入学して早々にカリスマ性を発揮する彼女に、
女教師の天城綾香は視線を向けます。
学園の支配者たる呪術師は見目麗しい獲物に舌なめずりしますが、
少女の力と悪意はそれを上回り……?
Skebにてご依頼を受け、執筆した作品です。
お楽しみいただければ幸いです!
彼女の黒髪がふわりと揺れる度、深い森を思わせる香気が漂う。
聖泉女学園の小会議室には主要な教師たちが集められていた。この場を設けたのは入学したばかりの一年生だという。
その少女は今、座した教師たちの前で己の主張を述べている。
「私たちは神の恩寵を学ぶため、この学園に入りました」
天城綾香は彼女の言葉をぼんやりと聞きながす。しかし彼女の姿形はしっかりと目に納めていた。
小柄な少女だった。深緑のブレザーはまだ、彼女の身に馴染んでいない。桃色の唇が開閉する度、黒目がちの瞳もきらきらと輝く。
膨らみの薄い胸、プリーツスカートから伸びる細い脚。少女らしい可憐さがその身には満ちている。
まるで天使のようだ。陳腐な言葉が脳裏に浮かぶ。綾香はひとり、笑いを噛みころした。
「ですので、七不思議などという迷信を語ることは、禁止にしていただきたいのです」
藤沢真澄美は最後にぺこりと頭を下げた。また、清浄な薫りが鼻をくすぐる。
「私たちからもお願いします」
「あんな話はやはり、この学園には相応しくありません」
その後に続くのは生徒会の面々だ。彼女らは皆、真澄美の言葉を全面的に支持している。
ここは人里離れた、全寮制の女学園である。隔離された環境の新参だというのに。真澄美は入学して早々に上級生たちを味方につけて、教師たちへ直談判を行っている。
そのカリスマ性と行動力に、誰もが驚嘆することだろう。
(まぁ……。私からすれば、当然のことなのだけれど)
しかし綾香の見解は冷静だった。藤沢真澄美は自分と同じ……特別な存在だとわかっているからだ。
「……確かに、あなたたちの言うとおりかもしれませんね」
女生徒たちの提言に校長は頷きかけた。隣に座る教頭が慌てて肘でつつく。老女ははっと顔をあげた。それから、おもねるような視線を綾香の方へ向けてくる。
「あ、天城先生は、いかがお考えでしょうか……?」
かすれた声で問いかけられた。同時に生徒も教員も、この場にいる全てが天城綾香に注目する。
そのことに少なくない昂揚を覚えるが……美女教師は怜悧な瞳と頬に、上品な微笑みを浮かべた。
「俗悪な迷信に惑わされることは、聖泉女学園の理念に反する。私も同意見です」
「それでは七不思議の流布は、これから全面的に禁止にしましょう。次の全校集会で強く通達します」
綾香の意見を聞いた後、校長はそのようにまとめた。自分たちの主張を受けいれられた女生徒たちはわっと歓声をあげる。
「ありがとうございます」
そんな中にあってもただひとり、真澄美だけは平静だった。口元に小さく綻ばせるに留めて、再びぺこりと頭を下げる。
その姿を見る天城綾香の下腹には、淫熱がはっきりと渦巻きだした。
◇
天城綾香は聖泉女学園に務める英語教師である。
長身と恵まれた肢体は、タイトなスーツがよく似合った。張りだしたバストと細い腰。女体のメリハリがはっきりとわかる。
ミディアムボブの髪は毎日、綺麗にセットされている。若く見目麗しい教師だ。女生徒たちからの人気はもちろん高い。
しかし彼女のつり目がちの黒瞳を異常なまでに恐れる者も……この学園には何人か存在していた。
話し合いがあった明くる日の放課後。綾香はひとり、実技棟を歩いていた。
「あら、藤沢さん」
「天城先生」
生徒も教員もほとんどいない時間と場所にもかかわらず。綾香はばったり、真澄美と出会った。
「昨日の、あなたの考え……とても感心したわ。もう少しお話を聞かせてほしいの」
「はい。喜んで」
台本のような会話を交わすと、ふたりは空き教室に入る。少女はつかつかと中央に向かい……綾香は後ろ手に扉を閉めた。
その途端、重々しい空気がこの場を包む。魔結界に覆われ、空間自体が変質していった。
椅子も机も消え去り、果ても窺えぬ暗肉色の地面が広がる。そんな中に放りだされても真澄美は動じない。なぜなら彼女は己と同じ……呪術師だからだ。
女教師は先ほどの言葉どおり、まずは問いかけた。
「あなたは何をしに、この学園に来たのかしら」
人間とは獲物で、自分は狩人だ。天城綾香はそう確信している。
そして彼女の確信はもうひとつある。ひとつの狩場に、狩人はふたりもいらない。
「誤解ですわ」
真澄美は顔色ひとつ変えずに応えた。発声も平常で、全く震えていない。それが感情と劣情を煽っていく。
「私の目的は別にあります。天城先生がなさることを、邪魔するつもりは……」
「へぇ。私なんて、眼中にないって言うんだ」
美女の表情と口調が意地悪く曲がった。言葉尻を捉えて会話の流れを変える。古典的ではあるが、主導権を握るために有効な手である。
