俺のこと”好きでもな」

 

美桜の目が、絶望でにじむ。

 

「……じゃ、またな。次はもうちょい、尻尾ふってこい」

 

教室を出る直前、彼女が後ろから震える声で叫んだ。

 

「透くん……透くん、お願い……抱いてよ……っ

 わたし、こんなに……好きなのに……っ!!」

 

俺は、振り返らなかった。

 

この命令地獄の先に、

“本物の好き”が生まれるのなら──

 

その日まで、俺はまだ、抱かない。

 

◆

 

翌朝の教室。

 

昨日と同じはずの場所。

昨日と同じ制服。

昨日と同じクラスメイトたちのざわめき。

 

……なのに、空気がまるで違っていた。

 

美桜は、俺の席のすぐ隣に座っていた。

 

普段なら絶対に近づいてこない。

──むしろ、避けていたはずの距離。

 

でも今は、自分から俺の半径30cmに入り込んで、

まるで“恋人”みたいに、俺の顔を見つめている。

 

「……おはよう、透くん」

 

声が小さい。

でも甘い。

 

唇の端を噛みながら、

少しだけ伏し目がちに笑うその顔は──

 

先日までの“学園の女王”じゃなかった。

 

「なぁ、昨日のこと……覚えてる?」

 

「……うん。全部、覚えてる」

 

即答だった。

 

「私、自分で脱いだの。

 机の前で、脚、開いたの。

 “おすわり”も、“お手”も……全部」

 

「恥ずかしくなかったのか?」

 

「……めちゃくちゃ、恥ずかしかった」

 

美桜は、吐き出すように言う。

 

「でも、それ以上に……

 “抱いてもらえる”って思ったら、

 なんか、身体が、勝手に動いちゃったの……」

 

「“好きにさせた”だけで、

 あなたが何もしなくても、私、こんなに……」

 

自分の胸元を抱くようにして、

美桜が俺の肩に顔を近づけてくる。

 

「ねえ……今日、する?」

 

「放課後、また……してくれるなら、私、なんでも──」

 

その瞬間。

 

──俺は、美桜の耳元に、口を近づけた。

 

そして、囁く。

 

「じゃあ、“おちんちん舐めさせて”って頼んでみろよ」

 

びくっ……と、彼女の肩が跳ねる。

 

頬が真っ赤に染まり、

口元が、かすかに開いた。

 

「……い、いま、ここで……?」

 

「聞こえなかったな。

 放課後にしてほしいなら、今すぐ言ってみなよ」

 

美桜は、一度、ギュッと目を閉じる。

 

そして、絞り出すように──

 

「……透くんのおちんちん……舐めさせてください……」

 

「よく言えました。

 ……じゃ、放課後、楽しみにしてるわ」

 

──この“好き”が、催眠のせいだろうと関係ない。

本気になるまで、抱いてやらない。

 

でも──

身体ごと、心の奥を暴いていくことだけは、止めない。

 

◆

 

放課後の教室。

カーテン越しに差し込む夕陽が、机と椅子を長く影にしていた。

 

空気は静かすぎて、

ドアの開閉音ひとつでも、心臓に響くようだった。

 

ガラッ、と俺が入ると、

その音だけで、彼女の背中がピクリと跳ねた。

 

結城美桜──学園の絶対的女王だったはずの女は、

今、四つん這いになって床に這いつくばっていた。

 

制服のジャケットは椅子にかけられ、

シャツの袖はたくしあげられて、スカートの下からは太ももが覗いている。

 

「……透くん。今日も、来てくれてありがとう」

 

頭を下げたまま、息を飲むようにそう言う。

 

昨日と同じ。

いや、昨日よりも、深く、素直に、“従いたがっていた”。

 

「おいで、美桜」

 

椅子に腰をかけながら呼ぶと、

美桜は膝を滑らせるように近づいてきた。

 

その姿はまるで──忠実な犬だった。

 

「“お手”」

 

ぴくん、と指先が震えた。

美桜は小さく息を呑み、俺の足元で手を差し出す。

 

「……透くん、大好きです。お手……します」

 

その声には、確かな恥じらいがあった。

でも、喜びもあった。

 

命令をもらえたことに、素直に嬉しがっている声だった。

 

俺はその手を軽く叩く。

 

「よし。次、“おすわり”」

 

彼女は膝をついて、おとなしく正座した。

制服のスカートがわずかにめくれて、下着のラインが見えそうで──

 

でも、それを直す素振りは一切なかった。

 

「……っふ。はぁ……♡」

 

息が熱い。

 

この時点ですでに、美桜は身体の奥で発情しかけていた。

 

「いい子だな、美桜」

 

頭を一度だけ撫でてやると、

彼女の肩がまた、ぴくりと震えた。

 

静寂のなか、俺の声だけが響く。

 

「……次、“ワン”って鳴いてみろ」

 

正座したままの美桜が、一瞬だけ目を見開いた。

 

でも、命令されたことをすぐに理解して、

ぎゅっと膝の上で拳を握る。

 

「……っ、わ、ワン……」

 

「そんなの、聞こえない」

 

「っ……ワン……っ♡ ……わん、わん♡……」 

 

顔が真っ赤になりながら、

それでも美桜は繰り返す。

 

「ワン♡……あ、ぁ……♡ わん……」

 

言うたびに、声の端に熱が混ざっていく。

 

“鳴くだけ”の行為が、

こんなにも彼女を乱しているのが、わかる。

 

 

「──“待て”」

 

 

俺がそう言った瞬間、

美桜の声がピタッと止まった。

 

「……は、い……っ、ま、待て……します……♡」

 

俺は立ち上がり、

ズボンの前を静かに開ける。

 

布越しに勃ちあがった竿を引き出し、

そのまま──彼女の顔のすぐ前へと突き出した。

 

美桜の目が、自然と見開かれる。

 

視線が、ぴたりとそこに釘付けになる。

 

「……透くん……」

 

「待て、だぞ?」

 

「…………っ♡」

 

ほんの数センチ先にある“それ”に、

彼女は目を潤ませながら、小さく鼻を動かす。

 

 

 

「く、くん……♡ ……匂い、だけで……だめ……♡

 わたし、もう……いっちゃいそう……♡」

 

 

 

身体は動かさない。

でも、内腿が小刻みに震えているのがわかる。

 

“触れていないのに、絶頂寸前”──

それは、命令に従うことが快感になっている証だった。

 

「本当に舐めたいのか?」

 

「……うん、……ううん、ちがう……っ」

 

「……?」

 

「舐めたい、じゃない……っ」

 

彼女は顔を伏せ、震えながら──

自分で言い直す。

 

「……この、すけべな……雌犬に……

 透くんの、おちんちん……舐めさせてください……♡」

 

羞恥と熱と、絶望がにじんだ声。

 

でも、その奥には確かに、愛されたいという本音が見えた。

 

俺は彼女の震える姿をしばらく見下ろしてから、

ゆっくりと腰を落とした。

 

目の前。

正座している美桜は、顔を真っ赤に染め、

自分で発した言葉の余韻に身体を震わせていた。

 

「……よく言えたな、美桜」

 

そう言って、

彼女の頭に手を伸ばす。

 

髪を撫でると、彼女は一瞬目を閉じて、

安心したように身体をゆるめた。

 

ポン、ポン、と軽く頭を叩く。

 

「じゃあ──“一回だけ”な」

 

「……え?」

 

「ひと舐め。たったそれだけ。

 その代わり、丁寧にな」

 

「……っ、う、うんっ♡」

 

美桜は、舌を潤しながら、

膝でにじるようにして俺の前に這い寄る。

 

そして──

 

ほんの少し、口を開けた。

 

目を細め、

唇の間から、濡れた舌先がのぞく。

 

「……いただきます……♡」

 

 

 

ぺろ──

 

 

 

舌先が、先端を一度、なぞるように触れた。

 

わずかに震えながら、

美桜が目を閉じ、そのひと舐めに全感情を込めるように集中していた。

 

 

 

「ん……♡」

 

舐めた舌を引っ込め、唇をそっと閉じたあと、

彼女はうっとりした表情で俺を見上げてくる。

 

 

「ありがとう……透くん……

 すごく、美味しかった……♡」

 

 

それは、涙ぐむほど純粋で、

でも、どうしようもなくいやらしい声だった。

 

「……いい子だな、美桜」

 

俺はもう一度、頭を撫でた。

 

そして、

そのまま立ち上がる。

 

 

 

「──今日は、もう帰るわ」

 

 

 

「……え……?」

 

 

 

美桜の顔が、ぱっと曇る。

 

「や、だ……っ 今日は、もっとしてくれるんじゃ……っ」

 

「“一回だけ”って言ったよな?」

 

俺は笑って、教室の扉へと歩き出す。

 

 

 

「明日、もっと上手に鳴けたら──

 次は“二舐め”させてやるよ」

 

 

 

「…………っ」

 

 

 

後ろから、美桜の小さな声が聞こえた。

 

 

 

「……うぅ、好き……好きだよ、透くん……♡

 もっと、褒めてほしかった……♡」

 

 

◆

 

翌朝。

いつもと変わらない教室。

 

教卓に置かれた連絡プリント。窓の外の青空。

そして──俺の隣の席に座っている、首にリボンを巻いた美桜。

 

いや、正確に言えば──

リボンじゃない。

 

それは、赤いレザーの首輪だった。

 

白いシャツの襟を少し開き、

ネームタグもない、無地の“本物”。

 

見間違えるはずがない。

 

「……何、その首輪」

 

問いかけると、美桜は少しだけ顔を赤くして、

そっと髪をかき上げる。

 

 

 

「……これ、ね。ネットで見つけたの。

 ……飼ってくれるって言ってたから……♡」

 

 

 

視線を落としながら、

恥ずかしさと嬉しさの混ざった笑みを浮かべる。

 

「昨日、頭撫でてくれたでしょ?

