さて人に疎まれよ、霜雪霰降る水田の鳥となれ
さて足冷かれ、池の浮草となりねかし、と揺りかう揺り揺られ歩け
(『梁塵秘抄』)
C107頒布の秦谷美鈴上位えっち合同『わたしが捕食者(うえ)で、あなたが餌食(した)です』 https://org.melonbooks.co.jp/detail/detail.php?product_id=3407298&adult_view=1&nrdp=1 について
ご主催「波浪世界(はろーわーるど)」様より寄稿の全文掲載が解禁になりましたので、描いた扉絵と書いた小説を公開します。
美鈴さんの京女要素と伝奇成分マシマシのえっちです。
おかけください、ごゆるりと。この格好でかしこまってもしょうがない。ここでしばらく2人きり、誰にも水を差されません。
それとも私と2人きり、あなたは飽き飽きしましたか。かねてから、飽き飽きなほど私がご面倒をおかけして、また先日も、甘えさせてもらえたのでしょう。トレーナーさんがたと、私の愚痴が花盛り。しかしそれも、実はただの誘い水では。他人は1人も寄せつけない、ちょうどこんな密室で、2時間以上も、妙齢の女性3人と。以前よりも私の心は張り裂けそうに痛みました。
浮気です。ぷいっ。
しかし責めません。私が言い出しましたから。
「私を少し鬼にしてみませんか」と。
あなたに浮気されているあいだ、我ながら顔色が赤鬼、青鬼のようになってしまい、手鏡を投げそうになりました。私をだしに、かわいがられるあなたのおかげで。見ても聞いてもいませんが、掌中を指すほど明らかでした。
これも明らかですが、私があなたを他人に与えた。それはあなたが私のものと示す一つの証です。私のものでなかったら、どうして与えられますか。
緊張しますか。こめかみをぴくぴくと強張らせて。緊張はまずこめかみに現れるそうです。手でほぐして差し上げます。アイドルは緊張してもステージでほぐせませんが。こめかみの次はまぶたに、頬に、首筋に。ご存じでしょう。そうくすぐったがらずに。特に首は。あなたのそこ、捨て置けません、いやらしくて。
本気で言っているのです。
首筋はひどく男らしい。あなたの首の周りなら私より2周りは大きいでしょう。しかも、筋肉がごつごつとして喉仏も目立ちます。触りますよ。おやおや、どきどきが私に届いてしまいます。汗の気配も、もちろん匂いも。浮気もまさかこの調子でしたか。期待と不安とで興奮していましたか。それを目前で見せられている女たちのことを考えていましたか。あなたはいつも抑えています。それがどれほどの高ぶりか私はわかりかねますが、抑えられているものはわかります。
私からも伝わってしまいますか。伝わってください。肌も吐息ももっと近づけて触れあわせましょう。腸が煮えくり返って胸の奥までかきむしられて、髪が逆立っていませんか。あなたに引っかいたり噛みついたり引っかかれたり噛みつかれたりしなければいられないほど。痛みや息苦しさは安直ですが、否応なく身も心も埋め尽くす押しつけがましさがある。私があなた一人の心を奪うならこれが一番早い。ただこの手では世界中の人の心を奪えません。私をそんな手ばかりの女にしないでくださいね。
あなたの胸もどきどきしています。釘を刺すならこの心臓に刺してあげたら、なんて。
私の地元の近くは丑の刻参りの本場です。草木も眠る夜、白装束の女あり。3つ足五徳逆さにかぶり、3本蝋燭煌々と、御神木に藁人形、金釘打ちこむ作法です。子供のころ、聞いただけで怖くて怖くて泣きました。なのに、どうしましょう、あなたにこんな手真似とんとんとするだけで、体の中がすべて泡立つか雲や霧のようにふわふわして、私も消え失せてしまいそうです。怖がるどころか、雲になったらあなたに吸われて中に入りこめるかどうかと思ってしまう。
してあげたらどんな気がするか、本当にあなたの心臓に穴を開けてしまう前に教えてください。くださらないのですか。焦らしているのですか。わからないのですか。本当ですか。人より早く深く察する、それがあなたがたのお仕事。そのあなたのお点前を、私は誰より見ています。お見事と感心しています。魔法使いのようですよ。教えてくださればいいのに。前は明かさなくてもいいことまで明かしてくださったのに。
いけません。作法を整える前でした。