真澄美も整った眉を垂らし、困惑の表情をつくった。
「そんな……。私は、そんなつもりでは」
少女の桃唇が動いている間に、綾香は全身を躍動させていた。
「!!」
下肢を縮め、上体を沈め、一気に解放する。真澄美に向けて矢のように飛びかかった。ネコ科の肉食獣のごとき突進だ。
振りおろされた腕を真澄美はからくも避けた。綾香が打った床面には、殴打の痕がぽっかりと残されていた。
「…………」
「驚いた? これが私の力」
物心ついた時にはもう知っていた。自分には他者にはない力……呪力がある。それをどう使うのか。綾香の結論はシンプルだった。
恵まれた体躯に巡らせ、破壊力をさらに増大させる。狩場の隔離に用いるために結界術も習得したが、あくまで最低限のものでしかない。
「あなたの目的なんて関係ないわ。あなたは私の玩具にすると、私が決めたんだから」
力を誇示し、恐怖を刻み、欲望のままに振る舞う。美女はこれまで多くの人間……特に年頃の少女を甚振ってきた。
花貌や佇まいはもちろん。己と同じ呪術師という立場も申し分ない。藤沢真澄美は獲物として、大変にそそられる存在だった。
「あら、先生。それは……」
真澄美の視線がどこを向いているか、綾香にはよくわかった。腰と尻をぴったりと包むタイトスカート。その股間に、不自然な隆起ができている。
美女は自ら、筒布をたくし上げた。煽情的なガーターベルト、ショーツに包まれた股間。その次に現れたのは……。
「まぁ……」
女生徒は口元に手をやる。
下着のウェストから、濃桃色の肉が顔を出していた。
「狩りの時は、昂るせいかしら……。ここが大きくなってしまうの」
呪力による身体強化。それは別の作用も綾香起こしていた。クリトリスが膨張してしまうのだ。まるでペニスのようにそそり立つ。
しかし彼女はこの変化を、好ましいものと捕らえていた。
「これでも貫いてあげるから……。楽しみにしてなさい!」
女豹のごとく綾香は踊りかかった。真澄美はふわりと跳んで距離を取る。少女呪術師は反撃に転じた。
「フラム!」
「無駄よ!」
咽喉を焼くような炎気がまといつく。綾香は拳を横一文字に振るう。それだけで呪熱がかき消えた。
真澄美はバックステップを刻む。逃げながらも召喚術を発動させた。宙空から伸びた触手が、綾香めがけて振りおろされる。美女の両手は肉鞭を掴むと、潰し、引きちぎる。
属性を操り、妖魔を喚ぶ。真澄美の戦法に比べずとも、綾香のそれは極めて原始的だ。だからこそ本能が昂っていく。身体の冴えはますます増していった。
「あっ……!」
追い足が引き足を捕らえた。大人の体躯が小柄な少女にぶつかる。真澄美はあっさりと押したおされた。
綾香はそのままに馬乗りになる。豊尻で薄腹を圧迫すると、少女の表情が苦し気に歪む。
獲物をついに捕らえた狩人は、ますます笑みを深めていく。
「見えるわよね。あなたなら」
眼下の少女に右拳を突きつけた。そこを固めるのは筋力だけでない。綾香の身体を巡る呪力すべてが凝縮されている。
「呪力でつけられた傷は簡単には治らない。あなたは死ぬまで、魘されることになる……。砕かれた顎の痛みと、私への恐怖でね!」
グヂヂャッ!
渾身の呪拳が少女の花貌へ振りおろされた。硬い物が潰れる、いやな音が響いた。
綾香の朱唇は裂けんばかりに吊りあがり、双眸はらんらんと輝く。暴力という美酒に酔いしれきっていた。
「……あれ?」
だから気づくのが遅れた。真澄美の顔面を打った右拳が、割れるような痛みを発していることに。
「ぅぐっ!」
次の瞬間、岩のごとき硬さのものが腹にぶつかった。触手が再び繰りだされていた。綾香はマウントポジションからあっさり弾きとばされる。
床を転がると、素早く体勢を立てなおした。
(ガードされた!? さっきは、千切れたのに……!)
拳は痛く、状況はよくわからない。混乱する綾香を尻目に、真澄美はゆっくりと立ちあがった。
「私……自分以外の呪術師と会うのは、初めてだったんです」
少女の言葉はひどく落ちついていた。そこには狩りの昂揚などない。自分とはまるで正反対だった。
「楽しみにしていたんですが……。期待外れもいいとこですね」
真澄美はブレザーとスカートをぱたぱたとはたくと、埃を落とす。虫を払う仕草にも見えた。狩人は誇りをいたく傷つけられる。
綾香は瞬時に激昂する。再び踊りかかろうとした。しかし。
「あっ!?」
真澄美に機先を制された。女生徒により召喚された触手が四肢に巻きつく。
「くっ、こ、このぉっ……!!」
歯を食いしばり、こめかみに血管が浮くほど力を込める。しかし己の両腕を封じる触手を振りほどくことができない。先ほどは簡単に引きちぎれたというのに。
その答えは簡単だ。真澄美は手加減をしていた。それがはっきりとわかってしまった。
(み、認めない……! 認められるかッ!)