 ……だから、もっと“犬”になれたら、

 透くんに褒めてもらえるかなって……」

 

俺は、言葉を失った。

 

そこにいるのは、

もう“命令された女”じゃなかった。

 

自分の意志で、命令に従いたくなっている

──そんな顔だった。

 

「透くん、今日も……“ご褒美”くれる?」

 

机の下、制服のスカートがわずかに揺れる。

 

太ももをぴたりと揃えたその脚が、

わずかに震えていた。

 

「……今日は、二舐め?」

 

「うん……♡ 昨日みたいに……

 ひと舐めだけじゃ、足りなかった……」

 

「……ご褒美が欲しいなら」

 

俺は、彼女の首輪のリングを人差し指で軽く弾いた。

 

「放課後まで、“ちゃんとお利口”でいろよ」

 

その瞬間、美桜の瞳がとろけた。

 

「……うん♡ ……ワン、って鳴いてもいい?」

 

「鳴くな。……他の奴に怪しまれるだろ」

 

「……はぁい♡」

 

 

◆

 

 

放課後の教室。

最後のチャイムが鳴ってから、誰もいなくなったフロアに、

スニーカーの足音が響く。

 

扉を開けると──

そこには、今日もちゃんと、

四つん這いで待っている女がいた。

 

首輪。スカート。汗ばんだ太もも。

そして、伏せたままの視線。

 

結城美桜は、すでに俺のことを“主人”としか見ていない。

 

誰よりもプライドが高かったはずの女が、

今はその目を潤ませながら、教室の床に這いつくばっている。

 

「……透くん」

 

顔を上げた彼女は、首輪のリングをそっと指で押さえながら、甘えた声で言った。

 

「今日も、ちゃんと犬にするって、約束だよね……?」

 

「……ああ」

 

俺は机に鞄を置いて、椅子に腰を下ろす。

 

その動きを確認しただけで、美桜の腰がぴくりと跳ねる。

 

期待と緊張と快楽が入り混じって、

もう“命令待ちの身体”になっていた。

 

「じゃあ、“ワン”」

 

「……わんっ♡」

 

即答だった。

 

昨日よりも声が大きく、素直だった。

 

「もっと情けなく」

 

「わんっ♡ わんっ♡ わ、ん……っ♡」

 

声が震える。

恥ずかしさと、嬉しさと、期待のすべてが、

あえぎに混じって濡れ出している。

 

「……“お手”」

 

美桜は、四つん這いのまま手を上げて、

俺の太ももにそっと乗せてくる。

 

「……透くん、大好きです。お手……します……♡」

 

「よし」

 

俺はその手の甲をポンと叩き、

軽く、優しく撫でた。

 

それだけで、美桜は細く息を吐いて、

恍惚とした表情を浮かべる。

 

「じゃあ、美桜──今日の“ご褒美”が欲しいなら、こっち向けよ」

 

俺が椅子を引いて、腰を少しだけ前に出すと、

美桜はすぐに顔を上げ、うつ伏せのまま、膝で近づいてきた。

 

息が浅い。

喉が鳴っている。

 

ご褒美──

そう言われただけで、もう“舐められる”と決めつけてる顔。

 

俺はゆっくりとズボンの前を開け、

半勃ちの竿を引き出して、

そのまま──美桜の顔すれすれに突き出した。

 

「……っ♡」

 

彼女の鼻先に、俺の先端がふれるかふれないかの距離。

 

目を細めて、口が開きかけた瞬間──

 

「──“マテ”」

 

びくっ。

 

肩が大きく跳ねて、

美桜はその場で硬直した。

 

「……っは、……ま、待て……っ♡」

 

呟くように、命令を反芻しながら、

彼女は舌を引っ込める。

 

でも、目線は逸らせない。

 

「いい子だな、美桜。……偉いぞ。

 ほら、俺の匂いだけ──じっくり嗅いでみろよ」

 

「……っはい……♡」

 

美桜は、膝を進め、鼻先でゆっくりと、俺の竿をなぞるように動かす。

 

 

 

「く、くん……♡ ん、くぅ……っ、すご……♡

 透くんの匂い……濃くて……頭、くらくらする……♡」

 

 

 

顔を赤くしながら、鼻を鳴らす。

 

その動きは、もう完全に、

“犬”だった。

 

「よし。……舐めるのは禁止。

 でも──自分の、触っていいよ」

 

「……えっ、……ほんとに?」

 

「ああ。

 匂いだけでイけるなら、どうぞって感じ」

 

美桜は、震える手をスカートの下へ滑り込ませる。

 

ぐちゅっ──♡という水音が、制服越しにも漏れた。

 

 

 

「んっ、あ、あぁ……♡ やば、ちょ、だめ……♡

 これ……やばい、透くんの匂い、だけで……っ♡」

 

 

 

腰が揺れる。太ももが痙攣する。

“触っている”というより、

すでに“おさえられない”という動きだった。

 

「イっちゃえよ、美桜。

 好きな男の匂い嗅ぎながら、勝手に果ててみろ」

 

「やっ、あっ♡ イっ、イっ……ちゃ……っ♡♡♡」

 

びくんっ!と背筋をのけぞらせ、

彼女は床に手をついたまま、ビクビクと震えながら果てた。

 

顔のすぐ前には、俺の竿。

 

でも──一度も触れさせていない。

 

彼女は、

“欲しかったものに触れられずにイく”ことが、快感になっていた。

 

びくん、びくん……っ!

 

床に崩れ落ちた美桜の太ももが、まだわずかに跳ねている。

下着はすでにぐっしょり濡れていて、スカートの内側は粘液が糸を引いていた。

 

「ふぅ……♡ んっ……だめ、まだ、びくびくする……♡」

 

透の竿は、美桜の目のすぐ前。

 

けれど──透はそれをしまいもせず、

美桜の脚の間にしゃがみ込んだ。

 

「よく頑張ったな。……ご褒美だ」

 

「……えっ? ……ご褒美……?」

 

パンツの端を、透の指がずらす。

 

そして──

 

ぬるんっ……♡

 

一瞬。

 

ほんのひと舐めだけ。

その舌先が、クリトリスの真上を撫で上げた。

 

「……ッッ♡♡♡ ひあっっ♡♡♡ な、なに……今のっ……♡♡♡」

 

美桜の身体が、爆発するように跳ねる。

 

背筋を反らし、机の脚に膝をぶつけても気にせず、

シーツもない教室の床で、派手に痙攣しながら果てる。

 

「だ、だめっ♡♡♡ ひと舐めとか、やばっ……っ♡♡♡

 い、イッ……♡♡♡ イッちゃってるのに、また……♡♡♡」

 

透は静かに舌を引き、

笑いながら立ち上がる。

 

「ふた舐めとは言ったけど、

 俺のを舐めさせるとは言ってないよな」

 

そして──

 

再びしゃがんで、

クリを“もう一舐め”。

 

ぬちゅっ♡

 

「やぁっ♡♡♡ やだっ♡♡♡ やばいっ♡ また、くるっ……♡♡♡」

 

腰を引いても、快感が追いかけてくる。

涙もよだれも混ざって、彼女は崩れるように床に伏せた。

 

「……も、だめ……なにこれ……なんで、こんなに……♡♡♡」

 

そのまま透は、ズボンを整えて、無言で鞄を持ち上げる。

 

「え……? 帰っちゃうの……?」

 

声は弱く、息を引きずるようにして、震えていた。

 

透は振り返らずに、ただ一言だけ吐き捨てる。

 

「──そろそろ、犬も飽きてきたな」

 

扉が静かに閉まる。

 

残された美桜は、

脚を開いたまま、床に崩れて、泣きそうな声でつぶやいた。

 

「……捨てないで……透くん……

 私、もっと……ちゃんと、鳴けるから……♡」

 

◆

 

教室の空気が、少しだけ違っていた。

 

透がいつもの席に座ると、

すぐ隣に、美桜が座ってきた──いつも通りの笑顔で。

 

だけど……今日の彼女は、

どこか、震えていた。

 

「……透くん、おはよう」

 

声のトーンは柔らかく、

でも、視線は落ち着かない。

 

袖口を握る指が、ずっと小刻みに動いていた。

 

「……どうした、美桜」

 

透がそう訊ねると、

美桜は耳まで真っ赤にしながら、

小さな声で言った。

 

「……今日、つけてきたの。……自分で」

 

「……つけた?」

 

「……中に、……おもちゃ、入れてきたの」

 

「…………」

 

沈黙。

 

透が何も言わないでいると、

美桜は恥ずかしそうに顔を伏せたまま、言葉を重ねる。

 

「……昨日、“犬も飽きた”って言われたの、

 ずっと、頭から離れなくて……」

 

「わたし……ただの犬じゃなくて、

 “透くんに飼われたい女”になりたくて……っ」

 

机の下で、スカートの中に手を差し込み、

ぐっ……と膣奥を締めるような仕草をする。

 

「……ちゃんと、入ってるよ?

 中で、透くんのこと考えて……

 もう、朝から、いっぱい反応してる……♡」

 

震える声が、透の鼓膜をくすぐる。

 

「だから、今日も……ちゃんと、“わたしのこと”、見てほしいの……♡」

 

涙ぐんだ瞳が、

“抱いてほしい”ではなく──

 

“見捨てないで”と叫んでいた。

 

◆

 

2限目の講義中。

教室の時間は、静かに進んでいた。

 

窓の外では風が葉を揺らし、

黒板にはつまらない数式が並んでいる。

 

でも──俺の隣に座る美桜は、

そのどれにも集中していなかった。

 

「…………っ」

 

机に肘をついて、顔を隠している。

でも、よく見れば、頬が赤い。

 

そして……その膝の奥。

 

スカートの奥で、

太ももがずっと小さく震えていた。

 

「(……おもちゃ、ほんとに入ってんのかよ)」

 

俺は、美桜の左手にあるシャーペンに目をやりながら、

口を開かずに、そっと言葉を落とす。

 

「……“締めて”。中で、俺の形を思い出しながら」

 

その瞬間。

美桜のペンが、“ピクッ”と止まった。

 

「っ……♡」

 

声は出さない。

でも、目が大きく見開かれ、

教科書の隙間から、うっすらと涙の粒が光った。

 

「(次──5秒だけ、前を刺激しろ。外から、軽くな)」

 

指示を出すと、美桜は机の下に手を滑らせ、

ゆっくりと太ももを押さえるように触れる。

 

スカートの奥、クリトリスの位置を、

シャツの袖越しに軽く圧迫する。

 

「っっ♡♡……ぁ、っく……♡」

 

かすかに唇が開いて、

息が止まったように見えた。

 

「(そのまま、“イきたい”って思ってみろ)」

 

内腿が、わずかに開く。

 

椅子の上、制服の中、

おもちゃを咥えた膣が、

主人の命令で震え出す。

 

そして──

 

「……っ♡っ♡♡……っ、んっ……♡♡」

 

美桜は、授業中の教室で、

声を出さずに、びくんっ!と小さく跳ねた。

 

机の下、パンツの中。

おもちゃ越しに絶頂が突き抜けて、

指先がノートに走らせた文字が、波打つように乱れる。

 

隣で、俺は一言だけ呟いた。

 

「(……いい子)」

 

その一言に、

美桜の頬を一筋の涙が伝う。

 

「(……ありがとう、透くん……♡)」

 

◆

 

放課後の教室。

誰もいない、静まり返った空間。

 

窓の外では夕日が沈みかけていて、

カーテンの隙間から入る光が、机の縁を赤く照らしていた。

 

その光の中、

結城美桜は、今日も机の横で正座していた。

 

背筋をぴんと伸ばし、両手は膝の上。

まるで“ご主人の指示を待つ犬”のように、

目を伏せて息を整えている。

 

透が席に座ると、彼女の肩がぴくりと動いた。

 

「……今日も、ちゃんと、待てたよ」

 

「そうか。じゃあ──ご褒美、やるか」

 

「……うん……♡」

 

美桜の表情に、わずかに笑みが浮かぶ。

 

透は机に肘をつきながら、少し目を細めて訊いた。

 

「今日は、何が欲しい?」

 

美桜は、すこしだけ考えるように唇を噛み、

意を決したように顔を上げた。

 

「……あのね。……今日は、キス……してほしいの」

 

その声は震えていた。

いつもの命令に従う快楽じゃない、

“お願い”に近い声だった。

 

透は一瞬だけ沈黙し、静かに口元を緩めた。

 

「じゃあ──口、開けろ」

 

