何が欲しいか聞いてみたら「じゃあ、ゆかりさんが欲しいです!」と言われた。
動機なんてそれだけ。他になにか必要かな?
「それじゃあ行ってくるからね、ゆかりちゃん」
「はい、お気をつけて。マキさん」
そう穏やかに笑いながらゆかりは、普段よりずっと多い荷物をまとめたマキを見送ろうと台所から玄関へと向かった。マキの方も準備はできているようで既に靴も履き終えているようだった。しかし、当のマキはというとどこか物欲しげにそわそわとしている。それに気付いたゆかりが苦笑しながら両手を前に差し出してやると、マキは待ってましたと言わんばかりにゆかりを引き寄せてぎゅっと抱き締めた。
「ん…、もう。大袈裟ですよ、たった一週間じゃないですか」
「一週間も、だよぉ…。一週間会えないとかゆかりちゃん成分が足りなくてしんじゃう…」
「仕方ない人ですね、いつの間にそんな寂しがり屋になっちゃったんですか?」
「ゆかりちゃんのせいだよ~…。それになんでゆかりちゃん一緒じゃないのさぁ…?」
「仕方ありませんよ。ここ数カ月私とばっかりの収録でしたし。たまには別の人との組み合わせも録りたいんでしょう?」
「でもぉ…」
「もう…。じゃあ、おまじないです」
おまじない?そう顔を上げて口を開こうとしたマキの唇に柔らかい感触。
「…続きは、帰ってからですから。お仕事頑張ってきてください」
そう顔を真っ赤にしながら言う恋人の姿に、マキは堪らないといった様子で抱き締める力を一層強くする。
「あぁ~、もう!ゆかりちゃん可愛すぎ!」
「ちょ、くるし、苦しいですから!落ち着いてください、マキさん!」
そうしてひとしきり抱き締めて、マキはお返しと言わんばかりにゆかりの額に唇を落とす。
「な、マキさん…!?」
「続きは帰ってきてからね!すぐに終わらせてくるから!行ってきます!」
先程までの情けない表情はどこへ行ったのか、呆れるほどの上機嫌で手を振りながら部屋を後にした。ゆかりは呆れ半分の笑顔を赤く染めて部屋へと戻る。さて、一週間何からしようかとこれからの予定を脳内で軽く計画立てる。折角休みが一週間あるのだから、家事は後に回して少し自堕落に過ごすのもいいのでは。いや、先に片付けを終わらせていっそどこかに出掛けてしまうのも面白いのかもしれない。ついでにお土産でも買ってマキを驚かせるのも、なんて色々思考を巡らせながら台所に立とうとしたのとスマートフォンが鳴るのはほぼ同時だった。誰からだろう、とダイニングテーブルに置かれたスマホを拾い上げると画面に映し出されたのは“アリアル”の文字。珍しい相手からかかってきたな、と画面をスワイプして着信に出る。
「もしもし」
『おお、ゆかりさんか?僕だよ、アリアルだ』
「はい、この前の収録ぶりですね。どうしましたか?」
『実は簡単な頼み、というかお願いがあるんだ』
「お願い?」
『あぁ。弦巻さんから聞いたんだが、暫く休みが続くんだろう?ミリィ…えっとミリアルが仕事のことで聞きたいことがあるらしいんだ。それで、突然で悪いんだが今日か明日か、アドバイスを貰えたらと思ってるんだ。ついでに、お礼というかおもてなしみたいなのもしたいから、よければ私達の家に来てくれないか?家までは案内するよ』
「突然ですね。まぁ、構いませんけれど。なら、明日でいいですかね?できれば今日中に家事を片付けてしまいたいので」
『すまない。それと、ありがとう。ミリアルにはこちらから伝えておくよ』