それでも綾香は抵抗はやめない。うぞうぞともがいていると、真澄美が悠々と歩みよってきた。捕らわれた女教師はその様子を、まなじりを逆立てて睨むしかなかった。
「呪力で身体を強化する……こんな感じでしょうか?」
言いながら、少女は右手を握りしめた。
そこに込められた呪力の量を目の当たりにし……綾香の顔から血の気が引いていく。停止を求める言葉よりも早かった。
どむ゛ッ!
「ッ……! がァッ……!」
真澄美の小さな拳が腹にめり込んだ。みぞおちを的確に抉り、横隔膜が痺れて呼吸が止まる。
手足の指先が瞬時に冷たくなった。膝からは力が抜け、床を踏む感触は覚束ない。触手に捕らえられていなければ、顔から倒れこんでいたことだろう。
「う、うぐ……!」
それでも綾香は無様から逃れられない。釣りあげられた魚のように、内臓がびちびちと跳ねまわる。奥歯を噛みしめようとしたが、間に合わなかった。
「おぇッ! お、おぉぉお……!」
朱唇から吐瀉物が溢れでた。
苦くて酸っぱいものが、胃の腑から昇りつづける。口中を通りすぎると、舌にいやな味と感触を残していった。
腹を殴った相手が苦しみぬいている。綾香なら朱唇を吊りあげる場面だが……。真澄美はやはり、平静そのものだった。
「便利そうですけど、私にはあまり向いていないですね」
「ひぃッ!」
真澄美は右手をぷらぷらと振った。綾香の目はそれを追ってしまう。女生徒のそこから繰りだされるのは、苛烈な暴力だと知ったからだ。
四肢の自由を完全に奪われ、ただの一撃で嘔吐にまで追いこまれる。綾香はもう、嫌というほど思いしらされた。
自分と彼女とは、格が違う。
「ご、ご、ごめんなさいっ! ゆるして、ごめんなさい……!」
気づけば朱唇からは、謝罪の言葉も吐きだされていた。黒瞳は滲み、涙がぼろぼろと零れだす。
これらの行動は全て反射によるものだった。もう痛いのはいやだ。その一心に支配された綾香は、なにかを考えることもできない。
「…………」
真澄美は無言のまま、にっこりと微笑んだ。
助かった。綾香は確信できた。だって彼女の表情は、天使のように優しかったから……。
「いやです」
「……え?」
思いもよらぬ言葉が返ってきた。聞きちがいだろうか。そうではないと知り、綾香の顔から血の気が引いていく。
黒髪の美少女は言葉を続ける。
「私も、意地悪するのが好きなんです。天城先生と同じですね」
真澄美の声を合図に、綾香を縛る触手が動いた。
ぐるんっ!
「あ……いやぁッ!」
ぐるりと転回し、頭の位置が急降下した。直立から打って変わり、綾香の背中は地面と平行になる。
真澄美の意思に従う肉蛇は、なおも美女の肢体を弄ぶ。脚を大きく広げられ、背をぐっと押しこまれた。
触手はまだまだ動きを止めない。
びりっ! びりぃっ!
ガーターベルトを残し、美女を包むスーツは無残に破られた。肉蛇の膂力にかかれば、衣服を剥ぎとることなど造作もない。
「ひぃっ……! きゃあぁぁッ!」
我が身を裂かれたわけでもないのに、綾香は鋭い悲鳴をあげた。真澄美への恐怖が身に染みているのだ。誇らしげに伸びていたクリトリスも、今は包皮の中で縮こまるばかりだった。
「天城先生ってやっぱり、スタイルいいですねぇ」
「はぁっ、はぁっ!」
剥きだしの白肌と柔肉に狩人の視線が突きささる。なのに綾香は身をよじることさえ許されない。
つかつかと歩みよった真澄美は、たわわに実った乳房を両方とも掴んだ。
ぐにっ、ぐにっ、むにっ。
そのまま、五指を使って揉みこまれる。手の動きは無造作で愛撫とはほど遠い。痛みを感じてもおかしくはなかった。
しかし成熟した女体は、そんな接触でも快楽を拾いあげてしまう。
「ふぅっ、ふぅ……!」
胸元だけでなく、首筋にも朱が浮かんでいく。興奮の証は肌以外にも現れた。桃色の乳首がぷっくりと膨らみはじめる。
その彩りも形も、捕食者の目を引きつけた。真澄美は指先を滑らせると、肥厚した尖りを抓みあげる。
「あぁぁあっ!」
親指と人差し指には、手加減が全くなかった。摺りつぶすように女の実を捏ね、柔肉を引きのばす。火が点きそうな痛みが胸乳の根元にまで広がる。
「天城先生は大人の女性ですから。準備はこれくらいでいいですね」
真澄美は最後に、中指の爪先で乳首をピンと弾いた。首がのけ反り髪が乱れる。
綾香が視線を前方に戻した時、少女呪術師は新たな触手を喚んでいた。太く、長く、先端は膨らみ……。それが目的とするものは明らかだった。性虐である。
「ま、まって! おねがい! 私は……」
そんな言葉は当然のように無視された。奇怪な尖頭を掲げる肉蛇が、綾香の膣口に宛がわれる。そこに容赦も躊躇も一切なかった。
ずぶンッ!
