※この作品はR-18です。

サロン・セルパンタンの五百日の調教記録──亡国の花と蛇の館   作:ドン・ドナシアン

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109 情欲の裏切り【第37日】

「お姉さま、よく言えましたわ。でも、申し訳ありませんが、お姉さまをその他大勢の肉便器にはできませんの。わたし専用の肉便器になっていただきます」

 

 カリンが立ちあがって、拘束されているオクタヴィアの前に歩み寄ってくる。

 

「……もちろん、わたしが命令したら、なんでもやってもらいます。男の相手も、女の相手もです。いいですわね、お姉さま」

 

 カリンがオクタヴィアの前で、薄桃色のガウンを脱ぎ捨てた。

 オクタヴィアは眼を丸くした。

 ガウンの下から現れたカリンは、腰帯から細い留め紐を垂らし、腿まで届く茶色の長靴下を身につけていた。

 だが、オクタヴィアが驚いたのはその姿ではない。

 カリンの腰には革製のベルトが幾重にも巻かれていた。その正面には、見覚えのある形をした張形が固定されている。

 

「お姉さまを犯すのが夢でしたわ……。ありがとうございます。ようやく夢が叶いました」

 

 カリンはうっとりとした笑みを浮かべた。

 オクタヴィアは言葉を失ったまま、その姿を見つめる。

 カリンが軽く手をあげた。

 待機していた女兵が、すぐに小さな台車を押してきた。

 その上には、蓋の開いた壺が載せられている。

 カリンは壺の中へ両手を入れた。指に絡みついた粘り気のある油剤を取り出すと、それを張形へ丁寧に塗り広げていく。

 

「……ふふふ。お姉さま、このディルドに見覚えがありませんこと?」

 

「え……」

 

「お姉さまにずっと使っていただいた前側の張形と、まったく同じものですのよ」

 

 言われて、オクタヴィアは改めてそれを見た。

 確かに同じだった。

 

「もう、お姉さまの身体もすっかり覚えていらっしゃるでしょう。ですから今日は、これを使わせていただきますわね」

 

 オクタヴィアはごくりと唾を呑み込んだ。

 だが、すぐに別のことに気づいた。

 鼻をつく独特の匂い。

 間違いない。

 

「……そ、それより、それは掻痒剤ではないの──?」

 

 声が強張った。

 おそらく一号だ。

 三種類ある掻痒剤の中でも即効性が高く、持続時間が短い代わりに作用も強い。

 ただでさえ、中和剤が切れたことで身体には再び痒みが戻っている。

 そこへ、さらに掻痒剤を使われる。

 そう考えただけで、オクタヴィアの背筋に冷たいものが走った。

 

「当然ではありませんの。先ほど申し上げたでしょう。一号掻痒剤を塗ると。わたしは、お姉さまをもっともっと苦しめてさしあげたいんです」

 

「カリン……」

 

 オクタヴィアは身を引きかけた。

 だが、できない。

 両膝は棒枷に固定されている。両腕も自由にならず、上体を前へ倒した姿勢から逃れることもできない。

 

 こつり、と靴音がした。

 カリンが動いた。オクタヴィアの背後へ回っていく。

 姿が見えなくなった。

 

「ああ、カリン……」

 

 オクタヴィアは、思わずその名を呼んだ。

 すると、カリンの指が後ろから、オクタヴィアの秘部をなぞり始める。

 

「ああっ」

 

 オクタヴィアは身体を弓なりにして、息を吸い込んでいた。

 さらに、指は股間の亀裂から、蟻の門渡りをつっとなぞって、お尻の穴を弄り始める。

 

「あっ、くっ、ああ──」

 

 オクタヴィアは我慢できずに、裸身を大きく跳ねた。媚薬責めを繰り返されたうえに、焦らし責めを丸一日繰り返されているオクタヴィアの肉体は、狂ったように発情している。その上に、中和剤切れによる掻痒が襲っているのだ。

 久しぶりのまともな刺激に、オクタヴィアは一気に快感を昂ぶらせてしまう。

 

「ふふ、お尻の方も、すっかりとできあがっていますわね。柔らかいこと……。前とこっちと、どっちを最初に犯して欲しいですか? お姉さまのお好みに合わせますわよ」

 

 カリンが指をお尻の中に一気に差し入れた。

 さっきの一号媚薬をディルドに塗ったときの油剤が残っているのだろう。それを潤滑油にして、指全体でゆっくりと出し入れを繰り返す。

 

「ひあっ、あっ、ああ──」

 