そう言ってアリアルは電話を切った。口下手ながら勤勉な後輩であるミリアルのことをぼんやりと思い浮かべ、どことなく彼女らしいなと薄く笑みを浮かべながらゆかりは部屋の片づけに移った。———電話越しの悪意など気にも留めずに。
***
翌日、一通りの家事をこなしたゆかりは電車に揺られて数駅、アリアルらと待ち合わせた駅へと向かう。人波をかき分けながら電車を降りると、駅前の噴水に見慣れた白い服装の女性がこちらに手を振っている。少し気恥しく思いながらも、手を振った女性——アリアルの元へと駆け寄る。
「すみません、お待たせしました」
「いや、こちらこそだよ。僕の妹のために来てくれてありがとう」
「…それで、ミリアルさんは?」
「あぁ、ミリィは家でルーニのお菓子作りの手伝いをね。あの子も下手だけど僕よりはよっぽどましだからさ。…全く、同じ姉妹なのにどうしてああも違うのだろうね」
そう一人不満げに漏らすアリアルの様子につい笑みを零しながらゆかりは彼女を歩く。
「そんなに気を遣ってもらわなくてもいいですけど」
「いや、頼んだのは僕たちだからね。それ相応の準備をしないと僕らの気が済まない」
「そうですか。それにしても、今聞いた感じだとアベルーニ君が一番料理上手なんですね」
「全く、我が弟ながらああまで家事が上手いと姉としての面子がつぶれてしまうよ。ゆかりさんは姉妹とか兄弟がいるかな?いるならわかると思うんだが」
「あぁ、一人いますよ。でも、妹が中学に上がる前にこっちに仕事で出てきたので、そういった悩みはあまりなかったですね」
「そうかぁ…、それならマキさんはどうだろうか」
「えーと…、従妹が一人いてその娘とよく比べられる、なんて愚痴ってたことはありましたね」
「へぇ、僕と話が合いそうだ」
そんな雑談を重ねながら、辿り着いたのはゆかりが住んでいるマンションよりもやや高そうな部屋。曰く、三人で住んでいる分お金を出し合えるのでいい部屋を選んだとのこと。
「それじゃあ、お邪魔しますね」
「どうぞ。ミリィ、ゆかりさんが来たぞ!」
そうして、ゆかりは部屋に入りアリアルが後から部屋の鍵を閉める。——それが、始まりの合図だった。
「あ、ゆかりさん!お久しぶりです!」
「どうも。今日はよろしくお願いしますね」
「そうですね、でも『今日は』じゃなくて『今日から』ですよ?」
可愛らしいエプロン姿で人懐こい笑みを浮かべるミリアルであったが、どこかその言葉選びに違和感を覚える。
「…と、言いますと?」
「つまり、こういうことだよ」
そう、疑問符を浮かべたゆかりの後方から腕が伸びる。後方にいるのはアリアルだけだから彼女のものであることに違いない。だが、それに驚いただけで碌な反応は取れなかった。そうして、自分の口に湿った布が押し付けられるのをその感触と甘い匂いを感じて漸く自分が危うい状況に置かれているのでは、と気付く。
「な、にを…っ!?」
「はい、これで終わりだよ。残念だったね、もう手遅れだ」
そう、さっきまでの人懐こそうな口調とはかけ離れた冷たい声でアリアルは言う。彼女の言う通りだった。何とか上半身を振り回す形でアリアルを振りほどくことこそできたが、それだけで全身が熱く弛緩していくように膝に力が入らない。
「えへへ…。いい感じにがくがくですね、ゆかりさぁん…」
そう言って近づいてくるミリアルも、いつもの口下手ながら誠実そうな口調とは違う欲に塗れたようなねっとりとした口調でゆかりに近づいていく。それを拒む力は今のゆかりにはない。後ろにじわじわと下がろうとするも、あまりに緩慢すぎて距離はずんずんと縮まっていく。そうして、ミリアルの腕がゆかりの身体に射程圏内に入ったところでゆかりは拒んでやろうと腕を伸ばしてミリアルの身体を突き飛ばそうとした。しかし、それが間違いだった。