ひといきに膣腔を埋められた。激痛と衝撃が一拍おくれて、綾香の知覚に届けられる。
「え……? あ、あ゛、あ! ぎゃ、あぁぁぁぁあ゛!!」
艶めく朱唇から絶叫が噴きあがった。真澄美も思わず眉をしかめ、耳を塞ぐほどの声量である。
しかし綾香はそれどころではない。己を貫く熱痛に脂汗と苦涙を流す。
「はぁっ、はぁっ……、い、いたい、いたいぃ……」
肺の空気を搾りきった後にも、うわごとのような言葉が漏れつづけた。歯の根は合わず、かちかちという音が鳴る。
この反応で真澄美も気がついたらしい。ちょっと身をかがめる。視線が結合部に向けられたことが、綾香にもわかった。
「まぁ……!」
彼女の黒瞳は破瓜の証を目撃したはずだ。触手の表面に己の血が垂らされた様が、綾香の瞼にも浮かぶ。
真澄美はどこか慌てた様子で声をかけてきた。
「天城先生、もしかして……。初めて、でしたか?」
「うぅぅ……! う、うぅぅう……!」
痛苦だけでない。羞恥の朱が頬に焼きついた。
物心ついた時から、綾香は呪術を操ることができた。彼女は常に強者だった。相手が男であろうと、自分より弱い者に肌を許そうとは思えなかったのだ。
「次からはちゃんと、確認しないといけないわね」
真澄美はぼそりと呟いた。その声は小さく、処女喪失の衝撃に震える綾香には届かない。
「おねがい……もうやめて……これ、抜いてぇ……」
「心配しないでください。優しくしてあげますから」
真澄美はにっこりと微笑む。綾香の背筋に冷たいものが這った。
黒髪の少女の本性はすでに明らかになっている。生粋の加虐嗜好者だ。どのような責め苦が待っているのか……。綾香にも想像ができない。
ずずずず……っ、ずぶぶっ、ずず……、ずぶぶ……。
「はぁっ、はぁっ……、あぁっ! あぁ……」
予感とは裏腹に、触手の抽送は穏やかだった。膣ヒダを優しく掻きわけて最奥にタッチし、ゆっくりと引きぬく。その繰りかえしだった。
未通だった性粘膜は、少しずつ擦過に慣れていく。綾香も悦楽を感じはじめた。
こつんっ。
「あっ?! はぁぁんッ!」
膣底をノックされた途端、大きな快感が下腹に生じた。柔らかな女体の中に波のごとく広がっていく。
「ふふふ。天城先生も、気持ちよくなってきたみたいですね」
「はぁっ、あぁぁ……」
否定の言葉など吐けるはずもない。長いまつげはふるふると揺れ、黒曜石の瞳も蕩けだす。敗北の呪術師は邪悦に流されようとしていた。
「それじゃあ」
真澄美がぽつりと呟いた。異変は突如として始まった。
「え……、ッ!? あ、あぁぁあ?!」
一瞬のことだった。膣内に収まっていた肉蛇が急に肥え太った。膣ヒダは残らず薙ぎたおされ、引きのばされた性粘膜が圧痛を訴える。
柔壁にイボが食いこむ。子宮が腸を押しあげる。綾香は吐き気にさえ襲われた。
「な、なに……! なに、これぇ……!」
「お試し期間は終了です。これからが本番ですよ」
真澄美は微笑みを綾香に向ける。天使のような表情なのに。これから課すのは淫辱なのだ。そのギャップに背が凍えた。
がりっ、ごりごりごっ!
「!? あ゛がっ……、あ、あぁぁあ゛!」
硬いカリと大小のイボが膣腔を掻きまわした。綾香の瞳から火花が飛びちる。
痛苦、熱感、圧迫に……快楽。粘膜と神経にはあらゆる知覚が乗せられていく。
ずぼっ! ぶほっ! じゅぢっ! じゅぶっ! じゅぼっ!
(こ、壊れちゃうぅ……!)
触手のサイズもピストンの苛烈さも、性交初心者には酷なものだった。しかし妖魔はもちろん容赦ない。尖肉が子宮口を突き、瘤疣が膣腔を削る。
しかし新鉢らしい強締が幸いした。女体が台無しになる前に、触手は欲望の臨界を迎える。
どくっ! どくっ! どくっ! どくんっ!
「あ、あぁ……! はぁっ、あぁっ、あぁぁっ!」
身体のナカになにかが充填されていく。熱い汁は粘っこく、子宮の内壁にべたりとへばりつく。耐えがたい汚辱感だった。摩擦と灼液で熱が高まっているのに、震えるほどの寒気が走る。
どくんっ! どくっ! どく……、どくんっ。
「あ、はぁ……あぁ……っ」
永遠とも思える時間が過ぎる頃。注ぎこみはようやく終わった。膣内射精を終えた触手は自ら身を引いていく。
ごりっ! ごり、ごりゅりゅっ、ごりぃっ!
