ナツコは結局、旦那の誘いを断ることができなかった。
寝室へ向かう前に、もう一度だけシャワーを浴び、汚れた身体を入念に洗い流す。
ひりつくほど肌を擦りながら、余計なことだけは起こらないようにと、心の中で何度も繰り返す。
正直、愛してはいない。
それでも、この膨らんだお腹の中にいるのは、旦那の子供なのだ。
ドアを開けると、サイドランプの光だけが、ぼんやりと広がっていた。
ベッドの上には既に旦那が、布団から腕だけ出して寝そべっている。
その組んだ腕に頭を乗せ、逃げ場がないとでも言うように、彼女の様子を伺っている。
そんなキヨヒコを前にしながら、ナツコは着ていたバスローブをゆっくり脱いで、裸になっていった。
少し突き出ただけの控えめな胸。
妊娠前は、ハッキリとくびれていたお腹回りが、今ではポッコリと膨らんでいる。
そして、デリケートゾーンを覆う薄めのアンダーヘアー。
その真ん中にはくっきりとした一本の筋が通っている。
そんな彼女のお腹に宿っているのは、紛れもなく彼の子供だ。
その姿を見てキヨヒコはニヤニヤと笑っていた。
服を着ていればわからない。だが、男好きする嫌らしい体付き。
それが、今では自分のもので、絶対に服従を誓う妻なのだ。
意外な掘り出し物を手に入れたことに、キヨヒコは「これは運命だ」とばかりに神に感謝していた。
大学で初めて彼女を見かけた時、どこにでもいる冴えない女だと思っていた。
しかし、良く見るとその顔は意外に整っていて、身体付きも妙にそそるものを感じた。
幸薄く、目立ちはしない。だが、隠された魅力があると本能が告げていた。
だから、野球部の仲間を巻きこんで、彼女を手に入れることにしたのだ。
それが実際に当たりだった。ナツコを手に入れた彼は、少しずつ自分好みに変えていった。
虚ろな眼差しで、ベッドの上をぼんやりと見つめる彼女の前で、彼は布団をはいだ。
そこから現れたのは、筋肉質の毛むくじゃらな肉体と、股間から天に向かって伸びるもの。
「さあ、いつものようにしてくれ」
彼がそう言うと、彼女はベッドに上がり、その股間に躊躇いもせずに顔を埋めていった。
したくてするのではない。彼女は、こうするように躾けられていた。
少しでも拒否すれば、彼の口から容赦なく罵詈雑言が浴びせられる。
彼女はそれを回避するために、そうするしかなかったのだ。
彼のものを優しく握り、亀頭の先に唇を付ける。
そして瞳を閉じながら丁寧にキスを繰り返していく。
彼はその姿に、満足そうに目を細め、褒めるようにその頭を撫でていった。
ナツコからしてみれば夫との行為は、けして良いものではなかった。
初めて身体を合わせた時、彼女は処女ではなかった。だが、経験人数が多いわけでもなかった。
その時に豹変するこの男の怖さを初めて知った。
優しかった彼が、女を意のままにしようと、感情を剥き出しにしたのだ。
嫌だと思っても、逆らう勇気もないし、その支配からは逃れられない。
自分の意志など関係なく、彼の思うように事は進められていった。
その時から──、彼女はキヨヒコの従順な女へと躾けられていたのだ。
股間に顔を埋めたままのナツコは、舌を這わせて彼のものを丹念に舐めていた。
教わった通りに、カリ首から裏筋にかけて、行ったり来たりを何度も繰り返す。
その度にペニスがピクピクと脈打ち、先端には粘膜が滲む。
それを見た彼女は、口を大きく開いて、亀頭の先端をパクっと咥えていった。
「おぉ~し、いいぞ。……そろそろ、ケツ向けろ」
その言葉を聞いた瞬間、ナツコの胸がドキッと跳ねた。
痕跡は入念に洗い流した。しかし、昼間に精子を出しされた箇所を見せるのは不安が過る。
「……今日は、このまま挿れちゃっても、良いですか? ……私も、身体が疼いちゃって……」
その言葉は真っ赤な嘘だった。今日はどうしても、お尻を向けたくなかった。
夫の機嫌を損ねないように、言葉を選んで言った。そのはずなのに、ボブに切った短い髪を、彼にギュッと引っ張られる。
「おい! 俺は舐めたいんだよ!」
夫はまたしても豹変した。それでも、これ以上の暴力が無いのはわかっている。
だが、その恫喝がナツコは怖くて堪らない。
「わ……わかりました……」
彼女は身体を震わせながらも、言われた通りにお尻を向けた。
そしてまた、彼の股間のものを青ざめた顔で口に含む。
すると、夫の唇があそこに吸い付き、突き出された舌が「ペロペロ」と、穴の周りを舐めていった。
「あっ……あんっ!」
正直、声を出すほど感じてはいない。昼間の痕跡がバレないだろうかと、ハラハラしてるし、夫はそれほど上手じゃない。
だが、彼を喜ばせるには、感じてるフリをするのが一番だ。
身体をビクビクと痙攣させ、大げさに喘ぎ声を漏らす。
そして、敏感な所に舌が触れると、ヒクつくように身体を捩る。
しかし、それを続けていると、割れ目から粘膜が溢れ出し、穴が少しずつ開き始めていく。