「つ、か、ま、え、た♪」
「…っ!」
伸ばされた腕の手首の辺りをミリアルは掴み取る。そうして、自分の方にゆかりの身体を引き寄せて抱き留めると、抱き留めた彼女の唇をそのままの勢いで奪う。
「ゆかりさぁん…、ん、ちゅ、にゅ、ちぅ…」
「んぅう!?ぅ、う、ちゅ、じゅる…!」
すっかり体の力の抜けたゆかりは、ミリアルの身体を引き離すどころか唇や舌を噛む余力すらなく、逆にその身体に縋りつくようにしてどうにか態勢を保っているようだった。その間もミリアルの口撃は続き、ゆかりの理性と酸素を奪っていく。舌を絡め取られ歯列をなぞられ唾液を送り込まれるのに、抵抗の一つも碌に取れない。脳裏に浮かぶマキの顔に申し訳なさが心を支配するのに、身体が言うことを聞いてくれない。悔しさと、それでも快楽を感じてしまう自分への怒りを覚えるも、それすら快感を彩るスパイスにしかならない。
「れる、ちぅ、ぷぁ…」
「じゅ、れろ、ちゅ、れぁ…っ」
そうして時間にして一分ほど、ゆかりからすればそれ以上に長く苦しく感じた時間を過ぎ、漸く二人の唇が離れていく。最早睨みつける余裕もなく眦からは涙が、口元からは二人分の唾液が流れ出し、どうにかミリアルに縋り付くようにしてゆかりは立っていた。しかし、足元は覚束なく生まれたての小鹿の様に頼りない。
「おいおい、ミリアル。いくら欲しいものが手に入ったからってやりすぎじゃあないか」
「でも、漸くでしたので…」
「まぁ、気持ちは分かるよ。それじゃあ、ルーニ。寝室までよろしく頼むよ」
「分かった、姉さん」
そう短く返事をするとルーニと呼ばれた青年———アベルーニはミリアルからゆかりを預かると軽々と持ち上げて寝室へと向かう。その後ろをミリアルはとことこと雛鳥の様にしてついていく。そうして、寝室。三人で寝るにしても十分な大きさのベッドの中心に寝かされる。
「はな…して…」
「駄目です!今日からゆかりさんは私たちのものなのです!」
「そういうことだから、黙ってミリィのものになって」
それぞれ、右と左に身を置いて仰向けに寝かされたゆかりの身体を押さえつけながら、ミリアルとアベルーニはそれぞれゆかりの抗議の声に反論する。しかし、ゆかりとしては堪ったものではない。自分にはマキという恋人がいるのだ。それを蔑ろにされて自分たちのものになれだのと言われて、はいそうですか、となるわけがない。
「勝手なことを…、言わないで…」
「むぅ…じゃあ、実力行使です!私たちのものになるって言ってくれるまで帰してあげません!兄さん、手伝ってください!」
「分かった」
そう言ってゆかりの服を剥ぎ取っていく二人に抵抗の意志を見せようとするも、ただでさえ薬と口づけで弱った身体、その上二人掛かりで脱がされているのではその抵抗など無意味に等しい。あっという間にパーカーやその下のワンピースを脱がされ、下着姿を晒してしまう。
「ゆかりさん、綺麗…」
ミリアルは感動したかのようにそう言って、ゆかりの鎖骨付近に顔を近づけると舌先を伸ばしてちろちろと舐める。微細な快感がゆかりの背を走る。
「いやぁ…」
「動かないで。ミリィが責めづらくなる」
身を捩ることさえ許そうとしないのか、アベルーニはゆかりの太腿を自身の脚で押さえつけ、より身体の自由を奪おうとする。そこまでされて、ゆかりは今まで感じていた僅かな違和感に気付く。