「ひぁ……ッ! あがっ、あ゛っ、あぁぁぁぁあ゛!」
妖魔の欲肉は人間とは異なる。胤を吐きだした後でも縮むことはない。太身も尖疣もそのままに、綾香の胎内を掻きまわした。
邪悦で敏感になった性粘膜には、火傷のような淫熱が残される。
「ほら、天城先生。あなたが処女を捧げたものを、もっとよくご覧になって」
種汁と愛蜜と、破瓜の血。様々な体液をまとう触手が、綾香の顔貌に突きつけられる。てらてらと濡れひかる肉蛇は、その先端を奇妙にくねらせていた。
「ほら、ほら……」
「むぉっ、お……! お゛お゛……っ」
真澄美はなおも触手をけしかける。先端が朱唇に触れた。そのまま真っ直ぐ口内にまで侵入してくる。そして肉蛇は表面の汚れを、綾香の内頬を使って拭いだした。
プライドの高い女教師は、お掃除フェラまで強要される。
じゅぷっ、じゅぶ、じゅぶっ。
(は、はきそう……)
舌体には穢味が擦りこまれ、鼻腔には異臭が昇ってくる。突端に喉を突かれると、悪寒とともに全身が跳ねた。それでも中断は許されない。痛む顎を堪えて口を開きつづける。
ずるるるるっ!
「おぇっ! え、お、おぉっ……!」
充分に身を清めた後、触手はようやく身を引いた。表面を唾液でてかてかと光らせたまま、すぅっと消えていく。
上下の口唇を弄ばれたが……。陵辱に使う肉蛇は、真澄美の意思で退かれたのだ。綾香の心に希望が灯る。このまま解放してくれるかもしれない。
「も、もういいでしょ……ゆるしてぇ……」
そして哀れを誘う声で慈悲を乞うた。少女の黒瞳がこちらを見た。口は勝手に動きつづけた。
「わ、わたしは、二度とあなたに歯向かわない……。服従だって誓うから……。もう、ゆるしてよぉ……!」
綾香の顔は涙と鼻水でぐしゃぐしゃだった。眉尻は力なく下がり、震えあがった肢体はどこか小さく見える。
学園の支配者だという自負は、とうに打ちくだかれていた。弱った精神が肉体にも影響しているのだ。
「はい。わかりました」
真澄美は笑顔で即答した。綾香の背に冷たいものが滑りおちる。
少女は謝罪を受けいれてくれた。なのに、何故だろう。そこから読みとれるのは、途方もない不吉だった。
ぐいいっ!
「ひっ……、い、いやぁっ!」
四肢を縛る触手が動いた。綾香の体勢が変えられる。今度を尻を天に掲げた格好で固定された。
否応なく羞恥を煽る格好だ。しかし今の彼女に抗う術はない。
「なっ、なんでっ!」
「服従を誓うのでしょう? ならもう少し、私の遊び相手になってくださいな」
言いおえた真澄美はつかつかと歩く。綾香の視界から消えた。深い森の香気だけが美女の周りに残される。
呪術師の少女は、己の背後の取りついたようだった。
「はぁっ、はぁっ!」
目視が届かぬ場所から、何をされるのか。わからないことがなにより恐ろしい。体奥からの震えが、美女のまとう媚肉を揺らした。
「うわぁ……。天城先生のここ、真っ赤になってますね」
真澄美が口を開いた。陵辱の再開だ。
視線も言葉も、呪術師が操るものは常人とはまるで異なる。その全てに質量と熱量が込められていた。
綾香の陰部はじりじりと焦がされだす。
「おねがい……もう、ひどいことしないで……」
次はどんな痛みが襲いくるのか。綾香は怖くてたまらない。歯の根は合わず、声は震えきっていた。
左右の尻肉がぐっと開かれた。谷底に隠された菊花が露わになる。臀部に力を込めて抵抗しようにも、五指には敵わない。
消化管の終端である、肛門。そこを視姦されると、炎のような羞恥が全身を焼いた。
それだけでない。粘膜孔は非常にデリケートなのだ。もしそこに、巨太の触手を突きこまれたら……。不可逆の損壊の予感に、綾香は腹底から震える。
「ふぅ~~っ」
「!!?」
突然、アヌスをぞわりと撫でられた。菊皺はひとりでに力いっぱい収縮する。尻の割れ目から背中を通り、うなじに至るまで。順番に鳥肌が立っていく。
「ふふ、びくびくしてる。……ふぅ~~~っ」
「はぁっ、やぁっ!」
別種の生物のような動きが、少女の琴線に触れたのだろうか。真澄美はくすくす笑う。それから再び、無防備な菊花をくすぐった。
「あふっ、はっ、あぁぁ……!」
桃色の唇から吹きつけられる、冷たい呼気。粘膜孔はぶるりと震えるのに、下腹の中はかっと熱くなる。
美女の菊花は一指も触れられていない。しかし吐息で撫でられるだけで、汗ばむほどの快楽を得てしまう。
「気丈な女性はアヌスがお好きといいますが……。天城先生も当てはまるようですわね」
「はぁ……あぁぁ……っ」
真澄美はくすくすと笑う。鈴を鳴らすかのような、美しい響きだった。少女は天使の声で、淫魔のごとき企みを呟く。
「こちら用の道具も、用意しておいた方がいいでしょうか……」
「いや……やめてぇっ!」
「はい。やめます。もっと気になることがありますから」
真澄美はあっさり、弄肛を中断した。
それがかえって綾香に不安と恐怖を抱かせる。その危惧は錯覚ではないだろう。幼気な呪術師が気になること。それはきっと、ろくなことではあるまい。
