だって、ゆかりは私のものだよね?
「ここがマキさんの新しいおうちですか」
「結構いいでしょ?まぁ上がってよ」
そう言うマキに従ってゆかりは、マキが新居だというマンションの一室に入っていった。マキやゆかりの実家から結構な距離はあることを除けば、外観も内装も綺麗で落ち着いたよい部屋だとゆかりは思った。
「コーヒーでいい?」
「あ、はい。ありがとうございます」
少し待って差し出されたコーヒーに口付けて一息つくゆかりの様子にくすりと笑ってマキは自分も同じようにコーヒーを飲んだ。
「そういえば、他の人は呼ばなかったんですか?ずん子さんとか、茜ちゃんとか」
「ん~?ゆかりちゃんだけでいいかなって」
「えぇ?」
笑いながら言うマキの様子にどこか違和感を覚えつつも、家までの距離を考えれば予定が空いていた自分くらいしか来れる人がいなかったのだろうとゆかりは自分を納得させた。しかし、それならそれで不思議なことはあるわけで。
「でも、お仕事とか通うの大変じゃないですか?この距離だと」
「まぁね。でも、一番条件に合ってたのがここだったから仕方ないかなって」
「なんです?」
「防音設備だよ」
そう言いながらノックするようにカップでテーブルを叩くマキ。
「あぁ、ギターの練習ですか。確かにそれなら場所は選ばないとですね」
「え?違うよ?」
「はい?」
予想が外れて思わず眉根を寄せる。そうでなければ防音設備など何のために使うのか。単純な疑問としてそれを問いかけようとして、ゆかりは自らの身体の異変に気付く。
「ぇ…?ぁ、つい…?」
自身の身体を襲う熱を逃そうと身を捩ろうとして、テーブルの上に崩れ落ちる。肘にぶつかったマグカップが倒れてまだいくらか入っていたコーヒーが零れ広がる。ごめんなさい、とか片付けないと、とかいう思考もぼんやりとしか働かない。
「へぇ、本当にすぐ効くんだぁ」
ゆかりの身体に起きた異変に動じることもなく、むしろその瞬間を待っていたかのように笑みを浮かべるマキの様子に、ゆかりは漸く危機感を覚える。しかし、今更危険だと判断したところで身体は脳との接続が切れたように碌に動く気配はない。そうしている間にも、マキはテーブルに突っ伏したゆかりに近づき、その身体に腕を回す。
「ひぅ…っ!?」
軽く触れられたそれだけで全身に電流にも似た刺激が走る。それに目を白黒させるゆかりの様子に満足げな表情を見せたマキは、軽々とゆかりの身体を横抱きにしてリビングを後にする。向かった先は、中央に二人や三人くらいなら余裕で寝転がれそうなベッドが置かれた寝室と思しき部屋。ふと視線を向けて、ゆかりは枕元に置かれた鎖付きの首輪に恐怖を覚えた。
「は…はなし、て…」
「ん?いいよぉ」
そう言ってマキはゆかりを解放した。しかし、解放されたのはベッドの上。ぼすん、と半ば落とされるようにして転がされたゆかりの上に馬乗りになるようにマキは迫る。
「ゃ、やだ…、かえして…」
「ん~?無理かなぁ?これからゆかりちゃんは私とここでずっと一緒に住むんだから」
いよいよもって唯一無二の親友だと思っていたマキが恐怖の対象となる。張り付けられた彼女の笑顔をこれほどに恐ろしいと思ったことが過去に一度でもあっただろうか。
「どう、して…。わたし、なにか…」
「何かしたか、って?…したじゃん、ばか」
そう言ったマキの表情から笑顔が消えて無表情になるのを見て、ゆかりはひゅ、と息を呑んだ。
「私にはゆかりちゃんしかいないんだよ?私にはゆかりちゃんだけいればいいし、ゆかりちゃんも私だけいればいいでしょ?」
「それなのに、最近は他の人に構ってばっかり。新人の子の面倒見る優しいゆかりちゃんも好きだけど、なんで他の子が勘違いするような笑顔見せるの?」