「なん、で…そんなに、ミリアルさんのことを…」
「なんでって…」
「妹のために動くだなんて、姉と兄からすれば当然の行動だろう?」
言いかけたアベルーニを遮って、先程まで部屋にいなかったアリアルが答える。その手にはアロマキャンドルの様なものを手にしていて、ヘッドボードに乗せるとそれに火をつける。ふわ、と甘い香りが漂った。
「はんざ、いですよ…!」
「うん?それがどうしたんだい?捕まるなら僕が代わりに捕まればいいだけだし、普段から頑張っている妹のためになにかしてやれるなら何でもしてあげようというのは当然じゃないかな?そう思うだろう、ルーニ?」
「そこまでは思ってないけど。姉さんとミリィが満足するならそれでいいんじゃあないか」
そこまで聞いて、ゆかりはつい数十分前まで可愛い後輩だと思っていたこの三人に恐怖を覚えていた。———狂っている。倫理や道徳が通用しない相手がここまで恐ろしいとは思わなかった。説得も何もできそうにない、ただ犯されることしかできない。その瞬間に今まで抑えてきた何かが堰を切って押し寄せた。
「い、いやぁあああ!はな、離してぇぇ!」
「うわわ…!落ち着いて、ゆかりさん!ちょ、姉さん、兄さん、どうしよう」
「慌てるな、ミリアル。とりあえず抑えててくれ」
慌てるミリアルにぴしゃりとそう言って、アリアルはポケットから瓶を取り出すと中から錠剤を一つ取り出して口に含む。そして、ぶんぶんと振り回されるゆかりの頭を固定すると噛みつくようにして唇を奪う。錠剤は舌を通してゆかりの口内へと送り込まれ、半狂乱のゆかりはそれが何かも分からぬまま飲み込んでしまう。それからは直ぐだった。飲み込んで数十秒、アリアルがゆかりの舌を奪っているうちにばたついていたゆかりの手足は動きを鈍くしていった。
「ぁ、う…?ぁん、ぇ…?」
「ちょっと、即効性の弛緩剤を使わせてもらったよ。これでやりたい放題だ、ミリィ」
「ありがとう、姉さん。それじゃあゆかりさん、気持ちよくさせてあげますからねえ」
そうして、ミリアルは抵抗のなくなったゆかりの身体に手を這わす。下着の上から薄い胸に触れる。それだけでゆかりはぴくん、ぴくんと俎上の魚の様に背を跳ねさせる。それが面白く、また嬉しくミリアルは下着に手をかける。取り去られた下着、その下で慎ましく膨らんだ先端の蕾にミリアルは新しいおもちゃを渡された子供の様に目を輝かせて舌を這わす。
「ん、ぅ…、やぁ…っ!ぃ、いぃん…っ!」
「ひもひいいれすか?ひゅかりしゃん?」
それに対する返事はなかった。しかし、蕾が舌で撫でられるその度に震える身体が何よりの答えだった。それに嬉しさを覚えたのか、ミリアルは夢中になって赤子の様にゆかりの乳首を吸い舐める。
一方で、アリアルはそれまでゆかりの身体を押さえつけることに専念していたアベルーニに視線で指示を出す。口にこそ出さなかったが、アリアルの意図に気付いたアベルーニはゆかりの穿いていたショーツを取り払いその秘裂に指を這わす。
「ぁ…っ!は…っ!あぁ…っ!や、ひゃぁあっ!」