まず3つ足の五徳です。茶道を除くと、いまは珍しい代物です。これがなければ理科室の三脚でした。それとこのたび、私の好みで、和蝋燭を。血のように赤い蝋が顔に垂れたら赤鬼らしい。
これをかぶって……かぶってはいけませんか。私が鬼になってはいけませんか。なってしまいそうなのです。私の心を痛める姿で、あなたが興奮するなんて、恨めしい。確かに危ない、髪や顔が焦げたらたいへんです。しかし私はもう焦げています。
あなただって悪い、せめて隠してくだされば。けれど女より丸わかりです。顔色や指先をどれだけ抑えてもこちらは隠せない。困った聞かん坊です。
私がだめなら、あなたが鬼です。
われを頼めて来ぬ男、角三つ生ひたる鬼になれ、さて人に疎まれよ……私たち、いま見られたら、皆さんから幻滅されてしまいます。
いっそ私だけがあなたを好きであればいいのに。
じっとしていてくださいね、うずうずしても、動かずに。本当にこれをかぶせます。炎がゆらゆら、いい色に、いい匂い。ひょっとしたら私たち火遊び以上に焦げてしまう。どうしてこんなことを? そう聞きたいのですね、あなたの顔に書いてあり……こんなに近いとかえって見えにくいですが……わかります。
教えても構いませんが、教えたら後悔してしまうやも。
手で失礼いたします。口はいけません、私、まだまだお話したい。
いつ触っても煮えたぎるように熱い。あなたの体でここ以上に熱くなるところがありますか。それにこんなに硬い。骨が入っていないのがウソのようです。けれど先は柔らかいまま。よくできています。先だけでも柔らかくないと私の奥が壊れてしまいます。
私とて自滅願望はありません。自滅はろくでもないと人よりわかっているつもりです。しかし思うぶんには延々と楽しめてしまう。あなたが気をやる前、こらえているあいだじゅう気持ちよくなれるように。得な性分と言うべきか、さもしいと言うべきか。
限界までがまんしてください。私もあなたをずっとこうしていたい。
もっと滑りをよくしたほうがよろしいのですね。私が濡らしてあげたいのですが、こうおしゃべりしていると、はかどりません。もっと生唾が湧き出る姿を……まぁ、唾なんてはしたない。もっと淑やかな言い方を。醴泉などいかがでしょう。酔っ払ってしまいそう。しかし私に唾を垂らされる、とほのめかされただけで、あなたはいっそう興奮したようです。
おや、ありがとうございます。あなたが先をぬるぬるさせてくれて、私がおしゃべりを続けられる。もっとおしゃべりしたいですか。
あなたはだいぶいやらしい。少なくとも私よりは。たったこれだけいじられて、こうもぬるぬる濡れてしまう。ほうら、糸がいくつも引いて。こんな手でこれから私に何を触れと。この手がマイクを握ってレッスンやライブに臨むとき、あなたと私はどんな心地ですか。それから声も、吐息も。あなたのせいで耳も髪もくすぐったくなります。あなたは自分でくすぐったくならないのですか。それどころではない? 年下の女に男性器を好き放題いじめられてそれどころではない、と。
あら危ない、火が落ちてしまいます。
落ちたとき私たちもご破算です。こんな奇行、露見すれば確実に終わる。あなたとは終わる瞬間を思うのも趣深い。できればこうやってくちゅくちゅ手を上下させた回数ぐらい、千回ぐらい終わってしまいたい。いままでのすべてを数えあげれば千回は届いているでしょう。
あとは、あなたが出してしまっても終わります。1回で済むかわかりませんし、千回も続くかわかりませんが、そのうち。私が楽しめるのもこうしてあなたがしっかり反応してくれるあいだだけです。花がしぼみ葉が落ちて種が出て枯れて終いが理。
それともあなたはがまんできますか。瀬戸際でずっと気持ちよくいられます。あなたの心臓に釘を突き立てる寸前の私ときっと同じ、理外の喜びです。けれど物騒ではありません。いつもはあなたが突き立てているではありませんか。私、胸まで届いてしまうかと思っているのです。
もっとぬるぬるしてきました。私、もっと激しく、と催促されていますか。無理なら禁物です。見た目によらず繊細でしょう。先っぽが特に敏感です、ひょっとすると私と同じぐらい。ご加減はいかがでしょうか。すりすりぐらい控えめか。しこしこぐらい強くしますか。