「……え?」

 

「“キス”ってのは、色んなやり方があるんだよ」

 

美桜は目を見開いたあと、

少し頬を赤らめ、素直に口を開けた。

 

「……んっ……」

 

唇を少しすぼめて、目を閉じる。

 

キスを待つ少女の姿そのものだった。

 

けれど──

 

透は唇を重ねなかった。

 

代わりに、

自分の口内にわずかに溜めた唾液を、

そのまま……ひと滴、彼女の口内にたらした。

 

ぽたり──

 

「……っん♡♡」

 

美桜の身体がぴくんと跳ねた。

 

味も、香りも、

唇すら触れられていないのに、

“彼の中の一部”が、今、自分の中に入ってきた。

 

それだけで、

心臓が跳ねるほど“満たされた”。

 

「……すごい……

 今のだけで……すっごく、キュンとした……♡」

 

「そっか。じゃあ、今日のご褒美は“キス未満の唾液”ってとこだな」

 

美桜は、うっとりしたまま、

自分の胸にそっと手を当てていた。

 

まるで、“心そのもの”に触れられたような顔で。

 

唾液を受け取った美桜は、

その余韻にひたりながらも、

どこかソワソワと、身体を揺らし始めていた。

 

「……あのね、透くん」

 

「ん?」

 

「……まだ、ちゃんと入れてるよ。朝から」

 

「何を?」

 

「おもちゃ……♡ 普通のより、ちょっと大きいの」

 

恥ずかしそうに言いながら、

彼女は机の下で、スカートをゆっくり捲り上げる。

 

透の視線が脚に落ちた瞬間、

美桜の膣が、びくんと震えたのが分かった。

 

「ほら……中に、ね……すごくちゃんと収まってて、

 今も、……ぎゅってしてるの。奥のほう……きゅって」

 

自分で、下着の隙間から指を入れて──

ぬちゅ……♡と、湿った音を立てる。

 

「ね、聞こえる……? 透くんのこと考えてるだけで、

 こんなになっちゃってるの……♡」

 

「そっか。じゃあ……どうして欲しい?」

 

「……おちんちんを……挿れて……欲しいの」

 

真剣だった。

願いのこもった声。

 

「透くんのが、ほしい。……入れてくれるなら、

 “好き”って、何回でも言うから……♡」

 

その言葉を聞いた透は、しばらく黙っていた。

 

そして──

 

「スカート、めくれ。太ももを開け」

 

「……っ、うん……♡」

 

美桜は、言われたとおりにスカートを持ち上げ、

机の上に手をついて、腰を突き出す。

 

パンツはすでに濡れていて、クロッチがぐっしょりと透けている。

 

「……いつでも、入れて……いいよ……♡」

 

机の上に両手をつき、

スカートをたくし上げて腰を突き出した美桜は、

パンツをずらされるのを、静かに待っていた。

 

太ももは震え、背中は汗ばんでいる。

 

透は無言で立ち上がり、

ズボンの前をゆるめる。

 

美桜の目は見えないけれど、

後ろから感じる気配だけで、“来る”と確信していた。

 

「……お願い……透くんの、欲しいの……」

 

パンツの端が、透の指で軽くずらされる。

その一瞬、熱がふわりと広がる。

 

そして──

 

肉棒の先端が、

美桜の“入口”に、ほんの一瞬、ちょんっと触れた。

 

ぬちっ♡ 

 

「──っ♡♡♡♡♡」

 

美桜の身体が跳ね上がった。

 

「やっ♡♡♡ あっ♡ ちょ、ちょっとしか当たってないのにっ……♡

 だ、だめっ、イくっ……イくぅ♡♡♡♡」

 

脚が震え、膝が崩れ、

絶頂が、一気に全身を突き抜ける。

 

果てるというより、爆発した。

 

「すご……そんな、の、やだ……♡

 入ってないのに、こんな……♡ うう、やば……♡♡」

 

机にしがみつきながら果て続ける美桜を見下ろして、

透はゆっくりとズボンを整えた。

 

そして、静かに言う。

 

「……イッたんだろ?

 じゃあ、入れる必要、ないよな」

 

「……え……?」

 

涙とよだれを混ぜたまま、

美桜が顔だけこちらを振り返る。

 

「ま、また……? なんで……そんな……」

 

「お前が“欲しい”って言ったから。

 でも、“愛されたい”とは、一度も言ってないもんな」

 

その一言で、美桜の表情が止まる。

 

何も言えず、

ただ、果てたまま床に崩れ落ちていく。

 

透は、教室の扉を開けながら、

ふっと笑って振り返らずに言い捨てる。

 

「……また明日な、“犬”」

 

バタン、と閉まるドア。

 

残された美桜は、

机に額を押しつけたまま、声にならない声でつぶやく。

 

「……好きだよ……透くん……

 ほんとに、ほんとに……好きなのに……♡」

 

◆

 

放課後。

夕暮れの校舎裏は、風もなく静かだった。

 

カーテンの揺れる音すら届かない場所。

ただ、コンクリートに靴音が響くだけ。

 

「おい、白石」

 

背後から声をかけられた瞬間、

すでに“囲まれていた”ことに気づく。

 

4人。いや、5人か。

 

見覚えのある顔ばかりだった。

教室でいつも笑っていた連中。

昼休みに、美桜の机の前で群れていた奴ら。

 

「最近さ──調子、乗ってね?」

 

先頭の男が笑っている。

でも、目は笑ってなかった。

 

「結城さんとさ、なんか仲良いよなぁ?

 何あれ、デキてんの? お前が?」

 

「キモくね? 正直、吐きそうなんだけど」

 

「つかさぁ、あの子にだけは手ぇ出さないのが“暗黙”だったの、知らないわけ?」

 

透は、なにも言わなかった。

逃げようともしなかった。

 

ただ──

彼女の名前を、ここで“汚されたくない”と思っただけだった。

 

「……なぁに無言決めてんだよ。虫が」

 

──ドスッ!

 

腹に一発、入る。

 

反射的に膝が落ちる。

 

「……っぐ……」

 

そのまま地面に転がされた。

 

靴が、肋に入る。

頬を小突かれる。

口の中に、鉄の味がにじむ。

 

「もう来んなよ? あの子の半径10mにさ」

 

最後に、誰かの声が頭の奥で鳴った。

 

◆

 

コンクリートの冷たさが、

透の背中を貫いていた。

 

「透くん!!」

 

その声を聞いた瞬間、

背中に走るのは安心じゃなかった。

緊張と、苛立ちと、そして……恐怖だった。

 

美桜が駆けてくる音。

 

「何が……何があったの……!? 誰にやられたの……っ!?」

 

しゃがみ込んで、顔を覗き込んでくる。

 

透の頬には擦り傷。

唇の端には薄く血がにじんでいた。

 

美桜は、涙ぐみながら、彼の肩に触れた。

 

「透くん、しっかりして……ねぇ……」

 

その手が、透には耐えられなかった。

 

「……っ、やめろよ」

 

「えっ……?」

 

「いちいち、触ってくんな。……お前のせいだろ」

 

「──え……?」

 

「調子乗って、ベタベタ近づいてきてさ、

 “犬”だの“好き”だの、“舐めたい”だの……」

 

「お前が、勝手にそういうことしてきたせいで──

 俺がどう見られてんのか、考えたことあんのかよ」

 

美桜の瞳が、大きく揺れる。

 

「……そんな……わたし、透くんのこと、ほんとに……」

 

「知らねぇよ。

 勝手に好きになって、勝手に首輪つけて、勝手にイって。

 お前、結局、俺に抱かれたくて媚び売ってただけじゃねえの?」

 

「……っ」

 

美桜が、言葉を詰まらせる。

 

「全部、俺の命令だったよな?

 “ワン”も、“待て”も、“イッて”も──

 命令されたから、してただけなんだろ?」

 

「……じゃあ、俺がいなくなったら、

 今度は他の奴に、“命令して”って尻尾振るわけ?」

 

「──クズだなお前。ほんとにさ」

 

透のその言葉は、自分自身に跳ね返り、

傷の痛みよりも、

もっと深く、心の底を刺していた。

 

美桜は、何も言えずに、

ただ、顔を伏せて──静かに、涙をこぼした。

 

俺は頬に残る打撲の熱を、

袖で乱暴に拭った。

 

痛みはある。

でも、それ以上に、

目の前で泣いている彼女の顔が……鬱陶しくてたまらなかった。

 

「……じゃあさ」

 

俺は、低く呟いた。

 

「“好きな人が踏みつけられて嬉しい”って……言ってみろよ」

 

美桜が、ピタリと涙を止めた。

 

顔を上げた彼女の目は、赤く濡れていて、

意味を理解できていないまま、少しだけ震えていた。

 

「……え……?」

 

「言えよ。おまえの本性は、そういう女なんだろ?」

 

「……好きな人が……」

 

美桜は、喉を鳴らしながら──言った。

 

「……踏みつけられて……うれしい………………」

 

「──そうだよな?」

 

透の声には優しさのかけらもなかった。

命令でもない。ただ、突き刺すような確認だった。

 

「だったら、もっとハッキリ言えよ」

 

「命令されるのが好きなんだろ?

 愛されてないかもしれない男に、

 飼われたいんだろ? 命令されたいんだろ?」

 

美桜の目から、また涙がこぼれた。

それでも──首を縦に振ってしまう。

 

「……うん……命令、してほしい……

 透くんじゃなきゃ……いやなの……」

 

「……だから……命令でも……そんなこと言えない……」

 

「──じゃあ、“服の上から、自分の胸揉んでみろ”」

 

「……っ」

 

抵抗の色はなかった。

美桜は震える指で、自分の制服の胸元をなぞる。

 

ぎゅっ、とシャツ越しに掴んで、

揉むように上下に動かした。

 

「……ん……んんっ……っ」

 

涙を我慢しながら、

恥ずかしさも、痛みも、ぜんぶ噛みしめて。

 

それでも、透の命令に従っていた。

 

「……ごめんね……

 こんなことしか、できなくて……

 でも……私、どうすればいいか分かんなくて……っ」

 

その姿を見ながら、透は無言で立ち上がった。

 

教室の出口に向かって歩き出す。

 

美桜は、命令された姿勢のまま、

制服の上から胸を揉み続けながら、

透の背中を見つめていた。

 

「……捨てないで……透くん……」

 

「私……どこが変でもいいから……

 そばにいさせて……♡」

 

扉の向こう側へと、透の姿が消えたとき、

彼女の頬には、涙と微笑みの混ざったものが浮かんでいた。

 

傷ついた顔じゃなく、縋る顔でもなく──

“まだ命令を待ってる顔”だった。

 

◆

 

放課後の廊下。

透が下駄箱へ向かう途中──

案の定、あいつらはそこにいた。

 

「おーい白石、帰んのか?」

 

軽い声。だけど、目は笑ってない。

 

「その顔、まだ腫れてんじゃん。だっせぇな」

 

「なあ、あれ以来……結城さんとはどう? 冷められたろ?」

 

「そろそろ現実見ようぜ、“虫”くん」

 

聞き飽きた。

その単語、その口ぶり。

でも──

 

「透くん、待って〜」

 