ぐちゅり、と既に十分に湿らされたそこに指を這わされて、ゆかりはそれまでよりも大きく嬌声を上げる。更に内側に挿し込めば指を締め付けるように膣内が蠢く。指先をくっくっと曲げてやればその度に身を捩らせる。その反応に興奮を煽られて、ミリアルもアベルーニも次第に息が切れる。内側からの熱に耐えられなくなり、ゆかりへの責めは続けながらも暑苦しいと言わんばかりに着ていた服を脱ぎ去る。そこで、何かに気付いたようにアベルーニはアリアルの方へ視線を向けた。彼女は先程のアロマキャンドルを軽く指で弄りながら笑う。彼女自身も暑いのか、先程まで着ていたコートはすでに脱ぎ去っておりその下に着ていたノンスリーブも上のボタンを少し外していた。責めに加担していないアリアルでさえもそのように振る舞っているのを見て、アベルーニは彼女が焚いていたアロマキャンドルに媚薬の様なものが含まれていたのだと察した。相変わらず、何も言わずに残酷なことをするものだとアベルーニは内心苦笑した。一方で、ミリアルはそれに気付く余裕もないようで上半身に身に着けていた全てを脱ぎ去り、身体を重ねるようにしてゆかりの唇を奪っていた。
最早ミリアルは自身が焚かれたアロマキャンドルの媚薬作用で興奮を煽られていることに気付いてはいなかろう。こちらなど露知らずといった様子で、ゆかりの薄くはあるが緩やかに膨らんだ胸へと自身のそれを擦りつけながら、舌を絡め合っている。それを端から見ているのも悪くはないが、アベルーニにも限界が来ていた。ズボンを膨らませている自らの分身を今すぐにでも取り出して、あのしとどに濡れた秘孔へと挿し入れてしまいたい。その欲求に駆られてアベルーニは行動に移した。
「ミリィ」
「ちゅ、ん…、兄さん?」
「そろそろ、俺も限界なんだけど」
「うん、分かったぁ…。ゆかりさん、起きましょうねぇ」
そう、少し緩慢な動作でゆかりの上半身を起こして自分は背もたれ代わりになる。そうして、最早半分意識の飛んでいるゆかりの足の間に入りこんだアベルーニは穿いていたズボンを寛げて自らの分身を取り出した。赤黒くグロテスクなそれに気付いたゆかりは、さっと顔を青ざめさせて酷く怯えだす。
「い、いや…、ゆるぃて…おねがぃ…」
呂律の回らない声で拒絶の意を示すゆかりの様子に、アリアルは口角を上げる。
「ゆかりさん、もしかしてまだ処女だったりするのかな?」
その発言にびくり、と背を跳ねさせる。それが何よりの回答だった。
「それはいいや。ルーニ、ミリィ?折角の初めてだ。とびっきり気持ちよくさせておくれよ」
「はぁい、姉さん」
「分かった」
その会話にいよいよ恐怖が限界を迎えたのか、媚薬や弛緩剤で力の入らない身体をそれでもどうにか無理矢理に動かしてミリアルから逃れようとする。
「だぁめですよぉ、ゆかりさん?これで正真正銘ゆかりさんは私たちのものになるんですからぁ」
しかし、その抵抗も無意味に等しい。ミリアルが後ろから抱き締めるようにして抑え込むだけでゆかりはまともな動きを封じられてしまった。そこにアベルーニがふっ、ふっ、と息を切らしながら自らの男根をゆかりの淫裂に迫らせる。最後の抵抗なのかゆかりは脚を閉じようとするが、既にその間にアベルーニが入っている今の状況では意味がないどころか、端から見れば逆に迎えられているようにさえ見えるだろう。そうして、
「ん、あ、いやぁああ…っ!」
「ぅ、きっつ…」
ゆかりの秘唇に挿入された男根が先へ先へと進んでいく。膣内は侵入者を拒むように雄の象徴を締め上げるが、薬によって発情を促された身体は浅ましくもその接触にさえ快感を見出してしまう。そして、膣壁からの刺激で一層硬さを増した肉棒を何かが堰き止める。アベルーニはそれに気付くとアリアルに視線を向ける。それを見て察したアリアルはにたりと笑いながら頷いてやった。それが最後の一線を越える合図だった。アベルーニが腰を前に進める。そして、
プツリ。
「—————っ、い…っ、つぅ!」