もともと私はあなたのお世話をするのが大好きです。自分で気持ちよくなるより楽しいのです。自分が気持ちよくなると口やノドがカラカラになったり息が苦しくなったりめまいがしたりぞくぞくしすぎたりしていつまでもは無理ですが、こうしてあなたにご奉仕するなら、あなたの堪え性の限りいつまでも。うれしいですよね。
ご承知でしょうがご奉仕は、私なしでいられなくする最たる手管です。これから私があなたのために何かしてあげているときでも、そうでないときも、ずっとわかっていただけますよう、あらためて。
ここまでなおざりにしてきましたが、ここもあなたの大事なところ。このために私の片手が空いていたのです。ここはどれだけ興奮しても、ぶらぶらして、無防備で、逃げ場の一つもありません。そうっと触ってあげますから、かわいくもだえてみせなさい。あなたが身も世もなくなれば、私もあとに続きます。影のようについていきます。上へ下へと一こすり、重ねるごとにあふれて垂れて、汗か涙かよだれか何か、しょっぱい甘露です。
こんなに大きく張り詰めて、ぬめぬめして、びくびくして。いっそ明かりを蝋燭だけにしたらよかった。あなたがこんなに物々しくするせいで、明るい中で見ては刺激が強すぎます。触っているだけでも熱くて硬くてたまらないのに、匂いも生唾を催すほどなのに、こんなに赤くて黒くて、血管も浮き出て、強そうですね。弱点丸出しなのに。こちら側の縫い目と、出口の切れ込みが弱いのでしょう。むさ苦しい匂いをぷんぷんさせて。もっと近くに参ります。熱くって、もう火や蝋が落ちてきたかと思いました。がまんできていますね、えらいえらい。もし落としてしまったみぎりには、私の顔がやけどしないよう、この甘露で消してください。
でも、アイドルの顔が、びくびく、どぴゅどぴゅ、射精したくてたまらないおちんちんの先走りでべとべと、そんなの許されません。まして担当プロデューサーですよ、あなたは。
ごめんなさい、煽るつもりで言いました。他人に背いてむさぼれば、2倍か3倍気持ちいい。雲雨の夢にあらずともさらなり。人を待たせる昼寝ほどよく眠れます。
では、あなたと私がプロデューサーとアイドルだから、これがこんなに気持ちいいのでしょうか。してみると、禁じると促すとは表裏一体のようです。
出してはいけません。そうして私にもだえさせられて、いつまでも私を気持ちよくさせて。私がもう少し力をこめようとも。弱いところにもう少ししつこく絡みつこうとも。あなたの切っ先にこの顔を無防備でさらしていても。
出てしまいそうだ、と。ええ信じます。許しません。言っておけば出しても名分が立つ、とよもや思っていませんね。目に入るとよくありませんし、髪につくとべとついて落ちず、切らなければなりません。例えば前髪にでもかけてしまったら。しばらく額を出さなければならない。他の方から何かと思われてしまいます。あなたは私の担当プロデューサーですから、何かと思われるのはあなたも一緒です。
代案が一つあります。私があなたの聞かん坊、ぱっくりしゃぶってしまえばいい。あなたがすっきり出して、私が小半時むせながらむさくるしい思いをして落着……ええ、うがいしてもそのぐらい残ります、あなたの……けれども、私はもっとおしゃべりしていたい。口が塞がったら困ります。私が二口女だったらよかったのですが。怖がってくださってもよろしいのですが。
もっとお願いしてください。しゃぶってくださいと。
私の中に安心してぶちまけたい、と。
でも頭を下げないで。落ちて燃えてしまいます。頭を下げずに頼みこむ、あなたであっても難題ですか。
実は私、心の底から私を訝しむあなたの顔を見たかったんです。それだけできょうこんな奇行に及んでいるのです。
さて困りました。次その顔を見ようとしたとき、私はいまより面妖なことをしなければいけない。もっとですよ。
それでもよろしければしゃぶって、受け止めて差し上げます……そう、いいですけれどもう一度……もうそんな顔を私に見せてよろしいのですか。
……名残惜しいですが、そうまでされたら、おしゃべりをいったん終わりにしなければなりませんね。
どうぞ私にゆだねてください。それからあとで私がむせているあいだ背中をさすってください。むせているあいだずっとですよ、よろしいですね。
それでは――
(了)