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で投稿していたSSの加筆修正版。
過熱した欲望は、遂に危険な領域へと突入する。
疲れていた。そう、言ってしまえばそれだけだった。
毎日起こる大小の事件、付随する事務処理、被害加害生徒へのケア… 積み重なる業務に押しつぶされ、気付けばもう何日も“そういうこと”の発散もできていなかった。
そんな状態なのに、それが必要なこととはいえ可憐な少女たちが四六時中身の回りに侍り、時に世話を焼き、焼かれ、時間を共にすれば色んなことに気付いてしまう。
時に見える肌色、あるいはちょっとした隙から見える肌着の色、近づくだけで感じられるかぐわしい香り。
みんなが違う色、香りをしていて、本人たちにそのつもりはないだろうが、まるで誘うように魅せつけられるそれらに、疲労した精神はもはや限界だった。
それでもかろうじて「生徒に手を出すわけにはいかない」という理性が、薄氷を踏むようにひび割れ、砕ける瞬間を今か今かと悪魔が待ち構えているような気分だった。
だから、こんなことを口に出してしまったのは、その薄氷が砕けてしまったのは、「生徒たち」に知られずにいられる空間と、そこにいる「絶対の味方」を相手に、甘えてしまったのだろう。
“アロナ、脱いで”
「……えっ」
何を言われたのか理解できなかった顔。
「せ、先生? あの、え?」
徐々に理解していく顔。
「お、お疲れなんですね!? 最近は結構無理が続きましたから!」
“……”
信じられないものを見た顔。首まで赤く染まる。
嗚呼、これは彼女への裏切りなのだろうか。いや、裏切りなのだろう。
「せ、せんせい? ちょっと、あの、えっと……」
「こ、困惑。先輩、先生は疲労により正気ではない可能性が――」
“プラナ、おいで”
困惑する二人のうち、白い少女を有無を言わせず抱き寄せ、隣に立たせる。空色の少女は一人、顔を赤くしながら口を開いたり閉じたり。言葉が出ないようだ。
“アロナ、脱いで”
「ぴぇ」
鳴き声。茹蛸の様になった顔。目はぐるぐると渦を巻いている。何を言われたのかはわかっている。正気に戻そうと言葉を重ねようとする前に、有無を言わせず座った視線が貫く。
”アロナ”
「……っ」
確実に、今の先生は正気じゃない。でもそうなった原因は分かってる。あれだけ姦しく囲まれれば我慢なんて……。真っ先に求められたのがわたし。
……真っ先に求められた?
「あっ、あっ、あの、あの!」
“アロナ”
はずかしい。でもちょっとうれしい。でもでもはずかしい。
“脱いで”
……そうしてわたしはスカートのホックへ手を―――
――えっ、本当に脱ぐんですか? 白い少女の目がそう言っていたが、空色の少女は顔を上げることができなかったため気付くことはなかった。
パサリ――軽い音とともにスカートが落ちた。上着の色に似た、空色と白の縞模様が晒される。
「……ぬ、脱ぎましたっ! 満足ですか!?」
恥ずかしさと、ちょっと自覚しちゃった嬉しさと、恥ずかしさ。いっぱいいっぱいになって半ばヤケクソに言った。でも、これで――
“かわいいね。アロナ。でも、ダメだよ”
弾かれたように顔を上げる。空虚な瞳とかち合った。
“『ちゃんと』脱いで”
……ちゃんと? それって、つまり――
意味を理解するにつれて、茹蛸のような顔がもっと赤くなり、涙が浮かび始める。
「せ、先輩……」
視界の端に、同じくらい真っ赤になった後輩の驚く顔が見える。普段はおすまし顔ばかりのくせに、こういう時は反応する。他人の反応を見て、自分の今を理解して、恥ずかしい気持ちがもっとずっと強くなる。目と耳を塞いでいてほしかった。
