完璧幼馴染に甘やかされるオレ(♀)の話 作:芋・コンロ
オリジナル:ファンタジー/ノンジャンル
タグ:R-18 ボーイズラブ 転生 性転換 残酷な描写あり TS転生 主人公ある意味最強(凶) 愛され(すぎ) 探索者 ヤンデレ 精神的BL
オレ→雑魚。デカいのは胸だけだと思われる
勝てる要素がないのが悔しいです!
剣と魔法のファンタジー世界と科学技術が発展した現代とが巧いこと融合したような世界である『ミットウェルズ』に転生したというのに、どうしてまたしてもモブ雑魚なのか!
神はいないのだと解る。(血涙)
女性になってしまったけれど、強い幼馴染が傍にいることだけが救いか…?
いや、離してくれないから救いはないのか!?
【 ご注意 】
※主人公は無自覚誑し
※ご都合展開もりもり
※更新はまったりです
※ノンジャンルなのは、恋愛・冒険・学院・スローライフほかと様々な要素があるからです
Start:2026.02.06/金
End:-----------
■一途を拗らせすぎたつよつよ幼馴染に囲われて逃げられなくなる自称・雑魚くんちゃんの話
少しでもお楽しみいただければ幸いです
2026.02.06/金
「ネリエスネリエス〜、ちょっと話があるんだけどさ〜」
「別れ話だというのなら、私は今すぐにあなたを押し倒して快楽漬けにしますが」
「怖いこと言うなよ! おいこら、胸を揉み始めるなぁっ!」
あ、そうだったと振り返って口を開くと、恐ろしいことを言われてしまった。さらなる快楽漬けとか、コイツはオレに死んでくれと言っているのか? え、マジで?
後ろから抱きしめられているからか、胸を揉まれるのも背後からになる。座り心地抜群のソファーでだらだらしていても、思い出したことがあったから言おうとしたのに、いかがわしい雰囲気になりかけているではないか。想定外だぞ、こんなの。
あとは寝るだけなので上の下着――ブラジャーはつけてない。ナイトブラもあるけどさあ、オレは寝る時までもブラはつけたくないからな〜。ここにきて弱点になるとは思わなかったけど……。
「それで、話というのは?」
「揉みながら聞くのかよ。最悪だぞお前」
「私のことを悪く言う前に、誘う方が悪いと思わないんですか?」
「誘った覚えはないんですがね!」
「無自覚なのが恐ろしいですね。何度も言っていますが、そろそろ自覚した方がいいですよ。――あなた自身がどれほど魅力的なのかを」
イケメンボイスが鼓膜を侵す。頭の中ごと躯中が熱を持つが、負けてはダメなんだ。流されたらいけない。
「オレを襲うのはぁ、お前しかいない、だろうがぁ! ひぅっ!?」
耳に軽く歯を立てられれば躯が跳ねる。この男にはオレ自身の弱いところを知り尽くされているのが悔しい。声が出せないようにと手で口を押さえたが、そのままふーと息を吹きかけられて「んみゃぁんっ」と声が漏れてしまった。ふはふは乱れた息を吐くと、また耳に歯が立てられる。耳はやめろよぉ!
「私が睨みを利かせないとあなたは犯され放題なのを解っていますか?」
「わ、解ってるから、一緒にいるじゃん」
雑魚のオレは誰かの腰巾着でないと生存競争に勝てるわけないだろ! あと犯され放題なんて嫌すぎるわ! 強い奴と一緒にいてようやく安全を確保出来るオレの気持を考えてくれ!
「んんっ……! バカっ! これ以上はやめろっ!」
耳朶を舐めながら胸を揉み続けているが、話は進んでないんだぞ! 人の話を聞けよ!
「ネリエスっ、話があるんだってぇ!」
「寝室の方で聞きましょう」
「ここで聞いて!」
「嫌ですが」
ジタバタする抵抗は効果がなく、あっさりと寝室に運ばれていく。あとは寝るだけだけど! 寝るだけなんだけど! 今日は休息日だっただろ〜! バカバカバカ! 体力お化け! やりたい盛りの変態が〜!