「天城先生。もう一度、アレを見せてください」
「きゃあっ!」
四肢を縛る触手がぐるりと転回する。綾香の体位はまた入れ替わった。臀部を掲げた体勢から、淫裂を天に向けた格好へ。
「アレ……って……?」
吊りさげられた女教師は、おそるおそる質問を返した。幸い、黒髪の美少女に気を悪くした様子はない。わかりやすく言いなおした。
「ほら。クリトリスを大きくやつです」
「わ、わかった……。ふぅぅ……!」
綾香はすでに真澄美に屈服している。逆らえるはずもなかった。美女は言われるがまま、己の呪力を陰核に集中させるが……。
「ふぅっ! うぅぅ……!」
「……大きくなりませんねぇ」
クリトリスは包皮の中で縮こまるばかりだった。
散々に痛めつけられた後だ。コンディションは最悪といっていい。そんな状態で欲望を滾らせ、隆起させることなどできない。
「はぁ……」
綾香の全身がびくりと跳ねた。体内は焦燥で焼かれるのに、白肌には冷たい汗が滑りおちる。
強者が吐く溜息。それは弱者にとって、途轍もなく恐ろしいものだ。その後には大抵、残酷な仕打ちが待っている。
「もういいです。私が勝手にやりますね」
「ま、待って! お願い! すぐに大きくしますから!」
綾香は必死に慈悲を乞う。しかし小さな手は止まらない。真澄美の指先が美女の陰核を抓んだ。加減など当然してもらえない。快楽よりも痛みが強く走る。
ぐぐぐぐっ!
「あ!? い、いや……いやぁっ!」
神経の座は擦りつぶされたのに、かえって大きくなっていく。真澄美の呪力が注がれているからだ。
やがて、再び勃起させられた。ぴんとそそり立った牝肉棒は捕食者の目に晒される。ぷるぷると小刻みに震えだした。
「ああ゛っ!」
鋭い嬌声が朱唇から跳ねあがった。陰核の根元から先端まで、真澄美が擦りあげたのだ。そこの機能は失われていない。刺激されると腰が引けるほどの悦痺が走る。
綾香の反応を見た少女は目を輝かせる。そして玩弄を開始した。
しゅっ、しゅっ、しゅっ。
「ふぅうっ! はぁっ……あぁぁっ!」
真澄美の指はテンポよく上下する。熱を伴うほど速い。こんな状況にもかかわらず、綾香の美貌は火照りだす。
陰核はぱんぱんに張りつめ、彩りも輝きも増していく。しかし少女呪術師の表情はだんだんと、不満の色を濃くしていった。
「うーん。これって、なにも出ないんですか?」
「そ、そうよ……ただ、大きくなっているだけだから……」
ペニスに快楽を送りこめば、いずれ射精に至る。しかし綾香のモノはあくまで陰核にすぎない。いくら摩擦を加えても、放液があるはずもなかった。
「つまらない……」
ぼそりと漏れた呟きは綾香の耳にも届いた。蕩けかけた美女の顔貌がさっと強張る。
今度は、懇願する暇もなかった。
ぎり、ぎり、ぎり……。
「!!?」
長く伸びた陰核が軋みだした。外見は全く変わらない。異常は内部で起こっている。
疑似だった肉棒に役割を与えるため。真澄美は呪力を送りこみ、そこに管を通そうとしていた。
「うぁぁぁあ! あ、が、あ゛ぁぁぁぁあッ!」
喉が張りさけんばかりに綾香は叫ぶ。もはや意味のある言葉も紡げなかった。
クリトリスには神経が密集している。そのナカを掘削されるのは……麻酔を使わず、重度の虫歯を治療する行為に等しい。
「いだいっ! いたぁいッ! いやッ! いや゛あ゛!」
いたい。ひたすらにいたい。脳髄にはそんな感覚だけが満ちあふれていく。綾香は唯一自由な首をめちゃくちゃに振った。綺麗にセットされていた髪が崩れていく。
「ひぃっ、いぃっ、い゛い゛ぃ……ッ」
次は奥歯が砕けるほど噛みしめる。唾液が泡となって、唇端からぶくぶくと溢れでた。この痛みが続けば……発狂してしまう。綾香はそう確信した。
幸いなことに正気を失う前に、真澄美の手術は終わった。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ!」
剥きだしの巨乳が弾む。玉の汗が全身に浮き、白肌を艶めかしく輝かせた。
人間を限界寸前に追いこんだというのに。真澄美の振る舞いは変わらない。天使のような笑顔で、瀕死の女教師に語りかける。
「天城先生。ほら。ここ、ご覧になってください」
今の綾香には指一本を動かすことさえ苦痛だ。それでものろのろと首を傾け、己の陰核に目を落とす。
真澄美の言葉に逆らってはいけない。その原則は精神を壊し、今や魂にまで刻まれつつあった。
「ちゃんと管が通って……孔も開きましたわ」
眼には涙が滲み、汗が入りこみ、なにかを見ることなどできない。しかし必死に焦点を合わす。
真澄美の言うとおりだった。ただの棒状だった己のクリトリス。その頂点には丸孔ができていた。
「でも、ここまで痛がるなんて……。次に試す時は、麻酔かなにかが必要ね」
黒髪の美少女は暢気に呟きつつ、改造された陰核に手を伸ばす。そして摩擦を再開した。
しゅっ、しゅっ、しゅっ!