“さぁ、アロナ”
でも目の前の大人は待ってくれない。もはや顔を上げることはできず、俯いて、それでも逃げられない圧を感じて――着ている上着に手を伸ばす。
「ふ、うぅ……」
意味もなく呻きながら、一つ、また一つ上着のボタンを外していく。
その様は、表情は、恥ずかしさに火を噴いたように赤いのに、少しだけ嬉しそうで――
「うぅ……」
上着を脱ぎ、ブラウスと下着を晒す。上は良いが下は良くない。
当然、上着を一枚脱いだだけで先生は納得してくれるわけがない。そのままブラウスのリボンに手をかけた。
“……”
羞恥心からゆっくりとした動作でブラウスのリボンを解く。断じて本人にその気はないが、それはまるで焦らすように緩慢な動作だった。
シュルリ……、リボンが解かれた。ゆっくりと胸元から引き抜かれる。
“……”
その所作は羞恥のためであったが、普段の少女の快活さを知る者が見るとどことなく艶めかしい。
そしてブラウスのボタンを一つ、一つ、ゆっくりと外していく。空色の少女の顔は完熟したリンゴのごとく。早くも限界だった。先生も割と限界だった。
「……」
白い少女は必死に考えていた。暴走する主、辱められているのになぜかちょっとうれしそうな先輩。このまま見ているだけで良いのだろうか? 常識的に考えて止めるべきでは? いやでも先生がわりと限界ギリギリなのは明白で……、かと言って「脱げ」はちょっとおかしくない? 特殊なプレイか? なぜ私の前で? 堂々巡り。結局、動き出すことが出来ない。
まごついている間に、空色の少女はボタンを外し終わり、ブラウスの裾をもって脱ごうとし、決心がつかずちょっと戻り、を繰り返していた。
“……アロナ”
早くしろ。言外にそう言われているようで、びくりと肩が跳ねた。
「うぅ……、うー……」
うなりながら、ええいままよと脱ぎ捨てる。ブラウスの下はかわいらしいキャミソールだった。
これで満足ですか。言おうとして、『ちゃんと』脱がなくてはならないことを思い出す。下着姿程度でこの大人は絶対に納得しないだろう。
改めて視線を感じる。ねっとりとした、絡みつくような熱を。顔を上げることが出来ない。
キャミソールの裾に手をかけ、少し持ち上げては戻り、少し持ち上げては戻り。恥ずかしさ故の行動だったが、見ている先生からするとショーツとへそをちらりちらりと見せつけ、じりじりと焦らされているに等しい動作だった。
「ふっ……、ふっ……」
気付けば息が乱れていた。恥ずかしすぎて、呼吸もままならない。頭がくらくらする。せんせいがみてる。わたしを、もとめている。せんせいが。
熱に浮かされるような頭で何も考えられないまま、それでも求められていることにほの暗い喜びを感じて、そうしてその手はゆっくりと――
キャミソールをめくりあげていく。ゆっくりと、ゆっくりと。それは少女の葛藤故だったが、待つ側にとっては焦らしに焦らされて、いっそ誘われているような蠱惑的な時間だった。
ショーツ、下腹、ヘソ、あばら。ゆっくりとあらわになっていく少女の柔肌は、淡く朱色に染まっている。
そして乳房の下までめくりあげたところで、躊躇するようにまた止まってしまった。
「ふっ……、ふっ……」
羞恥か、まさか興奮しているのか。荒い息を整えるように中途半端な姿勢で止まる。本人は葛藤しているつもりでいる。
“……アロナ”
「ひゅっ」
呼ばれて、息を呑む。怒っているわけではない。ただいつもの優しい声なのに有無を言わせぬ強さがあった。同時に、なんだか励まされているようにも感じてしまった。妄想だ。
「ふっ……、うぅー……、っ!」