その時──
「おい……今日はなんか匂うなぁ。……ちゃんと洗ったのか?」
バレないようにと祈っていた。だが、夫は僅かな残り香で、他の男の痕跡を見抜いていた。
だからといって、この体勢を崩す訳にはいかない。そんなことをすれば、また恫喝されるだろう。
ナツコは死に物狂いで、夫のペニスをしゃぶり続けていった。
口いっぱいに唾液を含ませた音が、「ジュル、ジュル……」と響く。
「……うっ! ……今日は激しいな。そんなに”したかった”のか?」
ナツコの奮闘ぶりに、キヨヒコはえらくご機嫌だ。
お互いの性器を舐めあう卑猥な音が、寝室に甲高く響き渡っていた。
彼の意識は、もう完全にしゃぶられている所に向けられて、あそこを舐める舌の動きもおぼつかない。
ナツコは少しだけホッとするものの、ここで手を抜く訳にはいかなかった。
感の鋭いこの男が、医者との行為の痕跡を、またどこで見つけるかわからない。
さっさと精子を搾り出そうと、必死に唇をスライドさせながら、ありとあらゆる所に舌を這わす。
すると、彼の身体が震え出し、吸い付いていた唇があそこから離れていった。
「うっ、うぅっ……そろそろ、ハメるぞ! お腹に負担が掛からないように、お前が上になれ!」
その言葉で、ナツコの表情に安堵が見えた。
このまま夫がイッてくれれば、もう疑われることはないだろう。
「わかりました……」
彼のペニスを握ったまま腰に跨り、硬くなったものに目掛けて腰を沈めていく。
いわゆる、背面騎乗位。
夫のペニスは、パックリと開いたアワビの中に、ニュルっと飲み込まれていった。
しかし、その時──
「ん? ……なんか、挿れた感じが違うなぁ~」
ナツコはその言葉にドキッとした。
夫より大きなものが入っていたから、膣がそれを覚えて学習していたのだ。
慌ててペニスをギュッと締め付ける。だが、夫はその違和感に疑いの目を向けている。
「に、妊娠して膣の具合が変わったんだと……思います」
苦しまぎれの言い訳だった。そんなことなど、あるかわからない。だが、咄嗟に言っていた。
「そんなこともあるのか? ……女の身体は不思議だな」
ナツコは夫の感の鋭さに、脅威を感じていた。このまま肌を合わせ続ければ、きっとまた何かの異変に気付くだろう。
夫はナツコの言葉に納得してるようだが、これ以上ボロが出たら、隠しきれる自信はない。
「あのぉ~、我慢できないので……もう、始めちゃっても良いですか?」
「よし! 良いだろう」
演技だとも知らずに、ナツコの言葉に夫はニヤリと笑った。
自分からは、あまり求めて来なかった女が、欲望を剥き出しにしているのだ。
密着した結合部からは、愛液がトロトロと溢れ出している。
彼女が前後に腰を動かし始めると、キヨヒコは満足げな顔で、そのお尻をゆっくりと撫で回していった。
「あんっ、あんっ、あんっ……」
特に気持ちいいとは感じなかった。それでもナツコは、腰を振りながら声を上げる。
四方八方に腰を振って、滅茶苦茶に膣の中を掻き回す。
「クチュ、クチュ……」と卑猥な音が響き、結合部分の陰毛はヌルヌルになっていく。
「よし、よし、いいぞぉ~。 腰を振りながら金玉をマッサージしろ」
ナツコは彼に言われた通り、腰を動かし続けながら、その部分を優しく撫でていった。
毛深い陰毛に覆われたその部分は、溜まっていたのか、はち切れそうなくらいに膨らんでいる。
彼女は、さらに腰を上下に動かし、ペニスの抜き差しを繰り返しながら、そこを軽い力で揉んでいく。
早く射精させようという彼女の思いが、腰の動きをより複雑にさせていた。
膣の中を擦り続けるペニスの感触は、とくに特徴がある訳でもなく、それほど良いとも思えない。
しかし、彼女は気持ちの良いフリをして、卑猥な声を上げ、乱れた様子を見せる。
その姿が、旦那を興奮させるとわかっていたし、その方が喜ぶ。
次第に旦那の息遣いが激しくなり、中のペニスがじんわりと火照り始める。
それは、いつもの絶頂前の旦那の反応──
彼女は腰を動かし続けながら、ペニスをギュッと締め付けていった。
「イクっ! ……イッちゃい……ますぅ──ーっ!」
本当に絶頂を迎える訳ではない。彼とやってイクことなど滅多にない。
だが、その反応を見せないと、しつこいくらいに攻められる。
ナツコはそう叫びながら、大きく仰け反っていった。
「よ~し! 俺も出すぞぉ────!」
そして、彼はそう言って、下から腰を突き上げる。
その瞬間、膣の中に熱いものが「ビュルビュル、ビュルビュル……」と流れ込んできた。
彼女は、さらにイッた感じを見せようと、崩れるように倒れ込む。
無様なその姿を見て、満足げにお尻を撫で回すキヨヒコ。
ナツコはその様子を横目で伺いながら、医者とのことがバレなかったことに、ホッと胸を撫でおろしていた。
~to be continued~