 オクタヴィアは身体を引きつらせた。

 大した刺激ではない。しかし、いまのオクタヴィアには十分だった。絶頂に向かって、一気に快感が飛翔する。

 

「……それとも、最初はこっちにしますか?」

 

 しかし、寸前でカリンは指を抜いてしまった。

 またしても、寸止めの苦悶に襲われて歯噛みするオクタヴィアを眺めるような気配のあと、再び指で股間を責めてくる。

 

「ああっ、いいいっ──」

 

 オクタヴィアは身体を硬直させて、がくがくと震わせた。

 カリンが指を亀裂に沈めただけでなく、肉芽の頭を親指でそろそろと撫でたのだ。オクタヴィアは、手首を吊っている鎖を握り締めて腰を落としそうになる。

 

「どっちがいいのですか? やっぱり、お姉さまはお尻がお好みですか?」

 

 しかし、カリンの指がさっと離れる。

 またしても、オクタヴィアは寸止めで取り残された。

 

「ああ、いやよっ──。もうこれ以上、焦らさないで──」

 

 オクタヴィアは、泣き叫んでしまった。

 

「焦らしてはおりませんわ。お姉さまがお頼みになれば、すぐに犯してさしあげます。前か後ろ……。答えるのはひとつですわ。どっちなのですか?」

 

 カリンが笑いながら、今度は後ろから左右の乳房をこね回しはじめる。

 

「あんっ、ああっ」

 

 なんという鮮烈な快美感の拡がりだろうか。

 だが、一方で焦燥感が狂ったように荒れ狂っている。それどころか、オクタヴィアの弱点を知り尽くしているかのようなカリンの愛撫は、想像以上に苛烈で、オクタヴィアの欲望を狂わせる。

 しかも、中途半端な刺激を受けたために、股間とアナルの掻痒感が耐えることができないものになってしまった。責めの場所が乳房に移ったことで、局部にしてもアナルにしても、怖ろしいほどの痒みと疼きが襲いかかってきたのだ。

 

「あああっ、か、痒い──。痒いわ、カリン──。こ、こんなのないわよ──。なんとかしてえっ」

 

 オクタヴィアは、一気に噴き出した脂汗をまき散らしながら、全身を揺さぶった。

 

「先程、素直におなりになったのかと思いましたけど、間違いのようでしたわ。ごめんなさい、お姉さま。まだ早かったようです。もう一度、貞操帯で封印させていただきますね。やっぱり、犯すのは明日の朝にしましょう」

 

 カリンが手をオクタヴィアから離す。

 そして、まだ足下に落ちたままだった、張形付きの貞操帯を拾った。

 背中に大量の汗が流れる。

 

「ま、前よ──。前を犯して──」

 

 オクタヴィアは必死で叫んでいた。

 

「前じゃわかりませんわ。それよりも、待ってくださいね。封印する前に、張形に掻痒剤を塗り足しますから」

 

 背後でカリンがそう言い、台車を引いた。

 オクタヴィアは、激しく首を横に振る。

 

「お、おまんこです──。カリン、どうか、わたしのおまんこを犯して──」

 

 必死に声をあげた。

 カリンがオクタヴィアに恥ずかしい言葉を使わせようとなぶっているのはわかっている。矯正の常套手段だ。しかし、本当に封印されるのではないかという恐怖も走る。

 いや、カリンなら、そうするだろう。

 オクタヴィアを責め落とすのに、カリンは幾日でも時間をかけることができるのだ。しかし、このまま明日の朝など耐えることができるとはまったく思わなかった。

 

「ふふふ、よくできましたわ、お姉さま。だんだんと素直になっていただけますわね」

 

 カリンが手に持っていた貞操帯を台車に置く気配がした。

 次の瞬間、カリンの股間に装着されているディルドがオクタヴィアの胎内に、一気に打ち込まれてきた。

 

「ほおおっ──」

 

 オクタヴィアは快感の旋律に奇声をあげてしまった。

 股間の痒みも、いまは刺激を受けていないアナルの痒みも、焦らし抜かれて疼きで狂っている肉体の焦燥感も、すべてを忘れさせるのに、十分すぎる強烈な感覚だった。

 オクタヴィアの股間は、なにもしなくても蜜が溢れ続けるほどに、もう熟れきっている。

 潤滑油として使っている掻痒剤の助けもあり、カリンが操るディルドは、緩やかに股間を出し入れして、入口から深層部にかけて、繰り返し打ち抜いてきてくれる。

 