ままよ! 少女はついにキャミソールを脱ぎ去った。月光に、淡く染まりながらも白い肌、そしてわずかな膨らみ、その桜色の先端が晒された。
やっちゃった。やっちゃったやっちゃったやっちゃった! 空色の少女は混乱の極みにいた。体が熱い。視界がパチパチと弾ける錯覚さえ覚えた。
そのまま、ふやけた思考とぼやけた視界で先生を見る。大好きな、彼を。
“……”
先生は何も言わず、ただじっと少女の体を見ていた。その瞳からは感情を読み取れない。いや、少女の頭がそこまで働いていない。
考えられることは、満足してくれるかとか、これで許してもらえないかとか。わたしで、興奮してくれるかな、とか。
そのまま見つめ合うこと数秒。もしかしたら数分。彼は口を開いた。
“まだだよ、アロナ”
わかっている。求められていることは何か。すごく、とてつもなく恥ずかしい。でも、求められている。彼に、わたしを。
躊躇いながら、ゆっくりと、本当にゆっくりと、少女の手は自らの腰へ向かう。
そしてその頼りない、最後の一枚へ指をかけ――
指をかけて、止まる。手が震えていた。
これが最終防衛線だ。本当に行くのか。茹った頭の中で、知らない自分が囁いた。
でも、せんせいが、せんせいに、もとめられてて……、誰に言い訳をしているのだ。もう何もわからなくなってしまった。
指をかけた姿勢で固まり、完熟林檎がかすかに揺れる。混乱の渦中にあって、唯一思考することを許された後輩が、いよいよと見て焦り始めた。
(これ以上は、これ以上はいくら何でも――)
“プラナ”
弾かれたように隣を見る。目が合うことはなかった。ただ――
“黙ってて”
有無を言わせぬ圧だけがあった。
「ふーっ……、ふーっ……」
やるぞ、本当にやるぞ。だいすきなせんせいがそういったんだから。――わたしを、みてくれるんだから。
羞恥という炎で炙られた脳はもはやまともな思考をしていなかった。
ふるふると震える指が、少し、また少しと下がっていく。今日一番の遅さだ。ナメクジにすら負けるだろう。
下腹の、布が当たっていたところが空気に触れる。触れる面積が大きくなるたびに、炙られた脳がもっともっとと加熱されていく。
やがて、鼠径部の中腹まで来て、指が止まった。
「はっ……、はっ……」
かかる羞恥のためか、今更ちぎれた理性が震えたのか、本人にももはやわからないが。
“アロナ”
許されることはない。大きく肩を跳ねながら、また少しずつ地面へ向かって下ろしていく。
視界の中、俯いたそれは大好きな彼の、その顔を写さない。でも、わたしがはずかしいだけで、よろこんでくれるなら――
ついに腿下まで下りた指から、布地が離れる。最後まで抵抗するように貼り付いていたクロッチが、重力に従い脚を伝っていく。それが、やけにゆっくりと感じられた。
「はっ……、はっ……」
そして、その腕で体をかばった。反射だった。顔を上げることができない。
“アロナ”
呼ばれた。これで、許されるだろうか。恐る恐る、震えながら顔を上げる。
“手は横”
また大きく跳ねた肩。震える指先。黒焦げの脳は何も判断できない。荒い息を繰り返し、少女は腕を――
「ふーっ……、ふーっ……」
羞恥により前後不覚に陥った少女は、言われた通りにしようとして、しかし動けないでいた。
もうほとんど見られている。でも無駄な抵抗とて抵抗。感情か、空気にさらされる頼りなさか、あるいはまだ理性が生きているのか。渦を巻いた目を合わせながら震えるばかり。
“アロナ”
だがこの大人は止まってくれない。炙られて感情の読み取れなくなってしまった頭は、先生が今何を考えているのかわからない。あるいは、どう思ってくれているかも。
“手”
声は優しいのに、いつもの先生なのに、言葉だけが無慈悲だ。