「そんなに私のこと困らせて楽しい?私を嫉妬させて、私以外の子に必要ない笑顔を振りまくのってそんなに楽しいの?」
まくし立てる様に口を開くマキの言葉にゆかりは戦慄する。普段から快活でまるで太陽の様な彼女の中にあったどす黒い闇の部分を垣間見て恐怖した。同時に、彼女の抱えているこの闇を知っていれば、とこれまでの自分の行動の軽率さを呪った。
「でも、これからは私だけを見ていればいいからね?私がずっと気持ちいいことしてあげるから、それに夢中になってればそれだけでいいよ?私が何でもやってあげるから」
しかし、そんな後悔も最早後の祭り。パッと表情を笑顔に変えたマキの、服に掛けられた手を振り払う力もゆかりには残っておらず、うわ言のようにいや、いやと繰り返し呟くことしかできない。その間にもマキは慣れた手つきでゆかりの着ている服を剥ぎ取っていき、あっという間にゆかりが身につけている物は下着だけになってしまう。
「相変わらずちっちゃいねぇ。でも、とってもかわいいよ」
普段通りなら反論の一つや二つ返すところだが、薬と思しき何かを飲まされて身体に力が入らず、更に恐怖で麻痺した思考ではただ怯えることしかできない。更に、飲まされた薬は身体に淫らな熱も灯すらしく素肌を撫でるひんやりとした空気にさえ自分の意志と無関係に身体が反応してしまう。
「はは、もう気持ちいいの?ほら、乳首ぷっくりしてる。かわいいねぇ」
「あ、ひぅ、あっ」
胸を顕わにされて、揶揄うように中心で膨らんだ蕾を弾かれる。その度に、普段のゆかりからは早々出ることのない高い声が漏れる。マキからすれば、それが本人の元々の感度であろうが薬によって引き上げられたものであろうが、自分の行為で感じているのには変わりない。マキにとってはそれで満足であった。
「…私も、気持ちよくなっていいよねぇ」
そう言うとマキは、ゆかりを弄っていた手を止めて自らも手早く服を脱ぎ捨てる。そうして上半身裸になったマキは、自らの豊満な胸をゆかりのなだらかなそれに押し付ける。
「んぁ、ぁああ…!やっ、い、いぃ…んっ」
「ん、ふっ…、あっつい…。ふふっ、気持ちいねぇ、ゆかりちゃん?」
くりくりと、それぞれの胸の頂点が重なり合い弾き合うようにして互いに快感を与えあう。二人の口からそれぞれ快感が嬌声となって漏れ出る。ゆかりを抱き締めながら身体を上下に動かして胸を擦り合わせていると、偶然にゆかりの秘部にマキの膝が当たる。その時の水音と湿った感触をマキは見逃さない。口角を吊り上げて、最後に残った下着をマキはゆかりから取り払う。薄く整えられた茂みの下でひくつく秘裂は蜜で溢れ濡れそぼっている。ただでさえ欲望のままにゆかりの身体を貪っていたマキの理性が保つわけもなく、顔を押し付けるようにしてゆかりの秘所に口づける。
「あっ、あぁっ!あ、やぁ!や、やだぁ!」
中毒者の様に蜜をじゅるじゅると吸い上げるマキが与える刺激に、ゆかりはびくん、びくんと身体を跳ねさせながら軽い絶頂へと押し上げられる。口周りを愛液で汚しながらゆかりをひとしきり味わったマキは、今度は指を秘裂へと挿し入れる。そのままかき回すように指を動かしてゆかりの弱点を探る。
「ぁ、く、くる、なにかキちゃうぅぅう…!?」
「ははは…!ここ、気持ちいいんだぁ、じゃあ、クリと一緒に弄ってあげるよ…!」
「や、ぁあああああ!?」
「ほら、ここでしょ!ここがいいんでしょ!?」
ややヒステリック気味に笑いながら、マキはゆかりの蜜壺を掻き乱しながらクリトリスを指先で転がすようにして刺激する。その度にがくがくと身体を震わせながら高みへと昇らされるゆかりは遂に声も出せずに絶頂へと押し上げられた。
「ぃ、~~~~~~~~~っ!!!???」
