サロン・セルパンタンの五百日の調教記録──亡国の花と蛇の館 作:ドン・ドナシアン
「うあああっ──」
またもや、こめかみを貫く不快な電撃が脳髄へ襲いかかった。
「いぎいいいいっ──や、やめてええっ──」
リネアは、首環だけで吊られるように立たされている身体を必死に突っ張らせた。
頭に嵌められている鉢巻き状の魔道具による苦痛は、もう十回目になっていた。
だんだんと衝撃は強くなり、流される時間も長くなっていく。
ヤンとアルジェのふたりがリネアに求めたのは、天井から吊されている首環だけで立たされているリネアが自ら服を脱いで裸になることだった。
しかし、ここで自分から服を脱ぐなどできるはずがない。
リネアは拒絶した。
すると、まずは「懲罰」として、十回連続の電撃責めを頭に受けることになったのだ。
「あがああああ──」
リネアは全身を痙攣させながら、悲鳴をあげ続ける。
脱力しそうになる脚を踏ん張り、両手で首環へ繋がる鎖を必死に掴む。
そうしなければ、首環だけで天井から吊られる状態になっていただろう。
だが、今度は電撃がなかなか止まらない。
「んぐううううっ──」
リネアの全身が痙攣するように震えた。
でも、最後のはずの十回目の電撃が長い──。なかなか終わってくれない──。
「んぐっ」
ついに膝が折れた。
腕から力が抜け、鎖から手が離れる。
両腕がだらりと身体の横へ落ちる。
「おっと、首が絞まるよ──」
アルジェが慌てたように声をあげた。
一瞬だけ、首環が喉へ食い込む。
「あっ……がっ──」
息が止まった。
「おっと、危ねえ──」
だが、ヤンによって、すぐに鎖が緩められた。
リネアは床へ崩れ落ち、その場へしゃがみ込む格好になった。
その瞬間だった。
スカートの内側で、急に温かいものが広がる。
「あっ……」
自分が失禁しているのだと気づいたのは、しばらくしてからだった。いつの間にか、放尿が始まっていた。
「驚いたねえ。ここまで頑張るとは……。ただの薬師見習いのくせにねえ」
アルジェが呆れたように笑う。
「大人しそうに見えても、あのレイシアの妹ってことなんだろうさ」
ヤンも椅子へ座ったまま笑った。
ふたりとも、リネアの苦悶を見世物のように眺めている。
まるで酒場の余興でも楽しんでいるかのようだった。
気がつくと、電撃も放尿も止まっていた。
リネアの下半身は、スカートの内側と前掛けごと、失禁で濡れてしまっていた。
「はっ……はっ……うっ……」
リネアは顔を上げることもできない。
強烈な吐き気が込み上がっている。
口の端から大量の涎が垂れ落ち、床へ糸を引いた。
もう口を閉じることすらできなかった。
「立ちな」
アルジェが怒鳴る。
直後、からからと鎖の音が響いた。
首環へ繋がる鎖が再び引き上げられていく。
「あっ……ぁ……」
リネアは震える膝へ力を込め、どうにか再び立ちあがった。
「とりあえず、前掛けを外しな。それとも、また連続電撃がいいかい?」
アルジェが楕円体の操作具を向ける。
「ま、待って……」
リネアが慌てて首と腰の後ろに手をやって前掛けを外す。指が震えて簡単には前掛けを外せなかったが、なんとか紐を解いて、薬師としての前掛けを足元に落とした。
「じゃあ、次は、小便で濡らした下着を脱げ。スカートは許してやる。嫌なら電撃だ」
ヤンだ。
「……えっ?」
リネアは思わず顔をあげた。
「あぐうううっ」
錐で頭を抉られるような強烈な電撃が突き抜けてきた。
リネアはよろけて、またもやしゃがみ込みそうになる。
「ああっ」
懸命に脚を踏ん張って耐える。
首だけで少しのあいだぶら下がり、慌てて手をもがかせて首環の鎖を握る。なんとかしゃがみ込まずに耐えた。
「な、なにを……」
電撃が止まったところで、リネアは声を絞り出した。
「下着だけにしてやったんだ。すぐに脱げ。それとも、やっぱり全裸になりてえなら、命令を戻してやるぜ」
ヤンが操作具を向ける。
「ぬ、脱ぎます──」
リネアは叫んだ。
しかし、頭と心を破壊するような電撃が脳髄を貫く。
耐えたのは、束の間に過ぎなかった。またしても全身から力が抜け、首環だけで吊られる。今度は支えられずに、完全に腰が砕けた。