「はっ……、はっ……」
息が上がる、動悸が激しい。羞恥に染まって泣きたいくらいなのに、まるで興奮した犬の様に喘ぎながら、またゆっくりと、手を下ろしていく。股下を通り抜ける空気がやけに冷たい気がする。
“……”
もう表情も、感情も読めない。それでも大好きな顔と目を合わせるのがつらくなって、無意識に目線が下がる。
裸体が目の端に映る。はだか。だれが? ……わたしが。認識した瞬間沸騰した脳が目を閉じる。限界だった。
“……”
「み、みないで、ください……」
自分で脱いでおいて何を言っているのだろうか。正常な思考は彼方だった。顔も首も、体も、すべてが赤く染まっていくように感じる。熱い。
目を閉じているはずなのに、先生の視線を感じる。胸、脚、――乙女の秘。視線は熱を伴って、嬲るように体を嘗め回した。
“……”
「ふーっ……、ふーっ……」
どれくらいそうしているのだろうか。体の熱は引く気配がない。時間とともに高まっていく。特に、胸の先端と、脚の付け根。
いつまで、こうしていればいいのだろうか。高まり続ける熱が、体の内で暴れ狂う。――風が吹いた。
「!?……あっ」
熱が暴れる体に少し冷えた風があたって、肌を流れる感覚だけで下腹がずくんと疼いた。そして、感じ取ってしまった。
「はっ……、あっ、ちが……」
反射的に目が開き、跳ねた肩と連動した目が上に流れる。涙が零れそうだ。目が合った。
“かわいいね。アロナ”
気付かれた。もしかしたらずっと前から、気付かれていた。
“……気持ちいい?”
脚の付け根から伝う、雫が――
違う。これは、違くて……。声に出そうとして、声にならない。役に立たない喉は震えるばかりだ。
目を合わせ続けられない。咄嗟に俯こうとして、自らを視界に入れたくなくて、そんなことを考える余裕もないのに横に背けた。何も見たくないというようにきつく目をつむる。
“アロナ”
ただ名前を呼ばれただけなのに、――ヘソの下の熱が増した。
「ふっ……、ふっ……」
浅い呼吸を繰り返す。気付いてしまった。自覚してしまった。もうだめだ。とっくの昔にダメだったがもっと駄目になった。きっと、気付かれている。
“かわいい”
何を言われているのかもわからない。羞恥で炙られ、灰だけ残した脳はただ荒れ狂う熱だけを認識する。体の内に渦巻く熱だけを。
少しでも落ち着けたい。呼吸を、心を、――疼きを。
「ふーっ……、ふーっ……」
呼吸を深くしようとした瞬間、頬に冷えた手が触れた。
「ふゅっ」
大きく肩が跳ねて、反射的に目が開く。そっと頬に添えた手が、優しく顔を上げさせる。目が合う。微笑み。
“いい子”
力が抜ける。膝が震えていることに気付けない。
「あ……、せん、せぇ……」
許されている。ただ、そう感じられた。役立たずの脳は動きを止めたまま。添えられた手が暖かく感じる。胸の奥が暖かい。
“アロナは、本当にいい子だ”
「あぅ……、せんせぇ……」
すりすり、すりすり。うわごとのように彼を呼びながら、気付かないまま頬ずりを続ける。それは猫が主人に甘える様に似ていた。
頬に触れる手の、その親指がそっと顔を撫ぜる。肌を滑る感触に、背が震えた。反対の手が、そっと頭をなで始めた。下腹の熱が内腿を伝い、空気に触れて冷えた。
自分が今どうなっているのかわからない。ただ、この暖かな手に任せてしまいたい。だいすき。だいすき。言葉の意味もわからないまま、心の内で繰り返す。
「せんせぇ、せんせ、わたし。わたし……」
自分が何を言おうとしているのかもわからない。ただ心の内の愛しさが、内側の熱が、形にならず零れ出る。
「ぜんぶ……、せんせ、ぜんぶ……」