いくら心の中でそう罵ろうとも、身長差・体格差・能力差のみっつの壁が聳え立っているのでどうにもならない。捕まったら最後とか笑えないだろ。
ベッドへと下ろされると、そのまま覆い被さってくるクォーターエルフ。金髪碧眼ではなく、銀髪碧眼。碧眼は黒みがかった緑色をしている。ダークグリーンね。他のエルフとは違って明るい緑でないのはクォーターだからなんだろうか。ハーフエルフはまあまあ多いんだけど、クォーターエルフとなるとそこまで数がいるわけではないから、判断ができないんだよね。
腰まで伸びた髪は艷やかも艷やか。なにしたらこんなにさらさらになるのか不思議だわ。髪のモデルでも目指してんのか? というほどなんだよ。だいたいうなじの辺りでひとつに纏めており、家を出る時には銀色の細いフレームの伊達メガネをかけている。オレの予想では、伊達メガネはなんらかの魔術具だろう。メガネ姿の時はあまり人が寄ってきてないし。
この男は女性と見間違うほどの美貌を持ってして生まれたわけなんだが、ちゃんとした男性である。それはそれはご立派なものをお持ちだからな。ムカつくほどに立派なものを! 本人には絶対に言わないが、噛み千切りたい衝動に駆られることもあった。悔しすぎるからなぁ! 顔と全然合ってないのは解ってるのかね!? 羨ましすぎるわ! オレだってご立派様がほしかったんだぞ!
成長するに連れて女性に間違われることは少なくなってきているが、ぱっと見は女性だからか言い寄ってくる奴がいまだにたまにいる。オレがざまぁ! ぷくくと笑う間に返り討ちにしてるんだけどな。そこは怖い。瞬殺ヤバい。
肌を吸われて鈍い痛みが走る中でも嫌々と頭を振りながら胸板を押しに押していたが、一ミリも動かない。お前マジで覚えておけよ!
「っ〜〜〜〜、だから話があるんだってば!」
「蜂蜜を取りに行く話なら定期でしていますから、いまさら必要ありませんよ」
「解ってるならそのまま寝ればいいだろ。さっさと寝ろ」
「
「そういう意味じゃないの! っも、今日は休息日のはずだろ!」
「覚えてないですね」
あ〜〜〜〜! 腹立つ〜!
離せこら! 変態! 強姦魔! とまた暴れるが、覆い被さられているのでこちらにしかダメージがない。ガッと片手で手首を纏められてベッドに縫い付けられて終わりだよ! 頭上だからもうなにもできん。くそ〜!
「ネリエス〜〜っ!」
「私は毎日抱き潰したいと言っていますよね? ですがあなたが嫌だと言うから、3日に1回にしているんですよ?」
いいですか? と前置きをしてきたが、うるせえんだよ! 抱き潰されないから言えるだけなんだからな!
「抱く方は毎日でもいいかもしれないけどなあ! 抱かれる方は毎日抱かれたら死ぬの! 解かれ! その年中発情期な頭でも解かってくれ!」
「誰が年中発情期ですか。発情期だというのなら、触れられてすぐに濡れそぼるあなたの方が発情期なのでは?」
「へっ、変なことを言うなぁ! オレは性的に開発されたんだからな!」
「あ゛? 私以外の誰に開発さたと言うんですか?」
不満そうなネリエスに返すと、魔力が膨れ上がった。こっわ!
「なんでそこで切れるんだよ!? 殺気出すな! びっくりだよ! オレに変なことをするのはお前しかいないんですが!?」
「それはそうですよ。あなたは私のものですし。私以外の他の人に渡すわけがありません」
「オレはお前のものになった覚えはありませ〜んっ!」
ぐっと顔を近づけてきてそんなことを言ってくるが、オレはネリエスのものになった覚えは一切ない。
剣と魔法の異世界ファンタジーと科学技術で発展した現代のいいとこ取りのような世界に生まれて22年。ネリエスと違い22歳に見えないだろうが、オレが22歳と言ったら22歳なんです〜!
