※この作品はR-18です。

エロスの極み   作:村上しんご

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第13話 立ち上がる無力な少女

 あれから──セックスは夜通し続いた。

 繋がるたびに何度も、何度も中出しされ、サヤカの膣の中には大量の精子が注がれていた。

 膨大な量のそれは、収まり切れずに溢れかえり、強烈な匂いを放っていた。

 なのに、マサオはそれでも行為を止めようとはしなかった。

 

 ベッドルームでは、寝転がるマサオの上に乗せられて腰を振らされたり、壁に手を付いてバックで突かれた。

 バスルームに行けば、立ったまま片足を抱えられ、腰を突き上げられた。そして、湯船の中では膝の上に乗せられ、乳首を吸われながら中に出された。

 トイレに行くと扉を抉じ開けられて、ペニスを咥えさせられた。そのあと便器に座ったままM字に脚を広げられてハメられた。

 

 何度もの性行為の繰り返しで次第に思考は鈍り、サヤカはいつの間にか、繋がる事に抵抗は無くなっていた。

 なにより、乳首でイカされていたはずなのに、最後には何で絶頂を迎えていたのかすらわからない。

 ビュルビュルと飛び出てくる熱いものを受け止めながら、あのブヨブヨの身体を思わずギューッと抱きしめていたという事実が、今では憎らしくさえ思う。

 

 それでもサヤカは心まで奪われてはいなかった。

 いくら、気持ち良くさせられても、あんな男の女になるつもりはない。

 

 自分より遥かに年上でありながら、自分本位で子供じみた思考。

 不細工でありながら女性を大切にする気持ちすらない。

 振り返ってみても良い所など思いつかない。

 あんな奴と関係を続けるのなら、「死んだ方がマシだ」とそう思ってしまう自分さえいた。

 

 しかし、彼の躊躇のない行為によって、受胎してしまった可能性は高かった。

 しかも今日は危険日で、何度も「中に出さないで」と、お願いまでした。

 なのに、彼は明らかにサヤカを孕ませようとしていた。

 

 何度目かの射精の時に、子供を身籠った予感がした──。

 あんな男の子供など産みたくはない。だが、こんなことなど誰にも相談できないし、奴に話したところで、頭の中はお花畑。

 きっと、「結婚しよう!」などと能天気なことを言ってくるだろう。

 

 なによりも、あんな奴の子供を宿した自分が、どうしても許せなかった。

 

 始発電車を待つ駅のホームは、まだ薄暗かった。

 人影もまばらで、そこにいる者たちは皆、眠気を拭いきれない顔で目を擦っている。

 

 そんな中、心も身体もすり切れたサヤカは、虚ろな瞳のまま、線路の前に佇んでいた。

 

 やがて、トンネルの奥から電車のライトが滲むように現れ、ホームを白く照らし出す。

 その光に導かれるように、サヤカは夢遊病者のように、一歩、また一歩と前へ出る。

 

 ──その瞬間。

 

 背後から伸びた手が、サヤカの腕を強く掴んだ。

 

「待ちな! 何を考えているのさ!」

 

 その声に、サヤカは思わず振り返った。

 次の瞬間、視界いっぱいに飛び込んできたのは──

 

 絹糸のように細いブロンドの髪を風に靡かせ、凛と立つ少女の姿。その佇まいは、まるで聖女のようだった。

 

 雪のように白い肌には傷一つなく、切れ長の二重の瞳には、瑠璃色の光が静かに宿っている。

 見下ろされているわけではない。それでも──その視線には、人を容易に近づけさせない威圧感があった。

 

 まるで異国の絵画から抜け出してきたかのような、息を呑むほどの美少女。

 その名は──エルザ・フォン・エスタービッチ。

 

 その姿を目にした瞬間、サヤカの瞳から、理由もわからないまま涙が溢れ落ちた。堰を切ったように、ボロボロと。

 

 胸の奥に溜まっていた不安や恐怖が、音もなくほどけていく。

 そこには、ホッとするような安心感と、すべてを包み込んでくれるような感覚があった。

 

 言葉にすれば、それだけだ。

 だが確かに──この人なら、これまで思い悩んできたことのすべてを、黙って受け止めてくれる。

 サヤカは、引き込まれるようなその姿に、そんな確信を抱いていた。

 

「何か訳があるのかな? ……お姉さんに、話してみなさい」

 

 エルザはそう言うと、そっとサヤカの手を取る。

 そして、強く引くことはせず、導くようにして、ホームのベンチへと座らせた。

 

 ──誰にも言えないと思っていた。そう思い込んでいたはずなのに……。

 

 気が付けばサヤカは、昨日から今日にかけて起きた出来事を、一つ残らず、エルザに語っていた。

 

 話を聞くうちに、穏やかだったエルザの眉間に、少しずつ皺が寄っていく。

 遮ることも、相槌を打つこともなく、ただ静かに聞き続けていた。

 

 すべてを話し終えた時、エルザは一拍だけ置いてから、静かに口を開いた。

 

「ふ~ん……その男……」

 

 そして次の瞬間、感情を抑える素振りすら見せず、きっぱりと言い放つ。

 

「──馬鹿か!?」

 

 その瞳には、はっきりとした怒りが滲んでいた。

 先ほどまで聖女のように、すべてを包み込んでくれていた優しさは影を潜め、まるで鬼のような迫力さえ帯びている。

 

 だが、その言葉と剥き出しの怒りは、不思議とサヤカの心を癒していた。

 責められているわけでも、突き放されているわけでもない。むしろ──自分の代わりに、誰かが怒ってくれている。

 

 その事実に、張り詰めていた感情が一気に緩み、サヤカの瞳から再び涙が溢れ出した。

 

 エルザは何も言わず、そっと彼女を胸に引き寄せる。

 大きな手が、子どもをあやすように、優しく頭を撫でた。

 

「究極魔法──癒しの光……」

 

 静かな詠唱とともに、淡い光がサヤカの身体を包み込む。

 次の瞬間、身体を苛んでいた痛みは跡形もなく消え去り、代わりに、じんわりとした温かさが全身に広がっていった。

 

「これで、あんたの身体は元通りだよ。 もちろん、処女のまま──妊娠の可能性だって、もうない」

 

 その言葉に、サヤカは思わず息を呑み、はっと顔を上げた。

 

「……えっ!?」

 

 信じられない、という表情。恐怖と不安に縛られていた心が、ほんの一瞬だけ自由になる。

 だが、エルザはそこで微笑まなかった。どこか厳しさを帯びた目で、サヤカをまっすぐに見つめる。

 

「でもね……私でも、心までは癒せない」

 

 柔らかな声の奥に、はっきりとした覚悟が滲んでいる。

 

「……どうする?」

 

 一拍、間を置いてから、エルザは静かに問いかけた。

 

「その男を──痛い目に遭わせて、思い知らせてやるかい?」

 

 エルザは、その瞬間、初めてニヤリと笑った。

 それはまるで、悪戯を思いついた子供のような、無邪気で危うい笑みだった。

 

「あんたが……奴に、引導を渡すんだよ」

 

 ギラギラと輝くその瞳が、逃げ場のない問いとしてサヤカを射抜く。

 サヤカは一瞬も視線を逸らさず、エルザの目を見据え──そして、力強く頷いた。

 

 

 

 

 

             ~to be continued~

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