ゆかりの純潔はアベルーニによって奪われた。その証が、ゆかりとアベルーニの間から染み出るようにして流れ出す。先程までの快感を抑え込むようにしてゆかりを襲う破瓜の痛み。その痛みがゆかりの意識を快感から引き戻す。
「ゆ、ゆるさな…っ、絶対に、許さない…っ!」
涙を流しながら、アベルーニを睨みつけゆかりは息絶え絶えに叫ぶ。姉の傀儡然とした淡白な反応のアベルーニからしてもそれなりに気圧されるもので。
「あぁ、許さなくても構わないさ。そも、許す許さないの問題じゃないんだよ。ゆかりさん、貴方を僕たちのものにするのが目的なんだから。強いて言うなら、否応なく許してもらうよ」
「うるさい…っ!私は、あなたたちみたいな人のものになんか…!」
「仕方ないなぁ…。ミリィ、よろしく頼むよ」
「分かったあ」
アリアルの言葉から意を汲んで、ミリアルはゆかりの胸へと手を伸ばしカリカリと指先でその先端の蕾を弾く。その度にゆかりの身体は彼女の意に反して快楽に跳ねる。その反応に愛しさを覚えながら、ミリアルはゆかりの項や耳を甘く食む。
「ぅ、くぅ…っ!はなし、て…!この…、このぉ…!ひゃ、ふ、ぅう~~っ!」
悔しさや怒り、それに反して薬でまともに動かないのに快楽だけは浅ましく享受する恨めしい己の身体。こんなことになるのならマキさんに初めても貰ってもらえばよかった、なんて今更な後悔が頭に浮かぶ。その後悔の最中にも快楽だけは感じてしまう己の不甲斐無さと言ったら。せめてもの抵抗と、唇を噛んで痛みで誤魔化そうとする。しかし、
「ふ、ぁあっ!?」
ずん、とそれを許さないとばかりにアベルーニが腰を前に突き出す。先程まで破瓜の痛みを感じていたはずの己の身体はもう快楽を得ようとしている。そんな自らへの失望感と、何よりマキへの申し訳なさでいっそ死んでしまいたいくらいだった。
「ふふ、そろそろかな?じゃあ二人とも、このままイかせてしまおうか」
「はぁい!」
「分かった」
そんな気持ちなど露知らず、三人のモノクロな悪魔たちはいよいよ責めを加速させる。胸は揉みしだかれ時折その先端を弾かれ、人より少し敏感な耳を甘噛みされる。それだけでも敏感にされた身体はびくり、と快楽で震えてしまう。しかし、その震えごと抑え込むようにして与えられるずちゅ、ずちゅと叩き付けられるような快感がゆかりを絶頂へと押し上げていく。やめて、イきたくない。そう頭で考えても馬鹿になった身体はゆかりの意志を無視して快楽を溜め込んでいく。胸も膣も、二人の触れている身体のあちこちが性感を求めている。とりわけ、初めての挿入を体験した膣はぎゅ、ぎゅと咀嚼するようにアベルーニの男根を締め付けては自ら快楽を貪っている。
「や、やぁ、あ、あぅ、あっ、あっ、あっ」
「そろそろかな、兄さんはどう?」
「は、俺も、そろ、そろ…」
「じゃ、一緒にイっちゃおう?ゆかりさん、一緒にイきましょうね?」
「や、やだ、っ、あっ、あぁっ、あぁあ!」
「くっ、出る…っ!」
「あ、やぁ、あ、っ~~~~~~~~~!!!」
どぴゅり、どぴゅりとゆかりの膣内にアベルーニの精液が放たれる。体験したことのない子宮を焼くような熱さの奔流に、それが与える未知の快感。それにより与えられた絶頂は、今までマキと共に経験したものより深いもので。
「ふふ、随分気持ちよさそうだね?どうだい、恋人を裏切ってまで得た快感は?」
アリアルの責める様な発言に、ゆかりはそれまで感じていた充足感が急速に冷え固まり、それを恥じて涙を流す。心の中は、マキへの謝罪でいっぱいだった。
「そんな汚れた身体でマキさんに会いに行けるかい、ゆかりさん?」
