タカコを思い通りにしたことで、タクヤはますます有頂天になっていった。
迫りくるエルザの影にも気付かず、まるで小国の王にでもなったかのように増長していた。
手中に収めた三人の女は、もはや逆らえない。
瞳は甘く潤み、彼の言葉一つで表情を変える。
それは愛ではない。
魔王だった頃から持つ〈魅了〉のスキルが、心を塗り替えているのだ。
彼は自分が幼子だということも忘れ、朝から三人の女たちを寝室に連れ込み、欲望の限りを尽くしていた。
「おばさん……もっと、腰動かして……僕を気持ち良くしてよ~」
タクヤは年相応の子供のように甘えた声を出す。
だが、女を侍らせ、ベッドの上に裸で寝転ぶ姿は、まったく見た目に合っていない。
その太々しい態度は、まるで女を知り尽くした熟練の男。
マキコはそんな彼の上で素っ裸になり、M字に脚を大きく広げて、その腰に跨っていた。
「あんっ、あん……」と切なげな出し、少し大きな胸をタップンタップンと上下に揺らしている。
むろんパックリと開かれたあそこには、タクヤの硬くなったものが突き刺さり、出たり入ったりを執拗に繰り返していた。
「う、うん……あぁっ! ……わ……わかったぁ……あふっ!」
マキコは、険しい顔付きで呼吸を弾ませながらも、言われた通りに腰を振る。
「ヌッチュ、ヌッチュッ……」と音を立てる結合か所からは、愛液が溢れるように滴り落ち、出たり入ったりするものをテカテカに光らせていた。
そんな二人の繋がった部分を、恨めしげに見つめるキヨミ。
同じく丸裸になって、彼の小さな乳首を、優しく舐めたり吸ったりしていた。
丸見えのお尻を突き出して、低く屈んだその格好。
まだ何もされてないのに、あそこはすでにビッショリと濡れ、陰毛がベッタリと周りに張り付いている。
その反対側では全裸になったタカコが、うっとりとした顔付きで、舌を絡めたキスをタクヤと繰り返していた。
「プチュッ、チャプッ……」と繰り返される音が、日の差し込める寝室に、妖しい雰囲気を作り出している。
タクヤの小さな手が頭に回り、為すがままに唇を貪られる彼女は、それに酔いしれて他のことにまで気が回らない。
彼の片方の手がその胸に伸びて、色の変わったところを擽っている。
そのたびに、彼女の身体がビクンビクンと大きく揺れていた。
幼い子供に淫らな奉仕をしているにも関わらず、彼女たちには現実がまるで見えていなかった。
していることは犯罪で、世間の論理からも大きく外れているというのに、その認識がまったくない。
だが、それぞれの思いは違うのに、タクヤに気に入られようと必死なのは誰もが一緒。
三人の女たちは幼い子供一人に、持てる力の全てを使って、愛を注ぎ続けていった。
「よーし。今日は、おばさんの中に出すよ~」
しばらくすると、タクヤはそう言って下から腰を突き上げ始めた。
その言葉と共に、キヨミは少し悲しそうな表情を浮かべ、マキコはさらに大きな声を上げて、身体をくねらせる。
眉間に皺を寄せたやるせない表情を浮かべながら、彼の動きに合わせて一心不乱に腰を振る。
そんな中、タカコは我関せずといった様子でキスに没頭し、その小さな頭を無我夢中で撫で回していた。
「……くっ!……い、イグ────────────っ!」
そして、マキコの絶叫が寝室に響く。
その身体の至るところがピクピクと痙攣し、蛙のような格好のまま、時が止まったように固まっていた。
虚ろな瞳で呆然と天を見上げ、ポカーンと口を開いたその様子は、まるで魂の抜けた殻のよう。
結合したところからは、白く濁った体液がジワジワと溢れ出している。
タクヤはそんな彼女の姿を見てクスッと笑い、ペニスを抜いて立ち上がる。
そして、いまだに裸のままの女たちをよそに、脱ぎ捨てられた衣服を一枚いちまい身に付けていく。
キヨミが、もの欲しそうな顔で見つめているが、そんなことなど構いもしない。
「さあ、新しい下僕を探しに出かけるよ~」
スッキリとした顔で無邪気に笑うタクヤ。その言葉に、キヨミは不意に顔を曇らせる。
放心状態のマキコはぐったりとベッドに倒れ込み。タカコは彼に続くように、いそいそと衣服を身に着け始めていった。
それに続いて、渋々といった感じでキヨミも服を着始める。
「……ねぇ、タクヤ~」
キヨミは母親という立場もすっかり忘れ、甘えた声でタクヤを見つめた。
まるで、おねだりでもしてるようなその潤んだ瞳に、タクヤの顔がフッと綻ぶ。
「帰ってきたら、してあげるから……だから、行くよ」