何を言おうとしているのかわからない。愛しさと切なさがあふれ出て、ただ。ただ彼に触れてほしい。
「……あげます――」
「はっ……、はっ……」
自分が何を言ったのかも理解できないまま、炙りつくされた頭は撫でられる感触を享受している。願わくば、これだけを感じ続けられるようにと。
「んっ……、ふっ……」
内側の熱が増していく。頭からつま先まで、焦がし尽くした灼熱が、ぐるぐると体を巡り続ける。
まるで宙に浮いたような気持ちで、浅ましく、撫でる掌に縋りつく。
“アロナ……”
声が聞こえるたびに、名前を呼ばれるたびに、頭を駆け巡る甘い電流が背中へ、腰へ抜けていく。下腹の熱が疼く。
頭を撫でる手が頬に。優しく挟み込むように両頬を支えられ、そっと指で撫でられる。
片方の手で優しく頬を撫でながら、もう片方がゆっくりと顔の輪郭をなぞり、耳元までの肌を撫ぜる。触れるか、触れないかの際を優しく。優しく。
「あ……、はぁっ……」
声を抑える余裕はハナから無い。聞こえるのは大好きな彼の声だけ。撫ぜる指と触れる肌の甘い刺激に喘ぐ。
与えられる甘美に震え、うわ言のように呼ぶ声も、甘くしとどに濡れていく。
「せんせぇ……、せん、せぇ……」
耳から与えられる甘い熱に浮かれている間に、頬を撫でていた指は気付けば首元へ向かう。どこまでも優しく肌を撫でる。首から喉へ、喉から鎖骨を。ゆっくりとなぞる様に。
「あ……、は……、せんせ、もっと……」
触れて。声にならない声に応えるように、耳を、肩を、弄ぶように肌を撫ぜる。ゆっくりと、甘い刺激が止まない。
触れられる肌を通して、彼の指が徐々に熱の集まるところへ近づいていくのがわかる。焦らす側が入れ変わったように、少しずつ、少しずつ膨らみの外側をなぞっていく。
そのままわたしにふれて、たしかめて――
甘えるように、媚びるように、見つめ合う瞳に想いを乗せる。どうか心の内側にまで、触れてしまってほしいと。
“……”
なのに、彼は熱の集まるところへ触れてくれない。そのふくらみの外側をなぞり、鳩尾に軽く触れ、まっすぐ下に向かったかと思えば途中で折れて腰へ向かう。その間も、もう片方が耳を、頬を、額や目尻を、慈しむように撫でまわす。
そこじゃないのに。触れてほしいのは、わたしがいちばんさわってほしいのは――
「せん、せぇ……」
甘い声。縋るような、媚びるような。――
“ふふっ、いじわる、しちゃったね”
耳元。囁き。背中に甘い電流。膝が震え、内腿を熱が伝わる。その声だけで腰が砕けそう。
“かわいいね。アロナ”
黒焦げの脳がかろうじて聞き取った囁きが、吐息が、内側の熱を増していく。強くなり続ける炎がいっそ恐ろしくなって、彼の袖に縋りつく。
それでも、彼に焦がされることがどうしようもなく甘くて、切なくて、それを望むわたしがいて――
「せんせ、せんせぇ、わたし、わたしっ……」
言葉が出ない。どうすればこの熱が彼に伝わるのか。触れられる肌の甘い刺激が、耳に聞こえる彼の音が、思考することを許さない。
どうか触れてほしい。この胸の内の、奥の奥まで。言葉にできないまま、ただそれだけを思う。
「せんせ、せんせぇ……」
それしか言葉を知らないように。さわって、さわって。わたしをあなたのものにして。心の内の形にならない声が、ただそれだけを繰り返させた。
“いい子だ”
涙が零れそうなほど、焦がされ続けた頭をそっと支えられる。腰と脇腹をなぞっていた手が、そっと背中に回る。気付く間もなく、彼の腕の内にいた。
「あ、せんせ……」
暖かい、安心する。大好きな彼の体温と匂いに体から力が抜ける。自分が今どんな状態かも忘れて、脚の付け根から零れる熱も気にならない。