一般的には魔法ではなく魔術と呼ぶんだけども、この世界では種族・性別関係なく誰しもが大なり小なり魔力を持っており、魔術を使う。使えないのは動物か乳児ぐらいだろう。ダンジョンはあるし、冒険者ギルドならぬ探索者協会も各地にある。永久中立都市である貿易都市のひとつであるここよりも、もっと北寄りの方には学院都市も存在している。学院都市は陸の孤島なんていう呼ばれ方もあるが、雪に対しての訓練が必要だということで北方に学院が建ったのだ。冬は寒くて死ぬかと思えば、結界内はそうではないのでまあまあ過ごしやすい方だろう。
永久中立都市と呼ばれる場所は4つあり、みっつの貿易都市と学院都市だ。『永久中立都市』とはいっても、『好き好んで戦いには参加しないが、攻撃されたら反撃はするぞ』という意味である。
オレとネリエスは4人組探索者パーティ内でふたりずつがうまいこと結婚してできた子供なので、そのままパーティの拠点で一緒に育っていた。兄弟同然兼幼馴染ではあるが、好きだと告白されたことはないので、ネリエスが本当にオレのことが好きなのかは知らない。ベッドの上では愛してるとうるさいんだが、そんな雰囲気の延長線上なだけであって、躯目当てなことは解っている。すぐ傍にエロい躯の奴がいたら反応しちゃうだろ。解っているんだからな!
お前のその姿で女遊びがどうたらこうたらなんて噂をされたくないものな。ひとりに絞れば漏れは少ないだろうし、なにより身内だというのなら、外に話したくなくなるわけだ。巧いこと考えたよな。
変態に負けてたまるかと睨むと、「そうですか」と短く言って――目を細めた。同時に空気が変わる。
や、べぇ……。逃げないと!
「解らないのなら、理解するまでするだけですから。足腰が立たなくなるまで、徹底的にあなたの躯に教え込みましょうね。泣き叫んでも離しませんよ。そのような選択をしたのは――
微笑む男はオレの腹に手を置いた。嘘ぉ!?
「っあ……!? んぅぅっ!? やっ、やだっ、淫紋はやだぁ!」
「ははは」
「笑ってんなクソが! 離せこらぁ! っわ!?」
起き上がろうとしても背中が少し浮くだけでベッドへと戻される。手が使えないし、そもそもが拘束の魔術を使われているから、取れる手段は懸命に暴れるしかなくなる。だから躯を捩って足をバタつかせた。
「逃げられないようにしていますから逃げられませんよ」
「縫い付けてんじゃねぇ!」
「はいはい。大人しくしてください。乱暴にされたくはないでしょう? ほら、手を噛まないでください」
「変態! 性欲おばけ! 絶倫魔王ぅ!」
「褒め言葉ですね」
かぷりと噛んだ伸ばされた手がやんわりと引き剥がされるとオレの口からは悪口が漏れ出ていく。全部本当の事だから、悪口でもないのか……? うぅ、ダメだ。だんだんと解らなくなってくる。淫紋を開放されてしまったから、躯が熱っぽくなってきていたから。つまり、感度を爆上がりにさせられたのだ。少し触れられただけでもヤバいし、先っぽだけでも突っ込まれたら死んでしまう。
「オレは、嫌だって……、言ってるのにぃ」
「解らないあなたが悪いんですよ」
「ぁ、うぅっ……!」
頬を軽く撫でられただけなのに、甘い痺れが躯中を駆け巡る。これだから淫紋があるこの躯は好きじゃない。
「八宵、あなたは私だけのものですよ。死ぬ時も、死んでからもずっと一緒ですから、忘れないでください」
「絶対に覚えたくないやつだろぉ」
荒い息を吐き出す唇を塞がれたあとは曖昧だ。触れただけで漏れ出る甘ったるい声と許しを乞う泣き声、八宵と繰り返すイケメンボイス、肌がぶつかる音に尿意を我慢出来ずに漏らす音。鮮明なのは「やだ、やだぁ! ゆ、してぇ……! やだぁ! 奥らめっ、いやぁ! 死んじゃう! 死んじゃうからぁ!」と泣き叫ぶオレの声――。なんでそこを覚えているのかと舌打ち。ごめんなさいごめんなさいと謝罪を繰り返しても、ネリエスは「頑張りましょうね」とガンガン奥を突いてきたのは覚えていなくても解る。『足腰が立たなくなるまで徹底的に躯に教え込む』と言っていたからな。有言実行するんじゃねえよ! バカか!