そう言ってニッコリ笑う姿は、純真無垢な子供そのもの。
キヨミはそれを聞いて、少し嬉しそうに、ほんのりと頬を赤く染めた。
「……う、うん。わかった……」
そう言って恥じらう姿は、母親ではなくただの女。
裸のままベッドで気を失っているマキコを残し、三人は意気揚々と街に繰り出していった。
昼前の繁華街は女たちで溢れていた。
平日のこの時間帯、まともな男たちは皆、仕事に縛られているはずだ。
それでも、ところどころに男の姿はある。
だが彼らは買い物客にも会社員にも見えない。
ただ、死んだような目で、あてもなく通りを漂っている。
その中で──
二人の女に手を引かれて歩くタクヤの姿は、どこか異様だった。
母子連れ自体は珍しくない。
だが、どう見ても“連れられている”のは女の方だった。
幼い子供が、二人を従えている。
しかも、その女たちには覇気がない。
抵抗している様子もない。
だが、楽しげでもない。
虚ろなその表情は、何かに支配されているとしか思えなかった。
ショッピング街を我がもの顔で歩きながら、タクヤは次の“駒”になりそうな女を吟味していた。
本来なら、屈強な男たちを取り込む方が早い。
だが今の自分は幼い子供の姿。
しかも魔力は、まだ完全には戻っていない。
正面から対峙すれば返り討ちに遭うのは明白だ。
──焦る必要はない。
時間はある。
力が戻るその日までに、盤面を整えておけばいい。
そのためには、男たちを動かすための“餌”となる女が必要だ。
あくまで子供らしい、あどけない顔で道行く女に視線を向けるタクヤ。
だが、その瞳の奥だけは異様に鋭い。
まるで獲物の隙を探る野獣の目だった。
そのとき──
一軒のブティックの店先で、セール品を難しい顔で眺めている金髪の女が目に留まる。
”男根”と大きく書かれた、少し残念なTシャツを手に取り、ぶつぶつと独り言をこぼしている。
「いいんだけどなぁ~。……少し、たけぇなぁ~」
絹糸のように細い金髪が肩に流れ落ちる。
際立つほどの雪のように白い肌。
そして、切れ長の瞳に宿る──瑠璃色の光。
それは、どんな人間が見ても、息を呑むほどの絶世の美女。
タクヤは思わず足を止める。
背筋に、冷たいものが走った。
間違いない。
あれは紛れもなく──
エルザ・フォン・エスタービッチだ。
タクヤの脳裏に、魔王として討伐されたあの日の記憶が蘇る。
勇者パーティーで本当に恐ろしかったのは、剣を振るう戦士アナスターでも、光を掲げる勇者マリーシアでもない。
──神官、エルザ・フォン・エスタービッチだ。
破天荒な性格の彼女は、“アズベール”だった頃のタクヤを完全に出し抜いていた。
配下の魔物を次々と犯し、魔王軍屈指の幹部──四天王すらもその手中に収めた。
奴隷にした魔物たちで自身の親衛隊を作り、魔界をも乗っ取ろうとしたのは紛れもない事実。
なにより、絶命寸前のアズベールを犯し続け、とどめを刺したのはエルザだった。
(なんで奴がここに……!? 関わったら碌なことにならない。──逃げよう!)
珍しく動揺を見せるタクヤ。
それに呼応するように、キヨミとタカコの足取りも乱れる。
二人はいまだ生気のない顔のまま。
だが主の異変だけは正確に感じ取っていた。
タクヤは気配を殺し、ゆっくりと背を向ける──
その瞬間。
エルザの瑠璃色の瞳が、まっすぐタクヤを射抜いた。
ギクリと彼の肩が跳ねる。
それを見てエルザは、ニヤリと笑った。
そして、一直線にこちらへ向かって歩き出した。
「おい、お前……」
エルザはいったん足を止める。
わざとらしいほどの間。
そして──悪魔のような笑みを浮かべた。
「アズベールだな。……転生したんだ~?」
「な、なんの話かなぁ~。僕、そんな人知らないよ……」
タクヤはあどけない子供の顔を作り、首をかしげる。
だが額からは汗が滴り落ち、エルザの目から逃げるように視線が泳いでいた。
その様子を見て、エルザは肩をすくめる。
「動揺すんなよ。……お前との因縁は、あっちの世界で終わったんだ」
そして一歩、距離を詰める。
「なにより──今のお前に、あんな魔力はないだろ?」
その一言で、タクヤの顔からさらに血の気が引いた。
「お前……私に何をした!」
低く、荒い声。
それはいつもの子供らしい声音ではなく、完全に“魔王アズベール”の口調だった。
キヨミとマキコは、その変わりように思わず顔を見合わせる。
動揺するタクヤとは対照的に、エルザは余裕綽々だった。
血相を変える彼を見て、ぷっと吹き出す。