「…っ、汚したのは、あなたたちでしょう…!」
「…うーん、まだ屈してくれないかぁ」
怒りを隠すこともせず、アリアルを睨みつける。しかし、当のアリアルは悪びれる様子も見せない。
「仕方ない。ミリィ、ルーニ。強硬手段だ」
それどころか、次の手段に移る。それも、本人曰く強硬手段ときた。ぞくり、と嫌な予感がして身を捩り逃げようとするが、それをミリアルとアベルーニが押さえつける。元より薬で碌に動けない身体、その抵抗は直ぐに無意味なものとなった。
「大丈夫ですよ、ゆかりさん。とっても気持ちよくなるだけですから」
そう無邪気に笑うミリアルが恐ろしくて堪らない。その間にもアリアルは準備を進めているようで、無造作に投げ捨てられた上着のポケット、そこから取り出した容器に入っていたものを見てゆかりは戦慄した。そこから出てきたのは注射器で、ミリアルの発言から中身もおおよその見当がつく。つくからこそ、ゆかりは更に身を捩って逃げようとする。
「そう動くと危ないよ、針が折れたらどうするんだい?」
すぐそばにまで迫っていたアリアルはゆかりの腕を掴む。
「なぁに、心配しなくていいさ。少し依存性のある性感増幅剤に過ぎないよ。大丈夫、この薬が回る頃にはミリアルの、いや、私たちのものになっているだろうからね」
そうして、二人掛かりで押さえつけられて身動きの取れなくなったゆかりの腕へ注射器の針が近づいて———
***
「ゆかりちゃんから連絡がない…」
そう不満げ半分、心配半分で口にするマキの様子に仕事で一緒だった茜は少し呆れたように、同じく一緒だった葵は心配そうにその様子を眺める。
「ほんまマキさんはゆかりさんいないと駄目駄目やな。一週間近く連絡ないくらいでしょげとるんやないよ」
「でもさ、ゆかりちゃん毎日連絡くれるんだよ!?それが今回に限って最初の一日しか連絡返してくれないなんて、なんかあるんだよきっと!」
「そのなんかが心配するような内容やないって言ってんの…。もう、鬱陶しいなぁ」
「お姉ちゃん、言い過ぎだよ…。でも、きっとスマホの故障とかですよ。あのゆかりさんがマキさんを蔑ろにするとは思えませんし」
「…でもさぁ、もし事故とかにあってたら…」
「そしたら連絡来るやろ。まぁ、なんにせよはよ帰ろうや。うちらも久々にゆかりさんに会いたいし」
「そうだね…」
そうして三人はマキとゆかりの同居するマンションの入り口にやってきて、直ぐに違和感に気付く。
「あれ…。なんだろう、これ」
入口に備えられている郵便受けに入っていたDVD。それも『すぐに視聴してください』という付箋でのメッセージ付き。
「…ね、ねぇ。これって、ドラマで誘拐犯とかがよくやる奴じゃ…」
「だ、大丈夫やろ!ゆかりさんの質の悪い悪戯や、多分!」
「そ、そうですよ!ともかく見てみましょうよ!」
そう誤魔化しつつも、いよいよ不安を隠しきれなくなった三人はそそくさと部屋へと向かう。そうして、ソファに並んでDVDをセットした。
「…じゃあ、再生するで」
茜の言葉に静かに二人は頷く。再生ボタンを押して数秒、暗い画面から一転して、どこかの部屋が映し出される。その映像の中央、椅子に座ってカメラの方を向いているのは最近できたばかりの後輩のアリアルで、その後ろで場違いな嬌声が流れている。既に異質さを醸し出すその映像で、もうマキは何かを察したらしい。立ち上がって困惑や怒りの入り混じった表情を浮かべて拳を握っている。二人も、マキの様子から最悪の予感が頭をよぎる。そして、その時はすぐそこに迫っていた。
