サロン・セルパンタンの五百日の調教記録──亡国の花と蛇の館 作:ドン・ドナシアン
開脚された逆さ吊りのまま、レイシアは噴水のように放尿を吹き上げた。その瞬間、ヴェルデンとヤンが大笑いし、周りの女兵たちも一斉に嘲笑の声をあげた。
一度堰を切ったおしっこは、もはやレイシアの意思で止めることは不可能だった。
我慢を重ねていたこともあり、放水は高くまであがり、弧を描いてレイシアの裸身に降り注いでくる。
股から噴き上がったそれは、逆さの身体にそのまま降り返り、腹に──胸に──顔に叩きつけられる。
あまりの恥辱に、レイシアの身体が震えた。
顔まで濡らし尽くしたあとも、噴出はなお続き、さらに床に垂れる髪に当たって、床をぼたぼたと濡らしていく。
「呆れた女だねえ。それでも元の近衛隊の女騎士かよ。ちょっとくらい我慢できないのかい」
横から眺めているアルジェがレイシアの醜態を眺めながら言う。
「女の小便というのは初めて見るが、噴水とは驚くぜ」
ヤンが手を叩いて哄笑する。
それに応じるように、周囲の女兵たちもはやしてたてる。
「それにしても、まさか逆立ちのまま放尿するとはねえ。必死に我慢すると思ってたけど」
「ざまあないねえ。それでも、お前は女騎士かよ」
「股を拡げて、みんなの前で逆さに小便するなんて、呆れ返るよ」
女たちが好き勝手なことを口にする。
そのあいだも、逆さの噴流は途切れない。
「なんとか言いな、レイシア──。カンパネルラの英雄も、いまじゃ、このざまだ」
アルジェがレイシアに向かって怒鳴る。
しかし、レイシアにはもう口を開く気力は喪失してしまっていた。
やがて、余韻のような滴りも終わり、ようやく失禁も収まった。
レイシアは、逆さ吊りの裸身を震わせたまま、逆さの視界の中で天井だけを見つめていた。
「なんとか、言わないかい──。誰が掃除すると思ってんだい──」
そのとき、アルジェが思い切り、レイシアの尻を平手で引っ叩いた。
「くっ」
レイシアは痛みと恥辱に顔をしかめる。
「毛剃りも待ちきれずに、おっ始めるような恥知らずには、剃刀は贅沢だね。全部、手で引っこ抜いてやるよ──。やりな──」
アルジェが声をかけると、水刷毛でレイシアに刺激を加えたふたりの女兵が今度は、左右から指でレイシアの陰毛をわしづかみにしてきた。
手首を捻るように、ゆっくりと股間の毛を引き抜かれる。
「んぎいいいっ」
レイシアはあまりの激痛に、逆さ吊りの身体を痙攣させて、喰いしばった口から苦悶の呻きを漏らした。
「はは、そんなに苦しいかい、騎士さん? あんたに殺されたあたいの恋人はもっと痛かったろうよ」
「敵討ち代わりに、全部手で抜いてやるから覚悟しな」
上から抜かれたレイシアの陰毛がはらはらと顔の前を落ちていく。
レイシアは噴き出す脂汗とともに、肩で息をした。
「待て、それ以上はなしだ……。粗相をした罰は、妹と並べて陰毛を剃りあげることで代わりにしよう。それで溜飲をさげろ」
そのとき、ヴェルデンが声を掛けた。
レイシアは愕然となった。
「ま、待ってくれ──。約束が違う──。リネアには手を出さないと言ったではないか──」
レイシアは叫ぶ。
「なにを言う。それはお前が小便で床を汚す前ではないか。粗相をした罰は受けてもらわねば困るぞ。恨むなら堪え性のない自分を恨め」
ヴェルデンが笑う。
レイシアは歯ぎしりした。
あまりもの口惜しさで、視界が歪む。
「そ、そんな──それだけはやめて──。お願いだ──」
レイシアは必死で哀願する。
「レイシア、このままじゃ、本当に大変なことになるぞ。お前自身のことはも諦めろ。しかし、妹のリネアまで巻き込まれたくねえはずだ。そうだろ?」
ヤンがレイシアの前にしゃがみ込んできて、視界が反転しているレイシアの顔を覗き込むようにしてきた。
この卑劣男──すべての元凶がこいつなのはわかっている。レイシアが捕らわれたのも、わざわざ、妹のリネアの情報をこのサロンの連中に教えたのも……。
だが、いまや、そのヤンでさえも縋るしかない。
「そ、そうだ。もうあたしのことはどうにでもしていい。なんでもする。本当だ──。だから、リネアだけは許してくれ──」
レイシアは声をあげた。
すると、ヤンが満足したように頷く。
「……ねえ、閣下、ここまで言ってるんです。一度だけ機会を与えてやりませんか?」
すると、ヤンが立ちあがって、ヴェルデンに振り返った。
「ほう、機会か?」
「ええ、ちょっとした勝負をさせましょうよ。こいつは女騎士だし、勝負で負ければ諦めもつくでしょう……。レイシア、妹を助けたけれ勝負を受けろ。そして、勝て。それしかねえ」
ヤンが上からレイシアを見下ろす。
「勝負だと……?」
なにを考えているのかわからない。
どう考えても、まともな勝負をさせるとは考えられなかった。だが、その言葉に縋るしかないのか……。
どうしたら……。
「まあ、どんな勝負をさせる気?」
アルジェがヤンに声を掛ける。
「なあに、簡単な勝負だ。これから半時間、そのおふたりがレイシアを責める。レイシアはそれに耐え抜くという勝負だ。もしも、呆気なく気をやれば、残念ながら、妹は連れてくる」
ヤンが言った。
レイシアは鼻白んだ。
ここに連れてこられる前に、レイシアは埋められた魔核で身体の感度を上昇され、なにもされていないいまでも、おかしな淫情で身体が熱くなっている。
この追い詰められかけている身体を、拘束された状態で愛撫を一方的に受け、情欲で絶頂すれば、妹をここに連れてくるというのだ。
その身体で勝てというのか──。
なんという卑劣な……。
「そりゃあいいわ。じゃあ、あんたら頑張りな。どんな道具でも好きなように使いな」
アルジェが手を叩いて、さっきのふたりの女兵に声を掛ける。
「おお、それは面白い。なるほど、それなら、レイシアも納得もいくだろう。レイシア、妹を巻き込みたくなければ、勝負を受けろ。そして、勝て」
ヴェルデンが笑い出す。
「あ、あんまりだ──。そんなのない──」
レイシアは悲鳴をあげた。
「なら、勝てばいいのよ──。せめて、頭は元に戻してあげるよ」
アルジェが合図し、レイシアの身体はもう一度反転され、逆さ吊りからは解放された。
四肢を拡げて繋ぎとめている枠が固定される。
「お、お前ら、卑怯だぞ──。妹は関係ないだろ──」
レイシアは身体を揺さぶって叫んだ。
「たった、半時間、耐えたらいいだけだろ──。さあ、お前ら、水時計を準備しな。半時間の勝負だ」
アルジェが笑う。
「じゃあ、あたいは媚薬の油剤を準備するわ」
「張形も持ってくるよ。尻用と、前用のそれぞれのね」
女兵たちが慌ただしく動き出す。
四肢を拘束されているレイシアは、逃げ場もないまま、それを待つしかなかった。