「あぁぁあ゛ッ! がはっ、あ、あぐぅッ!」
手指の上下動に容赦はなかった。実験の成否を早く見たい。そんな心裡がまざまざと見える。
地獄のような掘削から一転、焦熱を伴う快楽が叩きこまれる。限界はすぐさま訪れた。
(くるっ、くるっ! あぁぁ……!)
熱い塊が下腹か駆けのぼってくる。なにかが来るとわかった。だが、綾香は女性だ。精液をつくれるはずもない。
自分はなにを吐きだそうとしているのか。それすらわからないまま、美女は絶頂へ押しあげられた。
どぴゅっ! どくっ! どぴゅっ! どくぅっ!
「あ……? あぁ、あぁぁあ゛!」
粘ついた液体が急ごしらえの内腔を駆けのぼる。頂点の丸孔から勢いよく噴きあがった。
長大となり、管さえ通された綾香のクリトリスだが、その機能は変わっていない。刺激を受ければ、そこから悦楽が生じる。
どくっ! どくっ! どくんっ!
「う、ぅぅう……! と、とまらない……っ、とまってよぉッ!」
射せば射すほど、快楽神経を擦りたてられることとなる。悦感が放汁を導き、放汁はまた悦感に繋がって……。疑似射精は止まらない。抜けだせないループに、綾香は陥ってしまった。
「わぁ……。すごい」
最前列で吐液を見守る真澄美の瞳は、きらきらと輝いていた。
綾香が放った白濁液は、真澄美の手指を汚した。しかし黒髪の美少女は気を悪くした様子もない。
うきうきとした様子で、新たな妖魔を喚んだ。
「天城先生、ご覧になって」
触手だった。表面がつるりとした、特徴がなさそうなものだ。真澄美はその先端を、綾香の眼前に突きつける。見たくもないのに目を凝らしてしまう。
「ひ、ぃぃ……っ」
そこには縦割れの口孔があった。ぱくぱくと開閉すると、甘ったるい香りが鼻を突く。
まるで女性器のようだ。そんな連想を抱いた綾香の顔が、どんどん青ざめていく。
「急ごしらえで拙いですけれど……。きっと、私の手より気持ちいいはずですわ」
ずず、ずずずず……。
真澄美の言葉が終わると、触手は身をくねらせた。長大に勃起した陰核を食むと、そのまま呑みこんでいく。
「あ、あぁぁあ!」
クリトリスは神経の塊でもある。目視などできないのに、触手の内部構造を雄弁に伝えてきた。
肉粒がみっしりと生え、粘液がぬらりと張りつく。摩擦動と合わさることで、腰骨まで融けおちそうな淫熱が染みこむ。
じゅぽっ、じゅぽっ、じゅぢゅっ、じゅちっ。
「はぁっ、あぁぁ……! はっ、はぁ!」
美女の朱唇は半開きになり、端から涎さえ垂れおちる。
雌性器の快楽に綾香はすっかり酔っていた。だから忘れていた。意地悪するのが好きだと自称した、真澄美の性分のことを。
ずぼぉっ!
「え……? あ、あぁぁあ゛!?」
蕩けるような悦感に、痛苦と圧迫が追加された。綾香の処女を奪った触手。それが再び、膣腔に埋められていた。
じゅぶっ、じゅぽっ、じゅぶ!
「あ、がぁッ! はぁっ、ああ゛っ、あぁッ!」
艶めかしかった嬌声がひび割れた。多数のイボと強靭なカリを備える肉蛇が、狭い膣内を食いあらしにかかったからだ。
「あがぁあ゛ッ! ああ゛! がはぁッ!」
「男性と女性の快楽を同時に味わえるだなんて……。ふふ、呪術師の特権ですわね」
触手はさらにいきり立ち、綾香の叫びは獣じみてくる。対する真澄美の声はやはり、天使のそれのようだった。
長大なクリトリスを咥えこみ、未通の淫裂を押しひらき……。雷嵐のような淫虐を課しているとは思えない。
じゅぼっ! じゅぢゅっ! ぢちっ! じゅばっ!
陰核を擦過する触手も、淫裂に抽送する触手も。ともに火が点きそうな速さに達していた。淫熱が集中する下腹には汗と筋が浮き、艶めかしくくねりだす。
妖魔と呪術師の限界は、ともに訪れた。
どくんっ! どくんっ! どくっ! どくんっ!
「ふぅぅう……! あ、あぁぁッ! あがぁぁあ゛!!」
粘ったものが噴きあがる音が、ふたつ同時にあがる。
ひとつは綾香の内で、触手が注ぎこむ音。もうひとつは綾香の外へ、陰核が疑似精液を吐きだす音だ。
どくんっ! どくんっ! どくっ、どくん……っ!
