最強ベーゼのやりなおし〜わたしは闇堕ちを許さない!〜 作:蒼依スピカ
登場人物
柊うてな※マジア・ベーゼ
ヴェナリータ
柊うてなはマジアアズールとの対決後、自室の机でSM本を広げ、悦に浸っていた。
「……久しぶりの凜々しいアズール……良かったなぁ〜」
ノートに凜々しい表情のマジアアズールの顔を描き、それを徐々に加筆して歪ませていく。
「……凜々しい姿だからこそ、こうしたいんだよねぇ〜……うふふふ……」
出来上がった落書きと、薄氷巫女《ウスライノミコ》の姿を思い浮かべると、自然と手が胸とショーツの中に伸び、弄り始める。
「あっ♡ んっ♡ アズール……もっと……もっとぉ……その表情を……んんんっ♡」
「やあ、お楽しみ中のようだね」
いつの間にか部屋の隅にいたのは、エノルミータのマスコット、ヴェナリータだった。
「……ヴェナさん。なんですか、すごく良い気分だったのに……」
「確認したいことがあるんだ」
「確認?」
「君は……誰だい?」
「変なことを聞きますね。私は私ですよ」
「ちょっと質問を変えようか。君は『柊うてな』だけど、『今の柊うてな』じゃないよね?」
「……どうしてそう思うんですか?」
「愚問だね。僕は君の闇を引き出すためにそのエロ本を用意したんだ」
「これはヴェナさんの仕業だったんですね」
緊縛プレイのページを指でなぞり、妖しい笑みを浮かべる。
「そうだよ。でも、今の君はそんなエロ本を軽く超越する欲望と、想いの力を既に持っている」
「ふふ、ですね……」
「まるで、僕が求めていた君そのものだよ。単刀直入に聞くけど、君は『未来の柊うてな』じゃないのかな?」
未来人かと問われると、椅子に腰を預け、優しい笑みをヴェナリータに向ける。
「そうですよ、私は未来の私です。キウィちゃんのお陰で、壊れる前の世界に戻ってこられました」
「……まだ紹介していない彼女を知っているということは、本当なんだね」
「はい。キウィちゃんも、こりすちゃんも、ロード団のみなさんのことも、全部知ってますよ」
「僕の知らない名前もあるけど、きっと未来の仲間なんだろうね」
「大切なお友達です。キウィちゃんやこりすちゃんとも早く会いたいですけど——」
うてなの視線が窓の外に向く。
「マジアサルファの方が先でしょうか……」
「僕の役目を奪わないでくれるかな? せっかく教えに来てあげたのに」
「言っておきますけど、ヴェナさんの思惑は全部知ってますから」
「……」
「ここから先は私の望む世界にするつもりです。魔法少女たちをエサになんかさせません」
「……」
「私は悪の女幹部として、正義の魔法少女と永遠に踊り続けるんです。それが、私の望む世界」
「……」
「そうだ。エノルメさん達が既に倒しちゃった魔法少女は仕方ないですけど、これ以上の魔法少女狩りという愚行は止めて下さいね」
「……わかった、すぐに止めさせるよ」
「うふふふふ……トレスマジアが至高ですが、まだ見ぬ魔法少女というのも……最高にそそります……んっ♡」
まだ見ぬ魔法少女を想像しただけで軽く絶頂する柊うてな。
その底知れぬ欲望という名の闇は、ヴェナリータの思惑を大きく超えて躍動を始める。
「さぁて、待ってて下さい、マジアサルファ。あなたの抑圧されたその激情、私がすぐに解放してあげますよ……」
身体から溢れ出す闇に包まれて変身すると、造られた闇のゲートに足を踏み入れる。
「最後に一つ、聞いてもいいかな?」
「はい」
「君の名前は?」
「私はマジアベーゼ。世界の敵、エノルミータの総帥です」
「……これからもよろしく、柊うてな——いや、エノルミータ総帥、マジアベーゼ」
「よろしくお願いします、ヴェナさん。マジアサルファが片付いたら、キウィちゃんを紹介して下さいね」
「そのつもりだよ」
「それでは、いってきます」
「いってらっしゃい、マジアベーゼ——」
ベーゼの姿が消えて闇のゲートが閉じるのを見送ったヴェナリータの口は、鋭い三日月状に歪んでいるのだった。