そしてまた頭を撫でられる。同時に背中、腰を指がなぞる。ぞくぞくとした甘さが尾骨から頭頂までを駆け抜けた。
「あ、あ、は……」
腰が震え、灰と化した脳がまだ焼き尽くされる。腰を撫ぜた指が背骨をなぞるように上り、下り、腰から下のふくらみの外側をなぞる。
声にならない声を上げる少女を、まるで弄ぶように指が走る。頭を、頬を、うなじ、鎖骨、背中、腰を。小さい体を精一杯震わせて、縋りつく少女は荒れ狂う熱に翻弄され、見つめる瞳から感情を読めない。
“アロナ”
呼ばれて、また電流が走る。でも今度は、いよいよだと理解できた。できてしまった。
「はっ……、ひゅっ……」
息を呑んだようなことをして、ただ彼を見つめる。きっと触れてくれる。うれしい、はずかしい。こそばゆい感情と燃え上がる熱が駆け巡った。
そうして愛しい指が鎖骨をなぞり、小さなふくらみを押しなぞりながら、その先端へと――
ゆっくりと、鎖骨からデコルテをなぞり下りてくる指が、優しく肌を押しながら熱の中心に向かう。炙られ灰となった脳はただ漠然とした期待感に晒された。
「はっ……、あ……、せんせ……」
少女の頭は期待感と、ぶり返した羞恥と、彼への好意で崩壊寸前だった。
“……”
決壊した。
「あっ、は、あっ、っ、ふゅっ」
期待に尖った先端を優しく掌で撫で、指先が突起に届くと優しく摘まむようにまた撫ぜる。転がすように擽り、指の腹を滑らせて掌でふくらみを包む。
「は、あ、あぇ……」
その間も頭を、頬を撫ぜる手も止まらない。頬に添えた手の親指が、閉じた蕾に触れるようにそっと唇に差し込まれる。反射的に口内に入った指に舌がからみ、分泌された唾液が口の端から零れた。差し込まれた指は口内を蹂躙し、撫でるように舌を弄ぶ。
「へん、へぇ……」
甘えた声を出しながら、与えられる刺激に翻弄される。体を駆け巡る熱が解放され、全身を炙りながら漏れ出ていくのに勢いを増していく。
痙攣するように体を震わせながら、ついに体の力が抜け、彼の体にもたれかかる。必然、彼の手に突起が強く擦り付けられた。電流が流れた。
「ひゅぇっ、あ、はぁ……っ」
上からも下からも零しながら、与えられた甘い刺激がいつまでも咀嚼し切れない。膝から崩れ落ちる。背中を支える手。
“アロナ”
かろうじて聞き取った声に、目を向ける。至近距離、抱き留められて目が合う。
「あ、はっ……、ふーっ……」
優しく抱きしめられ、麻痺した頭がしばしの休息を得る。荒い息を整えようと、無意識に呼吸が深くなる。
ゆっくりと下腹を押された。
「!?……、あっ、あ、はっ……、???」
何が起こっているのか。分からないまま、抑えられたヘソの下から広がる甘さに震える。漏れ出る熱の勢いが増した。
熱とともに、駆け抜けた衝撃が脳を揺らす。なにが……、おなか……、わたし、どうなって――
下腹を押される。さっきよりも深く。
「!?!?……、は……、え……」
熱された腹から甘い痺れが駆け抜けていく。かくかくとまるで誘うように腰が震えていることに気付いていない。
わからないまま、縋るように彼の腕に抱き着く。視界が白く弾け、何も見えなくなった。
そして、腹を押していた手が優しく撫でながら下へ向かっていく――
ゆっくりと指先が鼠径部をなぞる。焦らすように、弄ぶように。
「せんせ、せんせぇ……」
熱に浮かされるように呼びながら、頭の中は期待でいっぱいだった。はやく、はやくさわって――
ふと、彼と反対側から影が差した。
「……」
白い少女が、真っ赤な顔を手で覆いながら、それでも抑えられない興味を指の隙間から覗かせていた。瞬間、空色の少女は沸騰した。
「はっ、あ、ぷらなちゃ……」
