サロン・セルパンタンの五百日の調教記録──亡国の花と蛇の館 作:ドン・ドナシアン
バルザックの脚のあいだで、ふたりの全裸の女の頭が動いている。
女というよりは、まだ少女といえるかもしれない。成人しているが、成熟した女に成りきれていない幼さを、その裸身に残している。
脚のあいだにいるのは、バルザックにあてがわれている五人の侍女のうちの、フローラとエステルだ。
少し前までは、ミレーヌとフローラを伴って、セリアとレイシアの百合行為の矯正をカイネウスと見物していたのだが、カイネウスがセリアを連れて行ってしまい、バルザックは、ひとりでオクタヴィアの矯正状況を視察することとなった。
その際、バルザックは、自分が命じた玩弄で体力の尽きたミレーヌをエステルと交替させることにした。
もともと、貴族令嬢の彼女たちは、いかんせん体力がない。かなり、このサロンの矯正でも鍛えているようだが、彼女たちは一般囚での集団矯正がほとんどない状況で、サロンの魔工師のエリナに引き抜かれたらしい。収容後すぐに、肉体の魔改造をされて、そのままバルザックにあてがわれたようだ。
だから、体力は不足気味だ。これからの課題だろう。
ともかく、いま同行しているのは、エステルとフローラだ。
「あ、ああ……エステル様……」
「か、感じます、フローラ様……。も、もう一度口づけを……」
ふたりがバルザックの脚のあいだで裸身で抱き合いながら、甘い声を掛け合う。
バルザックは、革張りのソファに脚を大きく拡げて座っていた。フローラとエステルには、バルザックへの奉仕とともに、ふたりで愛し合うことも命じているのだ。
目の前にかしづいているふたりは、交互に口でバルザックの男根に奉仕し、そして、乳房で挟んで刺激したりという行為を繰り返しながら、さらに、一生懸命にお互いを愛撫し合っている。
もっとも、バルザックへの奉仕そのものは、まだまだ技巧は未熟だ。
だが、それを補って、ふたりとも従順で健気だ。
百合行為にしても、戸惑いはしたが、嫌がる素振りは見せず、懸命にお互いに快感を高め合っている。
本当に素直なのだ。
それがいい。
「んんっ」
「んあっ、んっ」
そのふたりが、またもや濃厚なキスを交わしている。
五人の侍女には、このサロンにおいて面白い肉体改良が施されているのだが、とりわけ、フローラは面白い。性的に興奮すると男根が出現するという改良が加えられているのだ。だから、バルザックは、もうひとりのエステルとともに、ふたりで愛し合うようにも指示を加えたのだ。
まだ少女の色が残っているふたりが、ぬめりながら絡み合い、口づけを交わし合う眺めは見飽きない。
発達途中の乳房がくっつき、擦りつけ合ってよがるのも悩ましい。
「あっ、あっ、ああっ、エステル様、いっちゃう──、いっちゃいたい」
「わ、わたしも……ああ、でもいけないの。ああっ」
口づけをし、乳房をこすり合っているふたりがお互いの股間を愛撫しながら、大きく身体を反り返らせる。
埋められている魔核により、全身の感度をあげられている五人は、この二人に限らず、少しの愛撫ですぐに性感を極めてしまう。
だが、いまのふたりには、それはできない。
フローラには、男根の根元にリングを装着させている。許可なく射精できないように処置を施しているのだ。
そして、エステルについては、肉体改造により、どんなに快楽を上昇させても、許可なく絶頂できないように魔核で調整を受けている。そのあいだの絶頂感は、溜めておいて、許可されたときに一気に快楽を極めるのだ。
これがまた面白いのだ。
本来であれば、一度ずつ時間をおいて極めるはずが、三回分、五回分、あるいは、もっと多くの回数分の絶頂感を一気に味わうのだ。
そのときののたうち回りようと苦悶の姿は、何度させても飽きることはない。
リングにより射精を封じられているフローラと、絶頂感を蓄積するしかないエステル──。