「あっ、ああっ、気、気持ちいい──。カリン、気持ちいいわ──。あ、あああっ」

 

 オクタヴィアは声を放っていた。

 もう自分でもなにを口走っているのかわからない。歓喜のうねりが津波のようにオクタヴィアを席巻する。

 今度こそ、いける──。

 オクタヴィアは、鎖を握り締めて、陶然と激しく息を吐いた。

 全身を蕩かす愉悦が五体に響き渡る。

 

 眼は眩む。

 焦らし抜かれた末に受ける、この快感──。

 これほどのものが、この世界にあったとは思わなかった。

 

「そうですか。気持ちよいのですか? では、是非、後ろも味わってもらわないとなりませんね」

 

 そう言うと、カリンはあっさりとディルドを股間から引き抜いてしまった。

 

「ああ、待ってよ、カリン──」

 

 オクタヴィアは狼狽して叫んでいた。

 もう羞恥とか、屈辱とか考えている場合ではない。望みを口にしなければ、いつまでもカリンの焦らし責めは終わらないのだと、やっと気がついた。

 体面などにこだわっている場合ではない。

 

「どうしたのですか、お姉さま? 少し休憩をなさってくださいな。お姉さまが落ちついたら、次は後ろですわよ。いえ、後ろではわかりませんね。お姉さまが、一番下品だと思う言葉でねだって下さい。そうしたら、次は後ろです」

 

 カリンがくすくすと笑った。

 そして、また胸揉みを再開する。

 股間だけでなく、まだ刺激が不十分なアナルにも、一気に掻痒感が復活してくる。

 オクタヴィアは、歯を喰いしばった。

 

 下品な言葉──。

 必死に思考する。

 

「お、おけつまんこ──カリン、オクタヴィアのおけつまんこを犯してください」

 

 オクタヴィアは絶叫した。

 

「……“元主任矯正官のオクタヴィア”を付けてください、お姉さま」

 

「元主任矯正官のオクタヴィアのおけつまんこを犯して──」

 

 オクタヴィアは大声をあげる。

 もうなにも考えられない。

 これ以上の焦らしには耐えられない。

 絶頂したい。

 頭にはそれしかない。

 

「……よくできましたわ、お姉さま……」

 

 すると、カリンがやっと満足したように、オクタヴィアの腰を左右から両手で支える。

 そして、ディルドがずぶずぶとオクタヴィアのお尻を貫いてきた。

 律動が始まる。

 

「んああああっ、ああああっ」

 

 凄まじい快感が襲いかかってきた。

 オクタヴィアは裸身を突っ張らせて雄叫びをあげた。

 そして、自らさらに快感を求めて、お尻をカリンの腰に突き出すように動かす。

 すると、カリンはディルドを引いて、入口辺りに小刻みに刺激を与えるだけにする。焦れて、オクタヴィアが足を踏ん張るようにして、さらに腰を後ろに引くと、またさらに抜きかける。

 だが、オクタヴィアが腰を止めると、今度は少しずつ奥を抉ってきてくれる。

 オクタヴィアは、なすすべなく絶頂に向かって押しやられる。

 

「うふっ、まだだめですわ」

 

 しかし、またもや、カリンはディルドをアナルから引き抜いてしまう。

 

「ああ、またあっ」

 

 オクタヴィアは悲鳴をあげた。

 だが、しばらくすると、カリンはさらに前を狙ってディルドを突き挿してきた。

 オクタヴィアは、もうなにもできなかった。

 前で極めそうになると、絶頂の直前に抜かれて快感を逸らされて、アナルに責めを変えられる。後ろでも同じだ。後ろで絶頂しようとすると、また抜かれて前に戻る。

 積極的に腰を動こうとすると、拒絶して律動を緩められる。

 しかし、止まれば一転して激しくされる。ところが、それに反応すると、ディルドを引きあげられる。

 ひたすらに、これを繰り返すのだ。

 

 オクタヴィアは悶え狂うしかなかった。

 カリンには、自分の欲望を満たそうと焦る様子がまるでなかった。オクタヴィアを追い詰めることそのものを、愉しんでいるのだ。

 オクタヴィアは、泣き喚くしかなかった。

 

「ああ、いやよ、カリン──。お願いよ、もう最後までいかせて──。焦らしてはいやよおっ」

 