現在、日が変わった夕方。そう、夕方である。オレはベッドでうつ伏せになりながら枕を濡らしていた。ネリエスのバカバカバカ〜と。夕方までヤり続けるとか頭おかしいんじゃないのか!? 休憩は口移しの水分補給しかなかったよな!?
肩を抱き寄せるネリエス本人は「抱かせないあなたが悪いので」の一点張りだ。だ〜か〜ら〜、毎日抱かれるのは死ぬと言ってるでしょうに! 人の話を聞けって! あとキスマークだらけの躯をどうにかしてくれ! なんなのこれ!? なんかの皮膚病に疑われそうなくらいなんですが!?
「ネリエスお前なんなの……」
「私は私ですが」
「人物像のことを言ってるんじゃないの! この! キスマークはなんなのか! 聞いてんの!」
「聞いてどうするのですか?」
「質問を質問で返すな!」
躯を捩ってベチベチ胸板を叩くと、その手を取られて口づけられる。
「キスマークは八宵に触れた証ですね」
「多すぎるわ! アホか!」
「多ければ多いほどえっちだと思いませんか?」
「それはお前だけだ!」
そうですかねと緩く首を傾げるが、そうだろ。オレはキスマークが多いほどエロいなんて思ったことなんてないし。
ツッコみ過ぎで喉が痛い。ケホケホ咳き込むと、ネリエスがミネラルウォーターを口に含んだ。嫌な予感しかしないので顔を背けるが、無理矢理にぐりんと戻されて唇が触れられる。
「ん、ん……っ!」
上向かせられたまま水が流し込まれるが、舌で抵抗しているので口端から溢れていっていた。もったいないけど、人にはやらなければならないこともあるんだよ。抵抗は大事なんだ!
「自分で、飲むっ、から」
「お断りします」
なんだコイツ! 喧嘩売ってんのか!? 水寄越せぇ!
腕を伸ばすが身長差はデカい。10センチは確実にあるから。こちらはんぎぎーと精一杯腕を伸ばしているというのに、ネリエスの方は美貌に当たる胸――の頂きを口に含んだ。
「っあ!? バカっ! 吸うなぁ!」
引き剥がそうとすればするほど強く吸われるのだから嫌になる。諦めて抵抗をやめると、ちゅぽっと小さな音を立てて唇が離れていった。
「どうしてほしいですか?」
「飲ませろ早く」
お互いに起き上がりつつも、んっと唇を差し出すと、ネリエスは「はい」と柔らかな笑みを浮かべる。お前後で絶対に殴るからな!
何度も口移しで与えられる水で喉を潤すと、また寝転がった。起き上がったままは辛いんだよ。
「少し寝る」
「解りました。おやすみなさい」
頭撫でんな!