『アベルーニ、映っているかい?』
頷いたようで、上下に揺れたカメラの先、アリアルはふぅ、と一息ついて再度口を開いた。
『やぁ、アリアルさんだよ。マキさん、見ているかい?今日はあなたに伝えたいことがあるんだ。…ゆかりさんのことなんだが、彼女は僕達のものになったんだ』
「…っ、ふ…っざけんな!」
「ちょ、落ち着けマキさん!まだ映像終わってない!」
「これから、何か分かるかもしれないから!まだ、落ち着いて!」
「落ち着いてられる!?これが!?こんなの、こんなの…!」
「ええから落ち着け!なんにせよ、この映像見ることしかできることあらへん!」
収まらない怒りを握り拳に込めて、爪が掌に食い込むのも気にも留めずに画面を睨みつけるマキと、その傍らで不安と焦燥に駆られながら同様に画面に視線を向ける二人。その映像の先で、アリアルはなおも言葉を続ける。
『ミリアルが、どうしても彼女のことが欲しかったみたいでね。僕達なりに“説得”させてもらったよ。それで、どうにか彼女の許可も得たからね。…信じられないと思うだろうから、今の彼女に聞いてみようか』
そうしてアリアルと共にカメラの視点が移動する。右に揺れてすぐその先に、布団が邪魔だとばかりに蹴り落されシーツも乱れたベッド。その上に彼女たちはいた。
『ふふ、手マン、だったかな?随分上手くなったじゃないか、ミリアル』
『えへへ、そうかな?』
そう言いながら笑うミリアル。そんな彼女に後ろから抱えられるようにして愛撫を受けながら嬌声を零しているのは紛れもなく結月ゆかりその人で。茜の力づくでの制止が無ければこの時点でマキによって画面を叩き割られていただろう。
『それで、だ。ミリアル。少しゆかりさんに聞きたいことがあるから、ちょっと手を止めてくれないか?』
『はぁい』
『ありがとう、ミリアル。…どうだい、ゆかりさん?起きてるかい?』
『は…い、おきて、ます…』
『今の状態で聞くのは少し辛いだろうが、今マキさんにビデオレターを撮ってるんだ。マキさんに一言お願いしていいかな?』
『え…』
『…いいだろう?もう君も受け入れただろう?』
『で、でも…』
『言わなきゃ…、分かってるよね』
『は、はい…』
息も絶え絶えといった様子で、ゆかりは視線をカメラに向ける。
『マ、マキさん…。もう、わたしはマキさんに会うことができません…。ミリアルさんたちのものになりました…。ごめん、なさい…、さがすのも、やめてください…。きもちよく、て、たまらないん、です…。…それに、わたし、はじめても、もう…』
『おっと、そこま』
ガン、と大きな音を立ててテレビが転がる。突き飛ばされた茜と、ソファに座っていた葵はいよいよ怒りの限界を超えてテレビを殴り倒したマキの様子に言葉を失っていた。
「…す」
マキが何かを呟いたが二人にはそれを聞き取れなかった。しかし、何と言ったのか聞きなおす必要はなかった。
「殺す…、殺す、殺す…!絶対見つけて、何も言えなくなるまで殺す…!」
そう言い捨ててマキは家を飛び出した。最早誰もいなくなったアリアルらの部屋を目指して。
「っ、とりあえず、葵は110番して!うちはマキさん追いかけるから!」
「う、うん!」
茜はマキを追いかけ、残された部屋で葵はスマートフォンを取り出す。そして、震える手で電話機能を開こうとして、まだ続いていたDVDの音が耳に入る。
『あぁ、探してもいいけれど大変だろうから頑張ってね。僕達、マキさんがこの映像を見てる頃には日本にいないだろうから』