サロン・セルパンタンの五百日の調教記録──亡国の花と蛇の館 作:ドン・ドナシアン
「う、うう……」
レイシアは、四肢を拡げて拘束されている身体をもがかせ、奥歯を噛み鳴らしながら呻き続けた。
左右を挟むように並んでいる女兵ふたりが、代わる代わる媚薬の入った瓶に指を浸しながら、揉み上げるような手つきで股間に、乳房にと怪しげな油剤を塗りつけてくる。
乳首に吊っていた鈴も外された。その分、乳首に繰り返し油剤を足されてしまう。
忌々しいことに、その手管は乱暴なものではなかった。
まるで壊れ物でも扱うかのように、ゆっくりと、丁寧に指を這わせてくる。
そこには同性だからこその、女体を扱い慣れた巧みさがあった。
乳房の輪郭をなぞる指先──。
脇腹を撫でてから、内腿へ落ちていく掌。
粘つく油を広げるように、股の割れ目をぬるりと撫で上げる感触。
レイシアは、油断すれば喘ぎ声が漏れ出そうになるのを、必死に耐えなければならなかった。
「大丈夫なのかしら、騎士さん? まだ始まってもないのに、息を荒げちゃって」
「一生懸命に我慢しなきゃ駄目よ。さもないと、大事な妹さんも、あんたと一緒にここへ並ぶことになるわ」
女兵たちが、レイシアの反応を楽しむように、嘲笑混じりの声を掛けてくる。
「う、うるさい──。こ、この卑怯者──あっ、くっ──」
レイシアは、精一杯の悪態を吐いた。
だが、口を開けば、そのまま甘い声まで漏れ出そうになる。
慌てて唇を噛み締める。
そのあいだも、女兵の指は止まらない。
股間を撫で回しながら、割れ目を押し広げるようにして奥へ油剤を塗り込めてくる。
後ろも、入口を指先でくすぐるようになぞりながら、粘つく液を塗りたくられていく。
「卑怯者はお前らさ。これまで、お前ら王国人が、あたしら属国民にどれだけのことをしてきたと思ってるんだい。立場が逆転したくらいで、被害者ぶるんじゃないよ──。構わない。もっとたっぷり塗ってやんな」
アルジェが憎々しげにレイシアを睨みながら、女兵たちをけしかけた。
すると、女兵のひとりが、わざとらしく指先を秘裂の奥へ滑り込ませる。
「ひぁっ──」
レイシアの喉から、堪えきれない声が漏れた。
「あはは、本当に敏感になってるじゃない。まだ指しか入れてないわよ?」
「魔核って凄いのねえ。こんなに簡単に、女騎士様を発情させるんだから」
周囲の女兵たちが笑い声をあげた。
「まあ、レイシア、そうやって弄られるのも、満更悪い気分じゃねえだろう、レイシア? 姉妹揃って、ここで矯正されるのもいいんじゃねえか。もう諦めな」
ヤンがわざとらしく声を掛けてくる。
「う、うるさい──。こ、今度こそ約束は守ってもらうよ。半時間、耐えたら、リネアには手を出さないと誓いな──」
レイシアは叫んだ。
とにかく、肩で荒く息をしながら、必死に呼吸を整えようとする。
こうなったら、耐え抜くしかない。
半時間だ──。それだけ、ただ耐えればいいのだ。
耐え抜きさえすれば、リネアだけは守れる。
だが、乳房を撫でられるたびに身体が震え、股間を指先でなぞられるだけで腰が浮きそうになるのだ。首筋の後ろに埋め込まれた魔核が、身体の奥で熱を持ち続けているのがわかる。
痛みなど耐え抜く自信はある。だがこれは違う。身体の奥から熱を焚きつけられ、理性そのものを揺さぶられている。
「ああ、約束するぜ。ねえ、閣下?」
「わかった。私に面目にかけてな」
ヴェルデンが笑う。
「さて、そろそろ、準備もいいみたいだね」
アルジェが声を掛ける。
すると、別の女兵がさらにレイシアの前に台車を運んでくる。
レイシアは鼻白んだ。
