数日が経った頃、あの医者”シンスケ”からナツコの元に連絡があった。
彼女はもう、二度と会いたくないと思っていた。
電話口で名前を呼ばれただけで、身体が強張った。
それでも、弱みを握られた彼女には、断ることなどできなかった。
平日の昼間に、近くの公園に呼び出され、彼女は青ざめた顔でそこに向かった。
逃げる理由はいくらでも思いつくのに、足だけは勝手に前へ進んでいた。
頭の中に、あの日の出来事が鮮明に蘇る。
診察と言いながら、身体中のいろんな所を弄ばれた。
そして検診台の上で、訳のわからぬまま、生のペニスをハメられた。
あの時の、生々しい感触が今も頭から離れない。
そして、中に出された熱い精子の感触も──。
どんなに否定しようと、ナツコはあの男とセックスし、イカされてしまったのだ。
合意した訳ではない。だが、人妻でありながら、夫以外の男性と関係を結んだことが、心に重くのしかかる。
このことが、旦那に知れたら、ただでは済まないだろう。
何としてでも、この秘密は隠し通すしかない。
待ち合わせ場所に到着すると、シンスケは少し離れたベンチに腰を掛けていた。
まるで面接にでも行くような、リクルートスーツに身を包んだ、きっちりとした身なり。
眼鏡の奥の感情のない目が、遠くをぼんやりと眺めている。
──やはり、あの時に感じた違和感は間違いじゃない。
その感情の乏しさが、人として何かが欠けていることを、はっきりと示していた。
表情を曇らせたまま近付いていくと、彼は不意に顔を向けた。
「来ましたね。……待っていました」
そして、そう言いながらニヤリと笑った。
ナツコはバックから金の入った封筒を取り出し、シンスケに渡す。
彼は封筒の中から札束を取り出し、その金額を確認した。
──十万。
それは、ナツコにとって少ない額ではない。
学生時代から、コツコツと貯めてきた自分のお金だ。
「……もう、これっきりにして下さい」
ナツコがそう言って立ち去ろうとした瞬間、手首を強く掴まれた。
「そんな訳にはいかない。……貴女のことは、これから利用させて頂きますよ。いろんな意味でね」
彼のその言葉と、悪魔のような微笑みに、背筋を冷たいものが這い上がった。
ナツコは着ている服の中で、ダラダラと冷や汗を流していた。
彼女の服装は、他人から見れば、決して目を引くものではない。
白の無地のTシャツに、肩ひもの付いた紺のマタニティワンピース。
しかし、シンスケはその格好を、舐めるように見つめると、ニヤリと笑った。
「まあ、座って下さい。少し、楽しんでいきましょう」
その言葉が、何を意味しているのか、ナツコには何となく予想がついていた。
それでも、逃げ出すことはできない。
生気を失った顔つきのまま、言われるがままに、彼の隣へ腰を下ろした。
「じゃあ、ここで胸を出してください。吸ってあげます……」
ナツコはその言葉に呆然と目を見開いた。
信じられないと言った顔つきで、彼を黙って見つめる。
だが、シンスケは落ち着き払ったまま、動じる素振りも見せない。
(狂っている……)
そう思い、この男に関わったことを後悔する。
青空の広がる昼間の公園には、幼い子供たちのはしゃぐ声が、高らかに響き渡っている。
小鳥の囀りが聞こえる木陰の向こうでは、母親とその子らが元気に駆けまわっている。
いくら人目に付かないといっても、健全を絵に描いたようなこの場所で、そんな醜態を晒すなんてできる訳がない。
ナツコは頭が混乱し、呼吸すら上手くできなかった。
「やらないんですか……? ご家族が、私とセックスしたことを知ったら、どう思いますかね?」
しかし、彼が放ったその言葉は、明らかに脅しとしか思えないものだった。
頭の中で思考が錯綜する。
だが、今の自分には、この男の言葉を拒むことはできないと、改めて自覚する。
(この男は本気だ。自分自身が破滅する危険性があっても、断れば、あのことを公にする……)
ナツコは観念するかのような顔で、言われた通りに、ワンピースの肩ひもを下げていった。
そして、Tシャツを捲り、隠されていた色白の素肌を赤裸々に晒す。
Cカップにも満たない小さな胸は、白いレースのブラジャーに包まれたまま、いまだに姿を隠し通している。
「僕が出してあげましょう……」
シンスケはそう言いって、ブラと素肌の間に人差し指を突っ込んだ。
そして、ゆっくりとブラを引き下げ、片側の胸だけを剥き出しにさせていく。
それを見たナツコは、悔しそうに顔を歪ませ、思わずそこから顔を背ける。
白日の下に晒されたその部分は、鳥肌が立っていて、天辺の色の変わった部分も、キュッと縮こまっている。
乳首は微かに膨らんではいる。だが、あの時のようにピンとは立ってはいない。
シンスケはジッとその部分を見つめると、表情も変えずに呟いた。
「寒いですか? ……少し、身体を火照らせてあげましょう」
そう言って、色の変わった部分を人差し指で、さりげなくなぞる。
そして、僅かに突起した部分を、少し曲げた指でピンピンと弾き始めていった。
指の腹が行ったり来たりするたびに、淡いピンクの突起物が微かに揺れる。