このふたりに、いまは、ひたすら絶頂感を溜めさせている最中なのだ。
そして、二人とも、お互いを慰め合いながらも、片手だけはバルザックの男根に指を搦めてしごいている。
あるいは、口による奉仕に戻る。
また、女同士で濃厚な口づけを交わす。
これを繰り返している。
夢中になって強要されている百合行為を演じながらも、バルザックへの奉仕はちゃんとこなしている。
可愛いものだ。
「よかろう。口づけはもうよい。フローラは口でわしの一物を舐めよ。エステルはそのフローラのアナルを舐めるのじゃ。わしは、そのあいだ、フローラの一物をしごいてやろう」
バルザックは命じた。
全身に汗をかいて肩で息をしているふたりが、ほんの少し躊躇する反応をする。
しかし、すぐに命じられた行動に移り、フローラがバルザックの前で膝を立てて左右に開く格好になって、バルザックの股間を口に咥える。
エステルは、その後ろに四つん這いになって、フローラの尻穴を舐め始める。
「んああっ、んんっ」
アナルへの舌の刺激に、フローラがバルザックへの奉仕をしながら身体を悶えさせる。
バルザックはその姿を愉しみながら、手を伸ばしてフローラに生えている男根を手で擦ってやる。
女としての性器から出る愛液と、男性器からにじみ出ている精液で股間はぬるぬるだ。
ゆっくりとしごいてやる。
その後ろでは、エステルの顔がフローラの尻に密着して舌が激しく動いている。
フローラはますます狂乱した。
バルザックは、そんなふたりから視線を外し、正面の壁に眼を向けた。
壁の向こうでは、別の光景が繰り広げられていた。
ここは矯正室に隣接する小部屋だ。
両室を隔てている壁には特殊な魔道が施されており、こちら側からは透明な硝子のように向こうを見通すことができる。
声も聞こえるが、反対側からは、大きな姿見にしか見えず、こちらの姿も声も伝わらない仕組みになっているらしい。
その壁の向こうにいるのは、オクタヴィアだ。
かつてサロンの主任矯正官を務めていた女が、いまは自分にあてがわれた矯正室で、矯正を受ける側になっている。
オクタヴィアは部屋の中心で両手を束ねて吊られて立たされている。衣服は奪われており、その股間には股間を封印する革帯が喰い込んでいる。
こちらからでも、その貞操帯の股間部分が震えているのがわかる。貞操帯の内側で張形が動いていて、繰り返し絶頂をさせられているのだ。
そして、そのオクタヴィアに命令を下しているのが、バルザックの姪のカリンだ。
カリンは、オクタヴィアに向かい合うように、少し離れて、膝を組んで椅子に腰かけている。
さらに、女兵ふたりがオクタヴィアについていて、連続絶頂責めに息も絶え絶えによがり狂っているオクタヴィアに愛撫を加えている。
女兵たちはカリンの指示に従い、オクタヴィアの状態を確かめたり、器具を調整したり、あるいは、絵筆で身体をくすぐったりしているのだ。
オクタヴィアの股間に埋められている張形を操作しているのは、カリンのようだ。その手には操作具らしき魔道盤が握られており、時折、指で触れている。
まるで、いつもの仕事を片づけているかのような落ち着きぶりだが、オクタヴィアに屈辱を与える言葉をかけては、操作具でオクタヴィアを悶え狂わせている。
しかし、よくよく観察していると、カリンもまた興奮状態なのがわかる。無表情に近いのだが、短い時間で頻繁に脚を組み替えるし、なによりも瞬きが激しい。
あのオクタヴィアは、カリンに女官としての仕事を教えてくれた恩人であり、尊敬している先輩だと常々口にしていた。
そのオクタヴィアを、バルザックの権力まで借りて性奴隷にしてしまうのだから、我が姪ながら随分困った性分だ。
そんな光景が壁の向こうで、繰り返されていた。
バルザックは、その様子を興味深く眺めている。
「んああっ、はああっ、んんんっ」