少し時間を置いてがさごそ聞こえてくるが、着替えているんだろうな。ドアが閉まる音も間もなく聞こえたが、まだ動き出してはいけない。サイドテーブルに置いたタブレット端末を引き寄せて時間を潰し、そろそろかと行動開始。
脱ぎ散らかしたものは洗濯に持っていかれたのかなかったので、新しく着替え終えてから、リュックを手にして玄関へ。ここにいたらヤり殺されそうだからな、逃げるに限る。そろりと玄関のドアを開けて周りを見渡すと誰もいないので、外へ――行こうとしたが、強い力で引き寄せられる。
「あなたはぶち犯されたいんですか?」
「あ、あえっ? なんでっ!? オレの行動は完璧だっただろっ!?」
背後から閉まったドアに押しつけられるまま、ガリと耳を噛まれた。
「っ!」
「本気で完璧だったと思っているのはあなただけですよ」
口の中に指を突っ込まれ、掻き回されていく。耳を虐められながら。
「んぅ! や、へ、ろぉ……!」
「私があなたを逃がすと思いますか? どこに行こうが追いかけますよ。天国だろうと地獄だろうとどこまでも」
舌を掴んで引き摺り出したあと、舐め上げる。何度も。細められたであろう瞳は滲んで見えない。
「――足を切り落とすか、足の腱を切ればいいんですかね」
「ぅぅう〜!」
物騒な言葉に全力で首を振る。お断りします!
「されたくないのなら、言うべき言葉がありますよね?」
舌から指を離したネリエスは、オレの目尻に浮かぶ涙を拭いながらも、反対側の瞼にキスをする。額、頬、鼻先、唇と続いた後に、ダークグリーンの宝石のような瞳がじっとオレを捕らえた。なんの言葉もないが、責められていることは理解する。
「八宵。答えを教えてください」
「すみませんでしたぁ〜! でもですねえ! 元はと言えばオレをヤり殺そうとするネリエスが悪いんです〜!」
ガバリと勢いよく土下座をしつつも、言い訳は忘れない。オレだけの所為じゃないんだ! 犯人は目の前にいるんだからな!
「聞いておきますが、私がいつヤり殺そうとしましたか?」
「子供の時からずっとだろぉ! 忘れてんじゃねえぞ! 学院の登下校が終わればベロチューされてっ! 模擬戦の授業中でも犯されて! 探索者になってからは3日に1回押し倒されて! これのどこがヤり殺さないって言うんだよ!」
感情が爆発したまま叫ぶと、ネリエスは力なく笑った。
「私は昔から嫌われていたようですね……」
「ネリエス?」
「八宵がいない世界で生きているのは意味がないので、世界を壊しましょうか。来世ではきちんと愛し合えますよね? そう信じていますよ、女神様」
なんかめちゃくちゃ重いことを言い出したぞコイツ。あとなんかやべぇ匂いしかしない! 慌てて立ち上がり、デカい男の周りをうろうろする。
「ね、ねねねね、ネリエスくん!? なにをしようとしているのかなぁ!?」
いやぁ! 自然界に漂う魔素がネリエスに集まっていっているんですが!? 広範囲極大魔術をぶっ放そうとしてるぞ!?
「待て待て待て! ネリエス落ち着いて!」
「落ち着いていますよ」
確かに話し方はいつもの変わらないが、思考回路はぶっ飛んでるとしか思えない。
「落ち着いた思考が世界の滅亡なんてあるわけないだろぉ!」
「正確には八宵――あなたのいない世界ですね。私はあなた以外がどうなろうと興味がないんですよ」
「親を入れてあげて! って違う! ツッコんでる場合じゃない! ネリエスのことはムカつくけど嫌いなわけじゃないから魔術を止めろ!!」
全身全霊で叫ぶと動きが止まる。このままいけば危機を乗り越えられるかもしれない。どうにか機嫌を損ねないようにしないと。
「嫌われていないんですか?」
「そうそう。嫌いじゃない」
「しかしそれは、『嫌いではないが、愛してもない』ということですよね?」
「そうだけど? おおおおいっ、なんで泣くんだよ!?」
泣かせちゃったよ! 死んだ。オレは死んだーーーー!!