後ろから、美桜の声が響いた。

 

手にはスクバ、制服のリボンもきちんと結ばれている。

笑顔ではない。でも、まっすぐな目だった。

 

そして、何も言わず──

透の手を、ぎゅっと握った。

 

男たちがざわつく。

 

「……え?」

 

「なに、ガチなの?」

 

「うわ、まじかよ……あいつ、正気か?」

 

それでも、透は美桜の手を強く握り返す。

 

そして、ゆっくりと振り返りながら言った。

 

「なあ、美桜。今日って──何の日だったっけ?」

 

一瞬だけ、彼女の目が驚きに揺れる。

 

でもすぐに、唇を柔らかくほころばせる。

 

「……うん。

 付き合って、“1ヶ月記念日”でしょ?」

 

その言葉が出た瞬間、男たちの顔が引きつった。

 

「……は?」

 

「おまっ、それ、いつから……?」

 

「内緒だよ♡」

 

美桜が小さく笑う。

 

透はそのまま、美桜の腰に手を回し──

自然な仕草で、引き寄せた。

 

「な、なにして……っ」

 

彼女が小さく声を上げたときには、

もう透の顔が、彼女の唇に、ほんの一瞬だけ重なっていた。

 

それは演技だった。

フリだった。

見せつけるためだった。

 

──でも、どちらの心にも、

ほんの少しだけ、本当が混ざっていた。

 

「──付き合って、1ヶ月記念日って言っただろ?」

 

そう言って、透が腰に腕を回し、

軽く──ほんの一瞬だけ、美桜の唇を奪った。

 

それだけのはずだった。

 

それだけで終わるはず、だったのに──

 

「……んっ♡」

 

美桜の声が、

予想よりも甘くて、熱を含んでいて。

 

その一音だけで──

透の頭が、真っ白になった。

 

(……やばい)

 

もう、止まらなかった。

 

もう一度、唇を重ねる。

今度は、しっかりと、押しつけるように。

 

彼女の唇が柔らかく開き──

 

「ん、ちゅっ♡……んんっ♡」

 

舌が、触れ合う。

 

ちゅぷ……ちゅるっ……♡

 

いやらしい水音が、廊下に響く。

 

彼女の舌が、恐る恐る絡んでくるのを、

透は強く吸い寄せて、ねっとりと吸い上げた。

 

「っちゅ……♡ん、くぅっ♡ んっ♡……っ♡」

 

美桜の指が透のシャツを握りしめ、

肩を抱くように寄りかかる。

 

彼女の脚が、ほんのわずかに内股に寄っていくのが見えた。

 

その姿は、キスだけで“抱かれている”ようだった。

 

「……ちゅ、ちゅっ♡……ぬる、んっ♡……」

 

唾液が糸を引きながら、

口の端から、とろりとこぼれる。

 

透の手が、美桜のうなじをやさしく撫で、

逃がさないように、頭を固定する。

 

「ん、ちゅ……♡ は、ぁ……♡ 透くん……♡

 す、き……♡ しゅき……♡」

 

もう、誰が見ているとか、どうでもよかった。

 

でも──

 

「おい……やばくね?」

「マジで……本気……?」

 

後ろの男たちは、顔を赤らめて硬直していた。

 

さっきまで馬鹿にしていた連中が、

今は目を逸らし、言葉を失っている。

 

あまりに熱く、あまりに淫らで、

“恋人のフリ”にしては、

濃すぎるキスだったから。

 

ちゅぷっ♡……ちゅ、るるっ……♡♡ 

 

吐息すらも甘く、

触れ合った唇と舌が、

お互いの心まで舐め合っているみたいだった。

 

「……っぷ……はぁ……♡」

 

美桜の唇が離れた瞬間、

とろりと伸びた唾液の糸が、ふたりの口のあいだに残った。

 

目の前で──

美桜が、ぐしゃぐしゃにとろけた顔で、透を見上げている。

 

瞳の端には涙の粒が光っていて、

それでも微笑んで、こう言った。

 

「……ありがと……透くん……♡」

 

「え?」

 

「記念日……“ご褒美”……すごく、嬉しかった」

 

あのキスを、

“ご褒美”と呼んだのは──彼女の優しさだった。

 

透が、傷つかないように。

恥ずかしくならないように。

 

──でも。

 

唇がまだ、熱い。

舌の奥に、彼女の味が残ってる。

喉が渇いてるはずなのに、口内だけが濡れている感覚。

 

(抱きたかった。今すぐ)

 

(でも、あれは見せつけるための嘘だった)

 

(……でも)

 

「なぁ……美桜」

 

「……なに?」

 

透は一歩、彼女に近づいた。

 

その足音で、美桜の睫毛が小さく揺れる。

 

「お前が“嬉しい”って言ったこのキス……

 もし、俺が“本気で”してたら──どうする?」

 

その問いに、彼女は一瞬だけ目を見開いて、

すぐに笑った。

 

すごく、やさしい顔だった。

 

「……嬉しいに決まってるじゃん。

 私も“本気”だったのは……同じだから」

 

「でも、透くんとキスしてたら、

 途中から……エッチしたくなっちゃった」

 

「……私、ずっと待ってたんだよ?──」

 

「……透くんの“好き”が、わたしの中に落ちてくるの、

 ずっと……待ってたんだよ……♡」

 

──その声に、もう“演技”なんて残っていなかった。

 

美桜は、ただ、

本気で人を好きになってしまった、ひとりの女の子だった。

 

「……透くん」

 

キスのあと、

静まり返った廊下で、美桜がぽつりと呟いた。

 

息は浅くて、唇は濡れていて、

でも、その目だけはまっすぐだった。

 

「いまの……演技じゃなかったんだよね?」

 

言葉が重くて、優しかった。

 

だからこそ──透は、それをすぐには受け取れなかった。

 

「……は?」

 

「勘違いすんなよ。

 誰が、お前のことなんか“本気で”好きになるかよ」

 

「……っ」

 

「ただの見せつけ。そういう空気だったから、

 合わせただけ。俺が演技上手すぎたってだけだろ」

 

美桜の唇が、かすかに震えた。

 

ほんの数分前まで、

彼女の中には“希望”があったはずなのに。

 

「でも……さっき、透くん……」

 

「……キスくらい、誰でもできんだよ」

 

その言葉は、

自分の心臓に一番刺さっていた。

 

けれど、それを“口に出すことでしか自分を守れない”

そういう男だった。透は。

 

「……そっか」

 

美桜は、目を伏せた。

でも──その唇は、やさしく笑っていた。

 

「……ごめんね。

 好きになったの、勝手だから。

 止めろって言われても、きっともう止まんないや」

 

「透くんのそういうとこも、ぜんぶ知ってて……

 それでも好きって言える自分が、

 たぶん、もうちょっと壊れかけてるんだと思う」

 

「でも、もうそれでいいや……♡」

 

透は、それ以上何も言えなかった。

 

言葉が喉に詰まって、

それを出すことが──敗北のように感じていた。

 

だから、

ただひとこと、背中を向けて吐いた。

 

「……バカ」

 

その言葉に、美桜は微笑んだ。

 

言い返さなかった。

責めなかった。

泣かなかった。

 

ただ、自分の中の“好き”を、抱きしめていた。

 

◆

 

部屋でくたばっていた透のスマホに、通知が一件。

送り主は“結城 美桜”。本文はたったひとこと。

 

【今夜、会いにいってもいい? わたし、首輪、つけていくから。】

 

時計は22:48。

部屋の外は、もう寝静まった街の気配だった。

 

──ピンポン。

 

インターホンが鳴る。

 

玄関を開けると、そこにいたのは──

濃紺のロングコートに包まれた美桜だった。

 

「……透くん。来ちゃった」

 

コートの襟をきゅっと掴んで、

頬を赤らめて、目を伏せる。

 

その襟元には、

見慣れた赤いスカーフ──

首輪を隠すための“擬態”が巻かれていた。

 

「……また、犬になっていい?」

 

「おさんぽ……したくて。

 透くんに、連れてってほしいの……♡」

 

声は震えていた。

でもその奥には、確かな熱があった。

 

 

 

美桜は、自分からバッグを開き、

そこから“赤いリード”を取り出して差し出した。

 

 

 

「……繋いで。……ね?」

 

 

 

その姿は、

あまりにも淫靡で、健気だった。

 

透は何も言わず、それを受け取り──

カチッと、金具を首輪のDリングに繋ぐ。

 

 

 

リードが張る音が、夜に響いた。

 

 

 

「……わんっ♡」

 

 

透は、美桜のリードを静かに引いた。

住宅街の明かりはまばらで、

街灯の切れた場所を選んで歩けば、ふたりの姿はほとんど見えない。

 

 

 

コートの裾が揺れるたび、

その中でスカートの端が揺れているのが、ちらちらと覗く。

 

 

 

歩幅を半歩分遅らせて、

美桜は透の後ろを、2メートルほどの距離でついてくる。

 

 

 

「……ねえ、透くん」

 

 

 

その声は、風の音に紛れて、ほとんど囁きだった。

 

 

 

「今夜は……抱かれたい、かも」

 

 

 

リードを握る手が、

わずかに反応する。

 

でも、透は立ち止まらずに、足音だけを響かせた。

 

 

 

「だって……ずっと、頭ん中そればっかりで……

 “挿れて”もらうことばっかり想像して……

 わたし、ずっと……ぐちゅってしてるの……♡」

 

 

 

その言葉に合わせるように、

美桜はコートの内側に指を滑り込ませる。

 

足を閉じたまま、

太ももの付け根に手を這わせ──

 

 

 

「ねぇ、聞こえる……? 音……っ」

 

 

 

ぬちゅっ♡……くちゅ……♡

 

 

 

夜の静寂に、

湿った音がふたりのあいだに生まれた。

 

 

 

「“まだ挿れない”って言われるの……

 分かってるのに……

 言われるたび、もっと濡れちゃう……♡」

 

 

 

街灯が切れた路地で、

透はついに足を止めた。

 

 

 

「……じゃあ、“脱げ”」

 

 

 

それだけ言って、

リードを軽く引く。

 

 

 

美桜の喉がかすかに鳴り──

次の瞬間、彼女はコートの前を開きはじめた。

 

 

小さく、でも確かに鳴いたその声に、

透の理性が、微かに揺れた。

 

 

美桜の指が、

コートのボタンを一つずつ外していくたびに──

夜の空気が、その肌に触れていく。

 

 

 

風は冷たいのに、

美桜の体は、うっすらと汗ばんでいた。

 

 

 

最後のボタンが外れると、

ロングコートが、しゅる……と肩から落ちる。

 

その下から現れたのは──

 

透けるほど薄いブラと、

ピンクのレースのショーツだけ。

 

 

 

制服の下に、

最初からこれを仕込んでいたのだと思うと──

透は思わず喉を鳴らした。

 

 

 

「……見て、透くん……

 わたし、こんな格好で外にいるんだよ……?」

 

 

 

「恥ずかしいよ……でも、気持ちよくて……♡

 透くんに、見てもらえるって思うと……全部、うれしくなっちゃうの……♡」

 

 

 

彼女は自分の体を抱きしめるようにして、

寒さと羞恥と快感を、すべて混ぜながら震えていた。

 

 

 

「ねえ……今日こそ、挿れてほしい……

 “わん”でも、“おすわり”でも、なんでもするから……♡」

 

 

 

その言葉に、

透の指が、ゆっくりとベルトにかかる。

 

 

 

下着だけの美桜に、

その膣♡のすぐ近くに──

彼の竿が、布越しに近づいていく。

 

 

 

「……言ったな。なんでもするって」

 

 

 

「……うん♡ わたし……透くんのためなら、なんでも♡」

 

 

 

「じゃあ、“そこにだけ”当ててみろ。入れないけどな」

 

 

 

「……っ♡♡」

 

 

透の指が、ゆっくりとズボンの前を緩める。

 

それを見た美桜は、

わずかに口を開けて、息を呑んだ。

 

 

 

そして──

 

彼の竿が、夜気のなかに、ぬるりと現れる。

 

光の届かない闇に、

勃ち上がったその存在だけが、熱を持って浮かんでいた。

 

 

 

「……しゃがめ。脚、開いて」

 

 

 

「っ♡……はい……♡」

 

 

 

美桜は、言われるままにしゃがみこむ。

夜のアスファルトの冷たさが、膝を伝う。

 

スカートはとっくにめくれていて、

ショーツの奥はすでに、ぐちゅぐちゅと湿っている。

 

 

 

「……ほら。ここに、当ててみろよ」

 

 

 

透が竿を、

彼女のショーツ越しの膣口に、そっと押し当てる。

 

直接、挿れたりはしない。

でも──その熱と質感が、ぴったりと“そこ”に、重なった。

 

 

 

「っ♡♡♡」

 

 

 

びくっ……!