そのときだった。
突然に、バルザックの股間を奉仕していたフローラが肢体を痙攣させて、絶頂に達したような仕草をした。
アナルをエステルに舌で刺激され、バルザックに男根を擦られて、ついに快感が暴発したのだろう。
だが、それは疑似的な感覚にすぎない。
生えている男根の根元のリングは、フローラの射精を堰き止めている。それを外さない限り、男性器でも女性器でも絶対に昇天できない。
絶頂寸前のもどかしい感覚がいつまでも続くだけだ。
「わしへの奉仕よりも、自分の快感を優先させおったか? とんでもないことじゃな」
それはともかく、フローラは声をあげるとき、大きく口を開いてバルザックの怒張を口から離した状況になっていた。
バルザックはわざとそれを指摘する。
「ああ……、申し訳ございません──」
フローラもそれに気がついたようだ。
はっとしたように、バルザックの怒張を咥え直そうとする。
しかし、バルザックはそれを手で制した。
「ならんわ。罰じゃな。だが、お主たちの罰は連帯責任と決めておる。エステルよ、フローラの罰はお主が受けよ。こっちに来て、わしに向かって尻を出せ」
バルザックは、フローラのずっと尻に舌を這わせていたエステルに声を掛ける。
エステルは、一瞬きょとんとなった表情になったが、すぐに四つん這いのまま、身体を反転させて、バルザックの前に尻を向けてきた。
「ああ、そんな。わたしの罰は、わたしに受けさせてください。エステル様は許して──」
フローラが悲鳴のような声をあげた。
バルザックは、そんなフローラを見下ろした。
「なにを申しておる。お主たちの罰は連帯責任と決めておると言ったであろう。お主の失態は、エステルに償わせる。それだけのことじゃ」
「でも、でも……悪いのはわたしです。エステル様はなにも悪くありません──」
フローラが必死に訴えてくる。
その眼には、すでに涙が浮かんでいた。
「フローラ様、どうか、お気になさらないでください。わたしなら大丈夫ですから」
エステルが静かに声を掛けた。
「だめです、エステル様──。わたしのせいなのに……そんなの、だめです……」
フローラは激しく首を振った。
いまにも泣き出しそうな声だった。
エステルがなおもなにか言おうとしたが、フローラはそれを遮るように、バルザックの前に進み出た。
そして、エステルを押しのけるようにして、バルザックの正面に割り込むと、床に両手をつき、額を押し当てた。
「元帥閣下、お願いいたします──。わたしに罰をお与えください──」
「ほう……。下級とはいえ、貴族令嬢のお前が本物の奴婢のようにふるまうか」
バルザックは、眼を細めた。
土下座だ。貴族令嬢がやっていい行為ではない。奴隷階級の者が主人に最大限の恭順を示す姿勢であり、このサロンで女囚に落とされている彼女たちだが、自ら床に頭をつけるのは、これ以上のない屈辱のはずだ。
フローラはその姿勢のまま、震える声で懇願を続ける。
「どうか、わたしを罰してください。どんな罰でも受けます。ですから、エステル様は……エステル様はお許しください──」
言葉の途中で声が詰まった。
床に落ちた涙が、小さな染みをつくっている。
「フローラ様……もう、おやめください」
バルザックに四つん這いで尻を向けていたエステルが、その体勢のまま困ったように声を掛けている。
「いえ、お願いいたします……わたしが悪かったんです……。わたしの罰を──」
床に額を擦りつけているフローラが必死に訴える。
「いえ、わたしは本当に大丈夫ですから……。閣下、どうか、罰をお命じください」
エステルが顔だけをこちらに向ける。
それでも、フローラは顔を上げようとしなかった。
肩を震わせながら、何度も許しを乞うている。
なるほど……。
バルザックは、床にひれ伏すフローラと、その傍らで困惑しているエステルを交互に眺めた。