見られている。今の自分の状態を思い出すこともできないまま、暴走した羞恥心が体内で爆ぜた。いやいやとするように首を振ろうとして、ゆるゆると頭が震える。
“……”
見ないで。口に出そうとして、頭の中で、目の奥で、光が弾けた。
愛しい指がぬるりと一筋をなぞる。水音。先端の突起を優しく弾くように撫ぜた。
「あっ、はっ、ふぁっ」
息が苦しくなるほどの衝撃で全身が焼かれる。視界で星が瞬き、見られていることなど一瞬で吹き飛んだ。
抱き留めた腕が痙攣する体を抑え、駆け巡る熱を逃がすように脚がピンと伸びた。
指はそのまま丘をはさむように摘まみ、なぞり、時に弾くように突起を弄んだ。その度に体が跳ね、息が途切れる。
「せん、せんせ、せんせぇ!」
悲鳴をあげるように呼ぶ。応えて指の力が強くなった。波に揉まれる木の葉の様に、少女は熱と衝撃に翻弄されていた。そしてついに――
「あっ、あっ、はっ、あっ!」
頭頂からつま先まで幸せが駆け抜けた。強く彼の腕を握りしめ、全身を震わせる。涙が零れた。やがて体から力が抜け、水が噴き出すように、添えられていた指を濡らして水音を立てた。足元まで温かいものが広がっていく。水たまりに熱が混ざる。
“いい子。かわいいね、アロナ”
途切れかけた意識に、大好きな彼の声が響く。声の主に触れられて、何もかもをさらけ出されてなお愛しさがあふれた。
あふれたそれを、そのままにできず、震える腕を彼の顔に伸ばす。悟ってくれた彼が、そっと顔と顔を近づけた。抱き着く。
「せんせ、だいすき……」
抱き着いて、彼の頬に唇を落とす。あふれ続ける愛しさの、数分の一でも伝わってほしいと願いながら。
“私も、アロナが好きだよ”
応えるように額に口づけ、そっと頬を撫でられる。伝わった嬉しさに、知らず体がふるりと震えた。
「せんせ……、っ」
背中の手がかき抱くように回り込み、そっと胸の先端を撫ぜた。一度高まり放出された熱が再び高まり始める。
熱が放出されて少しだけ帰ってきた理性が、今の自分を俯瞰した。
「せん、せんせ、みられ、ぷらなちゃ……」
見られている、見ないで。どちらも声にならない。鼠径部と一筋を弄ぶ指が勢いを増した。
もはや隠すまでもない水音が静かに響く。それを自覚して、自覚できてしまって羞恥と熱がいや増した。
「せんせっ、せんっ、せんせぇっ」
まって、まって、また――
「はっ、あっ、あっあっ、んぁっ!」
ピンと伸ばした脚が震える。恥ずかしさから彼にしがみつき、無意識に体に力が入る。熱の放出される衝撃に耐えるように。
「あっ!? まっ、まって、せんせ、まってぇ……」
指が止まってくれない。羞恥と衝撃で息ができない。両の手がいつまでも体を弄ぶ。時に優しく、時に激しく。翻弄され続けた少女は抵抗するように腕を伸ばす。それすらも弄ぶように、優しく口に含まれた。
手指によって弄ばれ、指先を舌で転がされ、高まる熱と衝撃がいつまでも止んでくれない。少女はただ悶え続けることしかできなかった。
「はっ……、はっ……、せんぱい……」
息も絶え絶えに喘ぐ空色の少女を見ながら、白い少女は気付かぬうちに息が上がっていた。いつも天真爛漫な、純粋無垢な先輩が、先生の手指で悶えている。どこか背徳的で、いけないものを見ている実感を伴って、少女の意識に染み込んだ。
止めなければ、という使命感はもはや思考のはるか彼方だ。
「せんぱ……、わたし……」
いつの間にか敬愛する先輩に己を重ね、静かに体を震わせる。自分が今どうなっているのか。下腹から伝う湿った熱も、赤に染まった顔も、それを見る先生の視線にも気付かないまま。
「あっ、はっ、あっあっ、あぅっ、あっ!」