「ぅああ……、あぁ……あ゛……」
己が漏らす白濁の正体に綾香は気がついた。呪力だ。快楽に耽れば耽るほど、己の生命ともいえる力を吸いとられていく。
しかし抗う術などない。ただただ理外の悦に涎と涙を垂らす。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
やがて、ふたつの迸りは治まった。
灼液を注がれ、吐きだし。嬌声を上げすぎた喉はすっかり枯れていた。四肢はだらしなく垂れさがり、完全に脱力している。
深い森を思わせる、清浄な香気。それがすぐ近くにまでやって来た。勝者が敗者の顔を覗きこみにきたのだ。
「天城先生、ありがとうございました。おかげさまで面白い発見がありましたわ」
苛烈な淫虐により、綾香の眼はもはや何も映していない。しかし真澄美の微笑みだけはわかった。
それが美女を心胆寒からしめる。呼吸が浅く早く、荒くなっていった。
「はっ、はっ……!」
小柄な身体は愛らしく、伸ばされた黒髪は艶やかで、言葉の響きは柔らかい。
藤沢真澄美はまるで天使のようだ。そんな彼女の実体は……逆しまなのだ。残酷な振る舞いをする時ほど、少女の輝きは神性を帯びる。
「た、たすけて……!」
綾香の言葉は完全に黙殺される。真澄美は新たな触手を喚んだ。いや。彼奴の大きさは「手」と形容されるものを超えていた。
土管そのものの巨触手だった。肉色の身は太く、長く、その先端には大きな口がぽっかりと開いている。
「あ……あ……!」
大蛇のごとき姿を見た綾香は、己の運命を悟ってしまう。
「さようなら。どうか安らかに」
別れの言葉は最後まで聞けなかった。巨怪な肉蛇はその体躯に見合わぬ素早さで、綾香を頭から呑みこんだからだ。
◇
「ふぅっ、うぅぅ……!」
触手に捕食された綾香だが……。まだ生き長らえていた。美女は肢体の全てをもって、丸呑みされた実感を味わう。
大蛇の中には小さな触手が隙間なく密生していた。頭頂から爪先まで、綾香が異肉と接していない部分はない。
「う……ぐぅ……」
ふと、生物の教科書を思いだした。腸の内側には柔突起がびっしりと生えている。体内に取りこんだものは、そこから吸収されるのだ。
連想は当たっていた。高い鼻と細い顎。豊かに実った胸房、きゅっと引きしまった腹と尻、艶やかな髪まで。綾香の全身はゆっくりと溶かされ、触手の内部に取りこまれていく。
「はは……あはは……」
彼女はまだ恵まれた方だった。肉体はともかく、精神には自由に出来る余地があったからだ。
消化に快楽が伴うことも幸いした。最後の最後に、夢の世界へ逃げこむことができた。
「あはっ、ははは、あは、あーはっはっは!」
肌をぬめぬめと触手が這う。粘液が広がるごとに悦感も染みいる。真っ暗闇の中では、己の姿を見ることもできない。自分がどうなっているのか、それすらもわからない。
「あははっ、あは……はぁ……は、はぁ……」
暴力で全てを意のままにしてきた呪術師。美女は力尽きるまで、けたけたと笑いつづけていた。
◇
呪術師たちの戦いは人知れず終わった。その翌朝のこと。始業前の学舎で、真澄美は校長を見つけた。
「おはようございます。校長先生」
「あら……藤沢さん。おはようございます」
老女はにっこりと挨拶を返した。いかにも柔和そうな雰囲気だ。しかし真澄美が抱く印象は異なる。
本質を見極められず、形骸化された教えをただただ課す。少女の黒眼は老女のことを、古ぼけたガラクタとしか映さなかった。
当然、そんな内心はおくびにも出さない。代わりに少し落ちこんだ表情で話を切りだす。
「実は、天城先生のことなのですが……。ご家庭の事情で、学園を去られるようですわ」
「……え?」
「私が言伝を頼まれましたの。急なことで、校長先生には申し訳ない、と」
書面も用意せず、退職の意思を女生徒に伝えさせる。こんな方法など、とても認められまい。
「そ、そうなの? それは残念ね。わかりました」
しかし校長は了承した。老女の表情はあからさまにほっとしていた。
真澄美がしたのは、ほんの少しの認識操作だけ。校長は綾香が消えることを、心から願っていたのだろう。失踪後の手続きは任せて良さそうだった。
「それでは、失礼いたします」
校長と別れた真澄美は、自分の教室に向かう。
(残念でしたね、天城先生)
廊下を歩きながら真澄美は考える。少女の歩調は静かだった。長い黒髪とスカートの裾は、控えめに揺れるだけだ。
(これからもっと、楽しいことが起こったのに!)
しかしその胸中はわくわくと湧きたっている。
古の賢人たちが知恵を絞ってつくりあげた結界。どうやって彼らを出し抜いてやろうか? そして、それを壊したら……どんなことが起こるのか?
少女の前にはただただ、楽しみだけが広がっている。
「藤沢さん、おはようございます」
教室に入った真澄美は、クラスメイトたちから挨拶を受ける。すでに彼女らは己の虜だ。
なにも知らず、なにも見えず、利用されるだけの巫女たち。彼女たちをどう使おうか。それを考えるだけでやはり、心が浮きたつ。
「おはようございます。今日も良い一日を過ごしましょうね」
藤沢真澄美は天使のように微笑んだ。それから自席に着く。学園の新たな支配者はもう、天城綾香という存在など、永遠に忘却していた。