快楽の限界まで押し上げられたゆかりは暫く背筋を弓なりに反らせて、ふっと糸が切れたように脱力した。その光景に自分も限界が来たのだろう、マキは残った服に手をかけてゆかりと同じく生まれたままの姿へとなると、ゆかりの片脚を持ち上げてその間に自らの身体を挿し入れた。
「ふ、ぇ…、あ…?」
「ゆかりちゃんばっかり気持ちよくなるのもズルいよね?私も気持ちよくさせてね?」
そう言って、マキは自らの秘唇をゆかりのそれへと押し付ける。そのまま腰を揺り動かして押し付け、擦り付ける。
「ふぁ、あぁあ!な、なに、これぇええ…!?」
「はぁ…っ!きもち、いいでしょ…!?もっと、一緒に、気持ちよく、なろ?」
そう言って更にマキは荒々しく自らの股間をゆかりのそれへと押し付ける。その度にぐちゅ、ぐちゅと水音が響く。二人の体中に電流にも似た快感が走り、まるで楽器か何かの様に淫猥なハーモニーを奏でる。
「あ、あああ…!なにか、きちゃ…っ!」
「イく、イこう、ゆかりちゃん、いっしょに、イこ…っ!!」
「「~~~~~~~~~~っ!!!」」
そうして言葉にならない悲鳴を上げた二人は秘唇からぷし、と愛液を僅かに噴き出して高みへと持ち上げられた。気付けば抱き合うような体勢になっていて、二人の顔はとても近い距離にある。絶頂の余韻もままならないままにマキはゆかりの唇を奪い、舌先でゆかりの唇をつついてみせる。許容量を大きく超えた快感でまともに頭の働かないゆかりであったが、反射的に唇を軽く開きマキの舌を迎え入れる。マキはその行いに満足そうに笑みを浮かべるとゆかりの舌を絡み取ってみせた。
***
「あ、マキさん。お疲れ様」
「あぁ、アリアル。お疲れ様」
収録を終えたマキがスタジオの廊下を歩きながら玄関へと向かう途中、自販機が併設された休憩所でスマートフォンを弄るアリアルと出会った。
「あれからどうかな?ゆかりさんについて話を聞いたりしてないかな?」
「…聞いてたら、声張り上げて叫ぶくらいすると思うよ」
「…そっか」
わざとらしく、忌々しげに振る舞えばアリアルは落胆したように肩を落とす。ここ最近ゆかりに構われていただけあって懐き度合いもひとしおなのだろう、アリアルもゆかりのことが心配なようだった。
「私も、手伝えることがあったら何だってやるから。どうか、手伝わせてくれ、マキさん」
「ありがとう。仕事柄警察沙汰も難しいしね、これからも頼ると思うけど、よろしく」
そう、力なさげな笑みを交わして、マキは帰路につく。その表情は、しかし一駅も過ぎれば晴れやかなものへと変わっていて、とても友人が失踪した年若い女性のものとは思われないだろう。
「ただいまぁ」
そう、マンションの自室の扉を開けて手早く閉める。防音がちゃんとしてるからといって、用心するに越したことはない。
「ゆかりちゃん、帰ったよぉ」
「あ、ま、マキさ、ん、ぅうんっ…!」
寝室の戸を開ければ、大きなベッドの上、シーツや布団が濡れることも構わず、首輪をつけたゆかりが自らの秘所を指でかき混ぜながら切なげに声を漏らしていた。
「もう、そんなに待ちきれなかったの?」
「ご、ごめんな、さ…。でも…、自分でやっても、全然気持ちよくなく、て…」
「はいはい、落ち着いて。今日もいっぱい可愛がってあげるから」
息も絶え絶えに、泣きそうになりながら己に快感を強請るゆかりの様子に愉悦を感じながら、マキは服を雑に脱ぎ捨て下着姿になると、閉じ込めた想い人を押し倒すようにして押し倒しその唇を奪った。
快楽で縛ったからなんだ、私達は想い合っているのだ、それを邪魔される道理などない。快感を強請り涙を流す姿も、呼吸すら忘れながら絶頂に至る姿も、その後に訪れる余韻に浸り幸せそうに惚ける姿も、全てが私のものだ。