またピンと伸びた脚が震える。今度は熱が飛沫となって音を立てた。もう自分がどうなっているか、体中から零れる液に気付くこともできない。
突起を撫ぜる、弾く。そっと差し込まれる。ゆっくりと浅くかき回される。その度に熱が高まり、いくら放出しても次から次へ薪をくべられる。
指は止まることはなく、懇願は届くことはない。無慈悲にいつまでも熱をかき回す。
「は、はっ、せん、せんせ、せんせぇ……」
できることは媚びることだけ。首を垂れて懇願するように、ただひたすら慈悲を乞う。
「あっ!? まっ、あっあっあっ、も、だめ、だ、あっ!」
音を立てて飛沫が飛ぶ。足先までピンと伸ばして少しでも熱を逃がす。
「あっ、ふぁっ、んんっ、ふっ、やぁっ」
まって、また、また――
「おね、おねが、ま、まって、せんせっ、せんせっ!」
あ、あ、あ、また、また、わたし――
「はっ、ひゅっ、せめ、せめてゆっく、い゛ぃ゛っ」
からだ、おかし、あ、あ、あ――
「っ!、っ!?、――っ♡」
理性も、感情も、体も、どろどろに溶けていく。残っているのはただ与えられた幸せと彼への愛だけ。
足を伝わり床に漏れた熱も、それを見て赤く染まりながら震える後輩も、愛おしく己を見つめる彼も、何もかもわからないまま。
少女の意識は途切れた。
「すーぱーえーあい! アロナにお任せください!!」
銃撃戦の中の陣頭指揮を終えた先生、先生を援護していた先輩が胸を張る。
今日もいつものように暴れる不良とそれを制圧するシャーレの構図は変わらない。補導された不良たちは、これもいつものように各々沙汰が下るのだろう。
先生が手伝ってくれた生徒たちに礼を述べ、ちょうど夕暮れの終わりだったことも相まって現地解散となった。
この後、シャーレに戻っていつものように書類と格闘することになるのだろう。
“二人もお疲れ様。いつものことだけど、ありがとう”
微笑みながら相棒の二人に告げる。煤や埃に汚れながらも、一仕事終えた彼はどこかすっきりとした顔をしていた。
「はい! 先生もお疲れ様です! でも前線に出すぎです! ひやひやしました!」
「肯定。もう少し後方から支援に徹するべきです」
“いやぁ、つい、ね”
反省してないな、これは。生徒のためなら火の中水の中と走って行ってしまう彼を、どれだけ心配しているかなんて気付いていないんだろう。あるいは、気付いていても止まれないのか。
その後、シャーレ部室に戻る道すがら、他愛のない会話をする。差し入れのスイーツが美味しかったとか、書類を忘れて怒られたとか。
部室に戻ってからは、案の定書類と格闘。いつものこと。いつも通りの時間を過ごす。
――夜。
「生徒たち」に知られずにいる空間で、空色の少女と彼は二人きりだった。白い少女は、姿が見えない。
他愛のない会話をして、互いの距離を縮めていく。それはどこか愛撫にも似て、静かに、空気を変えていく。
“……”
「……」
やがて話題が尽きたのか、互いに伺うように目を合わせた。
“アロナ”
声は変わらず優しいのに、いつもの先生なのに、どこか怪しい響きが伴う。
「……♡」
応える少女は、恥ずかし気に、嬉しそうに、そっとスカートの裾を持ち上げた。
“おいで”
そうして、秘密の逢瀬が始まる。月光の下、静かに嬌声が奏でられた。
……それを、物陰から気付かれないように盗み見る。あの日のことを覚えている。邪魔しないように、いつからか身を隠すようになったことに不満はなかった。
ただ、あの日と同じように自らの内の熱が、あの日と同じように下着を濡らす。あの光景を忘れられない。
いつか、自分も――願いは無自覚なまま、今はただ静かに己を慰めた。
ところどころ手を加えたいなと思った部分をいじってみた。それでは失礼する。