「ははは……何したって? 封印したに決まってんじゃん」
タクヤを見下ろすその姿は、まさに王者の風格。
それを聞いたタクヤは、まるで、全てを奪われたかのように、顔色を失った。
「お前が転生するのは、お見通しさ。他の世界で悪さができないようにするのは当たり前だろ?」
その言葉で、タクヤは気づく。
──確かに、おかしかった。
この世界に生を受けた時から、魔力の修練を欠かしたことはなかった。
だが、いくら錬成しても戻るのは、せいぜい生活魔法程度。
かつての魔王の力には、遠く及ばない。
「生活魔法くらいは使えるようにしてやったけどな。……けどさ」
呆然と目を見開くタクヤの顔を、エルザが覗き込む。
そして視線を、キヨミとタカコへ移した。
「あんた、魅了スキル使ってるだろ?」
図星を言われてタクヤの顔が引きつる。
だがその瞬間、エルザの表情も険しくなり、さらに攻めるように言葉を放つ。
「また悪さしてたな? ……あんたのスキルは封印させて貰うよ。それに、あんたたちのこれまでの記憶も書きさえさせて貰う」
エルザの話しが本当ならば、残されるのは生活魔法だけ。
かつての魔王の面影は、完全に消える。
世界征服など、夢のまた夢。
さらに──築き上げてきた支配も、消える。
「や、やめろ────!」
タクヤは突然声を荒げた。
だが今の彼では、この女には到底敵わない。
小さな身体を震わせ、怯えるように後退る。
その姿を見て、エルザは満足げにニヤリと笑った。
「だったらさぁ~、元の世界に帰る方法を教えろよ。あんただったら知ってるよねぇ~?」
それが、彼女の本題だった。
エルザが街へ繰り出していたのは、ただ遊び歩くためではない。
この世界に迷い込んでから、ずっと帰還の手掛かりを探していたのだ。
だが、何一つ掴めないまま、半ば諦めかけていた。
その時──タクヤを見かけた。
千年以上を生きた魔王アズベールなら、何か知っているはずだ。
「教えてくれたら、魅了以外のスキルと──あんたの記憶だけは、そのままにしてやんよ」
そう言って、エルザは悪魔のように微笑む。
タクヤの背筋に、冷たいものが走った。
確かに彼は、この世界と異世界を繋ぐ“ゲート”の出現場所を知っている。
この世界を征服した後、元の世界に戻り、復讐を果たす──
そのために、それだけはひた隠しにしてきた。
だが、エルザが約束を守ったところなど、一度も見たことがない。
平然と裏切る。
笑いながら切り捨てる。
その突拍子もない性格こそが、魔王軍を絶滅にまで追い込んだのだ。
タクヤはすぐに答えられなかった。
呆然とエルザを見つめ、額から汗を伝わせる。
「……ここから数十キロ離れた湖の畔だ。満月の夜だけ、この世界と異世界を繋ぐゲートが現れる……」
絞り出すような声だった。
彼に選択肢などない。
圧倒的な力の差は、今のアズベールには埋めようもなかった。
苦虫を噛み潰したような表情で、視線を逸らす。
それを聞いたエルザは、満足げにニヤリと笑った。
「ふふ……じゃあ約束通り、魅了スキルは封じさせてもらうよ」
そう言うと、低く呟くように詠唱を始める。
その瞬間──
タクヤとキヨミ、タカコの身体が淡く光を帯びた。
何かが剥がれ落ち、天へ吸い上げられていくような、神々しい輝き。
そして詠唱が終わると、エルザは清々しい顔で言った。
「じゃあな~、アズベール。今度は良い子に育つんだよ~」
にこやかに手を振るその姿に、罪悪感の色は一切ない。
咄嗟にタクヤが目を見開く。
「き、貴様ぁ────!」
だが、すでに遅い。
光が霧散すると、キヨミとタカコは不思議そうに顔を見合わせた。
「あら……私たち、何をしていたのかしら?」
その瞳には、確かな生気が戻っている。
もう、誰かに支配されている気配はない。
そして、タクヤは──
あの妖しい雰囲気は跡形もなく消え、あどけない子供の顔でキヨミを見上げていた。
「……お母さん、オモチャ……オモチャ買いに来たの……」
その声に、魔王アズベールの残滓は一片もない。
まるで最初から、ただの子供だったかのように。
エルザはそれを一瞥すると、何事もなかったようにその場を後にした。
だが──
彼女はまだ知らない。
タクヤの家に、もう一人、魅了の被害者が残されていることを。
そして、その見逃しが、やがてマキコを“別人”へと変えてしまう。
だが、それは、また別の話。
昼下がりのショッピング街に、エルザの楽しげな笑い声が、高らかに響き渡っていった。
~to be continued~