あれから──セックスは夜通し続いた。
繋がるたびに何度も、何度も中出しされ、サヤカの膣の中には大量の精子が注がれていた。
膨大な量のそれは、収まり切れずに溢れかえり、強烈な匂いを放っていた。
なのに、マサオはそれでも行為を止めようとはしなかった。
ベッドルームでは、寝転がるマサオの上に乗せられて腰を振らされたり、壁に手を付いてバックで突かれた。
バスルームに行けば、立ったまま片足を抱えられ、腰を突き上げられた。そして、湯船の中では膝の上に乗せられ、乳首を吸われながら中に出された。
トイレに行くと扉を抉じ開けられて、ペニスを咥えさせられた。そのあと便器に座ったままM字に脚を広げられてハメられた。
何度もの性行為の繰り返しで次第に思考は鈍り、サヤカはいつの間にか、繋がる事に抵抗は無くなっていた。
なにより、乳首でイカされていたはずなのに、最後には何で絶頂を迎えていたのかすらわからない。
ビュルビュルと飛び出てくる熱いものを受け止めながら、あのブヨブヨの身体を思わずギューッと抱きしめていたという事実が、今では憎らしくさえ思う。
それでもサヤカは心まで奪われてはいなかった。
いくら、気持ち良くさせられても、あんな男の女になるつもりはない。
自分より遥かに年上でありながら、自分本位で子供じみた思考。
不細工でありながら女性を大切にする気持ちすらない。
振り返ってみても良い所など思いつかない。
あんな奴と関係を続けるのなら、「死んだ方がマシだ」とそう思ってしまう自分さえいた。
しかし、彼の躊躇のない行為によって、受胎してしまった可能性は高かった。
しかも今日は危険日で、何度も「中に出さないで」と、お願いまでした。
なのに、彼は明らかにサヤカを孕ませようとしていた。
何度目かの射精の時に、子供を身籠った予感がした──。
あんな男の子供など産みたくはない。だが、こんなことなど誰にも相談できないし、奴に話したところで、頭の中はお花畑。
きっと、「結婚しよう!」などと能天気なことを言ってくるだろう。
なによりも、あんな奴の子供を宿した自分が、どうしても許せなかった。
始発電車を待つ駅のホームは、まだ薄暗かった。
人影もまばらで、そこにいる者たちは皆、眠気を拭いきれない顔で目を擦っている。
そんな中、心も身体もすり切れたサヤカは、虚ろな瞳のまま、線路の前に佇んでいた。
やがて、トンネルの奥から電車のライトが滲むように現れ、ホームを白く照らし出す。
その光に導かれるように、サヤカは夢遊病者のように、一歩、また一歩と前へ出る。
──その瞬間。
背後から伸びた手が、サヤカの腕を強く掴んだ。
「待ちな! 何を考えているのさ!」
その声に、サヤカは思わず振り返った。
次の瞬間、視界いっぱいに飛び込んできたのは──
絹糸のように細いブロンドの髪を風に靡かせ、凛と立つ少女の姿。その佇まいは、まるで聖女のようだった。
雪のように白い肌には傷一つなく、切れ長の二重の瞳には、瑠璃色の光が静かに宿っている。
見下ろされているわけではない。それでも──その視線には、人を容易に近づけさせない威圧感があった。
まるで異国の絵画から抜け出してきたかのような、息を呑むほどの美少女。
その名は──エルザ・フォン・エスタービッチ。
その姿を目にした瞬間、サヤカの瞳から、理由もわからないまま涙が溢れ落ちた。堰を切ったように、ボロボロと。
胸の奥に溜まっていた不安や恐怖が、音もなくほどけていく。
そこには、ホッとするような安心感と、すべてを包み込んでくれるような感覚があった。
言葉にすれば、それだけだ。
だが確かに──この人なら、これまで思い悩んできたことのすべてを、黙って受け止めてくれる。
サヤカは、引き込まれるようなその姿に、そんな確信を抱いていた。
「何か訳があるのかな? ……お姉さんに、話してみなさい」
エルザはそう言うと、そっとサヤカの手を取る。
そして、強く引くことはせず、導くようにして、ホームのベンチへと座らせた。
──誰にも言えないと思っていた。そう思い込んでいたはずなのに……。
気が付けばサヤカは、昨日から今日にかけて起きた出来事を、一つ残らず、エルザに語っていた。
話を聞くうちに、穏やかだったエルザの眉間に、少しずつ皺が寄っていく。
遮ることも、相槌を打つこともなく、ただ静かに聞き続けていた。
すべてを話し終えた時、エルザは一拍だけ置いてから、静かに口を開いた。
「ふ~ん……その男……」
そして次の瞬間、感情を抑える素振りすら見せず、きっぱりと言い放つ。
「──馬鹿か!?」
その瞳には、はっきりとした怒りが滲んでいた。
先ほどまで聖女のように、すべてを包み込んでくれていた優しさは影を潜め、まるで鬼のような迫力さえ帯びている。
だが、その言葉と剥き出しの怒りは、不思議とサヤカの心を癒していた。
責められているわけでも、突き放されているわけでもない。むしろ──自分の代わりに、誰かが怒ってくれている。
その事実に、張り詰めていた感情が一気に緩み、サヤカの瞳から再び涙が溢れ出した。
エルザは何も言わず、そっと彼女を胸に引き寄せる。
大きな手が、子どもをあやすように、優しく頭を撫でた。
「究極魔法──癒しの光……」
静かな詠唱とともに、淡い光がサヤカの身体を包み込む。
次の瞬間、身体を苛んでいた痛みは跡形もなく消え去り、代わりに、じんわりとした温かさが全身に広がっていった。
「これで、あんたの身体は元通りだよ。 もちろん、処女のまま──妊娠の可能性だって、もうない」
その言葉に、サヤカは思わず息を呑み、はっと顔を上げた。
「……えっ!?」
信じられない、という表情。恐怖と不安に縛られていた心が、ほんの一瞬だけ自由になる。
だが、エルザはそこで微笑まなかった。どこか厳しさを帯びた目で、サヤカをまっすぐに見つめる。
「でもね……私でも、心までは癒せない」
柔らかな声の奥に、はっきりとした覚悟が滲んでいる。
「……どうする?」
一拍、間を置いてから、エルザは静かに問いかけた。
「その男を──痛い目に遭わせて、思い知らせてやるかい?」
エルザは、その瞬間、初めてニヤリと笑った。
それはまるで、悪戯を思いついた子供のような、無邪気で危うい笑みだった。
「あんたが……奴に、引導を渡すんだよ」
ギラギラと輝くその瞳が、逃げ場のない問いとしてサヤカを射抜く。
サヤカは一瞬も視線を逸らさず、エルザの目を見据え──そして、力強く頷いた。
~to be continued~