その瞬間、歪んでいた彼女の顔から、一気に力が抜けた。
噛んでいた唇がポッカリと開き、瞳は急に虚ろになる。
遥か遠くへ向けられた視線は、ぼんやりと宙を彷徨っている。
頬が真っ赤に染まり、心ここにあらずの切なげな表情──。
シンスケはその様子をジッと見ながら、彼女の胸にゆっくりと唇を近付けていった。
認めたくはない。だが、彼の一つひとつの行為は旦那より遥かに上手かった。
産婦人科という職業柄、ナツコが考えるより、女性の身体を知り尽しているのだ。
それは単に「モテたい」とか「女を堕としたい」という、下劣な考えからきてるのではない。
自分の利益を得る為に、医学を追求した結果──。
正常ではないシンスケだからこそ、女性の身体を冷静に分析し、この境地まで辿り着くことができたのだ。
小さく膨らんでいた乳首が、指の腹で甚振られるたびに、少しずつ面積が広がりだしている。
そして──
大きく膨らみピンと立ったその部分。彼の大きく開いた唇に、スッポリと咥え込まれていった。
ナツコはその瞬間、歯を食いしばりながらも、すすり泣くような声を上げた。
視線の先には、無邪気な子供とその母親が楽しそうに戯れている。
それを見ながら、こんな淫らなことをされてるナツコは、何を思っているのだろうか。
口の中の乳首は、唾液の滴る舌に乗せられ、ゆっくりと転がされている。
「チュパ、チュパ……」という音を聞きながら、ナツコは朦朧とした眼差しで、その光景をぼんやりと眺めていた。
シンスケが彼女を標的にしたのは、嫌なこともキッパリと断れない控え目な性格が、利用できると確信したからだ。
抑圧されて過ごしてきた人生が、彼女の見た目にまざまざと現れていた。
診察中も、どこまで我慢できるのかと値踏みするように様子を伺っていた。
だが、彼女は最後まで怒りも見せず、ただ黙って耐え続けた。
──思った通り、彼女は耐え忍ぶことに慣れている。
幼い頃から自分の感情を押し殺し、今の家庭でもそうやって生きている女だ。
こういう女は、身体だけではなく、心まで奪ってしまえばいい。
自分に寝返ってしまえば、とことん尽すし、絶対に裏切らない。
シンスケは、彼女のスカートを少しだけ捲り、その中に手を忍ばせていった。
そして、太股を撫でながら、閉じていた脚を強引に開かせる。
いまだに、口の中の乳首は、ヌルヌルと蠢く舌に甚振られ続けている。
その動きと共に、彼女の身体の至るところがピクピクと痙攣し、汗ばんだ股の間も、閉じたり開いたりを忙しなく繰り返していた。
彼の指がパンティの上から大切な部分に触れて、ナツコの身体がビクッと揺れ動く。
その指は開いた割れ目をなぞるように、行ったり来たりを繰り返していた。
まるで、その個所を労わっているかのような優しい動き──。
頭の中では「嫌だ……」と拒否をしているのに、身も心もじんわりと温まり、胸がキュンキュンと締め付けられていく。
それは、旦那とのセックスでは、味わったことのない感情まで呼び覚ましている。
性的行為に何の希望も見いだせなかった、彼女の冷え切った心までジワジワと溶かしていた。
そして、彼の指がクロッチを捲って、パンティの中をまさぐり始めていく。
そこは既にビショビショで、他の部分より遥かに熱くなっていた。
パヤパヤと生えた陰毛が、デリケートゾーンにベッタリと張り付き、割れ目はパックリと口を広げている。
シンスケは彼女の乳首を舌で転がしたまま、しっぽりと濡れた穴の中に、指を埋め込んでいった。
「うぅっ……あぐっ!」
その瞬間、彼女の口から少し大きな声が漏れた。
咄嗟に彼女の手が、スカートのモゾモゾと動く所を押さえ込む。だが、まったく力が込められていない。
まるで、それを受け入れてしまったかのように、彼の蠢く手を無意識に撫でている。
こんな場所で、醜態を晒しているというのに、彼女はもう何も見えてはいなかった。
一定のリズムで転がされる乳首と、中を掻き回す指の動きに、切ない思いと快感がじわじわと込み上げる。
膣に入った指は、「チャプ、チャプ」と音を立てながら、中をゆっくりと掻き回し続けていた。
次第に彼女の膝がガクガクと震え出し、中途半端に閉じていた太股が大きく開かれていく。
「いっ……いぐぅ──────────ーっ!」
ナツコは絶叫と共に、「ビュッビュ、ビュッビュ」と潮を吹いていった。
その勢いはパンティすらも突き抜けて、マタニティワンピースまでビショビショに濡らしていく。
息を荒げながら呆然と天を見上げ、胸元にある彼の頭をギュッと抱き締めている。
心ここにあらずの、何もかも終わってしまったかのような状態──。
それを見たシンスケはニヤリと笑った。
「さあ、ホテルに行きましょうか。……たっぷり、可愛がってあげますよ」
人間味の無い薄気味悪い笑み。
いまだに呆然とするナツコは、その声を聞いて咄嗟に彼に顔を向けた。
絶頂を迎えたばかりのその顔は、瞳が潤んで焦点も定まらない。
濡れた唇を半開きにしたまま、何も言わずにコクリと頷く。
シンスケに腰を抱かれて、彼女は引きずられるように街の中に消えていった。
~to be continued~