 オクタヴィアは全身をくねらせて、必死で叫んだ。

 だが、カリンは嬉しそうに笑うばかりだ。

 角度を変え、場所を変え、ときには抜いてオクタヴィアを焦燥感と掻痒感で狂わせながら責めを繰り返す。

 絶頂寸前に見舞われた回数は、十回や二十回ではきかない。しかし、いつまで経っても、カリンは最後の一線だけは越えさせてくれない。

 拘束されているオクタヴィアが自ら動こうとすることさえ、許してくれない。

 カリンが強く動くのは、オクタヴィアがただ動かずにじっとしているときだけなのだ。

 そして、いまも、またしても、ディルドを前側から抜いていく。

 

「ああ、もう意地悪しないでよっ──」

 

 オクタヴィアは、逆上して怒鳴った。

 

「意地悪なんてしていませんわ。わたしは、お姉さまをもっともっと気持ちよくして、焦らし抜かれた先の快感でないと生きてはいけないようにしようと思っていますの」

 

 そして、アナルにディルドの責めを変更する。

 しかし、今度も、数回律動しただけで抜いてしまう。

 

「ああ、ひどいいっ」

 

 オクタヴィアは声を張りあげた。

 全身の震えがとまらなくなって、かなりの時間が経っている。

 汗みどろの身体からは、汗だけでなく快楽の蜜がディルドの責める場所を変えるたびに、ぼたぼたと床に滴り落ちていっていた。

 このままでは、本当にカリンの思うままの被虐奴隷にされてしまう──。その不安が脳をよぎった。

 だが、もうどうしようもない。

 前を責められてすっと抜かれ、後ろを貫かれてすぐに引かれる。

 カリンは、オクタヴィアを絶えず絶頂に向かって押しあげながらも、快感を急激に飛翔させることだけは許さず、冷淡に悶え狂うオクタヴィアを観察してくるのだ。

 

「ああ、もういかせて──。いかせてください──」

 

 オクタヴィアは髪を振り乱しながら懇願した。

 

「……じゃあ、口づけをしてください。お姉さまがわたしの子猫に相応しいキスができたら、考えましょう」

 

 カリンが前に回ってきて、オクタヴィアに顔を寄せる。

 オクタヴィアはすぐに、カリンの唇に口を押しつけた。

 命令されたからではない、強要されたからでもない。いまは、心からの欲望によって、カリンの舌をむさぼりたかったのだ。

 オクタヴィアは、舌を自ら潜り込ませて、情動のままにカリンの舌を絡め取った。

 舌と舌を吸い合う。

 カリンの鼻息が荒くなってきた。

 オクタヴィアだけでなく、カリンもまた快感に悶えつつあるのだとわかり、オクタヴィアの中に歓喜が芽生える。

 

「……はあ、はあ……本物ですね……お姉さまは……」

 

 やがて、カリンが口を離して、少しばかり息を荒げながら言った。

 そして、横に置いたままの台車に手を伸ばす。

 はっとなる。

 カリンが手にしたのは、置きっぱなしだった張形付きの貞操帯だ。カリンは後ろに回ると、二本の張形を前後の穴に貫かせて、貞操帯を嵌めてしまった。

 金属音が鳴り、魔道の鍵がかかった。

 

「ああ、どうして、カリン──?」

 

 オクタヴィアは愕然として身体を揺らす。

 

「それがサロンの被虐奴隷ですわ。望みは常に奪われますの。でも大丈夫ですわ。お姉さまのことは、今日のご主人様が可愛がってくれますわ」

 

 オクタヴィアから離れて、床に放り投げたままだったガウンをカリンが身につけ始める。

 

「あっ、そんなのないわ──。このままじゃ狂っちゃう。カリン、待って──」

 

 オクタヴィアは呆然として、首を回してカリンを見る。

 しかし、もうカリンは満足したように、矯正室の出入口に向かっていく。

 そして、思い出したように、扉の前で振り返った。

 

「そうそう、忘れておりましたわ。お姉さまのお強請りする声、伝声具でサロン中に流しておりましたの。それから、先ほどの様子も映録球に記録してありますわ。仲間内で回し見するように、王都に送っておきますね」

 

 カリンは扉の前で、にっこりと笑った。

 

「これで、お姉さまは立派なわたしの子猫です……。もう帰る場所はありませんわね」

 

 カリンはそう言って、女兵を伴って矯正室を出て行ってしまった。

 すると、扉が開いて誰かが入って来た。

 

「醜態じゃな、オクタヴィアよ」

 

 カリンと入れ替わるように入って来たのは、バルザック元帥だった。

 しかし、その後に続いて入って来た人物を見て、オクタヴィアは眼を見開いた。

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