「愛しているんですよ。この世で一番あなたを愛しているんです」
「いやいやいやいや、愛してるなら優しくしてくれないと。お前いつもやることめちゃくちゃじゃん。そりゃあ、天下の魔術士であるヴィラ・モークス様の孫だし、家格も高いけどさあ、権力を振りかざせばいいってもんでもないだろ」
「権力を振りかざした覚えはありません」
「お前になくてもこちらは逆らえないんです〜」
「え……?」
いまさらショックを受けんな! 最高峰だと謳われる魔術士の孫、しかも能力の高い者には簡単に逆らえないだろ。常識的に考えて。
ネリエスの母親は家を出て探索者になった身だ。それでも『ヴィラ・モークス』の名は強い。お祖母さんに鍛えられていたからか、探索者としても優秀だったのがよかったのか悪かったのか。偉大な親や先祖を持ってしまうと、子と子孫は大変だからな。オレだってネリエスに嫉妬しまくってるし。なにがきっかけで家を飛び出したのかは知らないが、よくお祖母さんが許してくれたよな。何人か弟子がいたからよかったのかね。
オレの親――母親の方は魔族であり、魔族とエルフの常識は違うのだが、力あるものに従うのが魔族としての本能だ。しかし、単なる言いなりや傀儡ではなく、必要な時はなんらかの進言はする。そんな関係だ。逆らう必要なんかない。解りやすく言うなら、持ちつ持たれつとか上司と部下のような関係だろうか。それでもオレは言い返すし暴れる。ひとりだけされるがままなのはムカつくし。
ちなみにオレの母親も、魔族の中ではそこそこ地位が高いらしい。サキュバスのお貴族様だ。父親はドラゴンみたいなんだけど、母さんはドラゴンを落とした英雄なんて言われている。話を聞いたところ、怪我をしていた子ドラゴンを助けて懐かれたということなので、サキュバスだから落とせたというわけではないらしい。
オレはハーフサキュバスでハーフドラゴンなんだけど、母親似なので大分サキュバスに寄ってしまったようなんだよな。ピンクゴールドの長い髪に、エロい躯、あと淫紋。身長はまだ伸びると決まっているけどな。淫紋はネリエスに付けられたわけではなく、生まれた時からあるのよ。種族的特徴というやつだね。淫紋を発動できるのは持っている本人限定のようなんだが、オレだけはネリエスに権限を奪われてしまったようで、ネリエスが強権を振るっている。なんでなのかいまだに解らない。母さんに聞いても、理由は解らないと言われたし。理不尽すぎるだろ。
「どうすればあなたの隣にいられますか? なにをすれば、八宵は私の腕の中で笑ってくれますか?」
オレの腕をがっしりと掴みながらも、ほろほろと涙を流すネリエス。隣には契約している精霊――精霊王ちゃんがふよふよ浮いている。ネリエスではなくオレの方に頬を擦り寄せてきて消えたけど。見た目は二頭身の可愛らしいマスコット幼女ではあるが、精霊王ちゃんは『王』なだけあって、どの属性にも属しているから規格外の強さを持っている。化物が化物と契約したということになるが、精霊王ちゃんは召喚しないと現れないので安心ではあるな。
「悩む必要なんかないだろ。もう少し優しくしてくれたらそれでいい」
「私は……、優しくしています……」
「優しくしてると思うなら病院に行け。すぐに行け。脳波の検査をしてもらえ」
「病院に行くのなら一緒に行きましょう。離れたくないんです。私の傍にいてほしい」
「面倒くさい男だなあ! こちらはただ優しくしてくれって言ってるだけだろうが! なんで解らないんだよっ」
「優しくしています」
「だからさぁ! オレがしてないって言ってんの! される方が言うんだから絶対なの! ごちゃごちゃうるさいなら本当に出てくぞ! ぐぇぁっ!? いっ! 痛いっ! いだだだだだぁ!?」
出ていくと口に出せば強く抱きしめられた。痛いから! 背中から嫌な音がしてるから! 口から魂が出ちゃうから!
「馬鹿力やめろ!」
「嫌です。離しません」
「身長差も体格差もあるんだから、ネリエスが本気出したら死ぬんだってぇ」
離せと押すが、逆にぎゅうぎゅうと力が強くなるだけ。痛いから! 言っても解ってくれないし、もうどうしたらいいんだよ! 考えろ。意識が飛びかけているが考えるんだ、オレぇ!