 

 

 

美桜の太ももが跳ねた。

 

 

 

「や、やだ……っ♡

 そこ……当てられるだけで、

 イきそうになっちゃうの……♡♡」

 

 

 

透は何も言わず、

ただ竿をゆっくり、膣♡に沿って擦る。

 

ぬちっ、ぬちゅ……♡♡ 

 

 

 

下着越しに、彼女の柔らかい部分が歪んでいく。

 

その感触を味わうように、

先端がじゅるり……と擦れるたび、

 

 

 

「やっ……あっ♡ だめっ、だめなのに……♡

 挿れてもらってないのに……こんな……♡♡」

 

 

 

美桜は、耐えきれず、

口を押さえながら──

 

 

 

「イっ、イっちゃうっ……♡♡♡」

 

 

 

びくんっ、びくんっ……!

 

 

 

腰が跳ねて、脚が痙攣して、

“当てられた”だけで、美桜は果てていった。

 

唾液と涙と愛液とが混ざって、

夜の道に、かすかな喘ぎだけが残された。

 

 

「……ねぇ、透くん……お願い……」

 

 

 

絶頂の余韻のなかで、

美桜はかすれる声で呟いた。

 

スカートはすでに腰までめくれ、

ショーツの奥はとろとろに溢れて、

股間を締めつけるように震えている。

 

 

 

「お願い……透くんの……ほしいの……♡」

 

 

 

その言葉に、

透は黙ってバッグの中を探った。

 

取り出したのは──黒のシリコン製ディルド。

 

サイズは中くらい。

少し硬めで、リアルな造形。

 

 

 

「……な、に……それ……?」

 

 

 

美桜が、涙で濡れた目で問う。

 

 

 

透は、冷たく微笑んだ。

 

 

 

「お前、気持ちよくなれればなんでもいいんだろ?」

 

 

 

「……ちがっ……私は……透くんに……っ」

 

 

 

「じゃあ──試してみようぜ。

 “俺のじゃなくても”イケるのか。」

 

 

 

「……っ♡」

 

 

 

透は、ゆっくりとディルドを持った手で、

美桜の太ももを開かせる。

 

リードを引かれてよろけながら、

彼女は素直に脚を開いた。

 

 

 

「自分で、入れろよ」

 

 

 

「……う、ん……っ」

 

 

 

美桜は、震える指でディルドを受け取る。

 

その先端を、びしょ濡れになった自分の膣口に、そっと当て──

 

 

 

「んっ♡……入る……♡

 透くんじゃ……ないのに……♡

 それでも……入ってきちゃう……♡♡」

 

 

 

ずぷっ……♡

 

 

 

音が、夜に溶けた。

 

膣内に、異物が埋まっていく。

 

 

 

「や、ばい……

 わたし……入れてるだけなのに……

 頭、ぐらぐらする……♡♡」

 

 

 

「透くんのじゃ、ないのに……

 あたし、こんなの、で……イきそう……♡♡♡」

 

 

 

ぬちゅっ……ぬるっ……ぬちゅ♡♡ 

 

 

 

自分の手で、

透じゃないモノを、何度も奥まで入れながら──

 

 

 

「っく、くぅっ♡ イッ……イク……っ♡♡♡」

 

 

 

果てる。

 

自分で、自分の奥に“他のモノ”を埋め込みながら──

それでも、「透くんのせい」で果てていた。

 

 

 

「ねぇ……透くん……♡

 わたし、これでも、好きって言えるかな……♡?」

 

 

ぬちゅ、ぬちゅっ……♡

 

美桜の中に埋まった異物が、まだ震えている。

 

けれどそれを握る手は、もう動かしていなかった。

 

 

 

「はぁ……っ、ん……♡

 イっちゃった……っ♡

 透くんのじゃ……ないのに……♡」

 

 

 

しゃがみこんだ姿勢のまま、

彼女はぽたぽたと涙をこぼしていた。

 

身体は熱を残し、快楽の痺れに浸ったまま。

 

でも心だけが、

満たされずに冷えていくのを知っていた。

 

 

 

透は、無言で近づく。

 

そして──美桜の手からディルドを抜き取った。

 

ずるっ……♡

 

中から抜け出たソレには、

愛液が濃く絡みついていた。

 

 

 

透はそれを見下ろして、

近くの植え込みに無造作に投げ捨てた。

 

 

 

美桜の肩が、小さく震える。

 

それが寒さか、虚しさか、悦びか──

透にも分からなかった。

 

 

 

「……歩けるか」

 

 

 

「……うん……」

 

 

 

「じゃあ、帰るぞ。立て。ほら」

 

 

 

リードを引こうとしたとき──

 

 

 

美桜が、ふらりと身体を起こして、

そっと、透の手を握ってきた。

 

 

 

「……繋いで。ね……?」

 

 

 

彼女の手は、小さくて、まだ温かかった。

 

さっきまで、自分の中で“他人の形”を受け入れていた手なのに。

その指先だけが、まるで**“恋人ごっこ”のような願い**を持っていた。

 

 

 

「……馬鹿だろ、お前」

 

 

 

「うん。ばかだよ」

 

 

 

「俺のじゃなくてもイッたくせに」

 

 

 

「でも……“透くんの手”は、好きなんだもん……♡」

 

 

 

ふたりはそのまま、

リードではなく──手を繋いで歩き出した。

 

夜の帰り道。

誰も見ていない場所で。

 

 

 

催眠で身体を支配できても、

心はまだ“本物”を欲しがっていた。

 

◆

 

チャイムが鳴ったのは、夜の21時を少し過ぎた頃だった。

 

ドアを開けると、美桜がいた。

制服のまま、髪を結い直して、少しだけ息を弾ませて。

 

 

 

「……こんばんは、透くん」

 

 

 

カバンは持っていない。

けれど、リップを引き直した跡があった。

 

つまり、準備して来たということだった。

 

 

 

「入っていい?」

 

透は無言でドアを開け、

彼女がするりと部屋に滑り込む。

 

リビングの灯りは落とされていて、

ベッド脇の小さな間接照明だけが空間を照らしていた。

 

 

 

「今日は……ちゃんと、

 “好き”って伝えられたらいいなって、思ってたの」

 

 

 

少しだけ、笑うような、

少しだけ泣きそうな声。

 

 

 

「……ううん、違うな。

 “抱いてほしいな”って思っちゃってたんだ」

 

 

 

彼女はそう言って、

自分からベッドに腰を下ろした。

 

そして──

 

シャツのボタンを、上から一つずつ、外し始める。

 

 

 

「でも、抱いてって命令じゃないから。

 言ってみるだけ、だよ?」

 

 

 

視線を透から逸らさずに、

彼女はブラの肩紐をずらしながら、少しだけ微笑んだ。

 

 

 

透は無言のまま、その前に膝をつく。

そして──

 

そっと唇を近づけた。

 

 

美桜はベッドに仰向けになっていた。

ブラのホックは外され、左右に広げた下着の内側、乳首が硬く立っていた。

 

透は、無言でその先端に舌を這わせる。

 

ちゅ……ぺろっ、ぬちゅ……♡

 

 

 

「っん、くぅ♡ あっ、そ……そこ、もっと……♡」

 

 

 

甘く喘ぐ声と、ベッドの軋む音だけが、部屋に満ちていた。

 

透の舌は乳首の輪郭をなぞるたび、

美桜の脚が勝手に動く。擦れる太もも、熱い吐息。

 

 

 

「ダメ……そこ、ダメなの……♡ 感じすぎて……♡」

 

 

 

今度は下。

透がゆっくりと下着を指でずらすと、

そこはもう、光を反射するほどとろとろに濡れていた。

 

 

 

「恥ずかしいよ……♡ 見ないで……♡」

 

 

 

ぬちゅ……ぺろっ……じゅるる……♡

 

クリトリスに舌を絡ませた瞬間、

美桜はびくんと背中を浮かせた。

 

 

 

「っ♡♡ あっ、透くんっ、イくっ♡ イっちゃうっ……♡♡♡」

 

 

 

びくびくと震えながら、

美桜は果てる。

 

その後も透は、指を中に入れずに、

舌と唇だけで、何度も彼女を絶頂へ誘う。

 

 

 

二度目の果てのあと、

美桜は汗で濡れた髪をかきあげながら、潤んだ目で透を見た。

 

 

 

「透くん……もう、いいでしょ……?

 ……わたし、準備できてるよ……」

 

 

 

震える声で、そう言って──

 

自分の脚を、ゆっくりと開いてみせた。

 

 

 

「……だから、挿れて……♡」

 

 

 

透は、その身体を、顔を、見つめたまま──

 

 

 

手を、止めた。

 

 

美桜の身体は、汗と愛液に濡れていた。

 

脚を開き、腕で胸を隠しながら、

それでもその目だけはまっすぐ、透を見ていた。

 

 

 

「……透くん……

 わたし、こんなに……感じて……好きになって……

 “抱いて”って、言ってるのに……」

 

 

 

声は甘く、でも不安に揺れていた。

 

震える唇が、もう一度繰り返す。

 

 

 

「なんで……抱いてくれないの……?」

 

 

 

──その言葉に、透はわずかに眉を動かす。

 

そして、静かに──

言い捨てるように、呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……だって、催眠だもん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美桜の目が、大きく開く。

 

 

 

透は俯いたまま、拳をぎゅっと握った。

 

 

 

「お前が俺のこと好きなの、

 “催眠アプリ”のせいなんだよっ!」

 

 

 

「そんなの、ただの偽物だろ。

 気持ちよくしてもらえて、好きになった“暗示”にかかって──

 それで、“抱いて”って言ってるだけじゃねぇか」

 

 

 

「これは……復讐なんだよ、俺にとっては……」

 

 

 

「好きでもない女が、“好きって言って”って命令されて……

 そのとおり喘いで、絶頂して、俺に媚びる──

 そういう絵が見たくて、やってたんだよ、最初は」

 

 

 

「それを、今さら……“好きだ”なんて言われても──

 どうせ、催眠なんだろ? 