自分の処罰については、これまで一度も異議を唱えなかった娘だ。それが、仲間のためとなると、ここまで必死になるらしい。
なかなか興味深い。
「ふむ……そこまで申すか、フローラ」
バルザックが声を掛けると、フローラがはっと顔を上げた。
涙に濡れた眼が、縋るようにこちらを見上げている。
「はい……お願いいたします、元帥閣下……」
バルザックは微笑んだ。
「……なるほどのう。では、どんな罰がよいか自ら決めるがよい。お主が自分でも怖ろしいと思う罰を言え。それをわしが気に入れば、罰はエステルではなく、お主自身に与えてやろう」
バルザックはにやりと笑った。
フローラが一瞬、絶句した。
だが、すぐにフローラの視線が、ふと横へ動いた。
バルザックが腰かけているソファの脇には、小さな台が置かれている。その上には大きなトレイがあり、大小さまざまな魔道具が並べられていた。
バルザックが、あらかじめ用意させておいたものだ。
ほとんどが、このサロンの魔工師たちによって製作された特殊な責め具である。その数は五十種類ほどにもなるだろう。
女性器用、アナル責め用だけでなく、フローラがいるので、男性器責めの用途のものもあった。
フローラは、しばらくそのトレイを見つめていたが、やがて身体を起こし、台の方へ手を伸ばした。
しかし、その手が途中で止まった。
指先が震えている。
それでもフローラは、意を決したように一本の細い金属棒を取り上げた。
ほう──それか……。
バルザックは、思わず眉を上げた。
フローラが選んだのは、電撃を発する矯正用の魔道具だった。大人の中指ほどの長さの細い金属棒の形状をしている男根責め用のものだ。尿道栓である。だが、ただの尿道栓ではない。彼女自身も、その用途を知っているようだ。
フローラは、その金属棒を両手で捧げ持つようにして、バルザックに向き直った。
顔色がひどく悪い。
「こ、これでお責めください。これは電撃を発する魔道具だったと思います。どうか、わたしが気を失うほどの電撃をお与えください。ですから、エステル様はお許しください──」
最後の方は、ほとんど泣き声だった。
掲げている金属棒が、小刻みに揺れている。
バルザックは、しばらくその姿を眺めていた。
これは予想外だった。
自分が怖ろしいと思う罰を選べと命じたのは確かだ。しかし、こうも真剣に、しかも自分から進んで差し出してくるとは思わなかったのだ。
しかし、バルザックは、このフローラが本来の身体の一部ではない男根を責められるのを、なによりも嫌がっているのはわかっていた。
その男根責めなのだから、自分に取ってもっとも苛酷だと考えた罰を提案したのは間違いないだろう。
フローラの眼から、また涙がこぼれた。
それでも、金属棒を下ろそうとはしない。
バルザックは、とうとう笑ってしまった。
「はっはっはっ。なるほど、なるほど。お主、そこまでしてエステルを庇いたいのか」
「は、はい……。どうか、罰はわたしに……」
フローラがびくりと肩を震わせた。
だが、逃げるような素振りは見せなかった。
ただ、青褪めた顔でバルザックを見上げている。
バルザックは、その顔を興味深く眺めた。
だが、ふとほくそ笑んだ。
「よかろう。ならば、フローラに罰を与えるか。その男根に失神するまで電撃を流してやる。ただし、条件がある」
バルザックは言った。
「は、はいっ」
フローラが悲痛な表情のまま大きく頷く。
「朝からかなり、リングで性欲を溜めさせたからのう。それを外してやる。エステルは、フローラの一物を舐めよ。わしが十分だと判断するまで耐えたら、フローラに罰をやろう。だが、失敗すれば、エステルに罰じゃ。尻穴に電撃棒を挿して、失神するまで電撃を流すことにする」
バルザックは、横のトレイにある淫具からアナル用の電撃棒を手に取って笑った。
フローラとエステルの眼が揃って、大きく見開いた。