ちゅっちゅっと顔中にキスをされまくる傍らで、必死に頭を回転させる。つかコイツ、一応態度では現してたんだよな、オレを好きなことは。気がついてしまえば、恥ずかしさしかないぞコレ。
「ネリエスは、いつからオレのことを好きなわけ?」
「生まれた時からです」
「ふぅん」
ならなんだ、ずっと想っていたわけか。へーほーふぅん。なるほどね〜。
「オレを好きなネリエスなら、オレの言いたいことが解るよなぁ?」
「私は八宵本人ではないので、まったく解りません」
「離せと言いたいことは解るな?」
「……はい」
「っあ〜、もう! そんな顔するなよなぁ。オレはどこにも行かないよ」
「本当ですか!?」
背伸びをしてわしゃわしゃと頭を撫でてやると、ネリエスは輝くばかりの笑顔を見せた。目が死ぬぅ……!
「言っとくけど、めちゃくちゃにされるのはごめんだからな」
「……気をつけます……」
しょんぼりするな。自業自得だろうが。それでも泣き顔は見たくないと思ってしまったんだから、お人好しすぎる自分を笑うしかなくなる。
「これからはちゃんと優しくしろよー?」
「私は……」
「まだなんかあるのか?」
「――私は八宵を組み敷いて、私のことしか考えられなくなるまでぐちゃぐちゃにしたい。本当なら、誰にもあなたを見せたくないんです」
「その恐ろしい考えを捨てろ。オレの体力が死ぬだけだろ。あと、閉じ込めたらぶん殴るからな?」
「八宵だけなんです。私に外道を選ばせるのは」
「そこは正攻法で頑張れよ」
外道を極めようとするなよ。見た目からいえばドン引きだぞ。
「正攻法ではあなたは逃げてしまう。私は八宵のいない世界で生きていたくない」
「お前マジでオレのこと好き過ぎるな」
「はい。愛しています」
頬擦りをしだしたネリエスに解らないように嘆息を吐く。これは大変なことになったなと。オレがいなくなったら世界が滅ぶことは確実だ。一緒にいないと詰むしかないじゃん。胃が死ぬのが確定した瞬間が来るとはな〜。
出ていくにしても、実家に帰るだけだったし、見つかるのはすぐだったと思う。
オレから見ても見た目だけは最高に可愛いと思うんだけども、中身はオレなんだよなぁ〜。詐欺だぞ。オレはずっとオレと言い張っているし、いまさらだけどな。まあ、愛しているらしいし、深く考えなくてもいいか。なにより、恋愛事に関しては深みに嵌ると戻れなくなりそうだから気をつけないと。
「二度寝いくぞ〜。運べ。変なことをしたら殴る」
「キスはしたいです」
「キスだけな。続きはダメだから」
お姫様抱っこをされつつ答えてやると、ネリエスの方は「我慢します」と苦い顔をした。お前なあ、さんざんしたんだから少しは諦めろよ。
「続きがしたいならまずは優しさを覚えろ」
うらうらと頬を突いてやると、「押し倒したらいいだけですね」と小さな声が聞こえてきた。力付くでするようなら、オレだって全力で暴れるからな? 負けないから。
でも、お前の笑顔は初めから嫌いじゃなかったよ。天使のような愛らしさしかなかったし。いまだって、寝顔は天使だし。
そんなことは言ってやらないけど。オレだけが知っていればいい話だからな。
ふと小さく笑ったネリエスの唇が頬に落ちてきたあと、オレはもう一度頬を突いた。
「な、に、し、や、が、るっ」
「可愛さに理性を失いました」
「鋼の精神で堪えろよぉ!」
可愛いのは知ってるわ! 笑ってんなよアホ!
【 あとがき 】
快楽に溶かされているだけで、まだ甘やかされてないから続くといいね…
2026.02.06/金