 “本当は俺のことなんか好きじゃねえくせに”」

 

 

 

「そんな女、俺は──」

 

 

 

「──抱けねぇよ」

 

 

 

声が、震えていた。

 

それはまるで、

自分に向けた呪いのようだった。

 

 

 

透の手が、美桜から離れていく。

 

その温度が、彼女の肌から消えていく。

 

 

 

「……透くん……」

 

 

 

美桜は、唇を噛みながら、

濡れた太ももを閉じ、そっと息を吸い込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「透くん……

 催眠なんて、かかってないよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その声が、あまりにも静かだったから、

透は、すぐに聞き返せなかった。

 

 

 

「……は?」

 

 

 

美桜は小さく、でもはっきりと笑った。

 

 

 

「だから……私が透くんのことを好きなのは、

 最初から、私の気持ちなんだよ」

 

 

 

透の手が、ぴくりと震えた。

 

だけど、それ以上動けなかった。

 

 

 

「……でも、俺は、アプリ使って──それで……」

 

 

 

「それ、私が置いたの。

 透くんの前に、わざと。」

 

 

 

「えっ……?」

 

 

 

「透くんが、どう思ってるのか……

 何か、ひとつでも……

 “私を見てくれてた”って証拠がほしくて」

 

 

 

透の心臓が跳ねる。

 

そんなの──知らなかった。

 

知るはずもなかった。

 

 

 

「昔さ、仲良かったよね。

 小学校のとき、一緒に帰ってた。

 コンビニの前で、いつも駄菓子を一緒にたべてたくさん喋った」

 

 

 

「でも、学年が上がるにつれて……

 話すグループが変わっていって──

 私、“学校のアイドル”とか呼ばれるようになって……」

 

 

 

「ある日、勇気出して話しかけたらさ、

 友達に言われたんだよ。“あんなオタクと話すのやめなよ”って」

 

 

 

「……透くんに話しかけたかったのに、

 怖くて、それでも声をかけたくて──

 だから、“虫”って言った

 そう話しかけるしかできなかったから……」

 

 

 

声が震え始める。

 

でも彼女は止めなかった。

 

 

 

「話しかけたかったのに……

 “話すために、罵る”ことしかできなかったの……」

 

 

 

「それからはもう、

 “話すために傷つける”ことしか、できなくなっちゃったんだ」

 

 

 

透は、それでも黙っていた。

 

動けなかった。

何も返せなかった。

 

 

 

彼女の声が、苦しげに、でもまっすぐ続く。

 

 

 

「だから、催眠のフリをして、スマホを置いた。

 透くんが私のことをどう思ってるか知れるなら、

 透くんが私に何かしてくれたなら、

 きっと私は……自分を許せる気がしたから」

 

 

「わたし、最初は……えっちなこと、すごく恥ずかしかったの」

 

 

 

「命令されて、脱ぐのも。舐めるのも。

 “わん”って鳴くのも……もう、死にたくなるくらい恥ずかしかった」

 

 

 

「罰だったんだよ、全部。

 透くんに抱かれたいって思ったのも、

 “虫”って言ったこと、忘れたくなくて──」

 

 

 

「でも、でもね……」

 

 

 

その目から、涙がこぼれる。

 

 

 

「キスされたとき……本当に、うれしかったの。

 嬉しすぎて、

 罰とか、どうでもよくなっちゃって──

 “あ、好きだ”って、心が勝手に動いてた」

 

 

 

「わたし、本当に、透くんのことが……」

 

 

 

その言葉を飲み込むようにして、

透が突然立ち上がった。

 

 

 

 

 

「──もういい」

 

 

 

美桜の目が見開かれる。

 

透は、表情を見せず、背を向けて──

 

 

 

「抱かねーよ」

 

 

 

そのまま、ドアを開けて、

夜の廊下へと姿を消した。

 

 

 

──残された美桜は、

シーツの上で、涙と呼吸だけを震わせていた。

 

 

◆

 

「──抱かねーよ」

 

そう言い残して部屋を出た透は、

勢いよくドアを閉めるつもりだった。

 

でも、なぜか手のひらが最後にブレーキをかけて、

ドアは音を立てずに、静かに閉まった。

 

 

 

廊下の薄明かりの中。

壁に背を預ける。

 

そこから動けなかった。

 

 

 

美桜の声が、脳内に残っていた。

 

──キスされたとき、嬉しかった。

──“虫”って言ったのは、話したかったから。

 

 

 

その一言一言が、

透の中で、何年も凝り固まっていた痛みを掘り起こしていく。

 

 

 

(嘘だろ……今さら……)

 

(“話しかけたくて”って──)

 

(俺は、何年も“拒絶”だと思ってたのに)

 

(虫って言われたことを、“軽蔑”だと思ってたのに)

 

 

 

「……あのとき、お前が泣いてくれたら、

 俺、全部違う人間になれたのかもな……」

 

 

 

呟いた言葉は、壁に吸い込まれて消えた。

 

 

 

美桜のことが、好きだった。

昔から。

 

変わってしまったのは、美桜じゃなかった。

透のほうだった。

 

 

 

“罵倒されるたびに、感情を切り捨ててきた。”

 

“好き”なんて思わないように、

心を殺して、平気なフリして。

 

命令すれば、従う女になる。

催眠で、手に入れた形だけの愛。

 

 

 

(それで満足だった。

 ……はずだったのに)

 

 

 

扉の向こうに、美桜がいる。

まだ、泣いてるかもしれない。

 

透は、その場にしゃがみ込んだ。

 

 

 

唇を、噛んだ。

 

 

 

拳を、握った。

 

 

 

誰もいない廊下の片隅で、

透はスマホを取り出した。

 

画面には、催眠アプリ。

──いまは見たくない現実。

 

 

 

「……はぁ」

 

 

 

深く息を吐いて、一度“削除”のアイコンに指をかけた。

だけど、そのまま──そこに一行だけ、入力する。

 

 

 

中に入ると──

美桜はまだベッドの上にいた。

 

シーツを胸元に引き寄せ、

まるで泣き疲れたように、ぼんやりと灯りを見ていた。

 

 

 

透は、何も言わずに近づいて──

スマホの画面を、美桜の前に突き出した。

 

 

 

「……え?」

 

 

 

美桜がゆっくりと起き上がり、

画面を覗き込む。

 

 

 

そこには、ひとこと。

 

 

 

 

 

 

『白石透 は、 結城美桜 のことが世界で一番好きで、抱きたくてたまらない』

 

 

 

 

 

 

「……なに、これ……?」

 

 

 

透は、うつむいたまま、静かに言った。

 

 

 

「……俺、催眠にかかった」

 

 

 

「だからもう──

 お前のこと、抱きたくてたまらない」

 

◆

 

「……俺、催眠にかかった」

 

その言葉のあと、

透は視線を落としたまま、美桜に背を向けた。

 

 

ベッドに腰かけていた美桜は、

数秒だけ、何も言わなかった。

 

でも──そっと笑った。

 

 

 

「……ふふ。

 それなら──しょうがないね」

 

 

 

“催眠のせいなら、抱かれてもしかたない”──

そうやって口にした彼女の声は、

明らかに、すべてをわかっていた。

 

わかってて、受け入れてくれた。

 

 

 

透は、もう何も言わず、ベッドの端に腰を下ろす。

 

ほんの少し、空気が震えた。

 

その振動だけで、美桜の心拍が上がるのがわかった。

 

 

 

「……本当に、抱くからな」

 

 

 

「うん」

 

 

 

 

美桜は、小さく頷く。

 

頬は赤く、でも目はまっすぐに透を見ていた。

 

 

 

「うん……“催眠の透くん”に、

 ぜんぶ、されたいの……♡」

 

 

 

透の手が、彼女の肩にそっと添えられた。

 

ゆっくりと、ベッドに押し倒す。

シーツに沈んだその身体が、

わずかに震えていた。

 

 

 

でもその震えは、恐怖じゃなかった。

 

“やっと繋がれる”と知ったときの、

期待と、決意の震えだった。

 

 

美桜が、ベッドに横たわる。

透はその上に膝をかけ、ゆっくりと身体をかぶせていく。

 

熱が肌を通じて伝わり、

唇が触れあう直前の、その数秒──

ふたりとも呼吸が止まっていた。

 

 

 

「……透くん、お願い……」

 

囁くような声に、

透は答えず、そのまま首筋へ唇を落とした。

 

 

 

くちゅっ……ちゅ、ぬる……♡

 

 

 

最初に吸い上げたのは、鎖骨のすぐ上。

 

美桜の喉が小さく震え、

「……ん♡」と控えめな吐息が漏れる。

 

 

 

指先が、ブラウスのボタンに触れる。

 

ひとつ、ふたつ──ゆっくりと外していく。

美桜はそのたびに、背中をそっとそらせて受け入れた。

 

 

 

ボタンの隙間から覗いた下着のレースに、

透は歯を立てるようにしてストラップをずらす。

 

 

 

「やぁ……♡ そんな……恥ずかしいよ……♡」

 

 

 

でも、その声とは裏腹に、

美桜の身体は、触れられるたびに熱を増していく。

 

 

 

背中へ回した透の指が、スカートのジッパーにかかる。

 

カチ……

ゆっくりと滑り落ちていくファスナーの音に、

美桜が身体をすくませた。

 

 

 

「っ……脱がされるの、ゆっくりすぎて……♡

 変な気持ちになる……♡」

 

 

 

「……おまえの催眠は消したけどな」

 

透が冗談のように返すと、

美桜は小さく笑って「……バカ♡」と答えた。

 

その笑顔のまま、スカートがベッドに滑り落ちる。

 

 

 

ふたりの肌と下着だけが重なる距離。

焦らしながら、でももう引き返さない。

 

透の指が、ブラのホックへ伸びていく。

 

 

ブラのホックが、ぱちん、と外された。

ストラップが肩をすべり落ち、

透の目の前に、美桜の白くて柔らかな胸があらわになる。

 

 

 

そのまま、唇を重ねた。

 

最初は静かに──

でも、すぐに、ねっとりと、深く。

 

 

 

ちゅっ……ぬる、ちゅぷ……♡ 

 

美桜の唇が、透の舌を受け入れて、

それに答えるように、自分から絡めてくる。

 

 

 

「ん、ふぅっ……♡ ちゅ、ん、んっ♡♡」

 

 

 

舌と舌が、柔らかく、でも必死に溶け合う。

キスだけで、空気が濡れていくようだった。

 

 

 

透が少し顔を引くと、

二人の唇のあいだに、とろりと唾液の糸がのびる。

 

 

 

「やっ……すご……ぬるぬる……♡

 透くんのキス、やだ……すっごく、えっち……♡」

 

 

 