そこには、長短も太さも異なる張形が、不気味なほど整然と並べられていた。人の腕ほどもあるもの。細長く湾曲したもの。先端だけ異様に膨らんだもの。さらに、その横には、大小様々な刷毛や絵筆まで揃えられている。
ふたりは、まずは絵筆を手に取った。
「じゃあ、始めるか」
ヤンが声をかけた。
からん──。
静かな音が室内に響く。
水時計だ。
細い管を伝って落ちた水滴が、ゆっくりと器へ溜まり始めている。
「女騎士レイシア──。妹を守りたきゃ、耐え抜いてみな」
アルジェが口元を歪めた。
絵筆を持つふたりの女兵がレイシアの前後に動く。
股の割れ目──尻の穴──ふたつの羞恥を同時にゆっくりと絵筆で撫でられた。
「ひいいっ、ひっ」
レイシアは全身を突っ張らせながら悲鳴をあげた。
たったそれだけでレイシアは、絶頂寸前まで追い詰められた。
魔核で身体を操られているためか──油剤の媚薬の効果か──あるいは、認めたくはないが、息も止まるようなこの汚辱がレイシアに被虐の快感を呼び起こしているのか──。
いずれにしても、たったひと撫でで、レイシアは、この勝負がまともなものではないのを思い知らされた。
「あら、どうしたの、騎士さん?」
「すでに、かなり滴らせてるけど、半時間も我慢できる?」
ふたりがふと動きを止めて、わざとらしく言う。
「言っておくけど、降参はないからね。勝負に負けようが勝とうが、半時間は責め続ける。しっかりと恥をかきな」
アルジェが笑いながら言う。
しかし、レイシアにはもう返事をする余裕もない。なにをすれば耐えられるのかもわからず、とにかく股間と尻の穴に力を込めた。
「歯を喰いしばって頑張っているつもり?」
「じゃあ、こんなのはどう?」
すると、後ろにいる女兵がいつの間にか持ち出していた布で、いきなり、レイシアの視界を布で塞いでしまう。頭の後ろで目隠しの布を結ばれた。
「あっ、ずるいよ──」
レイシアは声をあげた。
「なにをしようと、あたいらの自由だろう」
背後で笑い声──。
次いで,前から両方の乳房を柔らかく揉みほぐしてきた。
「ひううっ」
レイシアは引きつった声をあげてしまった。
視界を塞がれる──。
それだけで刺激が数倍にも跳ねあがった気がした。
「どこを責められるかわからないと、備えられないでしょう?」
今度は絵筆が双臀の割れ目を上下に動く。
「んふううっ」
レイシアは反射的に腰を前に突き出す。
「こっちを責めて欲しいの?」
すると、乳房をいじる手が離れて、前側から絵筆を股間で動かされる。
「ああ、いやあっ」
レイシアは再び腰を反射的に動かす。今度は後ろに──。
「ひいいっ」
しかし、そこにはまた絵筆が待っていて翻弄される。
「ほら、しっかりと気合い入れなきゃ」
今度は無防備な脇の下を同時にくすぐられた。
「いやああっ」
レイシアは裸身を跳ねさせた。
そして、ふたりは巧妙に連携して、レイシアを責め立てる。
強く責めると見せては寸前で止め、油断させたところに、別の場所へ刺激を走らせる。わざと中断したかと思うと、予想もつかない場所を刺激してくる。
レイシアは、すぐに追い詰められた。
だが、絶頂だけは必死に耐え続ける。九合目まで引きずりあげられたかと思えば、今度は七合目まで落とされる。だが、安堵した瞬間、また一気に頂上寸前まで叩きあげられる。
「し、死んだって、耐え抜いてみせる──」
レイシアは必死に繰り返して叫んだ。
それだけが、唯一の抵抗だった。
視界を奪われたレイシアは、汗みどろになりながら、ただひたすらに翻弄され続けるしかなかった。
そのあいだも、水時計の水滴の音だけが、無情に落ち続けていた。
「そろそろ、三分の一が過ぎたぞ。残り、三分の二だ──」
そのとき、ヤンの声が響いた。
まだ、それだけ──。
レイシアは、絶望に襲われた。