再び、生温かいおしっこが下着を汚す。
鎖が緩み、リネアはしゃがみ込む。
「だ、だめええ──」
喉の奥から呻きが迸る。
大量の涎が泡とともに口から垂れ流れる。
腹の底から苦いものが込みあがった。
電撃が止まる。
「立ちな」
がらがらと鎖が引きあがる。
リネアはなんとかその場に立った。
「ど、どうして……」
脱ぐと答えた。
そう言ったのに……。
「命令にはすぐに従え。それを身体に刻み込むためだ」
ヤンがせせら笑う。
「それが家畜の躾ってやつだよ」
アルジェが操作具を向けた。
はっとなる。
「だ、だめええ──」
リネアは、下着を脱ぐために、慌てて両手をスカートの中に入れた。
「んぐうううっ」
しかし、電撃が貫く。
脳天が砕かれるような衝撃だ。何度受けても慣れるということはない。それどころか恐怖が積み重なっていく。
鎖が緩んで、腰を砕かせたリネアは床に蹲る。
「やめてええ──。脱ぐううう──脱ぎますからああ──」
リネアは頭を両手で抱えながら絶叫した。
「だったら、さっさと脱ぐのね。それにしても、悲鳴をあげる余裕があれば、どうして命令に従うということを覚えないのかしら」
「仕方ない。家畜には繰り返して、教え込むしかないさ」
アルジェとヤンが談笑のように会話するのが聞こえた。
リネアは震える指で必死にスカートの中から、びしょびしょに濡れた下着を腰から抜いた。しゃがみ込んだまま、なんとか足首から抜いたところで、やっと電撃が止まる。
視界が霞んでいた。
涙のせいではない、
度重なる電撃で、朦朧となっているのだ。
「何度も鎖を緩めたり、張ったりするのは面倒だ。首じゃなくて、両手で吊り上げるか」
ヤンが立ちあがった。
リネアの前にやってきて、両手首へ革枷を嵌めていく。
「あっ……なにを──」
抵抗しようとしても、もう身体へ力が入らない。
前手錠の革枷に先ほどまで首環へ繋がっていた鎖が接続され直される。
直後、鎖が引き上げられた。
「あっ──」
リネアの両腕が頭上へ吊り上げられる。
そのまま、両手首を天井へ引かれた格好で立たされた。
肩が軋む。
痺れた腕が熱を持つ。
「これで、いちいち倒れなくて済むだろう」
ヤンが言った。
「もっとも、自分で服は脱げなくなったけどね」
すると、アルジェが椅子へ腰掛けたまま笑った。
「なら、余興代わりに脚で頑張ってもらうか」
ヤンが別の鎖を引き寄せる。
天井の滑車から垂れていた鎖だった。その先端には革枷がついている。
「やっ……」
リネアの左足首へ、その革枷が嵌められた。
さらにヤンは、滑車を通って反対側へ垂れている鎖の先端へ、部屋の隅にあった砂袋を吊り下げる。
重みが加わった瞬間だった。
「あっ、いやっ──」
左脚が一気に上へ引かれそうになる。
リネアは慌てて脚へ力を込めた。
必死に下へ引っ張る。
すでにスカートの中には何も穿いていない。
この状態で脚が上がれば、自分がどんな姿になるかくらいわかっていた。
「んっ……ぐっ……」
度重なる電撃で、身体はもう限界だった。
それでも、リネアは震える脚へ必死に力を込め続ける。
左足首がわずかに浮きあがる。
だが、どうにかそこで耐えた。
「……ところで、リネア」
ヤンが笑う。
「……」
リネアは歯を喰いしばったまま顔だけを向ける。
声を出すことも難しかった。
「……お前、恋人がいるよな。確か、アルトっていう騎士見習いの小僧だったか?」
「へえ、そうなのかい?」
アルジェが面白そうに目を細めた。
「……えっ……どうして……? どうして、アルトのことを……」
リネアは息を呑む。
「だから、その恋人へ操を立てたけりゃ、頑張れってことさ」
ヤンが笑いながら、さらに砂袋を追加した。
「あっ、いやっ──」
左脚が、今度こそ強く引き上げられる。
リネアは、必死に歯を食いしばった。
全身を震わせながら、必死に脚を引き戻す。
「脚がもっと上がって、股を晒したらどうなるかわかるよな? 恋人がいるのに、身体を穢されたくねえよなあ」
ヤンがまたもや、別の砂袋へ手を伸ばした。三袋目を鎖にぶら下げようとしている。
「いやあああっ──」
リネアの絶叫が地下室へ響き渡った。