顔を真っ赤にしながら、

それでも美桜は自分から、また唇を探してくる。

 

 

 

ちゅぷ……♡ ぬちゅっ……ちゅ、んっ♡♡

 

唇の形が歪むほどに吸いついて、

舌の根元まで、互いに味わう。

 

透の手は、背中を撫でながら、

ゆっくりと乳房へ──

硬くなりかけた先端に、指がふれる。

 

 

 

「ひゃ……っ♡ そこ、だめ……キスだけでイきそうなのに……♡」

 

 

 

透は笑わない。

ただキスを続ける。

 

それが、“催眠”という言い訳を使った本音のぶつけ方だった。

 

 

ちゅ、ちゅるっ……♡ 

 

キスの名残を舌に残したまま、

透の口が美桜の唇から離れ、顎、首筋へと下っていく。

 

ぴと、と張りつくような唇の感触。

熱を引きずるように、乳房のすぐ上で止まった。

 

 

 

「んっ……♡ あ……そこ、来る……♡」

 

 

 

美桜の声が震える。

 

透は片手で乳房の下を持ち上げながら、

もう一方の指先で、乳輪の輪郭をなぞった。

 

 

 

なぞる。押さえる。すくう。ひねる。

すべてが、じっくり、ゆっくり。

 

 

 

「や、あっ……♡ やぁ……そんなの……っ♡」

 

 

 

先端をぷくりと膨らませた乳首を、

舌でそっと撫でる。

 

ぺろ……ちゅっ、ぬるっ……♡

 

 

 

「っ♡ っく、ふぅっ……♡♡ やば……なにこれ……っ♡」

 

 

 

そのまま、しっかりと口に含み、

じゅぷっ、ちゅぅ……と吸い上げると、

美桜の腰がびくんと跳ねた。

 

 

 

「んあっ♡ あっ、だめぇ……♡

 それ、感じすぎて……♡ そこばっかりは……やぁっ♡♡」

 

 

 

透の舌が、左右の乳首を交互に攻めるあいだ、

手はさらに下へ──

 

スカートを脱いだ太ももへ指を滑らせ、

内腿の柔らかさを味わうように撫でていく。

 

 

 

「透くん……だめ、そこ……触れないで……♡

 でも……もっと……♡」

 

 

 

パンツの脇まで指を運んで、

そのまま触れずにまた太腿に戻す。

 

その“すれすれ”の焦らしに、

美桜は何度も脚をすり合わせながら、

言葉にならない声を漏らす。

 

 

 

「お願い、焦らさないで……透くん……♡」

 

 

 

透は、答えなかった。

ただ、キスよりも、愛撫よりも、ゆっくりと──

言葉の代わりに指先で“好き”を伝え続けていた。

 

 

 

透が腰を浮かせて、ゆっくりとボクサーを下ろすと──

熱を帯びた竿が、息を吸うように立ち上がる。

 

 

 

美桜の視線が、そこに吸い寄せられる。

 

 

 

「……透くんの……」

 

 

 

少しだけ間を置いて、

美桜は、自分からベッドの上に膝をつき、身体を前へと這わせていった。

 

 

 

「お願い、していい……?」

 

 

 

その言葉に、透は何も言わずに頷いた。

 

それだけで、美桜はそっと手を伸ばす。

 

 

 

指先で包み込むように竿を握ると、

その熱と硬さに、わずかに頬を染めて──

 

 

 

ちゅっ……♡

 

 

 

先端に、口づけを落とす。

 

 

 

「……ずっと、したかったの……

 “ひと舐めだけ”じゃなくて……

 ちゃんと、全部……舐めたかったの……♡」

 

 

 

そのまま、美桜は先端に舌を這わせた。

 

ぺろっ……ちゅっ、ぬる……♡

 

唾液を絡ませながら、ゆっくり、丁寧に。

 

竿の裏筋を、舌先でなぞって、

根元までじっくりと。

 

 

 

じゅる、くちゅっ……♡ 

 

透が喉奥まで入れてきたわけじゃない。

でも、美桜の口は“自分の意思”で咥えていく。

 

 

 

「ん、んんっ……♡ ん……ちゅ、ぷっ……♡」

 

 

 

唇で包み込んで、吸い上げるように咥えるたび、

口の端から、粘り気を帯びた唾液が垂れた。

 

 

 

美桜は、顔を赤く染めながらも──

 

 

 

「……透くんの味、する……♡

 ……嬉しい……♡ これ、ずっと……欲しかったの……♡」

 

 

 

ちゅっ……じゅぷっ……くちゅ♡ 

 

唇の奥で舌を絡めて、

愛おしそうに、なめ尽くす。

 

まるで、

“愛してる”を、口と舌で伝えているみたいに。

 

 

 

透がその顔を見下ろすと──

涙が浮かんだ瞳が、しっかりと彼を見ていた。

 

 

 

「おい……そんなに嬉しそうにすんなよ」

 

 

 

「……だって……

 透くんに、“舐めさせてもらえてる”んじゃなくて──

 いま、私が、“したくてしてる”んだもん……♡」

 

 

 

透の腰が、ほんの少しだけ、前に動いた。

 

唇の奥まで入った竿を、美桜が受け止める。

 

 

 

じゅぷっ……ちゅぅ……♡♡

 

愛撫の最高潮。

挿入の直前、ふたりの身体がようやく、ひとつの方向に傾きはじめる。

 

 

フェラのあと、美桜はゆっくりと顔を上げた。

唇の端に、まだ透の味が残っている。

 

それでもその目は、ただ優しく、

「次は──あなたの番だよ」と語っていた。

 

 

 

透は何も言わずに、美桜の肩を押し、

再びベッドに仰向けにさせる。

 

胸元は汗で濡れて、

スカートはもうずっと前から脱ぎ捨てられていた。

 

 

 

彼女の下着に手をかけ、

ゆっくり、慎重に──まるで触れるのが怖い宝物みたいに、

パンツをずらしていく。

 

 

 

ぬち……♡

 

布地が膣♡に張りついていたのか、

粘り気を引く音がした。

 

下着の奥。

そこは、完全に濡れきっていた。

 

色気すらもにじんで見えるほど、愛液で輝いていた。

 

 

 

「透くん……舐めて、くれるの……?」

 

 

 

透は答えず、

ベッドに膝をついて顔を近づける。

 

 

 

鼻先が、そっと内腿に触れた瞬間──

美桜の脚が小さく震えた。

 

 

 

ぺろっ……♡

 

クリトリスの上に、

舌を、ほんの一撫で。

 

 

 

「っひ♡ ふぅっ……♡♡」

 

 

 

ぴと……ちゅっ、ぬちゅっ……

 

そのまま、舌先が小刻みに震える。

 

ぬるっ、くちゅ……じゅるっ……♡

 

愛液を絡めとるように、吸い上げる。

 

 

 

「やぁ……そこ、そんなに吸われたら……♡♡

 また、イっちゃいそう……♡」

 

 

 

美桜の太ももが、透の頭を挟むように震えながら閉じる。

 

けど──透はそれを両手で押し広げ、

さらに奥へと舌を差し込む。

 

 

 

ぬちゅ……ぴちゃ……ちゅるるっ♡

 

 

 

クリを軽く吸いながら、

上下に、左右に、舌で転がす。

 

ちゅっ、じゅっ……ちゅぅ……♡

 

美桜の声が裏返るたびに、舌が“もっと”を伝えるように蠢く。

 

 

 

「んっ♡ すご……すごいの……♡

 透くんの舌、気持ちよすぎて……♡

 だめ……イっちゃ……♡ イく……っ♡♡♡」

 

 

 

ぬちゅっ、じゅるっ、ちゅっ♡♡

 

脚が跳ねて、膣♡がきゅんと震え──

 

 

 

美桜は、透の舌の中で果てた。

 

 

 

「……ふぁ……すき……♡ 透くん……♡」

 

 

 

舌先で描いた「愛してる」を、

美桜の奥が、受け止めてくれた。

 

 

「透くん……」

 

 

 

果てたあとの余韻に、

美桜の目元にはまだ涙が滲んでいた。

 

けれど、その表情はどこか満ちていて、

透のほうを見つめるその瞳には、

もう何も怖がっていない、真っ直ぐな光が宿っていた。

 

 

 

透は、美桜の太ももに手を添えて、

腰の間にゆっくりと身体を沈めていく。

 

 

 

ふたりの体温が、ふたたび触れ合う。

さっきとは違う──

もう、逃げないと決めた密着だった。

 

 

 

透は、美桜の目を見つめながら、

自分の硬くなった竿を手に取る。

 

そして、美桜の膣♡口へと──そっと先端を押し当てる。

 

 

 

ぬちゅ……♡

 

愛液でとろけた入口に、静かに沈んでいく圧。

 

 

 

「……美桜」

 

 

 

透が言う。

 

その声は震えていた。

けれど、それでも逃げずに、絞り出すように。

 

 

 

喉から出た声は、

まるで自分に言い聞かせるようだった。

 

 

 

「……それでいいのか?」

 

 

 

数秒、空気が止まる。

 

だけど──

 

 

 

「ふふ」と、くすりと笑う声が返ってきた。

 

透が顔を上げると、

そこには、いつか見たあの笑顔──

少しだけ小悪魔みたいな、いたずらな顔の美桜がいた。

 

 

「……透くん」

 

 

 

「“私がキスしたら、催眠解ける”って言ったら、どうする?」

 

 

 

「……えっ?」

 

 

 

「“催眠のせいにして抱こうとしてる”透くんに──

 わたしが、本物のキスしちゃったら、どうなるかなぁ?♡」

 

 

 

そのまま、美桜が透の首に腕を回し──

顔を引き寄せる。

 

そして──

 

 

 

ちゅっ……♡

 

 

 

軽く、でも確かに唇を合わせた。

 

唇が離れるとき、

透の唇には、美桜の吐息が熱く残っていた。

 

 

 

「はい、催眠解けました♡」

 

 

 

にこっと笑って言うその顔は、

どこまでも優しくて、どこまでもずるいくらい、かわいかった。

 

 

 

「……バカ」

 

 

 

透はそれだけ言って──

 

 

 

ずぷっ……♡

 

そのまま、腰を進めた。

 

 

 

「んっ♡ くぅぅっ……♡♡」

 

 

 

愛液でとろけた膣♡に、

透の熱が、ずっしりと、根元まで沈み込んでいく。

 

拒めなかった。

 

催眠という言い訳を壊されたのに、もう止まれなかった。

 

ぐっ、ぬちゅ……♡

 

 

「んっ……♡ は、入って……♡

 透くんの、全部……入ってくる……♡♡」

 

 

 

透が、根元まで押し込んだとき──

美桜の目尻に、ぽろっと涙が浮かんだ。

 

 

 

「嬉しい……やっと、透くんが……

 “わたしを”抱いてくれたのが、嬉しい……♡」

 

 

 

透は、何も言わず、

そのまま彼女の身体に頬を寄せる。

 

息が、肌に触れた。

 

 

 

「動くぞ」

 

 

 

「うん……来て……♡ 透くん……♡」

 

 

ぐちゅっ……ずぷっ……♡

 

透の腰が、美桜の奥まで沈み込む。

 

「んあっ♡ 入ってきてる……♡ いっぱい……♡♡」

 

 

 

ちゅっ、ちゅぷっ……♡

 

唇を吸って、舌をねじ込むように絡める。

 

舌がねっとり擦れあい、唾液がとろりと垂れた。

 

 

 

「っふ♡ ん、ちゅ♡ んんっ……ちゅぅ……♡♡」

 

 

 

透の腰がぐっ、ぐっ、と一定のリズムで打ち込まれる。

 

ぬちゅっ、ぬちゅっ、ぐちゅっ……♡

 

布団にこぼれる愛液の音が、快感を煽るように響いた。

 

 

 

「やば……♡ 奥、当たって……♡ 好き、こういうの……♡♡」

 

 

 

美桜が腰を揺らして、自分から締めつける。

 

透が思わず声を噛み殺しながら、さらに深く突き上げた。

 

 

 

「っは、ん♡ っんんんっ♡♡ 好き、もっと……♡」

 

 

 

ちゅ、じゅっ、くちゅ、ぴちゅ……♡

 

音と声と、肌の叩き合う感触。

 

リズムが早くなるごとに、美桜の脚がぴんと伸びて、指先が震えた。

 

 

 

「イクっ♡ イっちゃう♡♡ 透くんっ、だめ、イくっ♡♡♡」

 

 

 

透の腰がさらに深く──

ぬちゅっ♡ ずちゅっ♡ ぐちゅぐちゅぐちゅっ♡

 

 

 

「イッ……イッてるっ♡♡♡ 中でイってるのぉっ♡♡」

 

 

 

びくっ、びくびくっ……!

