サロン・セルパンタンの五百日の調教記録──亡国の花と蛇の館 作:ドン・ドナシアン
「八割は終わった。あとちょっとだぞ」
ヤンが時間を告げる声が広間に響いた。
レイシアは荒い呼吸を繰り返した。
目隠しの布で視界を塞がれたまま、四肢を拡げて拘束されている身体が、小刻みに震え続けている。
もう何度、絶頂寸前まで追い込まれたのかもわからなかった。
刷毛で撫で回され──。
指で弄ばれ──。
いまは、前後から張形で奥を責め立てられ……。
寸前で止められる。
それを延々と繰り返され続けている。
「はっ……ぁ、ぁっ……」
喉が潰れかけていた。
汗で濡れ切った髪が、逆さになった顔へ張り付いている。
股間から流れ落ち続けている熱い感触も、もう隠しようがなかった。
内腿を伝い、逆さの身体を濡らしていく。
「ほらほら、また、いきそうになってんじゃないの?」
すると、またも張形を突きあげる速度が速くなる。
かっと身体が熱くなる。
「ああっ、だめえっ」
レイシアは身体を突っ張らせて悲鳴をあげた。
必死に耐える。
「油断しちゃ駄目よ。こっちもあるから」
すると、後ろの穴の責めが張形によるものから、またもや刷毛によるくすぐりに変化した。
お尻の入口をくるくると刷毛の先で刺激される。
「ひいいっ」
後ろに、前にと異なる刺激を受けて、もうレイシアはどうしていいかわからなくなる。
がくがくと身体を跳ねあげた。
しかし、まさに果てようとした寸前に、前後の刺激を中断された。
身体ががくりと脱力する。
「あら、どうしたの、騎士様?」
「もしかして、いきたかった?」
女兵ふたりが嘲笑のこもった声をかけてくる。
羞恥で気が狂いそうだった。
だが、それ以上に恐ろしいのは、身体そのものが完全に追い詰められていることだった。
いや、繰り返す寸止めで、身体はレイシアを裏切って、さらなる愉悦を求めている。
それがわかるのだ。
「だめよ。頑張らないと。妹さんがどうなってもいいの?」
静止していた張形がゆっくりと引き抜かれる。ねっちょりと水音が股間で響く。
途端、身体の奥が空虚感に痙攣した。
「ぁっ……ぁあ……」
レイシアは無意識に腰を揺らした。
「欲しくなっちゃった?」
「まだ駄目よ。ちゃんと我慢しなきゃ」
女兵たちが笑う。
次の瞬間、乳首を舌先で舐め上げられた。
「ひぅっ──」
レイシアの身体が大きく跳ねた。
「あら、妹さんがどうなってもいいの? 頑張らないと」
女兵が、汗ばんだ乳首へ舌を這わせながら囁く。
「わ、わかっている──。し、死んだって……妹に手を出させない──」
レイシアは叫んだ。
もう気力だけで踏みとどまっていた。
意識を抜けば、その瞬間に崩れ落ちる。
それが自分でもわかる。
女兵たちがわざと寸止めを繰り返して遊んでいるのもわかる。しかし、それがなければ、あっという間に勝負が終わっていたというのも理解している。
勝ち目があるとすれば、彼女たちの遊びに時間を稼ぐしかない。それで最後の最後に耐えるのだ。
「じゃあ、死んだって、昇りつめないようにしなきゃね」
前からさっき抜いた張形を再び沈められていく。さらに後ろからも──。
「ひ、ひいっ──。わ、わかっている──。し、死んだって……」
レイシアは呻くように言った。
だが、言葉とは裏腹に、身体はもう限界だった。
乳首へ息を吹きかけられるだけで腰が跳ねる。
内腿を撫でられるだけで腹が痙攣する。
少し刺激されるだけで、身体の奥が一気に熱を持ってしまう。
女兵たちはまたもや、前後から押すと見せかけて引き、引くと見せかけて押しては、わざと繰り返して中断してレイシアを翻弄する。
淫靡な場所を責めたてかと思うと、一転してなんでもない場所に舌を這わせてきたりする。
「そろそろ、半時間になるぞ。もうちょっとで終わりだ」
ヤンが告げた。
視界のないレイシアには、それがどのくらいなのかはわからない。しかし、ここで踏ん張れば、妹を助けられる。
その一心で、レイシアは気力を振り絞る。
そのときだった──。
「じゃあ、魔核でもっと感度を上げてやるよ」
アルジェの声が近くから響いた。
レイシアは耳を疑った。
更に──?
ここから、まだ上げるというのか──?
「や、やめっ──」
次の瞬間だった。
首筋の後ろに埋め込まれた魔核が、どくんと脈打つ。
「ああっ──」
全身が跳ねあがった。
身体の奥を、灼けつくような熱が一気に駆け巡る。
視界が白く弾けた。
そのあいだも、前後の張形が激しく動く。
「ああっ、許して──」
レイシアは悲鳴をあげた。
背筋に冷たい汗がどっと流れる。
「ふふ、無駄よ。もうどこが感じる場所なのかわかったもの……。前はこっちでし?」
「後ろはここを、こうされると駄目よね?」
二人が操る張形により、あっという間にレイシアの快楽は限界を軽々と突き破った。
拡げられて拘束されている四肢が、痙攣するようにぴんと張る。
全身が灼熱の感覚で押し包まれた。
耐えていた分が数倍の快感となって、暴流となってレイシアを貫く。
「んぐうううっ」
気が遠くなるかのような衝撃が走り、発作的な激しい痙攣が襲った。
次いで、がくりと脱力する。
「おいおい、凄えな」
「完全に限界だったみたいだねえ」
周囲の笑い声。
しかし、レイシアにはもう聞こえていなかった。
「残念だったな。あとほんの少し我慢すればよかったのにな。お気の毒だ、レイシア」
ヤンが笑っている。
もうなにも反応できない。
汗に濡れた裸身が、拘束具の中で激しく震え続ける。
「だが、その分、素晴らしい気分になったろう」
いまだに、痙攣の続いているレイシアに、ヴェルデンも声をかえてきた。
しかし、はっとする。
近い──。
距離をとってソファに腰をおろしていたはずのヴェルデンが、顔に息がかかるほどに密着していたのだ。
「脚の拘束を緩めろ」
ヴェルデンの声──。
すると、張られている四肢の鎖のうち、両足首のそれが一気に緩む。
「あっ」
身体が沈み体勢が崩れる。どういう状態かわらなくなる。
すると、両腿が抱えられた。
腰が浮く──。
「残念だったな、レイシア──」
ヴェルデンの声が目の前で告げられる。
レイシアを抱えているのはヴェルデンだ──。
それはわかる。
「んぐうっ──」
次の刹那、遠慮のない力強さで、男根が股間を貫いてきた。
すでに力を失っていた宙吊りの身体が挿入された勢いで浮きあがった。
「あああっ」
天を仰ぐように、レイシアは目隠しをされている顔を天井に向けた。
張形で達したばかりの身体に、またもや欲情の衝撃が脳天を突き破る。
なにもわからない。
ただ、絶頂したばかりの身体を、熱い楔だけが容赦なく貫き続ける。魔核により感度を上げられた影響なのか、凄まじいほどの快感が襲う──。
「んぐううっ」
またもや、身体が激しく痙攣する。
「ははは、いきまくりじゃねえか、レイシア」
離れた位置からヤンの揶揄をする。
激しい律動を受けながら、レイシアは目隠しの下へ涙を滲ませた。
喉を潰しながら、レイシアは必死に耐える。
それでも、奥歯だけは砕けそうなほど噛み締め続けた。