 

美桜の膣♡がきゅぅっと締まり、

中で果てながらも、透の腰を止めようとはしなかった。

 

 

 

透は唇を重ねながら、まだ抜かない。

 

 

 

ぐっ……ずぷっ……♡

 

「んっ♡♡ またっ……来ちゃうっ♡♡♡」

 

 

美桜の脚がふるふると震える中、

透はその身体をゆっくりと裏返した。

 

 

 

四つん這いになった美桜の腰を支え、

背後から、再び挿し込む。

 

 

 

ずぷっ……ぬちゅっ……♡

 

 

 

「んっ♡ ふっ……あぁ……♡♡ 後ろから……やだ、すご……♡♡」

 

 

 

ぬちゅっ、ずちゅっ、ぐちゅっ……♡

 

腰がぶつかるたび、柔らかい尻が波打つように揺れ、

下腹から愛液がぴちゅぴちゅと弾ける。

 

 

 

「っは、やだ……透くんのが、奥……♡♡」

 

 

 

透は腰を引いて、叩きつけるように突き上げる。

 

パンッ、パンッ、パンッ……!

 

ぬちゅっ、ぐちゅっ♡ じゅぷっ……ぬるっ♡

 

 

 

「っあ♡ んっ、んあっ♡♡ イくっ♡ またイくぅっ♡♡♡」

 

 

 

膣♡が締まり、美桜の手がシーツを握り潰す。

 

汗のにじむ背中に、透が手を添えて支えたまま、

さらに深く──

ごちゅっ♡ ぬちゅっ♡ ぬりゅっ♡

 

 

 

「ひぁ♡ っやっ……止まんないの♡♡ ずっと奥に当たって……♡♡」

 

 

 

音も、声も、形も、全部が“好き”と叫んでいるようだった。

 

 

 

背中越しのセックス。

でも心は、もう、完全に重なっている。

 

 

 

「とおる、くんっ……♡ 中でイかせて……♡♡」

 

 

後背位で突き上げられていた美桜が、

がくがくに震えながら、

「……今度は、わたしが……♡」と、透の肩を押し倒す。

 

 

 

仰向けになった透の上に、

美桜がそっと跨がる。

 

脚を開いて、腰を沈めていくと──

 

 

 

ずぷっ……♡

 

 

 

「んっ……♡ また……入ったぁ……♡♡」

 

 

 

愛液で濡れた膣♡が、透の竿をゆっくり包み込む。

 

最奥まで沈めきると、

美桜は腰をぐり、と回して、竿をこすりつけるように動かし始める。

 

 

 

「はぁ、ふっ……♡ すご……っ♡

 透くんのが、中で……暴れてるみたい……♡♡」

 

 

 

ぬちゅっ、くちゅっ……♡ ぬる、ぬるん……♡

 

最初は小さく揺れる程度だった腰が、

だんだん大きく、速く、激しく。

 

 

 

「ねぇ……見て……♡ わたし、こんなに……動いてるよ……♡

 好きな人の上で……♡ いっぱい動いてるの……♡♡」

 

 

 

ちゅぷっ、ぐちゅっ、ぬちゅっ……!

 

お尻が叩きつけられるたび、ベッドが軋み、

汗と愛液が混ざって音を立てた。

 

 

 

「透くんの中で、いっぱい感じて……♡

 これが、好きってことでしょ……♡♡」

 

 

 

透の胸に手をついて、

美桜は目を潤ませながら、突き上げるように腰を落とし続ける。

 

 

 

「イっちゃう……♡ わたし、自分で動いて……透くんの中で……♡♡」

 

 

 

「イク♡ 透くん……好きっ、好きなのぉ♡♡♡」

 

 

 

びくっ、びくびくっ……!

 

 

 

膣♡が強くうねって、

透の竿を奥から絞り上げるように締めつける。

 

果てるたびに、美桜の動きが乱れて、

でも、それでも止めなかった。

 

 

 

「もっと……透くんで、気持ちよくなりたいの……♡♡」

 

 

透が仰向けに倒れ、

美桜がその上に、ぐったりと覆いかぶさる。

 

まだ繋がったまま。

お互いの鼓動が、張りついた肌越しに伝わっている。

 

 

 

「……もう一回、して」

 

 

 

美桜が囁いて、

腰をゆっくり揺らしはじめる。

 

ちゅぷっ……ぬちゅ、ぬるっ……♡

 

愛液の音がふたたび広がって、

透の竿がゆっくりと熱を取り戻していく。

 

 

 

「今度は、ちゃんと……“最後”まで一緒がいい……♡」

 

 

 

透が両手で彼女の背中を抱きしめた瞬間──

 

美桜の脚が、

腰の後ろからぎゅっと回り込んで、しっかり絡みついた。

 

 

 

「……っ、ま、待て、それ──」

 

 

 

「“もう離さない”♡」

 

 

 

「っ……バカかお前……」

 

 

 

笑いながら、でもその脚は緩めない。

 

透の奥に、根元までぴったり包み込まれて、

そのまま身体ごと繋がるように──

美桜が透の首に、腕までまわしてきた。

 

 

 

「もう……離したくないの……♡

 このまま、透くんと、くっついたままで……♡」

 

 

 

「わたしの中で、いっぱい気持ちよくなって……♡

 ちゃんと、好きって伝えて……♡♡」

 

 

 

ぬちゅ、ぬるっ、ぐちゅっ……♡

 

絡めとられた腰の奥に、

透が何度も突き上げていく。

 

パンッ、パンッ……!

 

 

 

「んっ♡ すご……っ♡ 好きっ……♡

 好き、好きぃっ♡♡♡ イッて、透くん……♡♡」

 

 

 

透が最後まで突き上げた瞬間──

 

 

 

「っ……美桜っ……!」

 

 

 

ぐちゅっ、ずぷっ……ぬるぅっ……♡

 

 

 

美桜の膣♡がびくびく震えながら締めつけ、

ふたりは、そのまま身体ごと重なって──

 

 

 

果てた。

 

 

 

「透くん……♡

 わたし、いま──

 ぜんぶ、透くんで、いっぱい……♡」

 

 

 

「“催眠”でも“命令”でもないよ……

 ちゃんと、これが“愛してる”なんだよ……♡」

 

 

 

──静かに、シーツの上で絡みあったまま、

ふたりはようやく、心と身体を結んだ。

 

 

静かだった。

 

セックスのあとの部屋には、

冷たい空気と、熱の余韻だけが残っていた。

 

 

 

シーツに絡まりながら、

透と美桜は、まだ身体を重ねたまま、動かずにいた。

 

 

 

汗ばんだ額に、美桜がそっと透の前髪を寄せてくる。

 

 

 

「……透くん」

 

 

 

「……なに」

 

 

 

「いま、“催眠とけてる”けど、まだ抱きしめてくれる?」

 

 

 

透は苦笑して、

ゆっくりと片腕をまわした。

 

 

 

「しょうがねぇな」

 

 

 

「……じゃあ、“しょうがない”ってことにしといて」

 

 

 

腕の中、美桜がふわっと笑う。

キスも言葉も、何もいらないくらい、

その笑顔だけで全部伝わってしまった気がした。

 

 

 

しばらくして──

 

美桜がぽつりと呟く。

 

 

 

「透くん……私のこと、いつから好きだった?」

 

 

 

「……知らねぇ。昔すぎて。思い出したくもねぇ」

 

 

 

「うそ。ちゃんと思い出してる声してるよ」

 

 

 

「……うるせぇよ」

 

 

 

ほんの少しだけ、照れ隠し。

 

でもそれは、

もう命令も催眠もいらない、“ふつうの男の子”としての返事だった。

 

 

 

やがて、透が小さく言う。

 

 

 

「お前は?」

 

 

 

「ん?」

 

 

 

「いつから、俺のこと……」

 

 

 

「さっき」

 

 

 

「……は?」

 

 

 

美桜は笑う。

 

 

 

「さっき、中にいる透くんの顔見てたら──

 “あ、もうこれは本物だ”って、思ったの」

 

 

 

「催眠でもなんでもなくて、

 ちゃんと“透くん”だったから」

 

 

 

透は何も言わず、

そのまま彼女の額に口づけを落とした。

 

 

 

優しい音がした。

 

 

 

 

 

──もう、命令なんかいらない。

ただ名前を呼んで、手を繋いで。

 

 

 

そんなふたりが、

ようやく“恋人”になった夜だった。

 

◆

 

翌朝。

制服のまま、並んで歩くふたり。

 

まだ春先の朝で、

風は少し冷たいけど──

透と美桜の間には、どこか柔らかい熱があった。

 

 

 

「……なぁ、美桜」

 

 

 

「ん?」

 

 

 

「今日も……したいんだけど」

 

 

 

そう言った透の顔は、

どこか照れていて、

でも嘘はひとつもなかった。

 

美桜は一瞬、立ち止まって、

ふふっと笑う。

 

「え? なにを?」

 

「……お前、それ絶対わかってて言ってるだろ」

 

「さぁ、どうかなー」

 

そして──にこっと笑って、

透の手をそっと握る。

 

「透くんがそう言うの、

 嫌いじゃないよ?」

 

「でも、するかどうかは──

 わたしが決める♡」

 

そう言って、足早に先を歩いていく美桜。

 

透は小さくため息をついて、

でもその後ろ姿を見ながら、ほんの少しだけ笑った。

 

──命令なんか、もういらない。

 

“今日はするかもしれないし、しないかもしれない”

 

その曖昧ささえ、心地よくて。

なにより、“彼女の自由”であってくれるのが、今の透にとって一番幸せだった。

 

【完】


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。